流れるもの
「グォォォォォォォッ!!」
地竜の。
咆哮。
広い。
空間が。
震える。
俺は。
剣を。
構える。
セリアも。
借りた剣を。
握る。
リーナは。
地竜から。
目を。
離さない。
さっき。
一瞬だけ。
見えた。
地竜の。
中を。
流れる。
魔力。
「リーナ!」
「さっきの!」
「もう一度」
「分かりそうか!?」
「……分かりません!」
地竜が。
動く。
「来る!」
――ドンッ!!
巨体が。
床を。
蹴る。
俺は。
横へ。
飛ぶ。
直後。
地竜の。
頭が。
さっきまで。
俺がいた場所を。
通り過ぎる。
「っ!」
速い。
何度。
見ても。
この巨体の。
動きじゃない。
地竜が。
止まる。
前脚が。
床を。
削る。
「でも!」
リーナの。
声。
「確かに!」
「見えたんです!」
「魔力が!」
「地竜の」
「中を!」
地竜が。
俺へ。
向き直る。
「分かった!」
「無理に」
「見るな!」
「はい!」
今は。
それでいい。
一度。
見えた。
なら。
また。
何か。
分かるかもしれない。
俺は。
地竜の。
横へ。
走る。
地竜の。
目が。
追う。
身体が。
こちらへ。
向く。
その反対。
「セリア!」
「うん!」
セリアが。
踏み込む。
狙うのは。
同じ。
場所。
すでに。
白い傷が。
ついている。
甲殻。
――ギィン!!
「くっ……!」
弾かれる。
でも。
傷は。
消えない。
僅かに。
深くなる。
「もう一回!」
俺が。
地竜の。
前へ。
回る。
剣を。
振る。
――ガキン!
効かない。
でも。
こっちを。
見る。
「グルル……!」
前脚。
来る。
「っ!」
避ける。
爪が。
床へ。
食い込む。
その瞬間。
セリアが。
走る。
――ギィン!!
また。
同じ。
場所。
「まだ!」
セリアが。
下がる。
地竜が。
振り向く。
尾が。
薙ぐ。
「セリア!」
「分かってる!」
しゃがむ。
頭上を。
尾が。
通る。
そのまま。
セリアが。
距離を。
取る。
俺も。
地竜から。
離れる。
「…………」
硬い。
それでも。
傷は。
増えている。
壊せない。
わけじゃない。
その時。
――ゴウン。
「……!」
床を。
青白い。
光が。
走った。
地竜の。
足元へ。
そして。
黒い。
甲殻の。
隙間。
青白い筋が。
一瞬。
強く。
光る。
「……また!」
リーナが。
声を。
上げた。
地竜の。
身体を。
見る。
じっと。
目を。
凝らす。
「…………」
「リーナ?」
「待ってください!」
地竜の。
甲殻。
その。
隙間を。
走る。
光。
リーナの。
目が。
それを。
追う。
「流れてる……」
「何が?」
「魔力です」
「さっきと」
「同じです」
地竜が。
身体を。
動かす。
光が。
薄れる。
「……っ」
リーナが。
眉を。
寄せる。
「駄目……」
「消えました」
「見えなくなった?」
「はい」
少し。
間を。
置いて。
「でも」
「さっきより」
「分かりました」
地竜が。
俺たちを。
睨む。
俺は。
剣を。
握り直す。
「何が?」
「……流れです」
リーナが。
自分の。
手を見る。
「武器の声とは」
「少し」
「違います」
「声?」
「じゃない……」
言葉を。
探している。
「流れてるのが」
「分かるんです」
「地竜の」
「中を」
「魔力が」
「通ってるのが」
「…………」
生き物の。
中。
今まで。
リーナが。
調律してきた。
武器とは。
違う。
「それで」
「何か」
「分かりそうか?」
「……まだ」
「分かりません」
リーナが。
首を。
振る。
「ただ」
「魔力が」
「流れてるのが」
「少しだけ」
「分かります」
「弱点とかは?」
「……分かりません」
「でも」
「もう一度」
「見えたら」
リーナが。
地竜を見る。
「何か」
「分かるかも」
「しれません」
それで。
十分だ。
「次」
「また光ったら」
「見てくれ」
「はい!」
「でも」
俺は。
リーナを見る。
「無理はするな」
「…………はい」
返事まで。
少し。
間が。
あった。
リーナは。
まだ。
地竜を。
見ている。
何か。
気になることが。
あるのか。
それとも。
何かを。
掴みかけているのか。
まだ。
分からない。
でも。
今は。
地竜から。
目を。
離せない。
「来るよ!」
セリアの。
声。
地竜が。
走る。
*
何度。
剣を。
振ったか。
分からない。
俺の。
剣では。
傷すら。
つかない。
だから。
倒そうとは。
しない。
俺が。
やるのは。
一つ。
地竜を。
動かす。
セリアが。
斬れる。
向きへ。
「こっちだ!」
地竜の。
左へ。
走る。
目が。
俺を。
追う。
首が。
動く。
身体が。
向く。
その分。
傷のある。
右側が。
開く。
「セリア!」
「見えてる!」
セリアが。
走る。
白い。
傷。
そこへ。
剣を。
振り下ろす。
――ギィン!!
