第三層域
階段を。
降りていく。
一段。
また。
一段。
下へ。
進むたび。
空気が。
冷たくなっていく。
やがて。
階段が。
終わった。
「……ここが」
セリアが。
周囲を見る。
第三層域。
そこにあったのは。
今までのような。
洞窟じゃなかった。
石の。
通路。
左右の壁は。
不自然なくらい。
真っ直ぐ。
床にも。
同じ大きさに。
切られた石が。
並んでいる。
「やっぱり」
「誰かが」
「作った場所なんですね」
リーナが。
壁を見る。
ところどころ。
古い。
模様が。
刻まれている。
何を。
意味しているのか。
俺には。
分からない。
「ずっと昔から」
「あるらしいけどな」
地図を。
開く。
第三層域。
ここから先は。
第二層域までと比べて。
道が。
複雑になっている。
「とりあえず」
「行ってみよう」
セリアが。
剣を抜く。
俺も。
剣を抜いた。
リーナを。
俺たちの間に。
三人で。
進む。
◇
最初に。
違いを感じたのは。
魔物だった。
――グルルルル。
低い。
唸り声。
通路の奥から。
何かが。
歩いてくる。
「……でかいな」
四本の。
太い足。
大きな体。
熊に。
似ている。
でも。
その身体を覆う皮膚は。
岩みたいに。
硬そうだった。
一体。
その後ろから。
もう一体。
「二体」
セリアが。
剣を構える。
「一体ずつ」
「やるぞ」
「分かった」
一体が。
地面を。
蹴った。
速い。
「セリア!」
「分かってる!」
セリアが。
前へ。
振り下ろされる。
太い腕を。
横へ。
かわす。
そのまま。
剣を。
振る。
――ガキンッ!
「硬っ……!」
剣が。
弾かれた。
それでも。
傷は。
入っている。
魔物が。
セリアへ。
向きを変える。
もう一体が。
俺を見る。
「こっちは」
「俺かよ」
走ってくる。
俺は。
剣を。
構えた。
受けるな。
あれを。
正面から受けたら。
多分。
俺の方が。
飛ぶ。
直前で。
横へ。
――ブンッ!
太い腕が。
目の前を。
通り過ぎる。
俺は。
脇腹へ。
剣を。
振る。
――ガッ!
浅い。
「くそっ」
硬い。
魔物が。
身体ごと。
ぶつかってくる。
後ろへ。
飛ぶ。
距離を。
取る。
倒す。
違う。
今は。
倒さなくていい。
セリアが。
向こうを。
倒すまで。
こいつを。
こっちに。
引きつける。
もう一度。
魔物が。
突っ込んでくる。
避ける。
剣を。
当てる。
浅い。
また。
避ける。
「レン!」
セリアの。
声。
――ザンッ!
向こうの魔物が。
倒れる。
セリアが。
こっちへ。
走ってくる。
「右!」
俺は。
左へ。
魔物が。
俺を。
追う。
その横から。
セリアが。
踏み込んだ。
さっき。
傷をつけた場所。
そこへ。
もう一度。
剣を。
叩き込む。
――ザシュッ!
深く。
入った。
魔物が。
大きく。
揺れる。
「今!」
俺も。
同じ場所へ。
剣を。
突き込む。
――ズッ!
魔物が。
倒れた。
「……はぁ」
息を。
吐く。
一体。
相手にしただけ。
なのに。
第一層域とは。
全然。
違う。
「大丈夫?」
セリアが。
俺を見る。
「大丈夫」
「倒してないけど」
「ちゃんと」
「時間は」
「稼いだだろ」
「うん」
セリアが。
少し笑う。
「助かった」
その言葉に。
少しだけ。
驚いた。
「なんだよ」
「いや」
セリアが。
剣を見る。
「……また」
「傷ついたなって」
刃に。
小さな。
欠け。
さっきより。
増えている。
「セリアさん」
リーナが。
近づく。
「剣……」
そう言って。
手を。
伸ばしかける。
でも。
止まった。
「……」
リーナが。
自分の手を見る。
そして。
ゆっくり。
下ろした。
「大丈夫」
セリアが。
剣を。
鞘へ戻す。
「まだ」
「使えるよ」
「……はい」
リーナは。
それだけ。
答えた。
◇
先へ。
進む。
第三層域。
一度。
戦う。
また。
進む。
また。
戦う。
勝てる。
勝てるけど。
楽じゃない。
三体。
四体。
数が。
増えれば。
セリア一人では。
全部を。
止められない。
俺も。
前へ出る。
避ける。
受け流す。
隙を。
作る。
セリアが。
仕留める。
それを。
繰り返す。
何度目かの。
戦闘が。
終わった。
「……休もう」
俺は。
壁に。
背中を。
