最高の一発
「……任せろ」
聞こえているかは。
分からない。
それでも。
俺は。
リーナに。
そう答えた。
ゆっくりと。
リーナを。
地面へ寝かせる。
「リーナを!」
「頼む!」
近くにいた兵士が。
駆け寄ってくる。
「分かりました!」
リーナを。
兵士に預ける。
そして。
俺は。
立ち上がった。
巨大な魔物は。
まだ。
そこにいる。
レオンが。
セリアが。
カイルが。
その前で。
戦っている。
セリアの剣は。
もう。
折れている。
レオンも。
肩で息をしている。
カイルの鎧も。
傷だらけだ。
それでも。
誰一人。
退いていない。
俺の手を見る。
神器。
リーナが。
繋いでくれた。
まだ。
弾はない。
でも。
道は。
繋がっている。
「……やるぞ」
神器を。
構える。
魔力を。
流す。
今度は。
リーナの手は。
ない。
ここからは。
俺が。
やる。
魔力が。
神器の中へ。
流れていく。
前にも。
何度も。
やった。
弾を。
作るために。
魔力を。
集める。
神器の中で。
少しずつ。
形にしていく。
――キィン。
感覚が。
変わった。
「……できた」
分かる。
神器の中。
あの場所に。
魔力の塊が。
ある。
弾だ。
【第一術式・魔力弾】
【魔力弾生成完了】
【残弾数:1/1】
「……一発」
もう一度。
撃てる。
でも。
それだけじゃ。
駄目だ。
巨大な魔物を見る。
胸に開いていた。
大きな穴は。
もう。
ほとんど。
消えている。
あの一発は。
外していない。
全力だった。
あいつの身体を。
撃ち抜いた。
倒した。
それでも。
戻ってきた。
なら。
「もっとだ」
神器を。
強く握る。
魔力を。
流す。
弾を。
撃ち出すための。
魔力。
前と。
同じように。
流していく。
そして。
いつもの。
場所まで。
来た。
ここで。
止まる。
これ以上。
神器は。
俺の魔力を。
受け付けない。
――はずだった。
「……え?」
入る。
魔力が。
まだ。
入る。
「なんだ……?」
さらに。
流す。
入る。
まだ。
入る。
もっと。
今までなら。
とっくに。
止まっていた。
なのに。
まだ。
神器は。
俺の魔力を。
受け止めている。
神器の。
もっと。
奥へ。
今まで。
届かなかった場所へ。
俺の魔力が。
流れていく。
「……そうか」
分かった。
これが。
リーナが。
命懸けで。
繋いでくれた。
道。
今まで。
閉ざされていた。
その先。
「……リーナ」
神器を。
握る。
「ちゃんと」
「繋がってるぞ」
さらに。
魔力を。
流す。
もっと。
もっと。
神器が。
光を帯びていく。
さっきまでとは。
違う。
俺の魔力が。
止まらない。
奥へ。
さらに。
奥へ。
流れていく。
その時。
巨大な魔物が。
吠えた。
「グオオオオオオオッ!!」
地面が。
震える。
巨大な腕が。
振り上げられる。
「させるか!」
レオンが。
《天穿槍》を。
構える。
巨大な腕へ。
槍を。
叩き込んだ。
――ドォンッ!!
「ぐっ!」
レオンの身体が。
弾かれる。
「レオン!」
「構うな!」
地面を。
滑りながら。
レオンが。
叫ぶ。
「お前は!」
「そいつを撃て!」
巨大な魔物が。
さらに。
前へ出る。
「行かせない!」
セリアが。
折れた剣を。
握って。
飛び込む。
もう。
まともな。
剣じゃない。
それでも。
巨大な魔物の。
足へ。
斬りつける。
「セリア!」
「大丈夫!」
「レンは!」
「撃つことだけ考えて!」
その横へ。
カイルが。
並ぶ。
「お前!」
「その剣で何する気だ!」
「まだ!」
「刃は残ってる!」
「そういう問題じゃないだろ!」
カイルが。
大剣を。
振り抜く。
「くそっ!」
「俺まで付き合わされるのかよ!」
巨大な魔物の。
足が。
止まる。
ほんの。
一瞬。
それで。
十分だった。
俺は。
神器へ。
魔力を流し続ける。
入る。
まだ。
入る。
もっと。
神器は。
拒まない。
俺の魔力を。
全部。
受け止めていく。
「……まだ」
流す。
「もっと……」
身体の。
奥から。
魔力を。
絞り出す。
頭が。
熱い。
呼吸が。
苦しい。
腕が。
震え始める。
それでも。
神器は。
まだ。
受け止める。
そこで。
気づいた。
今までとは。
逆だ。
今までは。
俺が。
どれだけ。
魔力を流そうとしても。
神器が。
先に。
止めていた。
それ以上。
入らなかった。
でも。
今は。
違う。
神器じゃない。
俺の方が。
先に。
限界へ。
近づいている。
「……はは」
思わず。
笑った。
こんな時なのに。
少しだけ。
嬉しかった。
初めてだ。
この神器に。
もっと流せと。
言われているような。
気がした。
「だったら……」
残っている。
魔力を。
全部。
「持ってけ!」
流し込む。
――キィィィィン!!
