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転生したら最強ジョブだが最凶だった件 ~伝説の【神銃士】になったのに、一発も撃てない~  作者: 蝶野摩矢
鍛冶の街アルト編

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鍛冶の街アルト

――カン。


――カン。


遠くから。


音が。


聞こえてきた。


「……何の音?」


セリアが。


顔を上げる。


まだ。


街は。


見えていない。


街道は。


緩やかな坂を。


上っている。


でも。


俺には。


聞き覚えがあった。


――カン。


――カァン。


金属を。


叩く音。


「鍛冶だ」


「鍛冶?」


「たぶん」


「もうすぐだ」


ガルドさんの。


工房で。


何度も。


聞いた音だった。


俺たちは。


坂を。


上っていく。


一歩。


また。


一歩。


音が。


少しずつ。


大きくなる。


一つじゃない。


いくつもの。


金属音が。


重なっている。


そして。


坂を。


登り切った。


その瞬間。


視界が。


開けた。


「……あれが」


セリアが。


足を止める。


「アルト……?」


俺も。


思わず。


立ち止まった。


山々に。


囲まれた。


広い谷。


その中に。


街があった。


王都とは。


全く違う。


高い城壁も。


大きな城も。


ない。


代わりに。


目に入ったのは。


煙突。


一つ。


二つ。


いや。


数え切れない。


街の。


あちこちから。


太い煙突が。


空へ。


伸びている。


黒い煙。


白い煙。


それらが。


青い空へ。


ゆっくりと。


流れていた。


――カン。


――カン。


――カァン。


ここからでも。


聞こえる。


鉄を。


叩く音。


右から。


左から。


街の奥から。


違う間隔で。


鳴る音が。


重なっている。


まるで。


街そのものが。


巨大な工房みたいだった。


「……すごい」


リーナが。


小さく。


呟いた。


でも。


目を引くのは。


煙突だけじゃない。


街の中から。


何本もの。


巨大な石柱が。


突き出していた。


建物より。


ずっと。


高い。


途中で。


折れているもの。


斜めに。


傾いているもの。


今も。


真っ直ぐ。


空へ伸びているもの。


その表面には。


遠くからでも。


何かが。


刻まれているのが。


分かる。


文字なのか。


模様なのか。


ここからでは。


分からない。


「あれ……」


セリアも。


気づいたらしい。


「遺跡?」


「たぶん」


俺たちが。


王都で聞いた。


アルトの話。


巨大な。


古い遺跡。


その上に。


人が集まり。


鍛冶師が集まり。


いつしか。


一つの街になった。


そして。


街のさらに下には。


巨大なダンジョンが。


広がっている。


その時。


街の奥にある。


山肌が。


目に入った。


「……なんだ」


思わず。


声が出た。


山の。


一部に。


巨大な。


石の門が。


埋まっている。


人が。


何十人。


並んでも。


届かないほど。


大きい。


門の周囲には。


崩れた。


石柱。


そして。


見たことのない。


彫刻。


その前を。


小さな人影が。


何人も。


出入りしている。


「もしかして」


「あれが……」


セリアが。


呟く。


「ダンジョン?」


俺たちの。


目的地の。


一つ。


誰が。


造ったのか。


何のために。


造られたのか。


今では。


分からない。


ただ。


あの奥から。


鉱石や。


魔物の素材。


時には。


古い武器や。


用途すら分からない。


遺物が。


見つかるらしい。


そのために。


冒険者が。


潜る。


鍛冶師が。


集まる。


そして。


街が。


できた。


「行こう」


俺たちは。


アルトへ。


向かって。


坂を。


下り始めた。


街へ。


近づくほど。


音が。


大きくなる。


――カン!


――カン!


――カァン!


そして。


街の入口を。


抜けた瞬間。


――カァン!!


「……っ」


セリアが。


少し。


肩を揺らした。


「近いと」


「すごいな」


道の。


すぐ横。


大きく。


開け放たれた。


工房。


その奥で。


炉が。


赤々と。


燃えていた。


――ゴォォォ。


空気が。


送り込まれる。


炎が。


大きく。


揺れる。


鍛冶師が。


火ばさみで。


真っ赤になった。


鉄を。


取り出した。


金床の上へ。


置く。


大きな。


槌を。


振り上げる。


――カァン!


