沈黙
神銃の。
青白い。
光を。
追う。
俺たちが。
来た道。
崩れた。
遺跡の中を。
戻っていく。
誰も。
しばらく。
喋らなかった。
さっき。
聞いた。
声。
二百年以上。
前。
ここで。
戦った。
神銃士。
災厄。
七神器。
最後の一撃。
第二接続者。
そして。
封印。
頭の中で。
いくつもの。
言葉が。
繰り返されている。
「……レン」
前を。
歩いていた。
セリアが。
止まった。
「何?」
セリアが。
足元を。
見る。
深く。
抉られた。
三本の。
溝。
来る時にも。
見た。
巨大な。
爪痕。
「これ」
セリアが。
呟く。
「災厄の」
「跡なのかな」
「……多分」
断言は。
できない。
でも。
さっきまでとは。
見え方が。
違う。
ここで。
何かが。
戦った。
それは。
分かっていた。
でも。
今は。
その。
何かに。
名前がある。
災厄。
前の。
神銃士たちが。
倒すことのできなかった。
何か。
俺は。
爪痕の。
先を見る。
崩れた。
街。
その向こう。
壁に。
大きな。
穴。
一直線に。
何枚もの。
壁を。
貫いている。
神銃の。
跡。
俺は。
手の中の。
神器を見る。
「……」
同じ。
神銃。
二百年以上。
前。
あの男も。
これを。
持っていた。
ここで。
撃った。
何度も。
何度も。
それでも。
倒せなかった。
「レンさん?」
リーナの。
声。
「いや」
俺は。
首を振る。
「行こう」
今は。
戻る方が。
先だ。
◇
崩れた。
街を。
進む。
神銃の。
光は。
消えない。
むしろ。
少しずつ。
強くなっている。
「合ってる」
「みたいですね」
「ああ」
やがて。
見覚えのある。
場所へ。
戻ってきた。
石畳。
崩れた。
建物。
そして。
俺たちが。
最初に。
目を覚ました。
場所。
「ここ」
セリアが。
周囲を見る。
「最初のところだよね」
「ああ」
「じゃあ」
セリアが。
上を見る。
俺も。
つられて。
見上げる。
暗い。
湖の水。
俺たちの。
頭上。
巨大な。
半球を。
覆うように。
広がっている。
「ここから」
「どうやって」
「戻るの?」
「……」
「レン?」
「俺に」
「聞くなよ」
「だって」
「神銃が」
「案内したんでしょ?」
「ここまではな」
「じゃあ」
「その神銃に」
「聞いて」
「喋ると」
「思ってるのか?」
「さっき」
「喋ってたじゃん」
「あれは」
「神銃じゃない」
「そうだっけ?」
「そうだよ」
リーナが。
小さく。
笑った。
「何だよ」
「いえ」
「少し」
「安心しました」
「何が?」
「いつもの」
「二人なので」
「……」
セリアが。
俺を見る。
俺も。
セリアを見る。
「まあ」
セリアが。
言う。
「確かに」
「さっきまで」
「すごい話」
「聞いてたからね」
「そうだな」
俺も。
もう一度。
頭上を見る。
災厄。
第二接続者。
考えたいことは。
いくらでもある。
でも。
まず。
帰らないと。
どうにもならない。
「レンさん」
リーナが。
神銃を。
指した。
「光が」
見る。
さっきより。
強い。
青白い。
光。
古い文字が。
一つ。
また。
一つ。
浮かび上がっている。
「何か」
「あるのか?」
神銃を。
動かす。
右。
少し。
弱くなる。
左。
同じ。
後ろ。
弱い。
そして。
上。
――……ン。
光が。
一気に。
強くなった。
「上?」
セリアも。
見上げる。
「ああ」
間違いない。
神銃が。
反応している。
頭上。
湖の。
水。
「まさか」
セリアが。
嫌そうな。
顔をする。
「また」
「水の中?」
「……多分」
「多分って」
「他に」
「思いつくか?」
「ないけど」
「じゃあ」
「仕方ないだろ」
「レンさん」
リーナが。
上を。
見たまま。
呟いた。
「水が」
「動いてます」
「え?」
目を。
凝らす。
暗い。
水。
最初は。
分からなかった。
でも。
確かに。
動いている。
俺たちの。
真上。
水と。
空間の。
境目。
そこだけ。
ゆっくり。
円を。
描き始めている。
「……また」
「渦?」
セリアが。
呟いた。
――ゴウン。
神銃が。
震えた。
同時に。
地面も。
僅かに。
揺れる。
「始まった……?」
俺は。
神銃を。
握り直す。
でも。
次の瞬間。
――ズン。
「……っ?」
足元。
違う。
今のは。
神銃じゃない。
もっと。
低い。
重い。
音。
地面の。
さらに。
下。
そこから。
響いた。
「今の……」
セリアが。
俺を見る。
「聞こえた」
リーナも。
足元を。
見ている。
「下から……」
「ああ」
三人とも。
動かない。
静かに。
なる。
気のせい。
だったのか。
そう。
思いかけた。
その時。
――ズン。
「……!」
今度は。
はっきり。
分かった。
地面が。
揺れた。
小石が。
僅かに。
跳ねる。
俺は。
足元を見る。
この。
さらに。
下。
頭の中に。
さっきの。
声が。
蘇る。
『倒せないなら』
『せめて』
『止めるしか』
『なかった』
そして。
『この地ごと――』
『――封じ――』
「……レン」
セリアの。
声が。
さっきまでより。
小さい。
「これって」
「……分からない」
答える。
でも。
俺も。
同じことを。
考えている。
もし。
この下に。
災厄が。
封じられているなら。
今のは。
何だ?
