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転生したら最強ジョブだが最凶だった件 ~伝説の【神銃士】になったのに、一発も撃てない~  作者: 蝶野摩矢
鍛冶の街アルト編

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剣が語るもの

「帰れ」


「……え?」


セリアが。


目を丸くした。


老人は。


それ以上。


何も言わない。


再び。


金床の上へ。


視線を戻す。


槌を。


持ち上げる。


――カン。


「ちょっと」


セリアが。


一歩。


前へ出る。


「待ってください」


――カン。


「王都の」


「鍛冶屋さんに」


「ここへ行けって」


「言われたんです」


――カン。


老人は。


振り向かない。


「知らん」


「え?」


「誰の紹介だろうが」


「関係ねえ」


槌が。


振り下ろされる。


――カン。


「金を積まれても」


「気に入らん仕事は」


「やらん」


「王様に」


「頼まれてもだ」


「…………」


噂通りだ。


いや。


聞いていたより。


ひどいかもしれない。


俺は。


隣のリーナを見る。


リーナも。


少し。


困った顔をしている。


でも。


セリアは。


帰らなかった。


「分かりました」


「なら」


「打ってほしいとは」


「言いません」


老人の。


槌が。


僅かに。


止まった。


「ただ」


「これを」


「見てほしいんです」


セリアが。


背中の。


布包みを。


下ろした。


老人は。


まだ。


振り向かない。


セリアが。


布を。


ゆっくりと。


開く。


中から。


現れたのは。


一本の。


折れた剣。


王都で。


セリアが。


使っていた。


剣。


巨大な魔物との。


戦いで。


折れた。


あの剣。


「お願いします」


「見るだけで」


「いいんです」


「…………」


老人が。


ようやく。


振り返った。


最初に。


見たのは。


セリアではない。


折れた。


剣だった。


老人の目が。


僅かに。


細くなる。


「……貸せ」


「え?」


「聞こえんのか」


「貸せ」


「はい」


セリアが。


折れた剣を。


差し出した。


老人が。


受け取る。


「…………」


何も。


言わない。


刃を。


見る。


指で。


ゆっくりと。


なぞる。


柄を見る。


握りの部分を。


確かめる。


そして。


折れた。


断面。


老人の。


目が。


止まった。


「……長いな」


「え?」


「この剣だ」


老人が。


セリアを見る。


「長く」


「使ってるな」


「……はい」


「ずっと」


「使ってました」


老人が。


もう一度。


剣を見る。


「何度も」


「研いでる」


「…………」


「刃も」


「何度か」


「直してるな」


「はい」


「手入れは」


「悪くねえ」


老人の。


太い指が。


柄を。


なぞる。


「握りも」


「馴染んでる」


「雑に」


「振り回してた剣じゃねえ」


セリアが。


何も言わず。


老人を。


見ている。


俺も。


折れた剣を見る。


俺には。


ただ。


使い込まれた。


剣にしか。


見えない。


でも。


この老人には。


違うものが。


見えているらしい。


「折れた時」


老人が。


断面を見る。


「相当」


「無茶したな」


セリアが。


少し。


驚いた。


「……分かるんですか?」


「折れ方を見りゃ」


「少しくらいはな」


老人が。


鼻を鳴らす。


「だが」


「剣の扱いを」


「間違えたわけじゃねえ」


「…………」


「こいつは」


「最後まで」


「剣として」


「仕事をした」


セリアの。


表情が。


変わった。


ほんの。


少しだけ。


嬉しそうに。


見えた。


「そう……ですか」


「ああ」


老人は。


剣を。


金床の横へ。


置いた。


そして。


セリアの腰を見る。


「そっち」


「え?」


「今」


「使ってる剣だ」


「抜け」


セリアが。


腰を見る。


王都を。


出る前に。


買った。


既製品の剣。


「ここで?」


「早くしろ」


「……はい」


セリアが。


剣を抜いた。


「振れ」


「え?」


「一度でいい」


セリアが。


少し。


戸惑う。


周囲を。


確認する。


そして。


剣を。


構えた。


一歩。


踏み込む。


――ヒュンッ!