火花が。


飛び散った。


赤。


橙。


小さな光が。


石の床を。


跳ねる。


「……すごい」


リーナが。


もう一度。


呟いた。


熱い。


街の外より。


気温が。


高いわけじゃない。


でも。


工房の前を。


通るたび。


炉の熱が。


顔に当たる。


匂いも。


違う。


炭の。


焼ける匂い。


熱せられた。


金属の匂い。


革。


油。


いろんな匂いが。


混ざっている。


そして。


音。


――カン。


――カァン。


――シャァァァ。


鉄を。


叩く音。


砥石で。


刃を研ぐ音。


炉へ。


空気を送り込む音。


誰かが。


怒鳴る声。


「もっと水を持ってこい!」


「はい!」


少年が。


大きな。


水桶を抱えて。


工房へ。


走っていく。


その横では。


髭を生やした。


小柄な男が。


自分の身体ほどある。


槌を。


肩に担いでいた。


太い腕。


低い背丈。


長い髭。


「……ドワーフ?」


俺が。


呟く。


男が。


止まった。


こっちを見る。


「なんだ」


「ドワーフが珍しいか?」


「いや」


「ちょっとだけ」


「珍しいんじゃねえか」


そう言って。


男は。


そのまま。


歩いていった。


「…………」


セリアが。


笑いを。


堪えている。


「笑うなよ」


「笑ってない」


絶対。


笑ってる。


道の。


両側には。


工房が。


ずらりと。


並んでいる。


剣ばかりを。


置いている店。


壁一面に。


槍が。


立て掛けられている店。


鎧を。


吊るしている店。


巨大な。


斧を。


二人がかりで。


運び出している。


工房もある。


そして。


道を行くのは。


鍛冶師だけじゃない。


剣を。


背負った。


冒険者。


大きな盾を。


持つ男。


杖を。


抱えた女。


傷だらけの。


鎧を着た。


一団。


「道を空けろ!」


声が。


飛んだ。


振り向く。


大きな。


荷車が。


こちらへ。


向かってくる。


荷台には。


鉱石。


黒い。


大きな塊。


青く。


光る筋が。


入った石。


それに。


俺の腕より。


太い。


魔物の角。


黒い。


甲殻。


見たことのない。


素材が。


山のように。


積まれている。


「深層帰りだ!」


誰かが。


叫ぶ。


その声に。


道沿いの。


鍛冶師たちが。


一斉に。


荷車を見る。


「おい!」


「あの甲殻!」


「どこで採れた!」


「後にしろ!」


荷車を。


押していた。


冒険者が。


怒鳴り返す。


俺たちは。


道の端へ。


寄る。


荷車が。


目の前を。


通り過ぎていった。


「すごい街だね」


セリアが。


言った。


「ああ」


冒険者が。


ダンジョンへ。


潜る。


素材を。


持ち帰る。


鍛冶師が。


それを。


武器へ変える。


その武器を。


持った冒険者が。


また。


ダンジョンへ。


潜る。


そうやって。


この街は。


回っている。


俺は。


周囲を見る。


そして。


ようやく。


気づいた。


古い。


新しい。


二つが。


入り混じっている。


一軒の。


工房。


その壁から。


巨大な。


石が。


突き出していた。


いや。


違う。


壁から。


出ているんじゃない。


「……石柱?」


元々。


そこにあった。


巨大な。


石柱。


表面には。


擦り減った。


模様。


その石柱を。


壊すでも。


どかすでもなく。


周りに。


木と石の壁を。


継ぎ足して。


一つの。


工房にしている。


別の建物も。


そうだった。


古い。


石壁を。


そのまま。


建物の。


一部として。


使っている。


足元を見る。


石畳にも。


模様がある。


「……これ」


しゃがんで。


触れてみる。


一枚。


一枚。


敷いた。


石じゃない。


巨大な。


一枚の石。


その表面に。


擦り減った。


線が。


何本も。


走っている。


元々。


ここにあった。


遺跡の床を。


そのまま。


道として。


使っているんだ。


何百年。


いや。


もっと前から。


ここにあった。


遺跡。


その上を。


今は。


鉱石を積んだ。


荷車が。


走っている。


古い街なのか。


新しい街なのか。


一目では。


分からない。


でも。


不思議と。


馴染んでいた。


遺跡の中に。


街があるんじゃない。


遺跡と。


一緒に。


街が。


生きている。


そんな。


感じだった。


「レンさん」


リーナの。


声。


振り向く。


リーナが。


一軒の。


店先を。


見ていた。


そこには。


剣。


槍。


斧。


短剣。


たくさんの。


武器が。


並んでいる。


「…………」


リーナが。


少しだけ。


足を止める。


以前なら。


何か。


感じたのかもしれない。


どの武器が。


傷んでいるのか。


どこに。


魔力が。


流れているのか。


どうすれば。


もっと。


使いやすくなるのか。


でも。


今の。


リーナは。


何も。


言わなかった。


「…………」


そのまま。


店から。


目を離す。


俺は。


何も。


言えなかった。


さっきの。


戦いのあと。


リーナが。


セリアの剣に。


触れても。


何も。


分からなかった。


あの時の。


顔を。


思い出した。


――カン。


近くの。


工房から。


音がする。


俺は。


そちらを見る。


炉。


金床。


槌。


