↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生したら最強ジョブだが最凶だった件 ~伝説の【神銃士】になったのに、一発も撃てない~  作者: 蝶野摩矢
鍛冶の街アルト編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
34/68

安物の短剣

「その短剣」


「ちょっと」


「見せてみろ」


「……これですか?」


リーナが。


自分の腰に。


手を伸ばす。


そこにある。


一本の。


短剣。


古い。


短剣だった。


飾り気は。


ほとんどない。


柄も。


鞘も。


使い込まれている。


どこにでも。


ありそうな。


短剣。


少なくとも。


俺には。


そう見える。


「でも……」


リーナが。


少し。


困ったように。


老人を見る。


「これは」


「そんな」


「大したものじゃ……」


「いいから」


老人が。


手を出す。


「見せろ」


「……はい」


リーナが。


腰から。


短剣を外す。


少しだけ。


迷ってから。


老人へ。


差し出した。


老人が。


受け取る。


「…………」


鞘を。


見る。


柄を。


見る。


そして。


ゆっくりと。


短剣を。


抜いた。


――スッ。


現れた。


刃。


やっぱり。


普通に見える。


派手な。


装飾もない。


魔力の光も。


ない。


神器みたいな。


何かを。


感じるわけでもない。


老人が。


刃を。


炉の光へ。


かざした。


「……安物に」


「見えるな」


リーナが。


小さく。


頷いた。


「はい」


「ずっと」


「そう言われてました」


その言い方が。


妙に。


慣れていた。


老人は。


返事をしない。


短剣を。


横へ向ける。


刃の厚みを。


見る。


今度は。


柄を握る。


軽く。


振る。


そして。


刃を。


指先で。


弾いた。


――キン。


澄んだ。


音がした。


「…………」


老人の。


手が。


止まった。


もう一度。


――キン。


「…………」


さっきまでと。


老人の。


顔が。


少しだけ。


違う。


「どうしたんですか?」


セリアが。


聞く。


「黙ってろ」


「……はい」


老人は。


短剣を。


持ったまま。


工房の奥へ。


歩いていく。


炉の近く。


明るい場所で。


もう一度。


刃を見る。


角度を。


変える。


光を。


当てる。


刃先。


峰。


柄。


鍔。


一つずつ。


確かめていく。


「…………」


長い。


さっき。


セリアの剣を。


見ていた時より。


長い。


やがて。


老人が。


口を開いた。


「鉄じゃねえな」


「え?」


リーナが。


老人を見る。


老人は。


短剣から。


目を離さない。


「いや」


「少なくとも」


「俺の知ってる」


「普通の鉄じゃねえ」


「珍しい」


「金属なんですか?」


セリアが。


聞く。


「分からん」


「…………」


俺は。


思わず。


老人を見る。


「またかよ」


老人が。


こっちを見る。


「なんだ」


「いや」


「さっきも」


「分からんって」


「言ってたから」


「分からんもんを」


「分かったふりするより」


「ましだろうが」


「……まあ」


それは。


そうだけど。


老人は。


俺から。


視線を外す。


もう一度。


短剣を見る。


「ただ」


「古い」


「古い?」


「ああ」


「どれくらい」


「古いんですか?」


「知らん」


「…………」


今度は。


何も言わなかった。


たぶん。


言っても。


怒られる。


「今のアルトで」


老人が。


続ける。


「よく見る」


「打ち方じゃねえ」


短剣を。


横へ向ける。


「俺が知ってる」


「古い鍛冶の」


「やり方とも」


「少し違う」


リーナが。


短剣を。


見つめる。


「でも」


「それ」


「安物なんですよね?」


老人の。


眉が。


動いた。


「誰が」


「そんなこと言った」


「……え?」


「安物に」


「見えるって」


「言ったんだ」


老人が。


短剣を。


リーナへ。


差し出す。


「安物だとは」


「言ってねえ」


リーナが。


目を。


見開いた。


「…………」


ゆっくりと。


短剣を。


受け取る。


自分の手の中に。


戻ってきた。


短剣。


さっきまでと。


何も。


変わっていない。


同じ。


古い短剣。


でも。


リーナは。


初めて見るものみたいに。