「っ……!」
金属音。
セリアの。
腕が。
弾かれる。
でも。
次の瞬間。
――ピシッ。
小さな。
音。
「…………!」
セリアが。
止まる。
俺も。
見た。
白い傷。
その。
中心。
細い。
線。
「……亀裂」
セリアが。
呟く。
地竜の。
甲殻に。
初めて。
亀裂が。
入った。
「割れる……」
セリアが。
剣を。
握り直す。
「これ」
「割れるよ!」
「ああ!」
やっと。
見えた。
俺たちの。
剣でも。
届く。
可能性。
でも。
地竜も。
気づいた。
「グォォォッ!!」
地竜が。
身体を。
大きく。
捻る。
尾。
「下がれ!」
――ドォン!!
床が。
砕ける。
石片が。
飛ぶ。
さらに。
前脚。
爪。
噛みつき。
今までより。
激しい。
「っ……!」
避ける。
避ける。
反撃する。
余裕が。
ない。
「レン!」
セリアが。
叫ぶ。
「一回!」
「向けて!」
分かってる。
でも。
簡単じゃない。
地竜も。
もう。
あの場所を。
狙われていると。
分かっている。
俺が。
右へ。
動けば。
同じように。
身体を。
動かす。
傷のある。
側を。
見せない。
「……頭いいな」
思わず。
口から。
出る。
「感心してる場合!?」
「分かってる!」
地竜が。
突っ込んでくる。
正面。
避ける。
いや。
違う。
ただ。
避けるんじゃない。
俺は。
左へ。
走った。
地竜の。
顔が。
俺を。
追う。
さらに。
左。
柱の。
横。
「レン!」
地竜が。
俺へ。
向きを。
変える。
その。
瞬間。
傷のある。
右側。
「今!」
セリアが。
飛び込む。
――ギィン!!
亀裂が。
伸びる。
「よし!」
セリアが。
離れる。
「もう少し!」
でも。
まだ。
足りない。
その時。
――ゴウン。
「……!」
来た。
青白い。
光。
床から。
地竜へ。
黒い。
甲殻の。
隙間に。
光が。
走る。
「リーナ!」
「見てます!」
リーナの。
目が。
地竜を。
追う。
「…………」
地竜の。
首。
胸。
前脚。
腹。
細い。
光。
何本も。
走る。
「多い……」
リーナが。
呟く。
「いっぱい」
「流れて……」
地竜が。
動く。
「……待って」
リーナの。
目が。
止まった。
「今……」
光が。
薄れる。
「くっ……」
消える。
「どうした!?」
「……分かりません」
リーナが。
悔しそうに。
首を。
振る。
「でも」
「何か」
「ありました」
「何が?」
「一瞬」
「同じところを」
「通ったような……」
同じ。
場所。
「どこだ?」
「まだ」
「分かりません」
「次」
リーナが。
地竜を見る。
「次なら」
「もう少し」
「分かるかもしれません」
「分かった」
次の。
ゴウン。
それまで。
生き残る。
*
地竜の。
爪が。
床を。
抉る。
俺は。
転がる。
「っ……!」
肩が。
床へ。
ぶつかる。
痛い。
でも。
動く。
立つ。
「レンさん!」
「大丈夫!」
地竜が。
こちらへ。
来る。
「セリア!」
「うん!」
今度は。
セリアが。
前へ。
出る。
地竜の。
注意が。
一瞬。
そちらへ。
向く。
俺が。
横へ。
回る。
剣で。
甲殻を。
叩く。
――ガキン!!
「こっちだ!」
地竜が。
振り向く。
「今!」
セリア。
――ギィン!!
亀裂。
また。
少し。
広がる。
一回。
また。
一回。
少しずつ。
地竜の。
甲殻を。
削っていく。
息が。
上がる。
セリアも。
額に。
汗。
それでも。
止まれない。
「グォォォォッ!!」
地竜が。
吠える。
前脚が。
床を。
叩く。
――ドンッ!!