――ズ……ン。
もう一度。
今度は。
小さい。
遠く。
深い。
場所から。
響くような。
振動。
そして。
止まった。
「……」
静かだ。
何も。
起きない。
「止まった?」
セリアが。
聞く。
「ああ」
多分。
「レンさん」
リーナが。
俺を見る。
「今のは……」
「分からない」
俺は。
首を振る。
「分からないけど」
足元を見る。
「長居は」
「しない方が」
「よさそうだ」
二人とも。
頷いた。
その時。
――ゴウン。
「……?」
今度は。
後ろ。
遺跡の。
奥から。
音が。
響いた。
俺たちは。
同時に。
振り返る。
「今の」
「さっきのと」
「違うよね?」
「ああ」
地面の。
下からじゃない。
俺たちが。
さっきまで。
いた。
遺跡。
「レンさん」
「戻って」
「みますか?」
俺は。
少し。
迷った。
頭上では。
水が。
ゆっくり。
動き始めている。
でも。
今の音も。
気になる。
「……少しだけ」
「確認しよう」
「すぐ」
「戻るぞ」
二人が。
頷いた。
◇
遺跡へ。
戻る。
奥まで。
行く必要は。
なかった。
通路へ。
入ったところで。
気づいた。
「……光ってる」
セリアが。
呟く。
壁。
そこに。
刻まれている。
古い文字。
青白い。
光が。
一本。
また。
一本。
奥へ。
向かって。
走っている。
「これ……」
リーナが。
壁を見る。
「さっきは」
「ありませんでしたよね」
「ああ」
神銃も。
反応している。
俺たちは。
光を。
追う。
そして。
戻ってきた。
小さな。
部屋。
前の。
神銃士の。
声を。
聞いた。
場所。
中央。
石の台。
さっきまで。
光を。
失っていた。
それが。
今。
再び。
青白く。
光っている。
「また」
「記録?」
セリアが。
聞く。
「分からない」
近づく。
神銃が。
微かに。
震える。
――……ン。
石の台が。
反応した。
壁。
天井。
床。
古い文字が。
一斉に。
光る。
でも。
声は。
聞こえない。
代わりに。
目の前へ。
文字が。
浮かんだ。
【封印機構――正常稼働】
「……」
俺は。
その文字を。
見る。
「封印……」
セリアが。
呟く。
「これって」
「ああ」
多分。
さっき。
聞いた。
災厄の。
封印。
続いて。
もう一つ。
文字が。
浮かぶ。
【封印対象――沈黙】
「……沈黙」
リーナが。
呟く。
「これって」
「災厄のこと……?」
「多分」
俺は。
もう一度。
文字を見る。
【封印機構――正常稼働】
【封印対象――沈黙】
その二つ。
しばらく。
待つ。
でも。
それ以上。
何も。
表示されない。
俺は。
ゆっくり。
息を吐いた。
「……よかった」
セリアも。
小さく。
呟いた。
さっき。
足元から。
響いた。
振動。
あれが。
何だったのかは。
分からない。
でも。
少なくとも。
封印そのものは。
正常に。
動いている。
そして。
封じられている。
何かも。
今は。
沈黙している。
俺は。
足元を見る。
この。
さらに。
下。
そこに。
災厄が。
封じられている。
そう。
考えた時。
最初に。
頭へ。
浮かんだのは。
父さん。
母さん。
そして。
この街で。
暮らしている。
人たち。
もし。
封印が。
