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転生したら最強ジョブだが最凶だった件 ~伝説の【神銃士】になったのに、一発も撃てない~  作者: 蝶野摩矢
鍛冶の街アルト編

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できること

翌朝。


目が。


覚めた。


窓の外は。


まだ。


少し暗い。


身体を。


起こす。


「……痛っ」


昨日。


石が当たった。


腕。


布を。


巻いている。


大した傷じゃ。


ない。


動かせる。


ベッドから。


降りる。


顔を。


洗って。


部屋を。


出た。


その時。


気づいた。


「……リーナ?」


いない。


部屋にも。


廊下にも。


姿が。


見えない。


こんな朝早くに。


どこへ。


行ったんだ。


宿の。


一階へ。


降りる。


店の人に。


聞くと。


少し前に。


外へ出たらしい。


「……どこ行ったんだ?」


俺も。


宿を。


出た。


◇


見つけたのは。


宿の。


裏だった。


建物と。


建物の間。


少しだけ。


開けた場所。


そこに。


リーナが。


いた。


一人で。


座っている。


手には。


あの。


短剣。


ずっと。


持っている。


古い。


短剣。


両手で。


握って。


目を。


閉じている。


「……お願い」


小さな。


声。


「少しだけで」


「いいから……」


リーナの。


手に。


力が。


入る。


「……」


何も。


起きない。


リーナが。


目を。


開ける。


短剣を見る。


もう一度。


握る。


「もう一回……」


「リーナ」


「っ!」


肩が。


跳ねた。


振り返る。


「レンさん……」


「何してるんだ?」


聞かなくても。


分かっている。


リーナも。


それが。


分かったのか。


短剣を。


隠さなかった。


「少し」


「試してました」


「調律を?」


「……はい」


俺は。


リーナの。


隣に。


座る。


短剣を見る。


昨日。


神銃に。


触れた時。


リーナは。


何も。


感じられなかった。


今も。


同じなんだろう。


「聞こえた?」


リーナが。


首を。


横に振る。


「何も」


「……そうか」


「でも」


リーナが。


短剣を。


握り直す。


「もう少し」


「やってみます」


「リーナ」


「大丈夫です」


すぐに。


返ってきた。


「もう少しだけ」


「頑張れば」


「また」


「聞こえるかもしれません」


目を。


閉じる。


短剣を。


握る。


その手を。


見た。


力が。


入りすぎている。


指が。


白くなっている。


昨日も。


同じだった。


神銃に。


触れて。


何も。


聞こえなくて。


それでも。


何度も。


触れようとした。


その姿を。


見て。


思い出した。


王都での。


戦い。


神銃に。


触れ続ける。


リーナ。


震える。


腕。


血の。


滲んだ。


指。


それでも。


離さなかった。


最後には。


立っていることも。


できなくなって。


倒れた。


「もういい」


「……え?」


リーナが。


目を開ける。


「今日は」


「もう」


「やめよう」


「でも」


「リーナ」


「私が」


リーナが。


短剣を。


胸の前で。


握る。


「できるように」


「ならないと」


「昨日も」


「私」


「何も」


「できませんでした」


「……」


「レンさんが」


「怪我をして」


俺の。


腕を見る。


「セリアさんの剣も」


「傷ついて」


「神器にも」


「何も」


「できなくて……」


声が。


小さくなる。


「だから」


「もう少し」


「頑張れば」


「また」


「聞こえるかもしれません」


短剣を。


握る。


もう一度。


目を。


閉じようとする。


俺は。


その手を。


止めた。


「できるかどうかじゃない」


リーナが。


俺を見る。


「無理してまで」


「やってほしいなんて」


「俺は」


「言ってない」


「……でも」


リーナが。


俺の手から。


視線を。


外す。


「私が」


「繋げなかったら」


「レンさんは」


「神器を」


「撃てません」


何も。


言えなかった。


違う。


とは。


言えない。


俺は。


一人じゃ。


次の弾を。


装填できない。


リーナが。


いなければ。


次の一発を。


撃てない。


「……そうだな」


リーナが。


顔を上げる。


「リーナがいないと」


「俺は」


「次の一発を」


「撃てない」


「だったら――」


「でも」


言葉を。


止める。


「だからって」


「お前が」


「壊れるまで」


「やっていい理由には」


「ならないだろ」


「……」


「俺だって」


「強くなる」


自分の。


手を見る。


昨日。


ほとんど。


通らなかった。


俺の剣。


逃げることしか。


できなかった。


「次に」


「リーナが」


「繋いでくれた時」


「俺が」


「もっと強ければ」


「お前が」


「あそこまで無理しなくても」


「済むかもしれないだろ」


「レンさん……」


「頼らないって」


「言ってるんじゃない」


俺は。


リーナを見る。


「俺は」


「これからも」


「リーナを頼る」


「だから」


「一人で全部」


「背負うな」


リーナは。


何も。


言わなかった。


ただ。


短剣を。


見つめていた。


しばらくして。


小さく。


「……はい」


そう。


答えた。


◇


「こんなところにいた」


