残された声
神銃が。
青白い。
光を。
放っている。
「……」
俺は。
手の中の。
神銃を見る。
さっきまで。
何も。
起きなかった。
なのに。
この場所へ。
来た途端。
また。
反応した。
「レン」
セリアが。
壁を見る。
「これ」
「やっぱり」
「神銃なの?」
「分からない」
俺は。
壁に。
残った。
巨大な穴を見る。
何枚もの。
壁を。
一直線に。
貫いている。
石は。
抉れ。
一部は。
溶けたように。
変色している。
似ている。
俺が。
神銃を。
撃った時と。
でも。
同じとは。
言い切れない。
「……」
神銃を。
少し。
動かす。
右。
変わらない。
左。
変わらない。
後ろ。
「……ん?」
光が。
弱くなった。
「レンさん?」
もう一度。
前へ。
向ける。
――……ン。
青白い。
光が。
強くなる。
「やっぱり」
「何?」
セリアが。
聞く。
「こいつ」
俺は。
神銃を見る。
「奥に」
「反応してる」
「奥?」
「ああ」
砲身の。
先。
崩れた。
街。
さらに。
その向こう。
何が。
あるのか。
ここからじゃ。
見えない。
「行ってみますか?」
リーナが。
聞く。
「そのつもり」
「まあ」
セリアが。
剣へ。
手を伸ばす。
「他に」
「戻る方法も」
「分かんないしね」
「そういうこと」
「胸張って」
「言うことじゃ」
「ないと思う」
「うるさい」
俺は。
神銃を。
解除しようとして。
止めた。
「……」
「どうしたの?」
「いや」
もう一度。
奥を見る。
神銃は。
今も。
光っている。
「このまま」
「行く」
「重くない?」
「重い」
「じゃあ」
「消せば?」
「道」
「分からなくなるだろ」
「あ」
セリアが。
納得する。
「なるほど」
「たまには」
「ちゃんと」
「考えるんだね」
「お前」
「俺を」
「何だと」
「思ってるんだよ」
「レン」
「セリアさん」
リーナが。
小さく。
笑う。
「行きましょう」
「……はい」
「はい」
また。
二人で。
返事をした。
◇
神銃を。
頼りに。
進む。
崩れた。
街。
石畳。
その上を。
ゆっくり。
歩いていく。
静かだ。
聞こえるのは。
俺たちの。
足音だけ。
時々。
上を見る。
暗い。
湖の水。
その向こうを。
何かが。
通った。
「……魚」
セリアが。
呟く。
「いるんだな」
「そりゃ」
「湖だから」
「いや」
「分かってるけど」
変な。
光景だ。
俺たちは。
湖の底を。
歩いている。
その。
遥か上を。
魚が。
泳いでいる。
普通なら。
ありえない。
でも。
もう。
驚くのも。
疲れてきた。
「レンさん」
リーナが。
呼ぶ。
「光」
「ああ」
神銃を見る。
さっきより。
少し。
強い。
「合ってる」
「みたいだな」
俺たちは。
さらに。
奥へ進む。
そこで。
また。
見つけた。
「……」
石畳。
大きく。
抉れている。
丸い。
穴。
いや。
穴というより。
地面そのものが。
吹き飛んでいる。
「これも」
セリアが。
覗き込む。
「神銃?」
「多分」
俺は。
しゃがむ。
石の。
表面。
黒く。
焼けている。
最初に。
見つけた。
壁の跡と。
似ている。
「こっちにも」
リーナが。
少し先を。
指した。
壁。
また。
穴。
さらに。
その向こう。
別の。
建物。
そこにも。
同じ。
痕跡。
一つじゃない。
二つ。
三つ。
進むほど。
増えていく。
「……戦ったんだ」
セリアが。
呟いた。
「ああ」
誰かが。
ここで。
神銃を。
撃った。
一発だけじゃない。
何発も。
何発も。
「前の」
「神銃士……?」
リーナが。
言う。
俺は。
答えなかった。
まだ。
分からない。
でも。
この場所。
この時代。
そして。
神銃の。
反応。
偶然とは。
思えない。
「……行こう」
さらに。
進む。
◇
しばらくして。
街の。
様子が。
変わった。
建物が。
減っている。
いや。
違う。
なくなっている。
「……何だよ」
俺は。
足を。
止めた。
目の前。
広い。
場所。
昔は。
広場だったのかも。
しれない。
でも。
今は。
何もない。
石畳すら。
ほとんど。
残っていない。
地面が。
抉れている。
深く。
広く。
まるで。
巨大な。
何かが。
地面ごと。
削り取ったように。
「これ……」
セリアが。
言葉を。
失う。
俺も。
同じだ。
今までの。
跡とは。
規模が。
違う。
神銃なら。
できるのか?