今にも。
壊れそうなら。
こんなところで。
調べ物なんて。
している場合じゃない。
街から。
離れた方がいい。
でも。
二百年以上。
続いてきた。
封印。
そして。
今も。
正常に。
動いている。
封印された。
災厄も。
沈黙している。
少なくとも。
今すぐ。
何かが。
起きる状態では。
なさそうだ。
「……だからって」
俺は。
呟く。
「安心していいって」
「わけじゃないけどな」
「うん」
セリアが。
頷く。
「でも」
「今すぐ」
「どうにかなるわけじゃ」
「なさそうだね」
「ああ」
いつまで。
続くのかは。
分からない。
永遠に。
大丈夫なのかも。
分からない。
でも。
今は。
保たれている。
なら。
俺たちが。
やるべきなのは。
もっと。
知ることだ。
災厄が。
何なのか。
第二接続者が。
何なのか。
そして。
神銃の。
最後の一撃。
「レンさん」
リーナが。
神銃を見る。
「また」
見る。
神銃の。
光。
今度は。
遺跡の。
外。
俺たちが。
来た方向へ。
向かうほど。
強くなっている。
「……帰れって」
「ことか?」
当然。
返事は。
ない。
「行こう」
俺は。
石の台へ。
背を向けた。
今度こそ。
帰る。
◇
俺たちは。
最初に。
目を覚ました。
場所へ。
戻った。
頭上。
水が。
回っている。
さっきより。
速い。
ぐるぐると。
巨大な。
渦を。
作っている。
ただ。
湖の上で。
巻き込まれた時とは。
違う。
渦の。
中心。
そこに。
青白い。
光が。
集まっている。
神銃と。
同じ。
光。
「……あそこ?」
セリアが。
聞く。
「多分」
「また」
「多分」
「仕方ないだろ!」
分からないものは。
分からない。
でも。
神銃は。
あそこへ。
反応している。
来た時も。
そうだった。
こいつが。
俺たちを。
ここへ。
連れてきた。
なら。
戻る時も。
「レンさん」
リーナが。
俺の。
隣へ来る。
「行くんですね」
「ああ」
「どうやって?」
「……」
「レンさん?」
「待て」
「今」
「考えてる」
「考えて」
「なかったんだ」
セリアが。
呆れた。
「お前は」
「何か」
「あるのかよ」
「ない」
「じゃあ」
「同じだろ」
「私は」
「レンに」
「任せてるから」
「ずるくない?」
「ずるくない」
その時。
――ゴウン!
「っ!」
神銃が。
大きく。
震えた。
同時に。
頭上の。
渦が。
広がる。
そして。
水と。
空間の。
境目が。
少しずつ。
下がってきた。
「……おい」
セリアも。
気づく。
「これ」
「まずくない?」
「ああ」
水が。
近づいている。
半球状に。
保たれていた。
空間。
その。
境界が。
縮んでいる。
「レンさん!」
「二人とも」
俺は。
神銃を。
握る。
「離れるな!」
セリアが。
すぐに。
近づく。
リーナも。
俺の。
隣へ。
来る。
「これで」
「どうするの?」
「分からない!」
「やっぱり!?」
「でも」
俺は。
頭上を見る。
青白い。
渦。
神銃の。
光。
完全に。
同じ。
「多分」
「あそこだ!」
「また多分!」
「うるさい!」
水が。
迫る。
もう。
時間がない。
神銃が。
さらに。
強く。
光った。
――ゴウン!
