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転生したら最強ジョブだが最凶だった件 ~伝説の【神銃士】になったのに、一発も撃てない~  作者: 蝶野摩矢
最凶の神器編

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6/68

謎の少女

初めての依頼を終えた。


次の日。


俺は。


朝から。


冒険者ギルドにいた。


「……ないな」


掲示板を見る。


討伐。


採取。


護衛。


調査。


いろんな依頼が。


貼られている。


でも。


俺が探しているのは。


依頼じゃない。


調律師。


昨日。


受付で聞いた。


変わった噂。


――武器に触れただけで。


――その武器の状態が分かる。


そんな。


調律師がいるらしい。


ただ。


名前も。


居場所も。


分からない。


「噂だけじゃなあ……」


そもそも。


本当にいるのかすら。


怪しい。


でも。


他に手掛かりもない。


俺は。


ギルドの中を見回した。


冒険者なら。


いろんな街を旅している。


何か。


知っている人がいるかもしれない。


「すみません」


近くにいた。


三人組の冒険者へ。


声をかけた。


「調律師について」


「聞きたいんですけど」


「調律師?」


剣を背負った男が。


振り返る。


「はい」


「武器に触れただけで」


「状態が分かる人がいるって」


「聞いたんです」


「知らねえな」


「俺も」


「そんな奴いたら」


「俺の剣も見てもらいてえよ」


ダメか。


次。


「すみません」


「調律師を――」


「知らない」


次。


「武器に触れただけで――」


「何それ?」


次。


「変わった調律師を――」


「それ詐欺じゃねえの?」


「……」


昼になる頃には。


心が折れかけていた。


「全然見つからない……」


当然と言えば。


当然だ。


名前も。


顔も。


居場所も分からない。


そんな人間を。


どうやって。


探せばいいんだ。


「……依頼でも受けるか」


金も。


必要だ。


調律師探しだけで。


一日を終わらせるわけにもいかない。


俺は。


掲示板へ向かった。


その時だった。


「おい!」


怒鳴り声が。


ギルドの入口から聞こえた。


「何回言わせんだ!」


「……?」


振り返る。


一人の男が。


誰かの腕を。


掴んでいた。


男は。


冒険者らしい。


腰に剣。


革の鎧。


その前にいるのは。


小柄な少女だった。


「す、すみません……」


少女が。


小さな声で謝る。


年は。


俺と。


同じくらいだろうか。


薄汚れた服。


ところどころ。


破れている。


髪も。


まともに。


手入れされていない。


頬は。


少しこけていた。


そして。


腰には。


一本の短剣。


古びた鞘。


何度も。


使われてきたことが。


一目で分かる。


でも。


不思議だった。


服は。


あんなに汚れているのに。


短剣だけは。


違った。


鞘も。


柄も。


きちんと。


手入れされている。


古い。


でも。


雑に扱われているわけじゃない。


むしろ。


長い間。


大切に。


使われてきた。


そんなことだけは。


見ただけで分かった。


「すみませんじゃねえ!」


男が。


少女の腕を。


強く引いた。


「お前が触ってから」


「剣の調子がおかしいんだよ!」


「ち、違います……」


「何が違う!」


「私は……」


少女が。


男の腰の剣を見る。


「その剣は」


「もう……」


「なんだ?」


「中の流れが」


「崩れてて……」


「は?」


「このまま使ったら」


「危ないです」


一瞬。


静かになる。


次の瞬間。


男が。


笑った。


「中の流れ?」


周りの冒険者も。


少し笑う。


「何言ってんだ、こいつ」


「またかよ」


「まだそんなこと言ってんのか?」


また?