分からない。
少なくとも。
俺が。
今まで。
撃った。
一発とは。
全然。
違う。
「レンさん」
リーナが。
少し。
離れた場所で。
しゃがんだ。
「こっち」
近づく。
地面。
そこに。
深い。
溝。
一本。
二本。
三本。
「……爪?」
セリアが。
言った。
確かに。
そう見える。
何かが。
地面を。
引っ掻いた。
そんな。
跡。
でも。
「でかすぎるだろ」
一本の。
溝だけでも。
俺の。
身体より。
長い。
「魔物……?」
リーナが。
呟く。
「分からない」
でも。
一つだけ。
分かる。
これは。
神銃じゃない。
「これも」
セリアが。
俺を見る。
「神銃?」
「いや」
俺は。
首を振った。
「多分」
「これは」
「撃った跡じゃない」
「じゃあ」
セリアが。
巨大な。
爪痕を見る。
「何と」
「戦ってたの?」
「……」
答えられない。
でも。
頭に。
浮かぶ。
北方戦役。
消えた。
記録。
前の。
神銃士。
そして。
二百年以上前。
この場所で。
起きた。
何か。
「まさか……」
口から。
出かかった。
でも。
やめた。
まだ。
何も。
分からない。
「レンさん」
リーナが。
神銃を見る。
「光が」
「ああ」
さっきより。
強い。
古い文字。
一本。
また。
一本。
青白い。
光が。
増えている。
まるで。
近づいている。
何かに。
「こっちだ」
俺は。
広場の。
奥を見る。
そこに。
一つだけ。
建物が。
残っていた。
◇
他とは。
少し。
違った。
建物。
というより。
遺跡。
そう。
呼んだ方が。
近い。
巨大な。
石。
何本もの。
柱。
表面には。
読めない。
古い文字。
「……これ」
セリアが。
見上げる。
「アルトの」
「地下に」
「似てない?」
「ああ」
俺も。
同じことを。
思った。
全く。
同じじゃない。
でも。
似ている。
石の。
組み方。
壁に。
刻まれた。
文字。
そして。
「……これ」
リーナが。
柱へ。
近づく。
「何か」
「分かる?」
「いえ」
指先を。
近づける。
でも。
触れる前に。
止まった。
「ただ」
「何?」
「この場所」
リーナが。
周囲を見る。
「他より」
「古い気がします」
「街より?」
「多分」
リーナ自身も。
自信は。
なさそうだった。
「どうして?」
セリアが。
聞く。
「分かりません」
「でも」
「石の」
「感じが」
「少し」
「違うので」
俺も。
壁を見る。
街の。
建物とは。
確かに。
違う。
もっと。
古い。
そんな。
感じがする。
「……」
神銃が。
震えた。
――……ン。
「っ」
光が。
一気に。
強くなる。
「レン!」
「ああ」
間違いない。
ここだ。
神銃が。
反応していたのは。
この場所。
「入れる?」
セリアが。
入口を見る。
半分。
崩れている。
でも。
人が。
通れるだけの。
隙間はある。
「行くしか」
「ないだろ」
「また」
「それ」
「今度は」
「本当に」
「それしかない」
「それは」
「そうだけど」
俺が。
先へ。
進む。
「レンさん」
後ろから。
リーナ。
「私が」
「先でも」
「いいですよ」
「なんで?」
「何か」
「あるかも」
「しれないので」
「だから」
「俺が」
「先なんだろ」
リーナが。
少し。
止まった。
「……はい」
「何だよ」
「いえ」
「レンさん」
「たまに」
「ちゃんと」
「してますね」
「お前まで!?」
後ろで。
セリアが。
笑った。
◇
中は。
暗かった。
神銃の。
青白い。
光だけが。
周囲を。
照らしている。
壁。
床。
天井。
全部。
石。
でも。
外とは。
違う。
崩れては。
いる。
それでも。
形が。
残っている。
「何の」
「場所だったんだろ」
セリアの。
声が。
響く。
「分からない」
「神殿とか?」
「俺に」
「聞くなって」
「じゃあ」
「誰に」
「聞くの?」
「……リーナ?」
「私も」
「分かりません」
「だよな」
進む。
曲がる。
また。
進む。
分かれ道。
そこで。
