次に向かう場所
朝。
目を。
覚ます。
「……」
しばらく。
天井を。
見ていた。
昨日。
湖の底で。
見たもの。
夜。
三人で。
話したこと。
寝れば。
少しくらい。
頭の中が。
整理されるかと。
思った。
でも。
そんなことは。
なかった。
「……分からん」
分からないものは。
分からない。
前の。
神銃士。
災厄。
七神器。
第二接続者。
最後の一撃。
そして。
古い文字。
手掛かりは。
増えた。
なのに。
次に。
何をすればいいのか。
分からない。
「レン!」
下から。
母さんの。
声。
「起きてるの!?」
「起きてる!」
「なら」
「ご飯!」
「分かった!」
考えるのは。
その後だ。
◇
朝食を。
食べる。
向かいには。
リーナ。
昨日。
湖に。
落ちたせいか。
いつもより。
少し。
ゆっくり。
食べている。
俺も。
多分。
同じだ。
身体の。
あちこちが。
重い。
「それで」
母さんが。
俺を見る。
「昨日の話」
「……」
忘れて。
なかったか。
「何ですか?」
リーナが。
母さんを見る。
「レンが」
「昨日」
「湖に落ちた理由」
「ちゃんと」
「話すって」
「言ったのよ」
「あ……」
リーナが。
俺を見る。
目を。
逸らした。
「リーナ?」
「何でも」
「ありません」
「今」
「絶対」
「思い出しただろ」
「何をですか?」
「俺が」
「母さんに」
「説明するって」
「言ってたこと」
「……」
「忘れてたな?」
「少しだけ」
「お前もかよ」
「レン」
母さんの。
声。
「はい」
逃げられない。
俺は。
昨日。
湖で。
起きたことを。
話した。
全部。
というわけには。
いかなかった。
湖の中央で。
渦に。
巻き込まれたこと。
気づいたら。
湖の底に。
いたこと。
そこに。
古い街が。
あったこと。
そして。
前の。
神銃士に。
関係する。
遺跡を。
見つけたこと。
母さんは。
途中から。
何も。
言わなくなった。
最後まで。
聞いて。
「……それで」
俺を見る。
「また」
「行くの?」
「いや」
俺は。
すぐに。
答える。
「少なくとも」
「今は」
「行かない」
「本当?」
「ああ」
封印は。
正常だった。
もう一度。
あそこへ。
潜ったところで。
今の俺たちに。
できることは。
ほとんど。
ない。
それより。
調べるべきことが。
ある。
「ただ」
「分からないことが」
「増えた」
「……そう」
母さんが。
少し。
心配そうな。
顔をする。
俺は。
それ以上。
何も。
言わなかった。
災厄。
そのことまでは。
まだ。
話さなくていい。
封印は。
保たれている。
今。
不安にさせる。
必要はない。
「ごちそうさま」
俺は。
立ち上がる。
「どこ行くの?」
「ガルドのところ」
「また?」
「ちょっと」
「聞きたいことがある」
リーナも。
食事を。
終える。
「私も」
「行きます」
「ああ」
俺は。
少し。
考える。
「その前に」
「セリアにも」
「声かけるか」
「はい」
昨日。
湖の底へ。
行ったのは。
三人だ。
だったら。
話すのも。
三人の方がいい。
◇
家を。
出る。
朝の。
街。
昨日より。
少しだけ。
身体が。
軽い。
リーナと。
並んで。
歩く。
向かうのは。
ガルドの店。
ではなく。
その前に。
セリアの家。
見慣れた。
道。
子供の頃。
何度も。
通った。
道。
「この辺り」
リーナが。
周囲を見る。
「セリアさんの」
「家が」
「あるんですね」
「ああ」
「もうすぐ」
少し。
歩く。
見慣れた。
家。
その前で。
足を止める。
「ここ」
「そうなんですね」
扉を。
叩こうと。
手を上げる。
その前に。
――ガチャ。
「……あ」
扉が。
開いた。
「レン?」
セリアが。
いた。
「何してんの?」
「それ」
「こっちの」
「台詞だろ」
「私の家だけど」
「……」
確かに。
「おはようございます」
リーナが。
頭を下げる。
「おはよう」
セリアが。
リーナを見る。
それから。
俺を見る。
「で?」
「何?」
「朝から」
「二人で」
「何しに来たの?」
「ガルドのところ」
「行こうと思って」
「ガルドさん?」
「ああ」
「昨日のこと」
「相談してみようと」
セリアが。
少し。
考える。
「湖の?」
「ああ」
「分かった」
即答。
