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転生したら最強ジョブだが最凶だった件 ~伝説の【神銃士】になったのに、一発も撃てない~  作者: 蝶野摩矢
鍛冶の街アルト編

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48/68

持ち帰ったもの

帰り道は。


静かだった。


いや。


静かに。


進んだ。


地竜を。


倒した。


だからって。


俺たちが。


深層域で。


無敵になった。


わけじゃない。


俺の神器には。


もう。


弾がない。


【残弾数:0/1】


セリアの剣には。


亀裂。


俺も。


セリアも。


傷だらけ。


リーナだけは。


大きな怪我を。


していない。


それでも。


疲れている。


だから。


戦わない。


見つけても。


避ける。


遠回りに。


なっても。


安全な道を。


選ぶ。


今。


必要なのは。


もう一体。


倒すことじゃない。


帰ること。


三人で。


地上へ。


帰ることだ。


◇


第三層域。


第二層域。


第一層域。


少しずつ。


見慣れた景色へ。


戻っていく。


そして。


長い通路の。


向こう。


光。


「……」


セリアが。


足を止めた。


「……帰ってきた」


「うん」


俺も。


少しだけ。


息を吐く。


後ろから。


リーナが。


ついてくる。


その腰には。


いつもの短剣。


そして。


背負った袋の中には。


黒い甲殻。


爪。


牙。


俺たちが。


持ち帰れるだけ。


持ってきた。


地竜の。


素材。


でも。


ほとんどは。


まだ。


深層域に。


残っている。


巨大な。


あの身体を。


三人で。


運べるわけが。


なかった。


「行こう」


「うん」


「……はい」


俺たちは。


ダンジョンを。


出た。


◇


ギルドへ。


入る。


いつもと。


変わらない。


冒険者たち。


受付。


依頼書。


でも。


俺たちを見ると。


受付の女性が。


少しだけ。


目を見開いた。


「お帰りなさい」


「深層域へ」


「行かれていたんですよね?」


「はい」


「三人とも」


「ご無事で……」


視線が。


セリアの。


左肩へ。


移る。


それから。


亀裂の入った。


剣。


俺の。


傷。


「……では」


「なさそうですね」


「まあ」


「色々」


「ありました」


「何か」


「異常が?」


俺は。


少し。


考える。


どこから。


話せばいい。


古い。


遺跡。


壁を流れる。


魔力。


深い場所から。


響く。


――ゴウン。


そして。


地竜。


「深層域で」


「地竜と」


「遭遇しました」


「……」


受付の女性の。


動きが。


止まった。


「地竜……ですか?」


「はい」


「黒い」


「甲殻の」


「……」


表情が。


変わる。


「逃げ切ったんですか?」


「いえ」


「……え?」


俺は。


後ろを見る。


リーナが。


背負っていた袋を。


降ろす。


――ゴトッ。


重い。


音。


袋を。


開く。


黒い。


甲殻。


欠けた。


牙。


太い。


爪。


受付の女性が。


それを見る。


「これ……」


「倒しました」


「……」


「三人で」


しばらく。


何も。


返ってこなかった。


「少々」


「お待ちください」


受付の女性が。


奥へ。


消えていった。


◇


待つこと。


少し。


何人かの。


職員が。


出てきた。


年配の。


職員もいる。


黒い甲殻を。


手に取る。


「……硬いな」


爪。


牙。


一つずつ。


確認していく。


「場所は?」


地図を。


広げる。


俺は。


指を置く。


深層域。


巨大な。


人工物の。


奥。


「あの辺りです」


「死体は?」


「残ってます」


「持って帰れる分だけ」


「持ってきました」


職員が。


頷く。


そして。


別の職員が。


古い記録を。


持ってきた。


何枚もの。


紙。


その中から。


一枚。


机へ。


置かれる。


【深層域にて黒色の地竜を確認】


【交戦を避け撤退】


「……」


もう一枚。


【攻撃が外皮を通らず】


【負傷者一名】


【撤退】


黒い。


地竜。


同じ。


個体なのか。


断定は。


できない。


でも。


「以前から」


