次の目的地
王都。
王立大書庫。
俺は。
また。
ここに来ていた。
目の前には。
何冊もの。
古い本。
そして。
その向こうには。
ベルグさんがいる。
「……やっぱり」
「ないですね」
リーナが。
小さく呟いた。
「ああ」
俺も。
一冊の本を閉じる。
何度。
探しても。
結果は。
同じだった。
前任の。
神銃士。
その存在は。
確かに。
記録に残っている。
【天弓士 Lv.MAX】
そして。
神器による。
選定。
【神銃士】
そこまでは。
分かった。
でも。
その先が。
ない。
神銃士が。
どう戦ったのか。
神器を。
どう使ったのか。
そして。
なぜ。
俺の神器だけが。
まともに。
使えないのか。
知りたいことは。
山ほどある。
なのに。
肝心なところだけ。
抜け落ちている。
「これ以上は」
ベルグさんが。
本を閉じた。
「ここで探しても」
「同じでしょうな」
「……やっぱりですか」
「ああ」
ベルグさんが。
机の上を見る。
積み上がった。
古い本。
その中には。
途中だけ。
抜け落ちたものもある。
一冊。
丸ごと。
なくなっているものも。
あった。
「記録が」
「残ってないなら」
「どうしようもないですね」
俺が言うと。
ベルグさんは。
少し考えた。
「いや」
「記録がないなら」
「記録以外を」
「探せばいい」
「記録以外?」
ベルグさんが。
俺を見る。
「物だよ」
「……物?」
「ああ」
「書物は」
「失われる」
「燃えることもある」
「捨てられることもある」
「だが」
ベルグさんが。
指を一本立てる。
「武器や」
「道具は」
「残ることがある」
俺は。
黙って。
その言葉を聞く。
「前任の神銃士が」
「生きていた時代の」
「武器とか?」
「そうだ」
「もちろん」
「神銃士本人が」
「使っていたものが」
「見つかるとは限らない」
「だが」
「同じ時代の武具」
「魔道具」
「用途の分からない遺物」
「そういうものから」
「分かることもある」
なるほど。
本だけが。
過去じゃない。
その時代に。
作られたもの。
使われたもの。
それ自体が。
過去の。
手掛かりになる。
「でも」
リーナが。
口を開いた。
「そういうものって」
「どこにあるんですか?」
「王都にも」
「いくつかはある」
ベルグさんが。
答える。
「だが」
「もっと」
「集まりやすい場所がある」
「集まりやすい?」
「ああ」
ベルグさんは。
立ち上がると。
棚の横にあった。
地図を。
広げた。
指が。
王都から。
少し離れた場所へ。
動く。
「ここだ」
そこには。
一つの。
街の名前。
「アルト?」
俺が。
読み上げる。
「鍛冶の街」
「アルトだ」
「鍛冶の街……」
「ああ」
「近くに」
「大きなダンジョンがある」
ベルグさんの指が。
街のそばへ動く。
「そこからは」
「鉱石」
「魔物の素材」
「そして」
「時には」
「古い武具や」
「用途の分からない遺物も」
「見つかる」
俺は。
地図を見る。
古い武具。
遺物。
神器の。
手掛かり。
少なくとも。
ここで。
同じ本を。
何度も読み返すよりは。
何か。
見つかるかもしれない。
「行ってみる価値は」
「ありそうですね」
「ああ」
「ただし」
ベルグさんが。
俺を見る。
「期待しすぎるな」
「え?」
「アルトへ行けば」
「神銃士の答えがある」
「そういう話ではない」
「……はい」
「何も」
「見つからないかもしれん」
ベルグさんは。
地図を畳む。
「それでも」
「ここにはないものが」
「あそこにはある」
それで。
十分だった。
俺は。
リーナを見る。
「行ってみよう」
「アルトに」
「……はい」
リーナが。
答える。
でも。
その声は。
少しだけ。
小さかった。
「どうした?」
「……あの」
リーナが。
自分の腰を見る。
そこには。
いつもの。
短剣。
数日前。
リーナが。
何も感じないと。
言った。
あの短剣だ。
「私も」
「行っていいんですか?」
「……え?」
何を。
言っているんだ?
「なんで?」
「だって」
リーナが。
短剣の柄に。
そっと触れる。
「今の私は」
「武器のことが」
「何も」
「分からないから」
「…………」
「アルトは」
「鍛冶の街なんですよね」
「だったら」
「私が行っても」
「何も……」
「リーナ」
言葉を。
止めた。
リーナが。
俺を見る。
「一緒に行くだろ」
「……え?」
「俺と」
「リーナで」
「手掛かりを」
「探してるんだから」
「でも」
「今は」
「調律が……」
「それと」
「一緒に行くことに」
「何の関係があるんだ?」
リーナが。
黙った。
俺には。
本当に。
分からなかった。
調律が。
できるから。
一緒にいる。
そんなこと。
考えたことも。
なかった。
確かに。
リーナがいなければ。
俺は。
神器を。
撃てなかった。
あの戦いでも。
リーナが。
道を繋いでくれたから。
俺は。
もう一発。
撃つことができた。
でも。
それだけじゃない。
「行こう」
俺は。
もう一度。
言った。
「一緒に」
「アルトへ」
リーナは。
しばらく。
何も言わなかった。
やがて。
短剣から。
手を離す。
「……はい」
ほんの少し。
笑った。
「行きます」
「レンさんと」
「一緒に」
「ああ」
こうして。
俺たちの。
次の目的地が。
決まった。
鍛冶の街。
アルト。
そこに。
何があるのかは。
分からない。
神器の。
手掛かりが。
本当に。
あるのかも。
分からない。
それでも。
行ってみる。
ここにはない。
何かを。
探すために。
俺と。
リーナは。
王都を。
出ることにした。