次の瞬間。
水と。
空間の。
境界が。
崩れた。
「っ!」
大量の。
水。
一気に。
押し寄せる。
「レン!」
「掴まれ!」
誰の。
手かなんて。
確認する。
暇はない。
近くにいる。
二人へ。
手を。
伸ばす。
その瞬間。
身体が。
浮いた。
「――っ!」
水。
また。
水。
冷たい。
息が。
止まる。
身体が。
回る。
でも。
今度は。
見える。
青白い。
光。
上。
あそこだ。
神銃が。
引かれている。
いや。
俺たちごと。
引き上げられている。
暗い。
水の中。
光が。
近づく。
もっと。
近く。
神銃の。
光が。
視界を。
覆う。
そして――
◇
「――っ!」
水面から。
顔が。
出た。
「はっ……!」
空気を。
思い切り。
吸う。
「げほっ……!」
咳。
肺が。
痛い。
でも。
息が。
できる。
空が。
見える。
「……戻った」
湖。
だ。
俺たちが。
舟で。
来た。
湖の。
中央。
そこで。
気づく。
神銃が。
ない。
さっきまで。
確かに。
手の中に。
あった。
俺たちを。
ここまで。
導いた。
神器。
でも。
いつ。
消えた?
水の中を。
引き上げられている。
途中か。
それとも。
ここへ。
戻った。
瞬間か。
分からない。
ただ。
もう。
あの。
青白い光も。
感じない。
まるで。
役目を。
終えたように。
いつもの。
召喚前の状態へ。
戻っていた。
「セリア!」
周囲を見る。
「いる!」
少し。
離れた。
場所。
水面から。
顔が。
出ている。
「リーナ!」
「います!」
反対側。
リーナも。
いる。
「大丈夫か!?」
「多分!」
セリアが。
答える。
「私も」
「大丈夫です!」
よかった。
三人とも。
いる。
俺は。
息を。
整える。
「戻った……」
セリアが。
水に。
浮かびながら。
呟く。
「ああ」
「本当に?」
「湖に」
「浮いてるんだから」
「戻ってるだろ」
「それも」
「そうか」
そこで。
気づいた。
「……あれ?」
周囲を見る。
水。
水。
水。
「どうしたの?」
「舟」
「え?」
セリアも。
周囲を見る。
リーナも。
見る。
ない。
俺たちが。
乗ってきた。
舟。
どこにも。
ない。
木片すら。
浮いていない。
「……沈んだ?」
セリアが。
言う。
「多分」
「じゃあ」
「どうやって」
「戻るの?」
「……」
岸を見る。
遠い。
かなり。
遠い。
湖の。
中央。
ここから。
岸まで。
泳ぐ。
考えただけで。
嫌になる。
「レン」
「何」
「泳げるんでしょ?」
「……」
「朝」
「言ってたよね?」
「言ったな」
「今は」
「泳げるって」
「言った」
「じゃあ」
「大丈夫だね」
「……多分」
「多分!?」
湖の。
真ん中に。
セリアの。
声が。
響いた。
「やっぱり」
「泳げないんじゃん!」
「泳げる!」
「じゃあ」
「多分って」
「言わないでよ!」
「久しぶりなんだよ!」
「岸」
セリアが。
見る。
「めちゃくちゃ」
「遠いけど」
「……」
「レン?」
「泳ぐしか」
「ないだろ」
「本当に?」
「他に」
「どうするんだよ!」
「レンさん」
リーナが。
静かに。
割って入る。
「とりあえず」
「三人で」
「離れないように」
「泳ぎましょう」
「……そうだな」
俺たちは。
岸へ。
向かう。
◇
少し。
泳いだだけで。
分かった。
遠い。
思っていたより。
ずっと。
遠い。
「レン」
「何」
「大丈夫?」
「まだ」
「大丈夫」
「まだ?」
「余計なこと」
「言うな」
服が。
水を。
吸っている。
身体も。
重い。
湖の底を。
歩き回った。
あとだ。
体力だって。
残っていない。
「これ」
俺は。
岸を見る。
「本当に」
「泳いで」
「戻れるのか?」
「レンが」
「言ったんでしょ!」
「泳ぐしか」
「ないって!」
「状況が」
「分かった上で」
「改めて」
「言ってるんだよ!」
「遅いよ!」
「レンさん」
前を。
泳いでいた。
リーナが。
急に。
止まった。
「何?」
「あれ」
リーナが。
指を差す。
「……?」
俺と。
セリアも。
そちらを見る。
遠く。
水面。
何かが。
ある。
最初は。
分からなかった。
でも。
少しずつ。
近づいてくる。
「舟?」
セリアが。
目を。
細める。
「ああ」
一艘の。
舟。
こっちへ。
向かっている。
「誰だ?」
