戦いのあと
王都を襲った。
魔物の群れが。
消えてから。
数日が経った。
街には。
まだ。
戦いの跡が。
残っている。
崩れた城壁。
壊れた建物。
石畳には。
巨大な魔物が。
暴れた跡まで。
残っていた。
それでも。
街には。
人の声が。
戻り始めている。
壊れた店を。
直す人。
瓦礫を。
運ぶ人。
怪我をした兵士に。
肩を貸す人。
みんな。
生きている。
俺も。
生きている。
そして。
リーナも。
生きている。
「レンさん」
声に。
振り返る。
「どうしました?」
「いや」
「なんでもない」
「……?」
リーナが。
不思議そうに。
首を傾げた。
あの戦いのあと。
リーナは。
すぐに。
治療を受けた。
魔力の消耗。
極度の疲労。
それに。
神器を調律した時に。
身体へかかった。
大きな負担。
幸い。
命に関わるような。
怪我はなかった。
それでも。
目を覚ますまで。
俺は。
ずっと。
そばにいた。
あの時。
リーナが。
もう一度。
神器を。
繋いでくれなかったら。
俺は。
二発目を。
撃てなかった。
あの一発がなければ。
王都は。
どうなっていたか。
分からない。
だから。
目の前で。
普通に歩いている。
リーナを見るだけで。
少し。
安心する。
「そういえば」
リーナが。
俺を見る。
「レンさん」
「レベル」
「確認しましたか?」
「……あ」
忘れていた。
いや。
忘れていたというより。
それどころじゃ。
なかった。
教会で。
確認してもらった。
俺の今のレベル。
【神銃士 Lv.18】
「十八……」
あの戦いの前。
俺は。
Lv.10だった。
一気に。
八も。
上がっている。
三千を超える。
魔物との戦い。
そして。
あの巨大な魔物。
全部を。
俺が倒したわけじゃない。
それでも。
あの戦いを。
生き抜いたことが。
俺自身の。
成長になったらしい。
「上がりましたね」
「ああ」
嬉しくない。
わけじゃない。
でも。
俺が気になったのは。
レベルより。
こっちだった。
右手を。
前へ出す。
意識する。
――キィン。
光が集まり。
巨大な神器が。
姿を現した。
何度見ても。
普通の武器とは。
思えない。
俺の。
神銃。
意識を。
向ける。
【神器情報】
【使用者:レン】
【接続状態:低】
【使用可能弾種:魔力弾】
【装填数:1】
【残弾数:0/1】
「……低」
以前は。
極低。
だった。
変わっている。
少しだけ。
神器との繋がりが。
強くなっている。
でも。
装填数は。
一発。
弾も。
ない。
俺は。
神器を見つめた。
あの戦いで。
分かったことがある。
俺の一発は。
強い。
巨大な魔物の身体を。
一撃で。
貫いた。
だけど。
それでも。
足りなかった。
リーナが。
限界を超えて。
もう一度。
繋いでくれたから。
俺は。
最後の一発を。
撃てた。
もし。
次も。
同じような敵が。
現れたら。
また。
リーナに。
あそこまで。
無理をさせるのか。
「……もっと」
「え?」
「もっと」
「強くならないとな」
リーナが。
俺を見る。
「十分」
「強いと思います」
「まだだよ」
俺は。
神器を。
見た。
次に。
リーナが。
道を。
繋いでくれた時。
俺は。
もっと。
強い一発を。
撃てるように。
なっていたい。
リーナが。
命を削るような。
無茶をして。
やっと。
繋いでくれた。
道。
その先で。
俺は。
二発目を。
撃つことができた。
だから。
次は。
もっと。
強くなる。
俺に。
できることは。
それだ。
「……レンさん?」
「いや」
「行こう」
「はい」
神器を。
消した。
その時だった。
「レン!」
聞き慣れた声。
振り返る。
「セリア」
セリアが。
こちらへ。
歩いてくる。
腰には。
剣がない。