「いたんですか?」


「目撃記録は」


「あります」


職員が。


答える。


「地竜自体」


「深層域では」


「危険度の高い魔物です」


「熟練の冒険者でも」


「見つければ」


「基本的には」


「交戦を避けます」


「……」


「特に」


職員が。


黒い甲殻へ。


触れる。


「黒い個体については」


「外皮が異常に硬いという」


「記録が」


「いくつか残っています」


セリアが。


小さく。


呟く。


「……やっぱり」


「硬かったもんね」


硬かった。


なんて。


言葉で。


済ませていいのか。


分からないくらいには。


硬かったけど。


「討伐した記録は?」


俺が聞く。


職員は。


少し。


黙った。


それから。


首を横へ。


振る。


「少なくとも」


「アルトのギルドに」


「残っている記録では」


「ありません」


「……」


セリアが。


俺を見る。


俺も。


セリアを見る。


リーナは。


黒い甲殻を。


見ていた。


「ただ」


職員が。


続ける。


「深層域は」


「未探索の場所も」


「多い」


「過去の記録も」


「完全ではありません」


「ですから」


「これが」


「初めて討伐された地竜だと」


「いう意味では」


「ありません」


「はい」


それで。


十分だった。


世界で。


初めてとか。


そんなことは。


どうでもいい。


俺たちは。


あいつと。


戦った。


そして。


三人で。


倒した。


それだけで。


十分だ。


「死体についてですが」


職員が。


地図を見る。


「ギルドから」


「回収隊を」


「出します」


「回収?」


「はい」


「この量の素材を」


「深層域に」


「残しておくのは」


「惜しいですから」


確かに。


甲殻。


爪。


牙。


それだけでも。


かなりの。


素材になる。


「ただ」


「深層域です」


「解体のできる者だけでは」


「向かえません」


「護衛と」


「運搬要員を」


「集める必要があります」


「少し」


「時間をください」


「分かりました」


「それと」


職員が。


俺たちを見る。


「回収できた素材については」


「討伐者である」


「皆さんに」


「優先権があります」


「俺たちに?」


「はい」


「必要な素材があれば」


「優先して」


「確保できます」


「残りについても」


「希望されるのであれば」


「ギルドで」


「買い取ります」


思ったより。


大きな話に。


なってきた。


でも。


必要な素材。


その言葉で。


俺と。


リーナの視線が。


同時に。


一人へ。


向いた。


「……何?」


セリアが。


俺たちを見る。


「いや」


「ちょうど」


「素材を探してる奴が」


「いたなって」


「……」


セリアが。


自分の剣を見る。


亀裂。


入っている。


「…………」


「行く?」


リーナが。


聞く。


セリアは。


少し。


黙った。


「……行く」


「うん」


「でも」


「その前に」


「何?」


セリアが。


亀裂の入った。


剣を見る。


「……怒られるかな」


「多分」


「怒られると思う」


「レン」


「そこは」


「大丈夫って」


「言ってよ」


「壊すなって」


「言われてたし」


「……折れてない」


「亀裂入ってるけど」


「折れてない」


「うん」


「それ」


「本人に言ってみたら?」


「……」


セリアが。


黙った。


◇


工房。


いつもの。


金属を。


叩く音。


――カン。


――カン。


――カン。


俺たちが。


中へ入る。


老人が。


顔を上げた。


最初に。


俺。


次に。


リーナ。


そして。


セリア。


その腰。


いや。


剣へ。


目が止まる。


「……」


セリアの。


背筋が。


伸びた。


「……ただいま」


「……」


老人が。


手を出す。


「貸せ」


「……はい」


セリアが。


恐る恐る。


剣を。


渡す。


老人が。


鞘から。


抜く。


刃を見る。


亀裂。


指で。


なぞる。


「……」


「……」


「壊すなと」


「言ったよな」


「……はい」


「言ったよな?」


「……はい」


「……」


セリアが。


小さく。


付け足す。


「折れては」


「ないです」


老人が。


顔を上げる。


「そういう問題じゃ」


「ねえ」


「……はい」


俺は。


