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転生したら最強ジョブだが最凶だった件 ~伝説の【神銃士】になったのに、一発も撃てない~  作者: 蝶野摩矢
鍛冶の街アルト編

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31/68

それぞれの強さ

王都を。


出てから。


しばらく。


俺たちは。


街道を。


歩いていた。


王都の城壁は。


もう。


ずっと後ろにある。


道の両側には。


草原。


その向こうには。


森が広がっていた。


「ねえ」


隣を歩いていた。


セリアが。


俺を見る。


「アルトまで」


「ずっと歩くの?」


「そのつもりだけど」


「……本当に?」


「なんだよ」


「いや」


セリアが。


少し。


呆れた顔をする。


「昔から」


「そういうところ」


「変わらないなって」


「どういうところだよ」


「何でも」


「自分でやろうとするところ」


「歩くくらい」


「普通だろ」


「そういうところ」


「…………」


何を言っても。


勝てる気がしない。


前を歩いていた。


リーナが。


小さく笑った。


「リーナまで」


「笑うなよ」


「すみません」


そう言いながら。


まだ。


笑っている。


王都にいた時とは。


少しだけ。


空気が違った。


戦いは。


終わった。


今は。


魔物の大群も。


巨大な魔物も。


いない。


ただ。


三人で。


次の街へ。


向かっている。


こんな時間は。


久しぶりな気がした。


「そういえば」


俺は。


セリアの腰を見る。


そこには。


一本の剣。


でも。


背中にも。


細長い布包みがある。


「その剣」


「どうしたんだ?」


「これ?」


セリアが。


腰の剣に。


触れる。


「王都を出る前に」


「買ったの」


「さすがに」


「武器なしで」


「アルトまでは」


「行けないでしょ?」


「まあ」


「そうだよな」


折れた剣は。


背中に。


大切そうに。


背負われている。


腰にあるのは。


王都で。


普通に売られていた。


既製品の剣。


特別なものでは。


ないらしい。


「悪くはないよ」


セリアが。


剣を見る。


「でも」


「前の剣とは」


「全然違う」


「使いにくい?」


「ううん」


少し考えて。


首を振る。


「使える」


「ちゃんとした剣だと思う」


「ただ」


セリアが。


背中の。


布包みに触れた。


「まだ」


「私の剣じゃないって」


「感じかな」


俺には。


その感覚は。


よく分からなかった。


剣は。


剣。


少なくとも。


俺にとっては。


そうだ。


でも。


ずっと。


剣を使ってきた。


セリアには。


違うのかもしれない。


その時だった。


「……レンさん」


リーナが。


足を止めた。


「どうした?」


リーナが。


街道の先を見る。


草が。


揺れた。


一度。


二度。


そして。


低い。


唸り声。


「魔物?」


セリアの手が。


すぐに。


腰へ伸びる。


草むらから。


灰色の。


魔物が。


姿を現した。


狼に似た。


四足の魔物。


一体。


その後ろから。


もう一体。


さらに。


二体。


そして。


少し離れたところから。


もう二体。


全部で。


六体。


「グレイウルフ」


セリアが。


剣を抜いた。


俺も。


腰の剣を抜く。


「リーナ」


「後ろに」


「はい」


リーナが。


一歩。


下がる。


俺と。


セリアが。


前へ出る。


六体の。


グレイウルフが。


低く。


身体を沈めた。


次の瞬間。


一体が。


飛び出した。


「――っ!」


俺は。


剣を構える。


速い。


でも。


見える。


真っ直ぐ。


喉元へ。


飛び込んでくる。


身体を。


半歩。


横へ。


ずらす。


牙が。


目の前を。


通り過ぎる。


その瞬間。


剣を振る。


――ザシュッ。


刃が。


魔物の。


身体を捉えた。


「ギャッ!」


地面を。


転がる。


浅い。


まだ。


倒れていない。


追いかけようとした。


その時。


横から。


もう一体。


「レン!」


「分かってる!」


剣を。


戻す。


牙を。


受ける。


――ガキンッ!


重い。


腕に。


衝撃が走る。


でも。


耐えられる。


剣を。


押し返す。


距離を取る。


一体。


二体。


俺の前に。


グレイウルフ。


二体。


なら。


まず。


一体ずつ。


そう思って。


剣を。


構え直した。


――ザンッ。


音がした。


「……え?」


視線を。


横へ向ける。


一体の。


グレイウルフが。


倒れていた。


その向こう。


セリアが。


剣を振り抜いている。


もう一体が。


セリアへ。


飛びかかる。


セリアは。


避けない。


一歩。


前へ。


踏み込む。


――ザシュッ!


魔物が。


地面へ落ちた。


そのまま。


セリアは。


止まらない。


三体目。


剣を。


返す。


――ザンッ!


一撃。


さらに。


その背後から。


飛びかかってきた。


四体目。


セリアが。


身体を。


捻る。


牙が。


空を切る。


踏み込む。


――ザシュッ!