俺は。


少女を見る。


「お前みたいな奴に」


「何が分かる!」


男が。


少女を突き放した。


「きゃっ……!」


少女が。


床に倒れる。


「おい」


俺は。


気づけば。


声を出していた。


男が。


こっちを見る。


「なんだ?」


「そこまでしなくても」


「いいんじゃないですか」


「関係ねえだろ」


「まあ」


「そうですけど」


俺は。


床に倒れた少女を見る。


「でも」


「転ばせる必要はないでしょ」


「……チッ」


男は。


俺を睨む。


そして。


俺の腰の剣を見る。


「新人か?」


「昨日登録しました」


「だったら」


「余計なことに首突っ込むな」


男は。


それだけ言って。


ギルドの奥へ行った。


「……」


俺は。


少女へ。


手を伸ばした。


「大丈夫?」


「……」


少女は。


俺の手を見る。


でも。


取らない。


自分で。


ゆっくり立ち上がった。


「……大丈夫です」


「怪我は?」


「ありません」


「そう」


「……」


会話が。


終わった。


気まずい。


「じゃあ……」


俺が。


離れようとした時。


少女が。


小さく言った。


「その剣」


「え?」


少女は。


俺の腰を見る。


ガルドから。


借りた剣。


「……少し」


「合ってないです」


「合ってない?」


俺は。


剣を見る。


「何が?」


「……」


少女は。


少し迷ってから。


俺を見る。


「あなたに」


「……俺に?」


「はい」


何を。


言っているんだ?


この剣は。


ガルドが。


俺に持たせてくれたものだ。


悪い剣じゃない。


むしろ。


かなり。


使いやすいと思っている。


「どういうこと?」


少女は。


答えない。


いや。


答えようとして。


迷っているように見えた。


「……重心は」


やがて。


少女が言った。


「悪くないです」


「刃も」


「ちゃんと整ってます」


「でも」


剣を見る。


「あなたが」


「力を流した時」


「少しだけ」


「外に逃げてます」


「……」


俺は。


少女を見る。


力が。


逃げている?


