第16話
「雨降っちゃったねー。」
がっかりするケイト。
「今日は、あまり売れないだろうね。」
ディークが言う。
「せっかく、250セット用意したのにな。」
ベガルも残念そうだ。
雨の日でも、出店料はキッチリ取られる。
でも客足は減る。雨は有難くない存在であった。
街には図書館がある。
アランは、雨の降る中クエストをやると、また風邪をひきそうなので
図書館に行ってみることにした。
宿で傘を借り、図書館まで歩いて行く。
暗い黄色の壁の大きな建物。
図書館は公営で、広場の出店料(別名出店税)や冒険税で運営されている。
アランは『ウンディーネ』という本を手に取った。
適当に椅子に腰掛け読み始める。
『水の精霊ウンディーネは、世界の水属性の魔力をコントロールしている。
ウンディーネが仕事をサボると雨が降る、と言われる。』
『ウンディーネを魔族やモンスターと誤解する人も居るが
ウンディーネは精霊である。』
『精霊は普通、人間が触れる事は出来ない。』
アランは伸びをした。
そして席を立ち、世界の精霊について詳しい本を探す。
『7つの属性と精霊』という本があった。
『火・雷・水・土・木・光・闇と7つの属性が世界には存在する。』
『光と闇は特殊な属性で、2つで1つの属性とする考え方もある。』
『火は木と土に強い。雷は火と水に強い。水は土と火に強い。
土は雷と木に強く、木は水と雷に強い。』
『火の精霊はフェニックス。雷の精霊はジン。水の精霊はウンディーネ。
土の精霊はノーム。木の精霊はドライアド。光と闇の精霊はウィスプ。』
本にはそれぞれの精霊の姿を描いた挿絵が載っている。
『人間を作ったのはジンとウンディーネとノームと言われている。』
アランはページをパラパラとめくっていく。
全部じっくり読むのは、宿に帰ってからにしよう。
図書館からの帰り道、クエスト掲示板の前では
純白の氷結谷に向かう一行が居た。
そこにウンディーネの祠が、あるようだった。
供え物をしたら、必ずしも雨が止むというわけでは無いが
特にすることもない冒険者達は多いようだ。
宿に入ると、ハイイロユリが見事に咲いていた。
灰色というより銀色の百合は、とても美しい。
階段を登っていくと1階と2階の間の踊り場で
暗い緑色の髪の人物とすれ違った。
2階か3階に泊まっている人だろうか。
アランは後を追って、あいさつする。
「ミーは、ミック・キャロメル、ネー。」
「2階の方ですか?」
「そう、203号室ネー。」
独特の喋り方をするミック。
手に持った鏡を覗き込み、髪を整えている。
「今日は雨だから、ヘアセットが決まらないネー。
ミーのファンが悲しむヨー。」
「ファン?」
「世界の皆の事ネー。」
どうやらミックはナルシストのようだ。
「・・・・・・。」
アランはさっさと部屋に戻る。
部屋のベッドに腰掛けて『7つの属性と精霊』を開く。
『人間は魔法の書を読んだからといって
すぐに魔法を使いこなせるわけでは無い。』
『反対に魔族には、生まれつき特定の魔法を使える者も居る。』
ケイトは魔法を使う様子は無いが、母親が魔力を持っていたようであるから
植物を育てる魔法ならば、簡単に習得できるのでは無いだろうか?
『植物と魔法。植物は木属性と水属性と土属性が大きく関係している。』
『それから光と闇の属性のバランスも調整しないと植物は育たない。』
『野菜なら自然エネルギー魔法に任せて育てるのが1番美味しい。』
分厚い本を読みながらアランは考えた。
自分には何の魔法が向いているのだろうか?
ページをめくる。
『モンスターと魔法。モンスターは自然エネルギー魔法の
バランスが崩れた時に発生する魔法生物である。』
『純粋な1属性のみを持つモンスターは存在せず
必ず複数の属性を持っている。』
なんだか読み疲れてきたので、ゴロンと横になった。
そのままウトウト眠ってしまった。
トントントン!
ドアをノックする音でアランは目が覚めた。
「・・・アラン!」
ランランの声がする。
「は、はい・・・。」
ムクッと起き上がるアラン。
「もうすぐ夕食の時間だわ、降りてきたら?」
「あ、はい、今行きます。」
ランランの足音が遠くなっていった。
21時。
「今日は100セットくらいしか売れなかったよ。」
ケイトが言った。
「明日は晴れると良いですね。」
とアラン。