揺れる。
「っ!」
身体が。
ぶれる。
その隙。
地竜が。
セリアへ。
突っ込む。
「セリア!」
「っ!」
避ける。
でも。
完全には。
間に合わない。
肩へ。
地竜の。
身体が。
掠る。
「くっ……!」
セリアが。
飛ばされる。
「セリア!」
床を。
転がる。
「大丈夫!」
すぐに。
立つ。
でも。
左肩を。
一度。
押さえた。
無傷じゃない。
「無理するな!」
「それ」
「レンもでしょ!」
「…………」
何も。
言えない。
その時。
――ゴウン。
三度目。
「リーナ!」
「はい!」
床を。
光が。
走る。
地竜の。
身体。
青白い。
筋。
リーナが。
目を。
見開く。
「…………」
今度は。
最初から。
待っていた。
首から。
流れる。
光。
脚から。
流れる。
光。
腹。
背。
いくつもの。
流れ。
それが。
「……違う」
リーナが。
呟く。
「何が!?」
「全部」
「同じじゃ」
「ないです!」
地竜が。
動く。
それでも。
リーナは。
目を。
離さない。
「一回」
「集まって……」
「そこから」
「また……」
リーナの。
顔が。
動く。
地竜の。
右側。
前脚。
その。
少し。
上。
「レンさん!」
「右です!」
「前脚の!」
「少し上!」
見る。
そこには。
セリアが。
何度も。
斬った。
甲殻。
その。
亀裂から。
少し。
内側。
「そこに」
「何がある!?」
「分かりません!」
リーナが。
叫ぶ。
「でも!」
「魔力が!」
「一度!」
「そこに集まって!」
「そこから!」
「全身へ!」
「流れてます!」
「弱点か!?」
「……分かりません!」
即答。
でも。
リーナは。
続けた。
「でも!」
「あそこが!」
「一番!」
「濃いです!」
地竜の。
光が。
消える。
それでも。
場所は。
分かった。
俺は。
その場所を。
見る。
甲殻。
黒い。
分厚い。
鎧。
そして。
すぐ近くには。
セリアが。
作った。
亀裂。
「レンさん!」
リーナが。
俺を見る。
「撃つなら!」
一瞬。
迷って。
それでも。
言った。
「多分!」
「あそこです!」
「…………」
やっと。
見えた。
撃つ。
場所。
でも。
まだ。
甲殻が。
ある。
魔力弾なら。
抜けるかもしれない。
でも。
分からない。
一発。
それしか。
ない。
なら。
できることは。
全部。
やる。
「セリア!」
「うん!」
「頼めるか?」
俺が。
亀裂を。
見る。
セリアも。
そこを見る。
それから。
リーナが。
示した。
場所。
「……あそこを」
「割れば」
「いいんだね」
「ああ」
セリアが。
借りた剣を。
構える。
「やる」
迷いのない。
声。
「そのために」
「この剣」
「借りたんだから」
地竜が。
俺たちへ。
向き直った。
*
そこからは。
一つの。
場所だけを。
狙った。
俺が。
走る。
地竜を。
動かす。
セリアへ。
右側を。
向ける。
「今!」
――ギィン!!
亀裂が。
伸びる。
地竜が。
暴れる。
離れる。
また。
俺が。
引きつける。
「セリア!」
――ギィン!!
また。
一つ。
「もう一回!」
――ガキィン!!
「くっ……!」
セリアの。
手から。
剣が。
落ちそうになる。
それでも。
握る。
地竜の。
甲殻。
亀裂が。
少しずつ。
広がる。
「あと……」
セリアが。
息を。
吐く。
「もう少し……!」
地竜が。
吠える。
俺が。
走る。
また。
向きを。
変える。
「今だ!」
セリアが。
踏み込む。
剣を。
振る。
――ギィン!!
そして。
――ピシッ。
「…………!」
音。
亀裂。
さらに。
広がった。
そう。
思った。
でも。
セリアが。
止まっている。
「セリア?」
視線。
地竜じゃない。
自分の。
手。
借りた。
剣。
その。
刃。
細い。
線。
「……嘘」
剣にも。
亀裂。
「剣……!」
「…………」
セリアが。
それを見る。
一瞬。
あの。
老人の。
声が。
頭を。
よぎったのかもしれない。
――壊すなよ。
セリアが。
小さく。
息を。
吐く。
「……ごめん」
誰に。
言ったのか。
聞かなくても。
分かった。
「セリア!」
「剣!」
「まだ!」
セリアが。
構える。
「まだ」
「いける!」
「でも――」
「折れてない!」
地竜を見る。
「それに」
甲殻の。
亀裂。
「向こうも」
「もう少し!」
確かに。
そうだ。
地竜の。
甲殻。
セリアの。
剣。
どちらにも。
亀裂。
どちらが。
先に。
壊れる。
「…………」
俺は。
息を。
整える。
地竜も。
もう。
簡単には。
右側を。
見せない。
傷を。
庇うように。
身体を。
向けている。
必要なのは。
あと。
一度。
セリアが。
あそこへ。
届く。
瞬間。
それだけ。
「セリア」
「うん」
「あと一回」
俺は。
剣を。
構える。
「俺が」
「作る」
セリアが。
亀裂の入った。
借り物の剣を。
握り直す。
「分かった」
リーナも。
地竜を。
見る。
その時。
――ゴウン。
青白い。
光が。
走る。
地竜の。
身体。
その。
中。
リーナが。
目を。
見開いた。
「まだ!」
「そこです!」
地竜が。
低く。
唸る。
「グルルルル……!」
俺は。
一歩。
前へ。
出た。
セリアも。
剣を。
構える。
次で。
あの甲殻を。
破壊する。