俺が。
目を。
凝らす。
そして。
聞こえた。
「――おーい!」
声。
「お前ら!」
聞き覚えが。
ある。
「……まさか」
舟が。
近づいてくる。
乗っているのは。
岸で。
話を聞いた。
あの。
漁師。
「お前ら!」
男が。
怒鳴る。
「無事か!」
「無事です!」
俺が。
叫び返す。
「だったら」
「そこで待ってろ!」
「はい!」
助かった。
心の底から。
そう思った。
◇
舟が。
近づく。
漁師が。
身を乗り出す。
「掴まれ!」
まず。
リーナ。
次に。
セリア。
最後に。
俺。
何とか。
舟へ。
上がる。
「はぁ……」
その場に。
座り込む。
身体が。
重い。
腕も。
足も。
もう。
動かしたくない。
「だから!」
漁師の。
怒鳴り声。
「行かねえ方が」
「いいって」
「言っただろうが!」
「……すみません」
「何が」
「ちょっと確認するだけだ!」
「渦に」
「飲まれてるじゃねえか!」
「……はい」
何も。
言い返せない。
完全に。
正論だ。
「急に」
「湖の流れが」
「おかしくなったんだぞ」
漁師が。
中央を見る。
「岸からでも」
「分かるくらいにな」
「それで……」
俺が。
聞く。
「来てくれたんですか?」
「ああ」
男が。
ため息を。
つく。
「お前らが」
「行った辺りだったからな」
「すぐ」
「舟を出そうとしたが」
「流れが」
「強すぎて」
「近づけなかった」
漁師が。
俺たちを見る。
「しばらくして」
「流れが」
「急に」
「収まった」
「それで」
「見に来たら」
「お前らが」
「泳いでやがる」
「……助かりました」
本当に。
助かった。
あの距離を。
泳いで。
戻れたかどうか。
正直。
分からない。
「それより」
漁師が。
周囲を見る。
「お前らの」
「舟は?」
「……」
俺。
セリア。
リーナ。
三人とも。
黙る。
「おい」
「借りた舟は」
「どうした?」
「……多分」
俺が。
言う。
「沈みました」
「多分じゃねえ!!」
湖に。
怒鳴り声が。
響いた。
セリアが。
顔を。
逸らす。
肩が。
震えている。
「お前」
「笑ってるだろ」
「笑ってない」
「絶対」
「笑ってるだろ」
「笑ってないって」
リーナを見る。
「……」
口元を。
押さえている。
「リーナ?」
「すみません」
「お前もかよ」
「お前らなあ!」
漁師の。
声。
俺たちは。
揃って。
「すみません」
と。
頭を。
下げた。
◇
舟が。
岸へ。
向かう。
俺は。
後ろを。
振り返った。
湖の。
中央。
さっきまで。
巨大な。
渦が。
あった。
場所。
今は。
何もない。
風に。
揺れる。
水面。
太陽の。
光。
昔から。
何度も。
見てきた。
湖。
綺麗だと。
思ったことも。
ある。
当たり前に。
そこにあるものだと。
思っていた。
でも。
もう。
同じようには。
見えない。
この下には。
二百年以上。
前の。
街が。
沈んでいる。
前の。
神銃士が。
戦った。
跡が。
残っている。
そして。
その。
さらに。
下には。
災厄が。
封じられている。
石の台に。
表示された。
言葉を。
思い出す。
【封印機構――正常稼働】
【封印対象――沈黙】
今すぐ。
何かが。
起きるわけじゃない。
少なくとも。
今は。
封印は。
保たれている。
災厄も。
沈黙している。
でも。
知らなかった。
だけだ。
俺が。
この街で。
生まれる。
ずっと。
前から。
この湖は。
何かを。
閉じ込めていた。
そして。
もう一つ。
前の。
神銃士が。
残した。
言葉。
『もう一人を』
『見つけろ』
俺は。
隣を見る。
濡れた。
髪を。
絞っている。
リーナ。
第二接続者。
俺以外で。
神銃の。
内部へ。
繋がることが。
できる。
人間。
「……」
「レンさん?」
リーナが。
俺を見る。
「どうしました?」
「いや」
俺は。
湖へ。
視線を。
戻す。
「何でもない」
まだ。
決まったわけじゃない。
でも。
偶然だと。
思うには。
あまりにも。
重なりすぎている。
湖の。
底で。
見つけたもの。
それは。
昔。
ここで。
何が。
起きたのか。
それだけじゃ。
なかった。
神銃が。
何のために。
作られたのか。
そして。
俺たちが。
これから。
何と。
向き合うことに。
なるのか。
その。
答えの。
一部だった。