代わりに。
布で包まれた。
細長いものを。
持っていた。
俺には。
それが何なのか。
すぐに。
分かった。
あの戦いで。
折れた。
セリアの剣。
「身体」
「もう大丈夫なの?」
リーナが。
心配そうに聞く。
「うん」
「もう平気」
「それより」
セリアが。
少し嬉しそうに。
俺たちを見る。
「聞いて」
「私」
「ジョブが変わったみたい」
「ジョブが?」
「あの戦いのあと」
「確認してもらったの」
セリアが。
少し照れくさそうに。
笑った。
【上級剣士 Lv.35】
「……上級剣士」
以前は。
剣士。
Lv.27。
あの戦いで。
セリアも。
大きく。
成長した。
「すごいじゃないか」
「でしょ?」
少し。
得意そうだ。
でも。
俺の視線は。
セリアが持っている。
布包みに向いた。
「それ」
「……うん」
セリアも。
視線を落とす。
「このままには」
「しておけないから」
布の中には。
折れた剣が。
入っている。
長い間。
セリアと。
一緒に戦ってきた。
剣。
あの巨大な魔物との。
戦いで。
最後まで。
セリアを支えて。
折れた。
「鍛冶屋に」
「持っていってみる」
「直せそうなのか?」
「分からない」
「でも」
セリアが。
布包みを。
大事そうに。
抱える。
「一度」
「見てもらいたいから」
「そっか」
「じゃあ」
「また後でな」
「うん」
セリアが。
歩いていく。
その背中を。
見送った。
上級剣士。
Lv.35。
俺より。
ずっと。
レベルが高い。
俺も。
止まっていられない。
「レンさん」
「ん?」
「私も」
リーナが。
腰の短剣に。
手を伸ばした。
「少し」
「確認しておこうと思います」
「調律?」
「はい」
あれだけ。
無理をした。
まだ。
休んだ方が。
いいんじゃないか。
そう思った。
でも。
リーナの顔色は。
もう悪くない。
それに。
いつもの短剣だ。
軽く。
状態を見るくらいなら。
大丈夫だろう。
リーナが。
短剣を。
鞘から抜く。
ずっと。
リーナと一緒にある。
古い短剣。
リーナの指が。
刃に。
そっと触れる。
「…………」
しばらく。
動かない。
「リーナ?」
返事がない。
「どうした?」
「…………」
リーナが。
もう一度。
短剣に触れる。
目を閉じる。
それでも。
何も言わない。
「リーナ」
「……レンさん」
その声が。
震えていた。
「どうした?」
リーナが。
短剣を。
見つめる。
「……聞こえないんです」
「え?」
「この子の」
「声が……」
俺は。
言葉を失った。
リーナが。
もう一度。
短剣を握る。
何度も。
触れる。
それでも。
「……分からない」
「何も」
「感じないんです」
その瞬間。
俺の頭に。
あの時の。
リーナが。
浮かんだ。
震える手。
流れる血。
それでも。
神器から。
手を離さなかった。
リーナ。
――もう一発。
俺に。
撃たせるために。
まさか。
証拠なんて。
ない。
ただ。
一つだけ。
思い当たることが。
ある。
あの時。
リーナは。
自分で。
言っていた。
今の。
自分の限界を。
超えないと。
できない。
と。
「……リーナ」
俺は。
短剣を握る。
リーナの手を。
見た。
あの一発を。
撃てたのは。
リーナのおかげだ。
でも。
その代わりに。
リーナは――
「レンさん……?」
分からない。
まだ。
何も。
分からない。
だから。
今は。
決めつけることも。
できない。
それでも。
胸の奥に。
一つだけ。
強く。
残ったものがあった。
もっと。
強くならないと。
次に。
リーナが。
道を繋いでくれた時。
今度は。
俺が。
その先へ。
進めるように。
前よりも。
強い。
一発を。
撃てるように。
俺は。
もっと。
強くならないと。
いけない。