それを。


見つめていた。


「嬢ちゃん」


老人が。


聞く。


「それ」


「どこで」


「手に入れた?」


「…………」


リーナが。


黙る。


短剣を。


握る手に。


少し。


力が入った。


「分かりません」


「分からん?」


「はい」


リーナが。


短剣を見る。


「物心ついた時には」


「もう」


「持ってました」


老人が。


リーナを見る。


「誰かに」


「もらったのか?」


「……それも」


「分かりません」


「そうか」


それ以上。


老人は。


聞かなかった。


リーナが。


刃を。


鞘へ戻す。


――カチッ。


「これだけは」


リーナが。


小さく。


言った。


「ずっと」


「私と一緒でした」


老人が。


短剣を見る。


「売る気は?」


「ありません」


即答だった。


老人の。


眉が。


僅かに。


上がる。


「これだけは」


リーナが。


短剣を。


胸元へ。


引き寄せる。


「売りません」


「そうか」


老人は。


それだけ。


言った。


そして。


金床へ。


戻ろうとする。


「なくすなよ」


リーナが。


顔を上げた。


「……はい」


短い。


返事。


でも。


その声は。


少しだけ。


強かった。


リーナが。


短剣の柄に。


触れる。


「…………」


目を。


閉じる。


俺には。


何をしているのか。


分かった。


聞こうと。


している。


短剣の。


声を。


以前なら。


分かった。


この短剣が。


今。


どんな状態なのか。


どこに。


負担があるのか。


どうすれば。


もっと。


使いやすくなるのか。


でも。


今は。


「…………」


リーナが。


目を開く。


何も。


言わなかった。


それだけで。


分かった。


聞こえなかったんだ。


ずっと。


自分と一緒だった。


短剣。


その短剣に。


自分の知らない。


何かがある。


なのに。


今の。


リーナには。


それすら。


分からない。


リーナの。


表情が。


少しだけ。


曇った。


「リーナ」


声を。


かけようとした。


その時。


「それで」


老人が。


言った。


「お前は?」


「……俺?」


老人が。


俺を見る。


「剣の嬢ちゃんは」


「新しい剣」


「そっちの嬢ちゃんは」


「妙な短剣」


「お前は」


「何しに」


「ここへ来た」


「…………」


そうだった。


俺たちが。


アルトへ来た。


もう一つの。


理由。


「俺は」


老人を見る。


「武器について」


「聞きたいことがある」


「武器?」


「ああ」


「なら」


老人が。


手を出した。


「見せろ」


「…………」


「なんだ」


「見せられんのか?」


「いや」


「見せられるけど」


俺は。


工房の中を。


見回した。


「ちょっと」


「大きい」


「は?」


「たぶん」


「思ってるより」


「大きい」


老人が。


眉を。


寄せた。


「いいから」


「出せ」


「分かった」


俺は。


一歩。


後ろへ下がる。


右手を。


前へ。


伸ばす。


意識する。


俺の。


神器。


次の瞬間。


魔力が。


集まる。


光が。


形を作る。


そして。


――ズン。


巨大な。


神器が。


俺の手に。


現れた。


黒を基調とした。


大きな。


銃身。


金色の。


装飾。


表面を。


走る。


見たことのない。


文字。


内部から。


僅かに。


漏れる。


青白い。


魔力の光。


肩に。


担ぐような。


巨大な。


神器。


工房の中では。


余計に。


大きく見える。


「…………」


老人が。


黙った。


セリアが。


少し。


笑う。


「だから」


「大きいって」


「言っただろ」


老人は。


返事をしない。


神器を。


見ている。


さっき。


リーナの短剣を。


見た時とも。


違う。


本当に。


何も。


言わない。


「爺さん?」


「…………」


老人が。


一歩。


近づく。


銃身を見る。


金色の。


装飾を見る。


表面の。


文字を見る。


砲口の方へ。


視線を。


移す。


でも。


触れない。


ただ。


見る。


「これが」


俺は。


言った。


「俺の」


「神器だ」


老人の。


目が。


僅かに。


動く。


「神器……」


「ああ」


「俺のジョブは」


「神銃士」


老人が。


初めて。


俺を見る。


そして。


もう一度。


神器を見る。


