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転生したら最強ジョブだが最凶だった件 ~伝説の【神銃士】になったのに、一発も撃てない~  作者: 蝶野摩矢
鍛冶の街アルト編

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51/68

打つ

翌日。


「……行こう」


朝。


宿を。


出てすぐ。


セリアが。


言った。


「どこに」


「工房」


「昨日も」


「止められただろ」


「昨日は」


「昨日でしょ」


「今日は」


「今日だから」


「そういう問題じゃ」


「ないだろ」


「でも」


セリアが。


少し。


前を歩く。


「気になる」


「私の剣だよ?」


「今」


「どうなってるのか」


「見たい」


気持ちは。


分からなくもない。


俺だって。


気になる。


地竜の。


素材。


あれが。


どうやって。


一本の剣に。


なるのか。


見たことなんて。


ない。


「……行くだけ」


「だからね」


「見るだけ」


「邪魔は」


「しない」


「それ」


「老人にも」


「言えよ」


「言う」


隣で。


リーナが。


少し。


困ったように。


笑っている。


結局。


三人で。


工房へ。


向かった。


◇


――カン。


近づく前から。


聞こえた。


――カン。


――カン。


金属を。


叩く。


音。


工房の。


中へ。


顔を出す。


熱。


昨日までとは。


違う。


炉の。


近く。


老人が。


立っていた。


「……」


俺たちに。


気づく。


そして。


一言。


「帰れ」


「見るだけ!」


セリアが。


即答した。


「邪魔だ」


「喋らないから!」


「もう」


「喋ってるだろ」


「……」


「帰れ」


「……はい」


早い。


セリアが。


肩を落とす。


「だから」


「言っただろ」


「レン」


「ちょっと」


「嬉しそうじゃない?」


「気のせい」


俺たちは。


工房を。


出ようとする。


その時。


「待て」


老人の。


声。


セリアが。


振り返った。


「いいの!?」


「お前じゃねえ」


「……え?」


老人が。


見る。


俺でも。


セリアでもない。


「嬢ちゃん」


リーナが。


自分を。


指差す。


「……私?」


「ああ」


老人が。


顎で。


炉の方を。


示す。


「来い」


「……はい」


リーナが。


老人の。


近くへ。


向かう。


セリアが。


俺を見る。


「私の剣だよね?」


「多分」


「なんで」


「リーナだけ?」


「知らない」


「……」


ものすごく。


不満そうだ。


老人が。


炉の横から。


何かを。


持ち上げる。


黒い。


細長い。


素材。


まだ。


剣とは。


呼べない。


昨日。


見た。


地竜の素材。


それが。


熱を。


加えられ。


叩かれ。


伸ばされている。


表面には。


所々。


青白い。


筋。


でも。


昨日より。


見えにくい。


「嬢ちゃん」


「はい」


「触れるか」


リーナが。


素材を見る。


「……熱くないところなら」


「ここだ」


老人が。


一部を。


示す。


リーナが。


慎重に。


指を。


触れる。


「……」


目を。


閉じる。


しばらく。


何も。


言わない。


老人も。


急かさない。


やがて。


リーナの。


指が。


動いた。


「……ここから」


ゆっくり。


素材の上を。


進む。


「ここまで」


止まる。


「その先は?」


「……」


少し。


集中する。


「途切れてます」


「どこでだ」


「ここです」


指が。


一点を。


示す。


老人が。


そこを見る。


「……そうか」


それだけ。


言って。


素材を。


受け取る。


炉へ。


戻る。


「何してるんだ?」


俺が。


小さく。


呟く。


セリアも。


首を。


傾げる。


老人が。


素材を。


熱する。


赤く。


なっていく。


取り出す。


台へ。


置く。


槌を。


持つ。


――カン!!


火花。


「……!」


セリアが。


少し。


身を乗り出す。


――カン!!


――カン!!


