月夜の湖
夕食を。
食べた。
腹が。
いっぱいに。
なると。
一気に。
疲れが。
出てきた。
部屋へ。
戻る。
「少しだけ」
「横になるか」
ベッドへ。
倒れる。
目を。
閉じる。
頭の中に。
浮かぶ。
青白い。
光。
崩れた。
街。
巨大な。
爪痕。
壁を。
貫いた。
神銃の跡。
そして。
声。
『第二接続者を』
『俺には』
『撃てなかった』
『最後の』
『一発を』
考えないと。
そう。
思っていた。
はずなのに。
意識は。
そのまま。
落ちていった。
◇
目を。
開ける。
「……」
暗い。
一瞬。
何時なのか。
分からなかった。
身体を。
起こす。
窓の。
外を見る。
夜。
月が。
出ている。
「寝てたのか……」
思ったより。
長く。
寝ていたらしい。
身体は。
少し。
楽になった。
でも。
頭の中は。
全然。
変わっていない。
災厄。
七神器。
最後の一撃。
第二接続者。
そして。
あの。
湖。
「……」
なんとなく。
このまま。
部屋に。
いる気には。
なれなかった。
もう一度。
湖を。
見たかった。
理由は。
自分でも。
よく分からない。
ただ。
今までと。
同じ湖を。
外から。
見てみたかった。
俺は。
部屋を。
出る。
階段を。
降りる。
静かな。
家の中。
そのまま。
玄関へ。
向かう。
扉を。
開けた。
「……あ」
「え?」
そこに。
リーナが。
いた。
ちょうど。
外へ。
出ようと。
していたらしい。
「リーナ?」
「レンさん?」
二人で。
顔を見る。
「どこ行くんだ?」
「……少し」
リーナが。
言いにくそうに。
間を置く。
「湖へ」
「……」
「レンさんは?」
「俺も」
「湖」
「……」
少し。
沈黙。
それから。
リーナが。
小さく。
笑った。
「同じですね」
「みたいだな」
考えていることは。
多分。
同じだ。
「じゃあ」
俺は。
言う。
「一緒に」
「行くか」
「はい」
二人で。
家を。
出た。
◇
夜の。
街を。
歩く。
静かだ。
昼間とは。
違う。
人通りも。
ほとんど。
ない。
やがて。
湖が。
見えてくる。
月明かり。
静かな。
水面。
昼間。
あれだけ。
大きな。
渦が。
できていた。
場所。
今は。
何もない。
「……全然」
「違って見えるな」
思わず。
呟いた。
「はい」
リーナも。
湖を見る。
この下に。
街がある。
さらに。
その下に。
災厄が。
眠っている。
かもしれない。
もし。
封印が。
壊れたら。
この街は。
どうなる?
父さん。
母さん。
ガルド。
街の。
人たち。
頭に。
浮かぶ。
でも。
同時に。
あの文字も。
思い出す。
【封印機構――正常】
【封印位相――安定】
今は。
大丈夫。
少なくとも。
あの遺跡は。
そう。
示していた。
「遅い」
「……え?」
声。
聞き覚えが。
ある。
少し。
離れた。
湖畔。
そこに。
人影が。
あった。
「……セリア?」
「誰だと」
「思ったの?」
セリアが。
こっちへ。
歩いてくる。
「何で」
「いるんだよ」
「待ってたから」
「……待ってた?」
「ああ」
セリアが。
当たり前みたいに。
頷く。
「誰を?」
「レン」
「何で?」
「来ると」
「思ったから」
「……」
俺は。
黙る。
「何で」
「分かったんだよ」
「だって」
セリアが。
湖を見る。
「レンも」
「気になってるでしょ」
「それは」
「そうだけど」
「私も」
「気になって」
「来たんだけど」
セリアが。
俺を見る。
「ここにいたら」
「そのうち」
「レンも来るかなって」
「……それで」
「待ってたのか?」
「うん」
「どのくらい?」
「ちょっと」
「ちょっとって」
「ちょっと」
「……」
昔から。
こういうところが。
ある。
俺より。
俺の行動を。
読んでくる。
時が。
ある。
「リーナも」
セリアが。
隣を見る。
「一緒だったんだ」
「家を」
「出るところで」
「会ったんだよ」
「私も」
「湖が」
「気になっていたので」
リーナが。
答える。
「結局」
セリアが。
少し。
笑う。
「三人とも」
「同じじゃん」
「……みたいだな」
三人で。
湖を見る。
月明かりだけが。
静かな。
水面を。
照らしている。
しばらく。
誰も。
喋らなかった。
最初に。
口を開いたのは。
リーナだった。
「第二接続者」
「……」
「やっぱり」
「気になるか?」
「はい」
リーナが。
自分の。
手を見る。
「私が」
「神銃に」
「触れられることと」
「関係が」
「あるんでしょうか」
「分からない」
俺は。
答える。
「でも」
「関係ないって」
「言い切るのも」
「無理だと思う」
「……はい」
少し。
間が空く。
リーナが。
湖を。
見たまま。
口を開く。
「私が」
「第二接続者」
「なのでしょうか」
「……」
俺は。
すぐには。
答えられなかった。
前の。
神銃士にも。
分からなかった。
第二接続者。
それが。
何なのか。
誰なのか。