火ばさみ。


見覚えのある。


道具もある。


ガルドさんの。


工房で。


何度も。


見た。


もちろん。


俺は。


鍛冶師じゃない。


分からないことの方が。


ずっと。


多い。


でも。


武器について。


何も。


知らなかった頃とは。


違う。


「あれ……」


店先に。


積まれた。


鉱石を見て。


足が止まった。


黒い。


石。


その中に。


青白い。


筋が。


走っている。


どこかで。


見た。


「魔鉱鉄……?」


「え?」


セリアが。


俺を見る。


「レン」


「分かるの?」


「少しだけ」


俺は。


鉱石を見る。


「ガルドさんに」


「教えてもらったから」


炉の扱い。


鉱石の種類。


剣の手入れ。


武器の重心。


神器を。


撃つ方法を。


探していた。


あの頃。


ガルドさんは。


いろんなことを。


教えてくれた。


あの時は。


それが。


何の役に立つのか。


分からないことも。


多かった。


でも。


ちゃんと。


残っている。


俺の中に。


「レンさん」


リーナが。


少し。


嬉しそうに。


笑った。


「ガルドさんのこと」


「ちゃんと」


「覚えてたんですね」


「忘れるわけ」


「ないだろ」


あの人から。


借りた剣を。


持って。


俺は。


初めて。


街の外へ。


出たんだから。


「それで」


セリアが。


周りを見る。


「どうする?」


「どうするって?」


「私たち」


「目的は」


「同じじゃないでしょ?」


確かに。


セリアは。


新しい剣。


俺と。


リーナは。


神器の。


手掛かり。


アルトまで。


一緒に来た。


でも。


ここから。


探すものは。


違う。


「私」


「探したい人がいるんだ」


「人?」


「王都の」


「鍛冶屋さんが」


「教えてくれたの」


セリアが。


背中の。


布包みに。


触れる。


「すごく」


「腕のいい」


「ドワーフの鍛冶師」


ドワーフ。


それも。


腕のいい。


鍛冶師。


俺は。


街の奥を見る。


神器のことを。


知っているとは。


限らない。


むしろ。


知らない可能性の方が。


高い。


でも。


いろんな。


武器が集まる。


この街で。


長く。


鍛冶をしているなら。


何か。


聞けるかもしれない。


「じゃあ」


「まず」


「その人を」


「探してみるか」


「いいの?」


「俺たちも」


「鍛冶師には」


「話を聞きたいし」


リーナも。


頷いた。


「行きましょう」


三人で。


歩き出す。


しばらく。


聞き込みをした。


そして。


分かったことが。


一つ。


「……あの爺さん?」


鍛冶師の男が。


露骨に。


嫌そうな顔をした。


「はい」


セリアが。


頷く。


「剣を」


「見てもらいたくて」


「やめとけ」


「え?」


「腕はいい」


男が。


腕を組む。


「腕だけはな」


「…………」


「金を積んでも」


「気に入らなきゃ」


「打たねえ」


「偉い奴が来ても」


「追い返す」


「冒険者が」


「土下座しても」


「追い返す」


「…………」


セリアが。


少し。


不安そうな顔をした。


「そんな人なの?」


「そんな爺さんだ」


男が。


街の奥を。


指差す。


「街外れだ」


「古い石壁の」


「向こうにある」


「小せえ工房」


「行けば」


「分かる」


「ありがとうございます」


セリアが。


頭を下げる。


俺たちは。


教えられた方向へ。


歩き出した。


街の中心から。


離れていく。


少しずつ。


工房が。


減っていく。


――カン。


――カァン。


あれだけ。


大きかった。


鍛冶の音も。


遠くなる。


代わりに。


増えていくのは。


古い。


石壁。


崩れた。


柱。


遺跡の。


名残。


その間を。


抜けていく。


そして。


見つけた。


「……ここ?」


セリアが。


足を止める。


小さな。


工房。


派手な。


看板はない。


店先に。


武器も。


並んでいない。


古い。


石壁の一部に。


木造の建物を。


継ぎ足したような。


工房だった。


でも。


中から。


音がする。


――カン。


少し。


間が空く。


――カン。


一定の。


音。


街の中心で。


聞いた。


激しい音とは。


違う。


一度。


一度。


確かめるように。


鉄を。


叩いている。


セリアが。


俺を見る。


俺は。


頷く。


リーナも。


その横に。


立つ。


セリアが。


扉を。


開けた。


熱気が。


流れてきた。


薄暗い。


工房。


奥で。


炉が。


燃えている。


その前に。


一人の。


小柄な老人。


太い腕。


長い髭。


老人は。


こちらを。


見ない。


金床の上の。


赤い鉄だけを。


見ている。


槌を。


上げる。


――カン。


「あの」


セリアが。


声をかける。


老人は。


振り向かない。


――カン。


「剣を」


「見てもらいたいんです」


――カン。


「…………」


返事が。


ない。


セリアが。


少し。


困った顔で。


俺を見る。


そして。


もう一度。


口を開いた。


「あの……」


老人の。


槌が。


止まった。


静かになった。


工房の中。


炉の。


燃える音だけが。


聞こえる。


老人が。


口を開いた。


「帰れ」


「……え?」




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