同じ場所では。


ない。


少しずつ。


位置を。


変えながら。


叩く。


伸ばす。


形を。


整える。


老人の。


目は。


素材から。


離れない。


やがて。


槌が。


止まった。


「嬢ちゃん」


「はい」


また。


リーナ。


今度は。


老人が。


冷ました。


素材を。


渡す。


「見ろ」


「……」


リーナが。


触れる。


「さっきのところ」


「どうだ」


指が。


進む。


さっき。


止まった。


場所。


そこを。


越える。


「……通ってます」


老人が。


頷く。


「その先は」


「ここまで」


「まだ」


「途中で」


「止まってます」


「そうか」


また。


老人が。


素材を。


受け取る。


俺は。


ようやく。


気づいた。


「道……」


老人が。


こっちを見る。


「なんだ」


「地竜の」


「魔力が」


「通ってた道」


「それを」


「見てるんですか?」


老人が。


鼻を鳴らす。


「見てるのは」


「俺じゃねえ」


リーナを見る。


「こいつだ」


「……」


「俺には」


「素材が」


「分かる」


老人が。


黒い素材を。


持ち上げる。


「どこが」


「硬い」


「どこが」


「脆い」


「どう熱を」


「入れる」


「どこを」


「叩く」


「それは」


「分かる」


でも。


老人の。


指が。


青白い筋へ。


触れる。


「こいつの中を」


「流れてたものまでは」


「分からねえ」


リーナが。


自分の手を見る。


「……私には」


「それが」


「分かる」


「ああ」


「だから」


老人が。


言う。


「それだけ」


「教えろ」


「どこを」


「叩くかは」


「俺が決める」


「……はい」


リーナが。


頷いた。


それで。


いい。


リーナは。


鍛冶師じゃない。


剣を。


作れるわけじゃない。


老人は。


魔力の流れを。


リーナみたいに。


感じられるわけじゃない。


でも。


老人には。


剣を。


打てる。


リーナには。


流れが。


分かる。


二人にしか。


できないことが。


違う。


「で」


老人が。


俺たちを見る。


「お前らは」


「まだ」


「いるのか」


「……」


セリアが。


一歩。


前へ。


出る。


「邪魔」


「しません」


「……」


「喋りません」


「今」


「喋ってるな」


「今だけ」


「……」


老人が。


深く。


息を吐く。


「勝手にしろ」


セリアの。


顔が。


明るくなる。


「ただし」


「邪魔したら」


「叩き出す」


「はい!」


「声が」


「でけえ」


「……はい」


今度は。


小さい。


俺も。


工房の。


端へ。


移動する。


リーナは。


老人の。


近く。


セリアは。


そこから。


少し離れた場所。


自分の。


剣が。


生まれていく。


その様子を。


じっと。


見ていた。


◇


――カン。


――カン。


――カン。


時間が。


過ぎる。


何度も。


熱する。


何度も。


叩く。


伸ばす。


整える。


冷ます。


そして。


また。


熱する。


黒かった。


地竜の素材が。


少しずつ。


姿を。


変えていく。


最初は。


ただの。


細長い。


塊だった。


それが。


少しずつ。


刃の。


形へ。


変わっていく。


その度に。


老人が。


リーナを。


呼ぶ。


「どうだ」


リーナが。


触れる。


「……ここまで」


「こっちは」


「まだ」


「繋がってます」


「こっちは?」


「……少し」


「細いです」


「そうか」


老人が。


見る。


考える。


そして。


自分で。


決める。


――カン!!