「触ってもいいですか?」


「剣に?」


少女が。


小さく頷く。


俺は。


少し迷ってから。


鞘ごと。


剣を外した。


「どうぞ」


少女が。


剣に触れる。


「……」


目を閉じた。


数秒。


「やっぱり」


「何が分かるの?」


「ここ」


少女が。


柄の少し上。


剣の根元付近を指す。


「あなたの魔力が」


「ここで少し」


「乱れてます」


「魔力が?」


「はい」


「剣が悪いんじゃありません」


少女は。


俺を見る。


「剣と」


「あなたが」


「少しだけ」


「ずれてます」


その言葉に。


俺の動きが。


止まった。


剣と。


使い手が。


ずれている。


似た言葉を。


知っている。


――武器と使い手。


――その二つを繋ぐんだ。


ガルドの声が。


頭の中で。


蘇る。


「……君」


「はい」


「調律師?」


少女の肩が。


ビクッと動いた。


「……違います」


「え?」


「私は」


少女は。


剣から。


手を離した。


「そんな」


「立派なものじゃありません」


その言い方が。


少し。


引っかかった。


できない。


ではなく。


立派なものじゃない。


まるで。


自分には。


そんな価値がないと。


言っているみたいだった。


「でも今」


「武器と俺の状態を――」


「すみません」


少女が。


頭を下げる。


そして。


逃げるように。


ギルドを出ていった。


「ちょっと!」


追いかけようとする。


「やめとけ」


後ろから。


声がした。


振り返る。


さっきとは。


別の冒険者だった。


「知ってるんですか?」


「まあな」


男は。


少女が出ていった扉を見る。


「あいつも一応」


「冒険者だよ」


「冒険者?」


思わず。


聞き返した。


「まあ」


「下の方だけどな」


男は。


肩をすくめる。


「薬草採りとか」


「小型の魔物の討伐とか」


「一人でできる依頼ばっかり」


「受けてるみたいだ」


「一人で?」


「ああ」


男は。


少しだけ。


声を落とした。


「あいつ」


「誰とも組まねえからな」


「……」


「弱い魔物なら」


「一人でも倒せるみたいだ」


男は。


少女が消えた扉を見る。


「あの短剣一本で」


「小型の魔物を狩ってる」


「じゃあ」


「戦えないわけじゃないんだ」


「まあな」


男は。


肩をすくめた。


「ただ」


「強い魔物を相手にできるほどじゃねえ」


「だから」


「危険な討伐依頼には」


「ほとんど手を出さねえよ」


「それに」


男が。


少し声を落とした。


「ジョブも」


「よく分からねえらしい」


「分からない?」


「ああ」


「冒険者登録の時の」


「簡易水晶でも」


「ジョブの名前が」


「出なかったんだと」


「……そんなことあるのか?」


俺が。


十五歳の時。


教会では。


はっきりと。


【神銃士】


そう。


示された。


普通なら。


十五歳で。


授職の儀を受ける。


そこで初めて。


自分のジョブを知ることになる。


「授職の儀は?」


「さあな」


男は。


首を振った。


「そこまでは知らねえよ」


「本人も」


「昔のことは」


「ほとんど話さねえしな」


「……」


「ただ」


男は続ける。


「人の武器を見ると」


「ここがおかしいとか」


「流れが悪いとか」


「使い手と合ってないとか」


「変なことばっかり言う」


俺は。


少女が言った言葉を。


思い出す。


――剣とあなたが。


――少しだけずれてます。


「それ」


「当たってるんじゃないのか?」


「さあな」


男は。


肩をすくめた。


「少なくとも」


「ちゃんとした調律師じゃねえよ」


「工房にいるわけでもない」


「武器を直せるわけでもない」


「本人だって」


「自分は調律師じゃないって言ってる」


「だから」


「みんな」


「相手にしてねえんだよ」


「……」


俺は。


扉を見る。


ジョブが。


分からない。


強いわけでもない。


正式な。


調律師でもない。


それでも。


短剣一本で。


一人で。


冒険者として。


生きている。


そして。


武器の状態だけは。


分かる。


昨日。


受付で聞いた。


変わった噂。


――武器に触れただけで。


――その武器の状態が分かる。


まさか。


「……あの子?」


◇


俺は。


ギルドを出た。


辺りを。


見回す。


人。


馬車。


店。


少女の姿は。


もうない。


「……名前くらい聞けばよかった」


完全に。


失敗した。


でも。


また。


ギルドに来るかもしれない。


俺は。


そう考えた。


その時。


ふと。


別のことを思いつく。


「……神器」


あの子なら。


どう見る?