どうすれば。
見つけられるのか。
でも。
思い当たる。
人間は。
一人しかいない。
俺以外で。
神銃に。
触れられる。
神器の。
内部へ。
繋がることが。
できる。
人間。
リーナ。
「分からない」
俺は。
答えた。
「まだ」
「分からない」
「……はい」
俺は。
少し。
考える。
それから。
リーナを見る。
「でも」
「もし」
「お前が」
「第二接続者だったとして」
「……」
「それで」
「お前が」
「別の誰かに」
「なるわけじゃ」
「ないだろ」
「……え?」
リーナが。
俺を見る。
「第二接続者だから」
「一緒にいるわけじゃない」
「今まで」
「一緒に」
「戦ってきたのは」
「お前だからだ」
「……」
「俺たちにとって」
「お前は」
「リーナだろ」
リーナが。
黙る。
俯く。
少し。
長い。
沈黙。
「レンさんは」
「何?」
「そういうこと」
「急に」
「言いますよね」
「……何だよ」
「いえ」
リーナが。
顔を。
上げる。
少しだけ。
笑っていた。
「ありがとうございます」
「……おう」
何となく。
恥ずかしくなって。
俺は。
湖へ。
顔を戻した。
「……何か」
セリアが。
横から。
呟く。
「何だよ」
「別に」
「今」
「何か」
「言おうとしただろ」
「言ってない」
「絶対」
「言おうとした」
「しつこい」
「蹴るよ?」
「すみません」
リーナが。
小さく。
笑う。
俺も。
少しだけ。
笑った。
こんな。
状況なのに。
不思議と。
少し。
肩の力が。
抜けた。
でも。
答えが。
出たわけじゃない。
第二接続者。
前の。
神銃士。
災厄。
神銃の。
最後の一撃。
それだけじゃない。
あの。
遺跡。
壁に。
刻まれていた。
七つの。
神器。
そして。
読めなかった。
古い文字。
俺たちは。
何も。
知らない。
「王都に」
「戻る?」
セリアが。
聞いた。
「……」
考える。
王都の。
記録院。
前の。
神銃士について。
調べた。
場所。
でも。
あそこには。
ほとんど。
何も。
残っていなかった。
むしろ。
記録が。
消えていた。
「同じところを」
「調べても」
「多分」
「出てこない」
「じゃあ」
「どうするの?」
「……分からない」
「また?」
「仕方ないだろ」
本当に。
分からない。
手掛かりは。
増えた。
でも。
その。
調べ方が。
分からない。
俺は。
湖を見る。
湖底で。
見た。
古い。
文字。
アルトの。
地下でも。
似たものを。
見た。
リーナでも。
読めなかった。
あれが。
読めれば。
何か。
分かるのかもしれない。
でも。
誰に。
聞けばいい?
どこへ。
行けばいい?
それすら。
今は。
分からない。
「……まあ」
セリアが。
伸びをする。
「今日は」
「もう」
「いいんじゃない?」
「何が?」
「考えるの」
「……」
「湖の底まで」
「行って」
「泳いで」
「帰ってきたんだよ?」
「それは」
「そうだけど」
「少しくらい」
「休んでも」
「いいでしょ」
リーナも。
頷く。
「私も」
「そう思います」
「……そうだな」
俺は。
もう一度。
湖を見る。
月が。
水面に。
映っている。
あんなものが。
この下に。
あるなんて。
外からじゃ。
分からない。
「帰るか」
「うん」
「はい」
三人で。
湖に。
背を向ける。
しばらく。
夜の。
街を。
歩く。
やがて。
分かれ道。
セリアが。
足を止めた。
「じゃあ」
「私」
「こっち」
「ああ」
「おやすみ」
「うん」
セリアが。
リーナを見る。
「リーナも」
「おやすみ」
「おやすみなさい」
それから。
俺を見る。
「レン」
「何?」
「今日は」
「もう」
「寝なよ」
「さっきまで」
「寝てたけどな」
「そういう」
「意味じゃない」
「分かってるよ」
「ならいい」
セリアが。
少し。
笑う。
「じゃあ」
「また明日」
「ああ」
「また明日」
セリアが。
手を。
軽く振って。
歩いていく。
その背中が。
夜の街へ。
消えていく。
「俺たちも」
「帰るか」
「はい」
リーナと。
二人で。
歩き出す。
でも。
一度だけ。
振り返った。
月明かりに。
照らされた。
湖。
何も。
起きていない。
静かな。
水面。
その。
遥か下に。
二百年以上。
眠り続けている。
ものがある。
分からないことは。
山ほど。
ある。
前の。
神銃士。
災厄。
七神器。
第二接続者。
そして。
湖底で。
見つけた。
古い文字。
手掛かりは。
ある。
ただ。
次に。
どこへ。
向かえばいいのか。
それだけが。
まだ。
分からない。
俺は。
前を向いた。
今は。
まだ。
答えが。
見えなくても。
一つずつ。
探せばいい。
俺と。
リーナは。
静かな。
街へ。
戻っていった。
背後では。
湖だけが。
何も。
知らないように。
月を。
映していた。
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