神銃を。
右へ。
向ける。
光。
弱い。
左。
――……ン。
強くなる。
「便利だね」
セリアが。
言った。
「こういう」
「使い方する」
「神器じゃ」
「ないと思うけどな」
左へ。
進む。
さらに。
奥。
壁には。
何かが。
刻まれている。
絵。
いや。
模様。
人のような。
形。
巨大な。
何か。
そして。
七つ。
「……」
足を。
止める。
「レン?」
「これ」
壁を見る。
七つの。
形。
一つ。
一つ。
違う。
細長いもの。
大きな。
刃のようなもの。
丸いもの。
そして。
一番。
端。
長い。
筒のような。
形。
「……神器?」
セリアが。
呟いた。
「分からない」
でも。
神銃が。
強く。
光った。
一瞬だけ。
壁の。
筒のような。
形も。
青白く。
照らされる。
「……」
偶然じゃ。
ない。
「七つ」
リーナが。
数える。
「七神器……」
俺は。
壁を見る。
これが。
いつ。
作られたものなのか。
分からない。
でも。
もし。
本当に。
七神器なら。
この遺跡は。
前の神銃士より。
ずっと。
昔から。
ここに。
あったことになる。
「先に」
「行こう」
今は。
止まっても。
答えは。
出ない。
さらに。
奥へ。
◇
そして。
行き止まり。
「……ここ?」
セリアが。
聞く。
「ああ」
神銃が。
今までで。
一番。
強く。
光っている。
でも。
何もない。
小さな。
部屋。
壁。
床。
そして。
中央。
石で。
できた。
台。
「これだけ?」
セリアが。
近づく。
「触るなよ」
「まだ」
「触ってない!」
「まだって」
「言ったな」
「言ってない」
「言った」
「言ってません」
リーナが。
入ってくる。
「……」
セリアが。
リーナを見る。
「どっちの」
「味方?」
「どちらでも」
「ありません」
強い。
俺は。
石の台へ。
近づく。
表面。
そこに。
窪みが。
ある。
「何これ」
セリアも。
横から。
見る。
細長い。
溝。
いや。
何かを。
置く。
場所?
「レンさん」
リーナが。
神銃を見る。
俺も。
気づいた。
光。
石の台へ。
近づくほど。
強くなる。
「……まさか」
神銃を。
持ち上げる。
「レン?」
「ちょっと」
「離れてろ」
「何するの?」
「分からない」
「分からないのに」
「やるの!?」
「ここまで」
「来たんだから」
「その言葉」
「便利に」
「使ってない?」
無視する。
神銃を。
石の台へ。
向ける。
その瞬間。
――ヴン。
「……え?」
小さな。
振動。
石の台。
中央。
青白い。
光が。
灯った。
一本。
また。
一本。
細い。
光が。
床へ。
走る。
「レンさん!」
「ああ!」
壁。
天井。
部屋全体へ。
古い。
文字が。
浮かび上がる。
――ゴウン。
あの。
低い音。
そして。
神銃が。
強く。
光った。
目の前。
何もなかった。
空間。
そこに。
文字が。
浮かぶ。
【神銃――確認】
「……」
息が。
止まった。
「神銃……」
セリアが。
読む。
次。
文字が。
変わる。
【使用者――確認】
「俺を」
「見てる……?」
返事は。
ない。
その代わり。
石の台が。
さらに。
光った。
――ザッ。
音。
「……?」
雑音。
何かが。
聞こえる。
――ザザッ。
『――聞こえ――』
「声?」
セリアが。
俺の。
隣へ来る。
リーナも。
石の台を。
見ている。
『――これを――』
途切れる。
古い。
男の声。
知らない。
声。
俺たちは。
誰も。
動かなかった。
雑音が。
少しずつ。
消えていく。
そして。
今度は。
はっきり。
聞こえた。
『……もし』
低い。
男の声。
『これを』
『聞いている者が』
一度。
声が。
途切れる。
そして。
『俺と同じ』
『神銃士なら――』
俺は。
息を。
呑んだ。
神銃が。
青白く。
光る。
二百年以上。
前。
ここで。
何かと。
戦った。
神銃士。
その声が。
今。
俺たちの。
目の前で。
蘇ろうとしていた。