リーナが。


言った場所を。


そのまま。


叩くわけじゃない。


違う場所を。


叩くこともある。


熱を。


入れる場所を。


変えることもある。


老人には。


老人にしか。


分からないものが。


ある。


また。


形が。


変わる。


また。


リーナが。


触れる。


それを。


何度も。


繰り返す。


そして。


ある時。


リーナが。


小さく。


声を出した。


「……あ」


老人の。


手が。


止まる。


「なんだ」


「……変わってます」


「何がだ」


「流れが」


リーナの。


指が。


素材を。


なぞる。


「最初と」


「違います」


「地竜だった時は」


「もっと」


「いくつも」


「分かれてました」


身体中へ。


広がる。


道。


前脚。


胴。


首。


全身へ。


魔力を。


送っていた。


流れ。


でも。


今。


リーナが。


触れている。


素材は。


違う。


「今は」


指が。


進む。


「こっちへ」


一本。


長く。


伸びる。


「真っ直ぐ」


「流れようと」


「してます」


老人が。


素材を見る。


「当たり前だ」


「……え?」


「もう」


老人が。


槌を。


持つ。


「地竜じゃ」


「ねえ」


赤く。


熱せられた。


素材。


台の上へ。


置く。


「剣に」


「するんだ」


――カン!!


火花が。


散った。


「……」


セリアが。


息を。


呑む。


――カン!!


――カン!!


地竜の。


身体を。


巡っていた。


道。


それを。


そのまま。


残すんじゃない。


壊さず。


でも。


同じでもない。


剣として。


新しい。


道へ。


変えていく。


老人が。


言った。


これを。


殺さず。


剣にする。


その意味が。


少しだけ。


分かった。


◇


どれくらい。


経ったのか。


分からない。


炉の。


火。


槌の。


音。


汗。


熱。


老人は。


ほとんど。


休まない。


セリアも。


ずっと。


見ている。


一度も。


暇なんて。


言わなかった。


そして。


また。


老人が。


槌を。


置いた。


「嬢ちゃん」


「はい」


「もう一度」


「見ろ」


冷ました。


刃。


今度は。


もう。


素材とは。


呼べなかった。


剣。


まだ。


仕上げられて。


いない。


柄も。


ない。


刃だけ。


それでも。


確かに。


剣の。


形を。


している。


リーナが。


両手で。


受け取る。


「……」


指先を。


根元へ。


触れる。


目を。


閉じる。


ゆっくり。


進む。


根元。


刃の。


中ほど。


少し。


止まる。


また。


進む。


さらに。


先へ。


老人が。


聞く。


「どこまでだ」


リーナは。


答えない。


まだ。


指が。


進んでいる。


そして。


切っ先。


そこで。


止まった。


目を。


開く。


「……全部」


老人の。


目が。


細くなる。


「途切れてねえか」


「はい」


「細くなってるところは」


「……あります」


「でも」


もう一度。


根元から。


切っ先を見る。


「全部」


「繋がってます」


「そうか」


老人が。


刃を。


受け取る。


しばらく。


眺める。


そして。


台へ。


置く。


槌を。


握る。


最後に。


一度。


大きく。


振り上げる。


――カン。


高い。


澄んだ。


音。


黒い。


刃。


その中。


根元から。


切っ先へ。


青白い。


細い光が。


一瞬だけ。


走った。


「……!」


セリアが。


前へ。


出そうになる。


老人が。


刃を見る。


長い。


沈黙。


そして。


小さく。


頷いた。


「……よし」


「できた!?」


セリアが。


我慢できず。


声を出す。


老人が。


振り返る。


「まだだ」


「え!?」


「今」


「よしって」


「言ったじゃん!」


「剣の形に」


「なっただけだ」


「……」


セリアが。


黒い刃を見る。


もう。


剣にしか。


見えない。


でも。


老人にとっては。


まだ。


完成じゃない。


「仕上げが」


「残ってる」


老人が。


刃を。


持ち上げる。


「それに」


一瞬。


セリアを見る。


「こいつが」


「本当に」


「お前の剣に」


「なるかどうかは」


「まだ」


「分からねえ」


「……え?」


老人は。


それ以上。


何も。


言わなかった。


ただ。


黒い刃を。


もう一度。


見つめる。


その奥。


青白い。


細い道が。


僅かに。


残っていた。



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