神器の中身
次の日。
俺とリーナは。
再び。
街の外へ来ていた。
目的は。
一つ。
俺の神器。
その中にある。
謎の空洞を。
調べるためだ。
「じゃあ」
「もう一回」
「お願いしていい?」
「……はい」
俺は。
右手を前へ出す。
意識を集中する。
青白い光が。
空間へ集まる。
空気が。
歪む。
――ズンッ。
巨大な神器が。
俺の手に現れた。
相変わらず。
でかい。
黒を基調とした本体。
金色の装飾。
青白く光る。
見たこともない文字。
そして。
銃口。
前の世界にあった。
銃という武器。
それによく似た。
伝説級の神器。
なのに。
撃てない。
「……触ります」
「うん」
俺が。
神器を支える。
リーナが。
そっと手を置いた。
――キィン。
「……!」
神器を走る。
青白い光。
やっぱり。
反応する。
俺が触っているだけでは。
こんなこと。
起きない。
リーナが。
触れた時だけだ。
「どう?」
「……待ってください」
目を閉じる。
リーナの指が。
ゆっくり。
神器の表面を動いていく。
「昨日より」
「分かる?」
「……少し」
「中に」
「道みたいなものが」
「たくさんあります」
「道?」
「はい」
リーナが。
少し考える。
「たぶん」
「魔力が通るための」
「道です」
神器の中を。
魔力が通る。
考えてみれば。
不思議じゃない。
魔法の武器にも。
魔力を流すための。
仕組みがあるらしい。
だけど。
神器の中にあるものは。
当然。
俺には見えない。
「どんな感じ?」
「……難しいです」
「いっぱいあるので」
「こっちから来て」
「こっちに行って」
「また分かれて」
「それが」
「何個も」
「何個も……」
リーナの眉間に。
皺が寄る。
「大丈夫?」
「……はい」
「無理するなよ」
「大丈夫です」
そう言って。
また。
指を動かす。
「ここは」
「繋がってる」
「ここも」
「こっちも……」
少しずつ。
神器の後ろへ。
そして。
ある場所で。
止まった。
「……ここ」
「ん?」
リーナが。
目を開ける。
「ここだけ」
「変です」
「また?」
「はい」
昨日。
感じたという場所。
神器の。
中央より。
少し後ろ。
外から見れば。
ただの黒い装甲だ。
「何がある?」
「……何も」
「何も?」
「はい」
リーナが。
首を傾げる。
「周りには」
「いっぱいあるのに」
「ここだけ」
「空っぽです」
「空洞ってこと?」
「……たぶん」
俺は。
神器を見る。
何度見ても。
そんな場所があるようには。
見えない。
継ぎ目も。
蓋も。
何もない。
「ここ?」
俺が。
指で触れる。
「もう少し」
「右です」
「ここ?」
「下」
「……ここ?」
「行きすぎです」
「難しいな!」
「私に言われても……」
「ごめん」
リーナが。
ほんの少し。
笑う。
「ここです」
今度は。
リーナが。
俺の指を。
正しい場所へ誘導する。
「ここ?」
「はい」
押してみる。
何もない。
引いてみる。
当然。
何もない。
「……開かないな」
「開くんですか?」
「いや」
「分からない」
「でも」
空洞がある。
しかも。
神器の中で。
そこだけ。
不自然に。
何もない。
「何か」
「ありそうなんだけどな」
俺は。
もう一度。
押してみる。
――無反応。
「レンさん」
「ん?」
「魔力」
「流してもらえますか?」
「今?」
「はい」
リーナが。
神器に触れたまま。
目を閉じる。
「私が」
「見てみます」
「……分かった」
俺は。
神器へ。
魔力を流す。
いつも。
何度もやったこと。
当然。
何も起きない。
「もう少し」
リーナが言う。
「強くしてください」
「こう?」
「……はい」
「そのまま」
俺には。
何も分からない。
ただ。
魔力を。
流しているだけだ。
その間も。
リーナの指が。
神器の表面を。
ゆっくりと動いていく。
「……こっち」
小さく。
呟く。
何かを。
探している。
俺には見えない。
神器の中の。
魔力の道を。
「もう少し」
「強く?」
「はい」
「分かった」
さらに。
魔力を流した。
その瞬間。
――カチッ。
「……え?」
小さな音。
俺とリーナが。
同時に。
神器を見る。
「今……」
「鳴ったよな?」
「はい」
いつもの。
引き金の音とは。
少し違う。
次の瞬間。
――キィン。
神器の表面に。
一本の。
青白い線が走った。
「レンさん」
「見えてる」
今まで。
何もなかった場所。
そこに。
細い。
継ぎ目が。
浮かび上がる。
そして。
――ガコン。
黒い装甲の一部が。
わずかに浮いた。
「開いた……?」
俺が。
恐る恐る。
手をかける。
ゆっくり。
横へ動かす。
――カシュッ。
神器の側面が。
開いた。
「……」
「……」
二人とも。
言葉が出なかった。
一年以上。
俺は。
この神器を。
調べてきた。
毎日のように。
見て。
触って。
魔力を流して。
何度も。
引き金を引いた。
それなのに。
知らなかった。
こんな場所が。
開くことすら。
「レンさん」
「……うん」
「中」
「見えます」
初めて。
露わになった。
神器の内部。
外側とは。
まるで違う。
黒い素材の中を。
青白い光が。
細い線となって。
いくつも走っている。
まるで。
血管みたいに。
複雑に。
絡み合い。
繋がっている。
そして。
その中心。
「……これ」
俺は。
目を細める。
そこに。
あった。
周囲を。
青白い光に囲まれた。
細長い。
円筒状の空間。
何も。
入っていない。
完全な。
空洞。
リーナが。
その場所を見つめる。
そして。
ゆっくり。
指を差した。
「ここです」
「え?」
「昨日から」
「ずっと」
「変だと思ってた場所」
「……」
「この中です」
俺は。
円筒状の空洞を見る。
神器の側面が。
わざわざ。
開く。
その奥に。
何かが収まりそうな。
空っぽの空間。
銃。
俺の頭に。
前の世界の。
記憶が浮かぶ。
「……これ」
一つの。
可能性が。
頭をよぎった。
でも。
まだ。
確信はない。
俺は。
空洞から。
目を離せなかった。
神器の中に。
初めて見つけた。
明確な。
手掛かり。
撃てない理由は。
もしかすると。
ずっと。
ここにあったのかもしれない。