声が。


聞こえた。


振り返る。


セリア。


「二人とも」


「朝ご飯」


「冷めるよ」


「探してたのか?」


「リーナがいないって」


「聞いたから」


セリアが。


俺の隣に。


来る。


そして。


リーナの。


手にある。


短剣を。


見る。


「調律?」


リーナが。


少し。


俯く。


「……はい」


「聞こえた?」


「……いいえ」


「そっか」


それだけ。


セリアは。


言った。


そして。


腰の剣を。


抜く。


王都で。


買った。


代わりの剣。


刃には。


昨日できた。


欠け。


いくつもの。


傷。


「こっちも」


「どうにかしないとなぁ」


「今日は」


「ダンジョン」


「行かないよ」


俺が。


セリアを見る。


「珍しく」


「意見が合ったな」


「どういう意味?」


「いや」


「そのままの意味」


「レン」


「怪我してる腕」


「叩こうか?」


「やめろ」


リーナが。


小さく。


笑った。


昨日から。


初めて。


見た。


笑顔だった。


セリアが。


剣を。


鞘へ。


戻す。


「昨日は」


「私たち」


「準備不足だった」


「私の剣も」


「このままじゃ」


「厳しいし」


「レンも」


「もっと」


「剣を」


「練習した方がいい」


「おい」


「間違ってる?」


「……間違ってない」


言い返せない。


「それに」


セリアが。


リーナを見る。


「三人で」


「初めて」


「潜ったんだから」


「最初から」


「全部」


「うまくいくわけないよ」


「でも」


リーナが。


口を。


開く。


「私だけ」


「何も……」


「じゃあ」


セリアが。


言葉を。


重ねた。


「昨日」


「リーナが」


「いなかったら」


「私たち」


「もっと」


「強かった?」


「……え?」


「リーナが」


「いなかったら」


「昨日の私たち」


「もっと」


「うまく戦えた?」


リーナが。


黙る。


「違うでしょ」


セリアが。


笑う。


「三人で行って」


「三人で」


「帰ってきた」


「昨日は」


「それでいいよ」


「……」


リーナが。


短剣を。


見る。


そして。


小さく。


頷いた。


「……はい」


◇


朝食を。


食べながら。


俺たちは。


昨日のことを。


話した。


何が。


足りなかったのか。


まず。


セリアの剣。


今の。


セリアの力に。


ついてこられていない。


次に。


俺。


剣で。


戦える。


でも。


昨日の魔物には。


ほとんど。


通じなかった。


神器も。


撃てない。


そして。


リーナ。


調律が。


できない。


「……こうして考えると」


俺は。


パンを。


食べながら。


言う。


「結構」


「問題だらけだな」


「今さら?」


セリアが。


言う。


「昨日までは」


「なんとかなると」


「思ってたんだよ」


「それが」


「一番の問題だったんじゃない?」


「うるさい」


リーナが。


また。


少し笑う。


「でも」


俺は。


地図を。


机に。


広げる。


「昨日」


「分かったこともある」


第一層域。


第二層域。


第三層域。


指で。


なぞる。


「いきなり」


「奥まで行くのは」


「やめよう」


セリアが。


頷く。


「うん」


「何度か」


「第一層域と」


「第二層域に」


「潜る」


「戦い方も」


「もっと」


「合わせたい」


「素材も」


「集められるしね」


セリアが。


自分の剣を。


軽く叩く。


「俺も」


「もっと」


「剣を振る」


「今より?」


セリアが。


少し。


驚く。


「悪いかよ」


「朝も夜も」


「やってるのに?」


「足りないって」


「昨日」


「分かったからな」


それでも。


セリアには。


追いつけない。


剣士の。


ジョブを。


持っているわけでもない。


でも。


それでいい。


俺の剣は。


剣だけで。


勝つためじゃない。


神銃を。


撃つべき時まで。


立っているための。


剣だ。


だったら。


もっと。


立っていられるように。


なればいい。


「リーナは」


俺が。


言う。


リーナが。


顔を上げる。


「無理しない」


「……はい」


少し。


不満そうだ。


「返事」


「はい」


今度は。


少しだけ。


強い。


セリアが。


笑う。


「決まりだね」


俺たちは。


もう一度。


地図を見る。


昨日。


届かなかった。


場所。


すぐには。


行かない。


今度は。


ちゃんと。


準備する。


そして。


いつか。


あそこを。


越える。


◇


その夜。


リーナは。


一人。


ベッドに。


座っていた。


手には。


古い。


短剣。


鞘から。


抜く。


刃を。


見る。


ずっと。


一緒だった。


いつから。


持っていたのか。


誰から。


もらったのか。


それすら。


分からない。


でも。


気づいた時には。


いつも。


そばにあった。


リーナは。


短剣を。


握る。


目を。


閉じた。


「……」


何も。


聞こえない。


前なら。


分かった。


どこが。


悪いのか。


どこへ。


魔力を。


流せばいいのか。


今は。


何も。


分からない。


それでも。


リーナは。


短剣を。


鞘へ。


戻した。


そして。


枕元へ。


置く。


何も。


聞こえなくても。


その短剣を。


手放すことは。


なかった。




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