預けた。
「賛成」
セリアも。
その場に。
座る。
リーナが。
水を。
渡してくれる。
「ありがとうございます」
「ありがとう」
水を。
飲む。
腕が。
重い。
剣を。
握っていた。
右手も。
少し。
痛い。
セリアも。
疲れている。
剣の傷も。
増えている。
第一層域では。
魔物を。
倒した。
第二層域でも。
倒した。
だから。
進めると。
思った。
でも。
違う。
一回。
勝てることと。
何度も。
勝ち続けることは。
全然。
違う。
それに。
帰りも。
ある。
俺は。
地図を見る。
まだ。
第三層域。
深層ですら。
ない。
「……広いな」
思わず。
呟いた。
「帰る?」
セリアが。
聞く。
「いや」
地図を見る。
「もう少しだけ」
「無理そうなら」
「すぐ戻ろう」
「うん」
セリアが。
立ち上がる。
リーナも。
頷いた。
「行きましょう」
◇
しばらく。
進んだところで。
人の声が。
聞こえた。
「いた」
向こうから。
冒険者たちが。
歩いてくる。
六人。
大きな盾を。
持った男。
剣士。
杖を持った。
二人。
弓。
それから。
回復役らしい。
女性。
全員。
疲れている。
鎧には。
傷。
盾にも。
大きな。
爪痕。
「……結構」
「やられてるな」
俺が。
小さく言う。
向こうも。
俺たちに。
気づいた。
「三人か?」
盾を持った男が。
足を止める。
「はい」
「どこまで行く?」
俺は。
地図を見る。
「この先を」
「少し」
男が。
俺たちを見る。
セリア。
俺。
リーナ。
それから。
小さく。
息を吐いた。
「悪いことは」
「言わねえ」
「今日は」
「ここまでにしとけ」
「この先」
「そんなに危険なんですか?」
セリアが。
聞く。
「第三層域の」
「終わりまでは」
「まだいい」
男が。
自分たちが。
来た方向を。
指す。
「問題は」
「その先だ」
「魔物の」
「強さが」
「一段」
「変わる」
男の。
盾を見る。
深い。
傷。
「俺たちでも」
「今日は」
「引き返した」
六人で。
これ。
「深層域ですか?」
リーナが。
聞く。
「いや」
男が。
首を振る。
「その手前だ」
「……」
深層ですら。
ない。
「分かりました」
俺は。
頷く。
「ありがとうございます」
「ああ」
男たちが。
俺たちの横を。
通り過ぎる。
少しして。
セリアが。
俺を見る。
「どうする?」
「……少しだけ」
「見てみたい」
「私も」
「でも」
俺は。
二人を見る。
「やばいと思ったら」
「すぐ戻る」
「戦えそうとか」
「考えない」
「戻る」
セリアが。
頷く。
「分かった」
リーナも。
頷いた。
「はい」
俺たちは。
もう少しだけ。
奥へ。
進んだ。
◇
しばらくして。
気づいた。
「……静かだな」
セリアが。
足を止める。
そうだ。
静か。
さっきまで。
聞こえていた。
魔物の。
鳴き声。
足音。
何も。
聞こえない。
「レンさん」
リーナが。
地面を。
見ている。
「これ……」
俺も。
見る。
足跡。
いくつも。
ある。
小さな。
魔物の。
足跡。
でも。
向きが。
おかしい。
全部。
俺たちが。
来た方向へ。
続いている。
「……逃げてる?」
セリアが。
呟く。
その時。
リーナが。
少し先を。
指した。
「こっちにも」
「あります」
近づく。
地面。
そこに。
別の。
足跡。
大きい。
俺の。
手より。
ずっと。
大きい。
一つ。
二つ。
暗い。
通路の。
奥へ。
続いている。
――ズン。
地面が。
揺れた。
「……」
三人とも。
動きを。
止める。
――ズン。
また。
揺れる。
何かが。
いる。
奥に。
今まで。
戦った。
魔物とは。
違う。
俺は。
剣を。
握る。
違う。
戦うな。
さっき。
決めた。
やばいと。
思ったら。
戻る。
「……戻るぞ」
俺は。
すぐに。
言った。
セリアも。
頷く。
「うん」
「リーナ」
「はい」
三人で。
来た道へ。
身体を。
向ける。
その瞬間。
――ズドンッ!!
背後で。
何かが。
地面を。
叩いた。
石が。
飛ぶ。
振り返る。
暗闇の。
向こう。
二つの。
光が。
見えた。
目。
ゆっくりと。
巨大な。
何かが。
こちらへ。
出てくる。
「……遅かった」
俺は。
剣を。
構えた。