鋭く。


剣が。


空を切った。


「…………」


老人は。


セリアを見る。


剣を見る。


そして。


折れた剣を見る。


「もういい」


「はい」


セリアが。


剣を。


鞘へ戻した。


老人が。


腕を組む。


「なるほどな」


「……何がですか?」


「そいつじゃ」


「足りん」


セリアが。


腰の剣を見る。


「この剣が?」


「ああ」


「悪い剣じゃねえ」


老人が。


言う。


「普通に使うなら」


「十分だ」


「だが」


老人が。


セリアを見る。


「お前には」


「足りん」


「…………」


王都の。


鍛冶屋でも。


似たようなことを。


言われていた。


今の。


セリアに。


剣が。


追いついていない。


老人が。


折れた剣を。


持ち上げる。


「こいつもだ」


「剣が」


「弱くなったんじゃねえ」


「お前が」


「こいつより先に」


「強くなっちまったんだ」


セリアが。


折れた剣を。


見つめる。


「……やっぱり」


「そうなんですね」


「やっぱり?」


「王都でも」


「同じことを」


「言われました」


「ふん」


老人が。


鼻を鳴らした。


「そいつは」


「まともな鍛冶屋らしいな」


俺は。


少しだけ。


笑いそうになった。


たぶん。


この爺さんからすれば。


かなりの。


褒め言葉なんだろう。


「直せますか?」


セリアが。


聞いた。


老人は。


すぐに。


答えた。


「直すだけならな」


「じゃあ――」


「だが」


老人が。


言葉を。


遮る。


「俺なら」


「直さん」


「…………」


「どうしてですか?」


老人が。


折れた剣を。


セリアへ返す。


「同じだからだ」


「同じ?」


「直して」


「また使う」


「お前は」


「また強くなる」


「そうすりゃ」


「いずれ」


「また剣が」


「お前についてこれなくなる」


セリアは。


黙って。


折れた剣を。


受け取った。


「今のお前に」


「合う剣なら」


老人が。


続ける。


「打てる」


セリアが。


顔を上げる。


「本当ですか?」


「ああ」


「だが」


老人の。


目が。


細くなる。


「それじゃ」


「駄目だ」


「……どうして?」


「お前」


老人が。


セリアを。


真っ直ぐ見る。


「まだ」


「強くなるだろ」


「…………」


セリアが。


一瞬。


黙った。


そして。


折れた剣を。


握る。


「なります」


迷いは。


なかった。


「もっと」


「強くなります」


老人が。


セリアを。


見つめる。


しばらく。


何も。


言わない。


やがて。


小さく。


鼻を鳴らした。


「なら」


「今のお前に」


「合わせるだけじゃ」


「意味がねえ」


老人が。


工房の奥へ。


歩いていく。


棚から。


一つの。


金属の塊を。


取り出した。


黒く。


鈍い。


光を。


放っている。


「こいつでも」


「今のお前なら」


「十分だ」


「だが」


金属を。


棚へ戻す。


「その先は」


「知らん」


「…………」


「もっと」


「強くなるつもりなら」


「もっと」


「いい素材がいる」


セリアが。


老人を見る。


「どこに」


「あるんですか?」


老人が。


顎で。


工房の外を。


指した。


その先。


街の奥。


山肌に。


埋まった。


巨大な。


石の門。


「下だ」


「……ダンジョン?」


「ああ」


老人が。


答える。


「浅いところに」


「転がってるような」


「石じゃねえ」


「もっと」


「奥へ行け」


「深層……」


セリアが。


呟く。


「そこで」


「何を」


「取ってくれば」


「いいんですか?」


「知らん」


「……え?」


セリアが。


固まった。


俺も。


思わず。


老人を見る。


「知らないんですか?」


「知らん」


「いや」


「でも」


「素材がいるって」


「言ったのは」


「爺さんだろ」


老人が。


俺を見る。


「お前」


「うるせえな」


「…………」


リーナが。


小さく。


笑った。


「何と」


「出会うか」


「分からん」


老人が。


セリアを見る。


「どこまで」


「潜れるかも」


「知らん」


「持って帰れるものも」


「分からん」


「だから」


「持ってこい」


「お前が」


「自分で」


「持ち帰れるものをな」


「…………」


「それを見て」


「俺が決める」


なるほど。


無茶苦茶に。


聞こえる。


でも。


少しだけ。


分かる気もした。


セリアが。


どこまで。


戦えるのか。


どんな素材を。


手に入れられるのか。


それも含めて。


セリアの。


剣を。


決めるつもりなのかもしれない。


「分かりました」


セリアが。


頷いた。


「行きます」


「ダンジョンに」


その言葉を。


聞いた瞬間。


俺は。


隣を見る。


リーナ。


「…………」


リーナも。


巨大な石門の。


方を。


見ていた。


ダンジョン。


その言葉を。


聞いて。


頭に。


浮かんだものがある。


王都。


巨大な魔物。


そして。


神器に。


触れ続けた。


リーナ。


震える。


指。


流れた。


血。


それでも。


リーナは。


手を。


離さなかった。


俺の。


もう一発を。


撃つために。


自分の。


限界を。


超えて。


道を。


繋いだ。


あんなことを。


もう一度。


させていいのか。


「レンさん?」


リーナが。


俺を見る。


「……いや」


俺は。


首を振った。


まだ。


何を。


どうすればいいのか。


分からない。


でも。


一つだけ。


思った。


次は。


同じようには。


したくない。


「それじゃ」


セリアが。


折れた剣を。


もう一度。


布で包む。


「ありがとうございます」


老人に。


頭を下げる。


「まだ」


「何もしてねえ」


「それでも」


「見てもらえましたから」


「ふん」


老人が。


再び。


金床へ。


向かう。


俺たちも。


工房を。


出ようとする。


その時だった。


「待て」


老人の。


声。


三人とも。


足を止めた。


「……まだ」


「何か?」


セリアが。


振り返る。


老人は。


セリアを。


見ていなかった。


俺でもない。


その視線は。


リーナ。


いや。


違う。


リーナの。


腰。


そこに。


下げられた。


一本の。


短剣。


「嬢ちゃん」


「……私ですか?」


「ああ」


老人が。


短剣を。


指差した。


「その短剣」


「ちょっと」


「見せてみろ」



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