「ちょっと」
「待ってて」
「今から?」
「行くんでしょ?」
「行くけど」
「じゃあ」
「待ってて」
セリアが。
家の中へ。
戻る。
少しして。
剣を。
腰に。
下げて。
出てきた。
「お待たせ」
「早いな」
「だって」
「準備」
「ほとんど」
「できてたから」
「どっか」
「行くつもりだったのか?」
「別に」
「ちょっと」
「外に」
「出ようと」
「思ってただけ」
「ふーん」
「何?」
「何でもない」
「じゃあ」
セリアが。
俺たちの。
横へ並ぶ。
「行こ」
結局。
今日も。
三人だ。
◇
――カンッ。
――カンッ。
昨日と。
同じ。
金属を。
叩く音。
店へ。
入る。
――カラン。
「また」
「お前らか」
ガルドが。
顔も。
上げずに。
言った。
「客に」
「言う言葉じゃ」
「ないだろ」
「客なら」
「何か買え」
「……」
「何だ」
「買わねえのか」
「今日は」
「相談」
「帰れ」
「早い!」
セリアが。
笑う。
「ガルドさん」
「相変わらずだね」
「お前も」
「昨日来ただろ」
「昨日は昨日」
「今日は今日」
「意味が」
「分からん」
ガルドが。
金槌を。
置いた。
「で」
「何だ」
「昨日」
「湖を」
「調べるって」
「言っただろ」
「ああ」
ガルドの。
顔が。
少し。
変わる。
「何か」
「あったのか?」
「……あった」
「何が」
俺は。
少し。
迷った。
でも。
ガルドには。
話していい。
そう。
思った。
「湖の底に」
「街があった」
「……は?」
ガルドが。
止まる。
「街」
「建物が」
「残ってた」
「待て」
ガルドが。
手を上げる。
「お前」
「湖を」
「調べに行ったんだよな?」
「ああ」
「何で」
「底まで」
「行ってんだ」
「それは」
「色々」
「あって」
「お前の」
「色々は」
「ろくなことが」
「ねえな」
否定。
できない。
「それで」
ガルドが。
腕を組む。
「本当に」
「街が」
「あったのか?」
「ああ」
「私も」
「見たよ」
セリアが。
言う。
「私もです」
リーナも。
頷く。
ガルドが。
三人を見る。
さすがに。
冗談じゃないと。
分かったらしい。
「……続けろ」
俺は。
話した。
崩れた。
街。
神銃で。
撃ったような。
痕跡。
巨大な。
爪痕。
その奥に。
あった。
遺跡。
そして。
前の。
神銃士が。
残した。
記録。
ただ。
災厄の。
封印については。
言わなかった。
今は。
必要ない。
「前の」
「神銃士……」
ガルドが。
呟く。
「ああ」
「二百年以上」
「前の人間だ」
「声が」
「残ってた」
「声?」
「説明すると」
「長い」
「もう」
「十分長えよ」
「それも」
「そうだな」
ガルドが。
額へ。
手を当てる。
「お前ら」
「帰ってくるたびに」
「話が」
「でかくなってねえか?」
「俺に」
「言われても」
「知らねえよ」
「俺も」
「知らないよ」
少し。
黙る。
それから。
俺は。
本題へ。
入った。
「その遺跡に」
「文字が」
「あった」
「文字?」
「ああ」
「見たことない」
「やつ」
「王国の」
「文字じゃない」
ガルドが。
俺を見る。
「読めなかったのか?」
「全然」
「私も」
リーナが。
言う。
「読むことは」
「できませんでした」
「ただ」
「以前にも」
「似たものを」
「見たことが」
「あります」
ガルドの。
視線が。
リーナへ。
向く。
「どこでだ?」
「アルトです」
「アルト?」
「地下の」
「古い施設に」
「同じような」
「文字が」
「残っていました」
「……」
ガルドが。
黙った。
何かを。
考えている。
「知ってるのか?」
「いや」
「俺は」
「読めねえ」
「……だよな」
「何だ」
「その反応」
「ちょっと」
「期待した」
「鍛冶屋を」
「何だと」
「思ってんだ」
「何でも」
「知ってそう」
「知らねえよ」
終わった。
やっぱり。
そう簡単には。
いかない。
そう。
思った時。
「ただ」
ガルドが。
言った。
「?」
「そういうもんを」
「調べてる連中なら」
「いる」
「……え?」
俺は。
ガルドを見る。
「本当か?」
「ああ」
「どこ?」
セリアが。
すぐに。
聞く。
ガルドが。
少し。
考えて。
答える。
「東だ」
「東?」
「ああ」
「東方」
聞いたことは。
ある。
この国から。