「……速い」


思わず。


声が出た。


前とは。


違う。


同じ。


セリアなのに。


剣を振る速度も。


踏み込みも。


何より。


次の動きへ。


移るまでが。


速い。


俺が。


二体を相手に。


構え直している間に。


セリアは。


もう。


四体を。


倒していた。


【上級剣士 Lv.35】


これが。


今の。


セリア。


「レン!」


「っ!」


見てる場合じゃない。


目の前の。


グレイウルフが。


飛びかかってくる。


俺は。


身体を。


横へ。


剣を。


牙に合わせる。


受けるんじゃない。


逸らす。


――ガッ!


魔物の身体が。


僅かに。


崩れる。


その横を。


抜ける。


そして。


剣を。


振り下ろした。


――ザシュッ!


今度は。


深い。


一体が。


倒れる。


残り。


一体。


俺へ。


向かってくる。


息を整える。


焦るな。


セリアみたいに。


戦う必要はない。


俺は。


剣士じゃない。


剣士の。


ジョブも。


持っていない。


それでも。


この剣を。


振ってきた。


神銃を。


撃つべき時まで。


生き残るために。


撃った後も。


戦えるように。


だから。


俺は。


俺のやり方で。


戦えばいい。


魔物が。


飛び込んでくる。


一歩。


下がる。


牙を。


避ける。


剣を。


横へ。


振る。


――ザシュッ!


最後の一体が。


地面へ。


倒れた。


静かになった。


「ふぅ……」


息を吐く。


六体。


セリアが。


四体。


俺が。


二体。


それだけでも。


差は。


分かる。


でも。


本当の差は。


数じゃない。


俺が。


二体を相手に。


慎重に。


戦っている間に。


セリアは。


四体を。


ほとんど。


止まることなく。


倒していた。


もし。


もっと。


数が多ければ。


差は。


さらに。


広がっていたと思う。


これが。


剣士と。


神銃士の。


剣の差。


「レン」


「ん?」


セリアが。


俺の剣を見る。


「前より」


「上手くなってない?」


「そうか?」


「うん」


「昔より」


「ずっと」


「動けてる」


少し。


嬉しかった。


セリアは。


ずっと。


剣を使ってきた。


そのセリアに。


言われると。


悪い気はしない。


「まあ」


「少しは」


「練習してるから」


「少しじゃないです」


後ろから。


声がした。


「……リーナ?」


リーナが。


真面目な顔で。


俺を見る。


「朝も」


「振ってます」


「リーナ」


「夜も」


「振ってます」


「リーナ」


セリアが。


俺を見る。


「……朝も?」


「いや」


「夜も?」


「…………」


「レン」


「別に」


「いいだろ」


セリアが。


少し。


笑った。


「別に」


「悪いなんて」


「言ってないでしょ」


「じゃあ」


「笑うなよ」


「ごめん」


全然。


悪いと思ってなさそうだった。


俺は。


剣を見る。


どれだけ。


振っても。


セリアには。


追いつけないと思う。


俺には。


剣士の。


力はない。


でも。


それでいい。


これは。


誰かに。


勝つための。


剣じゃない。


神銃を。


撃つべき時まで。


立っているための。


剣だ。


「……あ」


セリアが。


声を出した。


「どうした?」


「ちょっと」


セリアが。


自分の剣を見る。


刃に。


小さな。


欠け。


さっきの。


戦いで。


できたらしい。


「やっぱり」


「ちょっと」


「無理させたかな」


その言葉に。


リーナが。


反応した。


「見せてください」


いつもの。


言葉。


だった。


セリアが。


剣を差し出す。


リーナが。


受け取る。


柄に。


触れる。


刃に。


指を添える。


そして。


目を閉じた。


「…………」


何も。


言わない。


「リーナ?」


セリアが。


呼ぶ。


リーナの。


指が。


僅かに。


動いた。


「…………」


やがて。


目を開く。


「……ごめんなさい」


小さな。


声だった。


「分かりません」


セリアが。


リーナを見る。


「どこまで」


「傷んでるのか」


「どこに」


「負担がかかってるのか」


リーナが。


剣を。


見つめる。


「何も」


「聞こえないです」


セリアは。


少しだけ。


黙った。


そして。


リーナから。


剣を受け取る。


「そっか」


それだけ。


言った。


剣を。


鞘へ戻す。


「じゃあ」


「アルトに着いたら」


「鍛冶屋に」


「見てもらわないとね」


「…………」


リーナが。


俯く。


「……ごめんなさい」


「なんで?」


「だって」


リーナが。


自分の手を見る。


「私」


「何も」


「できなくて……」


「リーナ」


セリアが。


呼ぶ。


リーナが。


顔を上げる。


「まだ」


「アルトにも」


「着いてないでしょ?」


「……え?」


「旅」


「始まったばっかりなんだから」


セリアが。


歩き出す。


「ほら」


「行こう」


リーナは。


少し。


戸惑っていた。


それから。


小さく。


頷く。


「……はい」


俺たちは。


また。


街道を。


歩き始めた。


セリアは。


強くなった。


俺も。


少しずつ。


強くなっている。


でも。


リーナは。


今まで。


できていたことが。


できなくなった。


三人で。


始まった。


新しい旅。


その時の俺は。


まだ。


リーナが。


そのことを。


どれだけ。


気にしているのか。


分かっていなかった。



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