普通の武器とは。


違う。


神器。


ガルドですら。


何も分からなかった。


もし。


あの子が。


本当に。


武器の中の何かを。


感じ取れるなら。


俺の神器も。


何か。


分かるかもしれない。


「……探そう」


俺は。


街を歩き始めた。


◇


一時間ほど。


探した。


見つからない。


市場。


裏通り。


広場。


ギルドの周辺。


「どこ行ったんだ……」


諦めて。


宿へ戻ろうとした。


その時。


細い路地の奥。


壁際に。


誰かが。


座っていた。


「……」


あの少女だ。


一人で。


座っている。


膝の上には。


さっきの。


短剣。


小さな布で。


ゆっくり。


丁寧に。


刃を拭いている。


何度も。


使い込まれた短剣。


新しくもない。


高そうにも見えない。


それでも。


少女の手つきを見れば。


分かる。


ただの武器として。


扱っているんじゃない。


何度も。


自分を守ってくれた。


信頼できる相棒を。


手入れしている。


そんなふうに。


見えた。


俺は。


ゆっくり近づいた。


「いた」


少女が。


顔を上げる。


そして。


俺を見るなり。


立ち上がった。


「待って!」


逃げようとした。


「別に怒ってないから!」


止まる。


少女は。


短剣を。


そっと鞘へ戻した。


「……」


「さっきのこと」


「もう少し聞きたいだけ」


少女は。


警戒したまま。


俺を見る。


「……何をですか」


「武器のこと」


「……」


「君」


俺は。


腰の剣に触れる。


「武器の状態が」


「分かるんだよね?」


「……少しだけ」


「どうやって?」


「分かりません」


「え?」


「触ったら」


少女は。


自分の手を見る。


「なんとなく」


「聞こえるんです」


「聞こえる?」


「……変ですよね」


「いや」


俺は。


すぐに否定した。


むしろ。


聞きたいことが。


増えた。


「それ」


「昔から?」


「……」


少女は。


少し考えた。


「いえ」


「じゃあ」


「いつから?」


「……十五歳くらいから」


「十五歳?」


思わず。


聞き返す。


十五歳。


普通なら。


授職の儀を受ける年齢。


「もしかして」


「十五歳の時に」


「授職の儀を――」


その瞬間。


少女の表情が。


変わった。


腰の短剣へ。


手が伸びる。


握る。


強く。


「……受けてません」


「え?」


「授職の儀は」


「受けてません」


小さな声。


でも。


それ以上は。


聞かないでほしい。


そんな声だった。


「どうして――」


そこまで言って。


やめた。


少女の指が。


短剣の柄を。


強く握っている。


「……ごめん」


「……」


「話したくないなら」


「いいよ」


少女が。


少しだけ。


顔を上げた。


驚いたような。


そんな顔だった。


「……聞かないんですか」


「聞いてほしくないんでしょ?」


「……」


「だったら」


「無理に聞くことじゃない」


しばらく。


少女は。


何も言わなかった。


そして。


ほんの少しだけ。


短剣を握る手から。


力が抜けた。


「……ありがとうございます」


授職の儀を。


受けていない。


だったら。


簡易水晶で。


ジョブの名前が出なかったのも。


そのせいなのかもしれない。


でも。


十五歳くらいから。


武器の何かが。


分かるようになった。


それなら。


この感覚は。


やっぱり。


何かのジョブに。


関係しているんじゃないのか?


「じゃあ」


「これも分かる?」


「……これ?」


俺は。


周りを見る。


人はいない。


路地の奥。


ここなら。


大丈夫だろう。


右手を。


前へ出す。


「……来い」


青白い光が集まる。


空間が。


わずかに歪む。


――ズンッ。


巨大な神器が。


現れた。


「……!」


少女の目が。


大きく開く。


「これ……」


「俺の武器」


「神器ですか……?」


「うん」


少女は。


神器を。


じっと見ていた。


怖がるでもなく。


驚くだけでもない。


まるで。


何かを。


聞いているように。


「……変」


「え?」


少女が。


呟いた。


「この武器」


「すごく……変です」


「やっぱり?」


「はい」


少女が。


一歩。


近づく。


「触っても?」


俺は。


少し迷った。


ガルドは。


普通に触れた。


何も。


起きなかった。


「いいよ」


俺は。


神器を支えたまま。


頷いた。


少女が。


ゆっくり。


手を伸ばす。


細い指先が。


神器の黒い本体へ。


触れた。


その瞬間。


――キィン。


「……え?」


青白い紋様が。


一斉に。


光った。


「なっ……!?」


今までとは。


違う。


俺が。


何度。


魔力を流しても。


何度。


引き金を引いても。


こんな反応は。


一度も。


なかった。


神器の奥から。


何かが。


目を覚ますような。


低い音が響く。


――ヴゥン……。


「……!」


少女が。


手を離そうとする。


その瞬間。


俺の視界に。


文字が走った。


【――――を確認】


「……何だ?」


一瞬。


読めなかった。


文字が。


乱れる。


【接続――】


消えた。


「……」


静かになった。


神器は。


元の姿に戻っている。


少女が。


自分の手を見ていた。


その顔には。


戸惑い。


そして。


ほんの少し。


恐怖が浮かんでいた。


「今の……」


俺は。


神器を見る。


そして。


少女を見る。


「君」


「……」


「何したの?」


少女は。


青ざめた顔で。


首を横に振った。


「何も……」


「私」


「本当に」


「何もしてません……」


その声は。


俺に説明するというより。


自分自身に。


言い聞かせているようだった。


でも。


少女は。


神器を見つめる。


その目が。


わずかに震えている。


「……聞こえました」


「え?」


「この神器の」


「中から」


俺の心臓が。


大きく鳴った。


「何が?」


少女は。


しばらく。


答えなかった。


そして。


小さな声で。


言った。


「……足りないって」


「何かが」


「ずっと」


「足りないって」


「……」


何かが。


足りない。


一年前。


ガルドが。


言った言葉。


――こいつの中に。


――何か足りねえのか。


俺は。


目の前の少女を見る。


授職の儀を。


受けていない。


自分のジョブも。


分からない。


調律師なのかすら。


分からない。


なのに。


俺以外の誰が触れても。


何も起きなかった神器が。


この少女に。


触れられた瞬間。


初めて。


反応した。


「……君」


少女が。


俺を見る。


「名前は?」


「……」


少し迷ってから。


少女は。


答えた。


「リーナ」


「リーナ……」


俺は。


その名前を。


繰り返した。


この時。


俺はまだ。


知らなかった。


彼女との出会いが。


一度も撃てなかった神器を。


初めて。


目覚めさせることになるなんて。


そして。


俺とリーナ。


二人の出会いが。


歴史から消された。


神銃士の秘密へ。


繋がっていくことを。



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