第15話
今日は最初の日と同じ250セット用意した。
4日目なので折り返し地点である。
「ふあー。眠いよー。」
ケイトが目をコシコシしている。
「店番大丈夫ですか?」
とアラン。
「うん、大丈夫。頑張るよ。」
「倒れないで下さいね?」
「アランに言われたくないよー。」
アランは、クエストにさあ行こうと思ったところで
剣を部屋に忘れて来た事に気がついた。
寝不足もあって、集中力が足りないのかもしれない。
急いで宿に戻る。
「わん!」
「あ、ハリー。今日もお願いします。おかしな人物が現れたら
しっかり吠えてくださいね、マリーさんに聞こえるように。」
アランはハリーに話しかける。
「・・・・・・っ!わんわんわん!」
「え?」
アランは振り返る。
「この子、わたくしを見る度に吠えるのですが。」
ペンギンの着ぐるみを着た、オペン・アイチョだった。
「おかしいって言うのは、そういう事じゃ無くて!」
1階に降りるとロビーのテーブルの上に瓶が置いてあった。
アランとケイトが持ち帰ったコーラの入っていた瓶である。
「この瓶は!」
「そうです。ケイトさんがくださいました。」
ローラがバケツに花の蕾を入れて持ってきた。
「何の花ですか?これは。」
「ハイイロユリですね。」
灰色の百合?
なんだか地味な気がするのだが。
「明日には咲くと思います。」
ローラはそう言うと、瓶の中にユリの蕾を挿した。
青い水晶の洞窟周辺でコバルトフラワーを摘んでいるアラン。
ローラに頼まれたのである。
次々と摘んでいき、すぐにそれなりの束になった。
花を摘む前に、この場所のクエストは済ませてあるので帰る事にした。
慣れている冒険者は掲示板でパーティを組み、純白の氷結谷や漆黒の山など
攻略の難しい場所へ行くらしい。
だが、アランはまだ2週間くらいしか経験を積んでいない初心者である。
装備も全然整っていないし、いつになれば、そのような場所へ行けるのだろう?
1人乗り合い馬車の駅で待つ間考え事をしていた。
ひひーん。馬車が来た。
黒い馬が2頭並び車を引いている。
御者が降りてきて乗口を開ける。
「どうぞ。」
席は4つある。2人掛けが2列だ。
前の列に先客の2人組がいたので、アランは後ろに座った。
ひひーん。馬車は走り出した。
前の2人組は、かごバックを持っている。
片方がポニーテールで、もう片方がツインテールだ。
「あと1駅かしら。」
「そうよお姉様。」
姉妹なのか。似ているなと思った。
でもファ姉弟のほうが性別も違うのにもっと似ているなとも思った。
花を届けてしまわないことには両手が使えない。
ローラに届けてからクエストの報告をしよう。
「いらっしゃい!美味しいチョコレートだよ!」
ケイトが大きな声で呼びかけをしている。
「あ、ランラン!」
ランランは商人広場に毒薬の材料を探しに来たついでに様子を見に来たようだ。
「今日はどんな感じなのかしら?」
「昨日と同じような感じだよー。」
「このまま順調に行くといいわね。」
「うん!」
「3箱ください、なの。」
客の赤い髪飾りの女の子が言った。
「15シルバーだよ!どうもありがとう!」
ローラに花を届けると、やはり手が青くなってしまっていた。
前回自分の部屋の洗面所で洗ったら、受付のマリーに注意されたので
1階の浴場で洗うことにした。
早めに風呂に入っておけば早く寝られる。
そう思いながら脱衣所に入る。
「そろそろ、新しい服を買おうかな。」
アランは呟いた。
基本的に皆毎日着替えているのだが
アランには3パターンくらいの着替えしか無かった。
ケイトは、これまで毎日違う服を着ている。
さすがに同じだけ必要だとは思わないが、もう少し替えがあっても良いだろう。
「おおう、アランか?」
「タスさん。」
浴場から出てきたばかりのタス。びしょびしょである。
「今は拙者だけの貸し切り状態だった。」
「そうなんですね。」
アランは浴場へ入った。
最初見た時は、これが24時間ほぼいつでも
使えるなんて、すごいと思った大きな風呂。
とりあえず手を洗わなくては。
適当に鏡のついた洗い場の椅子に座る。
こういう施設の水は、水属性の魔法が使われている。
無限に水が湧き出るので、水不足の心配は要らない。
光熱費は魔法で浮くし宿を経営するのも儲かるのかもしれない。
魔法を代わりにかける、代理業者が居るので、それを利用するのだ。
1つの魔法を覚えるだけで大変なので
それぞれ専門の魔法技師が居るのだという。
例えば火炎の書を買って、火炎の魔法を覚えたからといって
単純に宿の暖房設備を作ることは出来ない。熱風の魔法を使う必要がある。
この世界の魔法には、属性があり
火、雷、水、土、木、光、闇などの要素が複雑に絡み合っているのだそうだ。
火炎の魔法は純粋な火属性だが、熱風の魔法は火属性と木属性が関係している。
・・・脱衣所でタスから魔法に関する話を聞いていたので、体が冷えてしまった。
早く湯に浸かろう。
「お、アランが居た!」
アフロヘアのロッキー・エフモンドが浴場に入ってきた。
せっかく貸し切りだったが、仕方がない。
「おっと、アフロ外すの忘れてたよ!」
ズポッとアフロを外すロッキー。
カツラだったらしい。
「おいらの秘密を見たな。」
「驚きました。」
「この事は皆には内緒だよ!」
「あ、はい。」
なんだか気まずい。
やっぱり早く出ることにしよう。




