第17話
昨日の雨が嘘みたいに晴れている。
ホッと胸をなでおろす一同。
チョコレートの缶は、無事にケイトの部屋にある。
今日、明日の売る分を詰め終わってしまえば、とりあえずは安心である。
昼の食堂にて。
「あたしも、チョコ買ってきちゃった。」
リンコだ。
「見たくなかったのでは?」
とアラン。
「だって、これだけ街中で噂になってるんだもん。美味しいって。」
ペロッと舌を出すリンコ。
「ハリーが居なくても、平気なんですか?」
「まあ、なんとかなってる!寂しいけど。」
「リンコさんは、どうやって戦うのですか?」
「これ使ってる!」
そう言って短剣を見せた。
「投げて使うの!」
リンコはブンッと投げる様子を再現する。
「斬属性ですか?突属性なんですか?」
「な、何それ!?」
「ディークさんが教えて下さいました。武器の攻撃の属性です。」
「あたし知らない。」
「!?」
あれはディークのオリジナルの解釈だったのだろうか?
確かに昨日、図書館で武器の属性の本を探したが1冊も見つからなかった。
「あれは、まだ俺の独自研究なんだよ。」
ディークが言った。
「そうなんですか?」
「いろんな動物やモンスターの弱点を調べているうちに
属性という考え方がしっくり来る事がわかってきたんだよ。」
「相性みたいな物もあるんですか?」
「そうだなぁ、人間同士の決闘は禁じられているけれど
基本的に斬は打に強く、打は突に強く、突は斬に強い。」
「へぇ。」
「モンスターの研究している人は多いけれど
どんな武器を使うと倒しやすいのか?」
ディークは続ける。
「研究している人は、まだ居ないから
いつか本にまとめるつもりなんだよ。」
「それが旅の目的なんですか?ディークさんの。」
「そうとも言えるね。」
ベガルがやって来た。
「研究が目的の旅なのか?」
「うん。そうだね。」
ディークがうなずく。
「ベガルさんはどんな目的を持っているのですか?」
アランが尋ねる。
「食っていくため、かな。」
「なるほど。」
「えーと。」
商人広場にて客足が途切れたので売上を確認しているケイト。
「これまで1095セット売れているんだねー。
今日中に1200セットくらい行けそうだなー。」
明日が最終日だ。
目標は全部で1400セットだから、なんとか上回りそうである。
「ふん、ふーん♪」
ケイトはゴキゲンである。
「・・・。あっ、あの人は!?」
アランは、いつものように田園のクエストをこなしていた。
1日で100シルバー、つまり1ゴールドくらいは
確実に稼げるようになっていた。
明後日になれば、またケイトと一緒にクエストが出来る。
1人でも、特に困ることはないが、仲間が居たほうがやはり楽しい。
「チョコレート、美味しいの!」
赤い髪飾りの女の子が声をかけてきた。
「あ、買いに行って下さったんですね。」
「そうなの!おじいさんとおばさんは
行けなかったけど、ちゃんと3つ買ったの!」
「そうなんですか。」
「明日で店は閉めちゃうの?」
チョコ詰め作業は、なかなか大変なのだが、戦わずして安全に稼げる。
しかも、結構な額を。特にベガルは、まだ続けたいと言っていた。
しかしチョコ売りばかりでは、勇者からは遠ざかっていく。
アランは、あまりやる気では無かった。
ディークやランランも寝不足ぎみの生活がキツイらしく
ようやく終わるね、と言い合っていたのを思い出した。
「たぶん、閉めてしまうと思います。」
「そうなの、じゃあ明日も買いに行こうと思うの!」
「どうしてですか?」
「もう手に入らないかもしれないじゃないの。
だったら買っておかないとなの!」
「お客様が、お留守の間に来客がありました。」
夕方アランが宿に帰ると、受付のマリーが言った。
「来客?」
「それが、大きな鎌を持った人物でした。」
「なんですって!?」
「今は、ケタブリル様はお留守である事を伝えましたら
また後で来る、とおっしゃっていました。」
帰ってしまったなら、缶を盗みに来たわけでは無かったのだろうか?
「あ、アラン!これ見てくれよな!!」
食堂の方からベガルが飛び出してきた。
「なんですか?」
ベガルがルビーのついた指輪を持っている。
「とうとう、俺もジェムアイテム持ちになったんだ!」
何があったのだろうか。
「ランランも、ジェムアイテムを貰ったらしいな!
・・・・・・アランは何を貰ったんだ!?」
「・・・?」
何の事か、さっぱりわからない。
ディークが階段を降りてきた。
「例の鎌の人物だよ。」
そう言うディークの耳に、見慣れない十字架のアクセサリーがついている。
ディークによると、その鎌の人物は、チョコレートの缶を欲しがっており
アクセサリーで買い取るつもりらしかった。
持ち主はアランとケイトとディークの3人だが、ベガルとランランにも
アクセサリーを渡したようだ。
「ボクも、これ、貰ったんだ!」
夜、帰ってきたケイトは銀色の髪飾りをつけていた。
「皆さん、貰ったんですね。」
「そう、後はアランだけね。」
ランランはエメラルドのついたブローチをつけてる。
「アランも早くもらえるといいねー。」
ケイトがニコニコしている。
アクセサリー5つと引き換えにチョコレートが無限に出てくる缶。
大体20ゴールドの物を5つで100ゴールドくらいだろうか。
アランには、それが釣り合う価値なのか、よくわからなかった。
わからないけれど、皆がもうアクセサリーを受け取っている以上
自分も受け取るしかない。
1番缶を手放したくなさそうな、ベガルがとても喜んでいるので
まぁ、これで良いのだろう。