「神銃士……」


知っているのか。


そう思った。


「何か」


「分かるか?」


老人は。


答えない。


しばらく。


神器を。


見続ける。


長い。


沈黙。


やがて。


老人が。


口を開いた。


「分からん」


「…………」


また。


それか。


「何一つ」


「分からん」


期待した。


俺が。


馬鹿だったのかもしれない。


王都の。


大書庫ですら。


ほとんど。


記録が。


残っていなかった。


この人が。


腕のいい。


鍛冶師だからって。


神器のことまで。


知っているとは。


限らない。


「そうか……」


俺は。


神器を。


見た。


「ただ」


老人が。


言った。


俺は。


顔を上げる。


「俺が」


「今まで見た」


「どの武器とも」


「違う」


「……どの武器とも?」


「ああ」


老人が。


神器を見る。


「剣でも」


「槍でも」


「弓でもねえ」


「それだけなら」


「珍しくもねえ」


「だが」


老人が。


表面に。


刻まれた。


文字を見る。


「作りが」


「分からん」


「どうやって」


「作ったのか」


「何を使って」


「作ったのか」


「俺には」


「見当もつかん」


「…………」


「これを」


「作った奴が」


「普通の鍛冶師じゃねえ」


「それだけは」


「分かる」


俺は。


神器を見る。


作った。


奴。


今まで。


あまり。


考えたことが。


なかった。


神器は。


神器。


そういうものだと。


思っていた。


でも。


これにも。


作った何かが。


いるのか。


それとも。


神器は。


そもそも。


人が作るような。


ものじゃないのか。


分からない。


「似たものは?」


俺が。


聞く。


「見たことないか?」


老人が。


少し。


考える。


「同じものは」


「ねえ」


「でも」


「同じじゃなくていい」


「作り方とか」


「素材とか」


「文字とか」


「何でもいい」


老人が。


俺を見る。


そして。


工房の外。


あの。


巨大な石門の方へ。


視線を向けた。


「たまに」


「出る」


「……何が?」


「分からんものだ」


「ダンジョンから」


俺は。


石門を見る。


「古い武器」


「壊れた道具」


「何に使うのか」


「分からん物」


老人が。


続ける。


「俺が見ても」


「作り方の」


「分からん物が」


「たまにな」


「それって」


「この神器と」


「関係あるのか?」


「知らん」


「…………」


やっぱり。


そうなるか。


「同じだとは」


「言ってねえ」


老人が。


言う。


「似てるとも」


「言ってねえ」


「ただ」


「分からん物が」


「あの下から」


「出てくる」


「それだけだ」


それで。


十分だった。


答えが。


あるわけじゃない。


神器の。


正体が。


分かったわけでもない。


でも。


手掛かりは。


増えた。


王都の。


大書庫には。


記録がなかった。


なら。


本じゃない。


物。


過去から。


残っているもの。


それを。


探す。


そのために。


俺たちは。


アルトへ。


来たんだ。


俺は。


神器を。


消す。


光になって。


巨大な姿が。


消えていく。


工房が。


少しだけ。


広くなったように。


感じた。


「ありがとうございました」


リーナが。


老人へ。


頭を下げる。


「何も」


「してねえ」


「それでも」


「教えてもらいました」


「ふん」


老人が。


槌を。


手に取る。


もう。


話は終わりらしい。


俺たちは。


工房を。


出た。


外へ。


出た瞬間。


遠くから。


また。


鍛冶の音が。


聞こえてきた。


――カン。


――カァン。


街の。


向こう。


山肌に。


巨大な。


石門。


あの先。


アルトの。


地下。


巨大な。


ダンジョン。


セリアは。


新しい剣のため。


深い場所にある。


素材を。


探す。


リーナの。


短剣には。


本人すら。


知らない。


何かがある。


そして。


俺の神器。


その手掛かりに。


なるかもしれない。


古い武器や。


遺物。


三人とも。


理由は。


違う。


でも。


向かう場所は。


同じだった。


俺は。


巨大な。


石門を見る。


次に。


向かう場所は。


決まった。


アルトの。


地下。


ダンジョンだ。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。