さらに。
東。
いくつもの。
都市が。
集まっている。
地域。
でも。
俺は。
行ったことがない。
「昔」
ガルドが。
話し始める。
「東から来た」
「職人と」
「仕事をしたことがある」
「職人?」
「ああ」
「変な奴でな」
「武器より」
「古い道具だの」
「遺跡から」
「出てきたもんだの」
「そういう話ばっかり」
「してやがった」
「それで?」
「東には」
「古い術式や」
「文字を」
「調べてる連中が」
「いるらしい」
俺と。
セリアが。
顔を見合わせる。
リーナも。
ガルドを。
見ている。
「古い」
「術式……」
リーナが。
呟く。
「ああ」
「俺は」
「興味なかったから」
「詳しくは」
「聞いてねえ」
「場所は?」
俺が。
聞く。
「そこまでは」
「知らん」
「……」
「何だ」
「その顔」
「いや」
「あとちょっと」
「だったのに」
「十分だろうが」
確かに。
そうだ。
昨日まで。
俺たちは。
次に。
どこへ行けば。
いいのかすら。
分からなかった。
でも。
今。
一つ。
出てきた。
東方。
そこなら。
湖底で。
見つけた。
文字について。
何か。
分かるかもしれない。
「行くの?」
セリアが。
俺を見る。
「……」
すぐには。
答えなかった。
東方。
遠い。
ここへ。
帰ってきたばかりだ。
父さんと。
母さん。
ガルド。
故郷。
それに。
湖。
この下に。
災厄が。
封じられていると。
知った。
ばかり。
できるなら。
ここに。
いたい。
そういう。
気持ちも。
ある。
でも。
ここにいても。
分からない。
封印は。
今。
保たれている。
だったら。
その間に。
知らないと。
いけない。
何が。
封じられているのか。
神銃が。
何のために。
作られたのか。
そして。
第二接続者が。
何なのか。
「……行く」
俺は。
答えた。
「東へ」
セリアが。
少し。
笑う。
「だと思った」
「何だよ」
「別に」
リーナが。
俺を見る。
「私も」
「行きます」
「……ああ」
当然みたいに。
言われて。
俺も。
当然みたいに。
答えた。
ガルドが。
大きく。
ため息を。
つく。
「お前ら」
「帰ってきたと」
「思ったら」
「もう」
「次の話か」
「まだ」
「今日」
「出るとは」
「言ってないだろ」
「そういう」
「問題じゃねえ」
ガルドが。
作業台へ。
戻る。
「まあ」
「行くなら」
「準備くらい」
「ちゃんとしろ」
「ああ」
「舟みたいに」
「なくすなよ」
「……」
何で。
知ってる?
「ガルド」
「何で」
「舟のこと」
「知ってんだ?」
「朝から」
「漁師が」
「怒鳴ってたぞ」
「……」
セリアが。
顔を。
逸らす。
肩が。
震えている。
「お前」
「笑ってるだろ」
「笑ってない」
「昨日も」
「同じこと」
「言ったぞ」
「知らない」
リーナも。
口元を。
押さえている。
「リーナ」
「すみません」
「またかよ」
ガルドが。
眉間を。
押さえる。
「……何したんだ」
「聞かない方が」
「いいと思う」
「お前が」
「言うな」
◇
店を。
出る。
昼の。
光。
人の。
声。
昨日までと。
何も。
変わらない。
故郷の。
街。
でも。
俺たちには。
一つ。
変わったものが。
ある。
「東方か」
俺が。
呟く。
「遠いね」
セリアが。
言う。
「行ったこと」
「あるのか?」
「ない」
「じゃあ」
「何で」
「遠いって」
「分かるんだよ」
「東方なんだから」
「東でしょ?」
「説明に」
「なってない」
「レンさん」
リーナが。
小さく。
笑う。
「何?」
「少し」
「楽しそうです」
「俺が?」
「はい」
「気のせいだろ」
でも。
否定しながら。
少しだけ。
分かっていた。
分からないことは。
まだ。
山ほどある。
むしろ。
昨日。
増えた。
それでも。
次に。
進む方向だけは。
見えた。
東方。
古い。
文字。
古代の。
術式。
そこへ。
行けば。
何かが。
分かるかもしれない。
俺は。
街の。
向こうを見る。
まだ。
見えない。
東の。
空。
そこに。
何が。
待っているのか。
今は。
知らない。
でも。
少なくとも。
次に。
向かう場所は。
決まった。
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