少しだけ。


顔を。


逸らした。


笑ったら。


多分。


怒られる。


リーナも。


口元を。


少しだけ。


押さえている。


「で」


老人が。


剣を。


机へ置く。


「何と」


「やり合った」


俺は。


持ってきた。


袋を。


机へ。


置いた。


中から。


黒い甲殻を。


取り出す。


――ゴトッ。


老人の目が。


変わった。


「……」


甲殻。


触る。


持ち上げる。


裏返す。


次に。


爪。


牙。


何も。


言わない。


しばらく。


見続ける。


やがて。


「……地竜か」


「はい」


「深層域で」


「戦いました」


老人が。


甲殻を。


もう一度。


見る。


「…………いや」


指が。


止まる。


「こいつ」


「普通の」


「地竜じゃねえな」


「分かるんですか?」


「外側は」


指で。


叩く。


――コン。


硬い。


高い。


音。


「馬鹿みてえに」


「硬い」


「でも」


老人が。


割れた。


甲殻の。


内側を見る。


地竜を。


倒した時。


砕けた部分。


そこには。


僅かに。


青白い。


筋のようなものが。


残っている。


「こっちは」


「違う」


リーナが。


近づいた。


「……触っても」


「いいですか?」


老人が。


甲殻を。


差し出す。


リーナの。


指先が。


触れる。


「……」


目を。


閉じる。


少しして。


「……ここ」


指が。


動く。


青白い。


筋。


その上を。


ゆっくり。


なぞる。


「まだ」


「少しだけ」


「分かります」


老人が。


リーナを見る。


「何がだ」


「戦ってた時に」


「流れてたところです」


「魔力が?」


「……はい」


「地竜の中を」


「ここから」


「流れてました」


老人が。


黙る。


甲殻を見る。


リーナを見る。


もう一度。


甲殻。


「……なるほどな」


「何か」


「分かったんですか?」


俺が聞く。


老人は。


答えず。


別の破片を。


手に取る。


表。


裏。


断面。


一つずつ。


確認していく。


「長いこと」


「濃い魔力に」


「晒されてやがる」


「長いこと……」


「どれくらいですか?」


「知らん」


即答。


「場所も」


「時間も」


「俺には」


「分からん」


老人が。


甲殻を。


机へ置く。


「ただ」


「普通の地竜が」


「普通に育って」


「こうなった」


「ようには」


「見えねえ」


深層域。


あの。


異常に。


濃い魔力。


そして。


――ゴウン。


頭に。


浮かぶ。


でも。


まだ。


何も。


分からない。


老人が。


セリアを見る。


「お前」


「言ったな」


「……?」


「もっと」


「強くなるって」


セリアの。


表情が。


変わる。


あの日。


この工房で。


老人に。


言った言葉。


「……はい」


今度は。


迷わなかった。


「強くなります」


老人が。


小さく。


鼻を鳴らす。


「なら」


「今のお前に」


「合わせるだけじゃ」


「足りねえな」


「え?」


老人が。


黒い甲殻を。


持ち上げる。


「硬いだけの」


「素材なら」


「剣には」


「ならねえ」


その指が。


内側の。


青白い筋へ。


触れる。


「だが」


「こいつには」


「魔力が」


「通った跡がある」


リーナが。


甲殻を見る。


老人が。


続ける。


「硬くて」


「魔力を通す」


「全部」


「見ねえと」


「分からんが」


甲殻を。


机へ。


置く。


「使える」


セリアが。


一歩。


前へ出る。


「じゃあ……」


「ああ」


老人が。


セリアを見る。


「約束は」


「守ったみてえだな」


「……」


「持ってこいと」


「言っただろ」


「お前が」


「自分で」


「持ち帰れるものをな」


セリアが。


黒い甲殻を見る。


あの。


地竜。


何度。


斬っても。


通らなかった。


剣に。


亀裂が。


入っても。


何度も。


同じ場所を。


斬った。


そして。


最後に。


破壊した。


その。


甲殻。


「……はい」


老人が。


その素材へ。


手を置く。


そして。


言った。


「お前の剣を」


「打つぞ」



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