神器が。
強く。
輝いた。
「なっ……」
レオンが。
こちらを見る。
「なんだ……」
「その魔力は……」
神器の周囲が。
震えている。
集まった魔力が。
弾へ。
流れ込んでいく。
同じ。
魔力弾。
新しい。
弾じゃない。
新しい。
術式でもない。
俺が。
初めて撃った。
あの一発と。
同じ。
【第一術式・魔力弾】
ただ。
そこへ流れる。
魔力が。
違う。
俺は。
巨大な魔物を見る。
淡い光が。
まだ。
集まっている。
戦場に倒れた。
魔物たちから。
一つ。
また。
一つ。
巨大な魔物へ。
吸い込まれていく。
傷が。
塞がる。
身体が。
戻っていく。
さっきと。
同じだ。
撃ち抜いても。
戻ってくる。
だったら。
もう。
答えは。
一つしかない。
「戻れないくらい……」
神器を。
構える。
「全部」
「吹き飛ばす」
巨大な魔物へ。
銃口を。
向ける。
でも。
腕が。
震える。
魔力を。
使いすぎた。
身体に。
力が。
残っていない。
巨大な神器が。
今までより。
ずっと。
重く感じる。
「……くっ」
銃口が。
少し。
下がる。
その時。
「レン!」
セリアの。
声。
「大丈夫!」
俺を見る。
折れた剣を。
握ったまま。
笑っていた。
「絶対!」
「当てられるから!」
カイルが。
巨大な魔物を。
押し返す。
「外したら!」
「一生笑ってやるからな!」
「カイル!」
「うるさい!」
「さっさと撃て!」
レオンも。
笑った。
「神銃士!」
《天穿槍》を。
構える。
「ここまで!」
「持たせたんだ!」
巨大な魔物へ。
踏み込む。
「決めろ!」
――ドォンッ!!
槍が。
巨大な魔物を。
押し返した。
俺は。
神器を。
握り直す。
そうだ。
俺一人で。
ここまで。
来たわけじゃない。
リーナが。
道を。
繋いでくれた。
セリアが。
折れた剣で。
立っている。
カイルが。
何度も。
魔物を。
押し返している。
レオンが。
限界まで。
戦っている。
兵士たちが。
冒険者たちが。
俺たちを。
ここまで。
繋いでくれた。
だから。
あとは。
俺が。
決める。
巨大な魔物が。
こちらを。
向いた。
俺も。
銃口を。
向ける。
今度は。
迷わない。
照準を。
合わせる。
巨大な。
身体。
外す方が。
難しい。
でも。
それだけじゃ。
駄目だ。
俺が。
決める。
この一発を。
どこで。
使うのか。
どれだけ。
込めるのか。
いつ。
撃つのか。
全部。
俺が。
決める。
引き金へ。
指を。
かける。
その瞬間。
思い出した。
初めて。
この神器の。
引き金を。
引いた日。
誰もが。
期待していた。
伝説級。
神銃士。
最強の。
神器。
なのに。
――カチッ。
何も。
起きなかった。
何度。
引いても。
同じだった。
使えない。
神銃士。
笑われた。
馬鹿にされた。
俺自身も。
何度も。
思った。
本当に。
撃てるのか。
それでも。
諦めなかった。
剣を。
振った。
神器を。
調べた。
街を。
出た。
リーナと。
出会った。
少しずつ。
少しずつ。
ここまで。
来た。
最初は。
嫌いだった。
あの音。
何も。
起こらない。
失敗の。
音。
でも。
今は。
違う。
もう。
あの音は。
失敗の音じゃない。
俺は。
引き金を。
引いた。
――カチッ。
一瞬。
世界から。
音が。
消えた。
そして。
――ズドォォォォォォォォンッ!!!!
光が。
走った。
今までとは。
比べものにならない。
巨大な。
魔力の奔流。
神器から。
放たれた。
一発が。
一直線に。
戦場を。
駆け抜ける。
巨大な魔物が。
腕を。
前へ出す。
でも。
止まらない。
腕を。
飲み込む。
そのまま。
胸へ。
突き刺さる。
――ドォォォォォォン!!
光が。
巨体を。
包んだ。
「グオオオオオオオオオッ!!」
巨大な。
咆哮。
身体が。
光の中へ。
消えていく。
腕が。
胸が。
身体が。
魔力の奔流に。
飲み込まれていく。
それでも。
光は。
止まらない。
巨大な魔物を。
貫き。
その後ろまで。
一直線に。
駆け抜ける。
そして。
消えた。
静かだった。
誰も。
動かなかった。
巨大な魔物が。
立っていた場所。
そこには。
抉れた。
大地だけが。
残っている。
「……やった?」
セリアが。
呟く。
その時。
淡い光が。
浮かんだ。
「……っ!」
俺は。
神器を。
握る。
また。
戦場中から。
光が。
集まってくる。
一つ。
また。
一つ。
「まさか……」
カイルが。
息を呑む。
でも。
光は。
巨大な魔物が。
いた場所まで。
来て。
止まった。
行き場を。
失ったように。
空中を。
漂う。
そして。
一つ。
消えた。
また。
一つ。
消える。
次々と。
淡い光が。
消えていく。
何も。
戻ってこない。
巨大な魔物は。
もう。
いない。
「……終わった」
誰かが。
呟いた。
それを。
合図にしたように。
戦場から。
力が抜けていく。
兵士が。
武器を。
下ろす。
冒険者が。
その場へ。
座り込む。
セリアも。
折れた剣を。
下ろした。
カイルが。
大きく。
息を吐く。
レオンは。
何も言わず。
巨大な魔物が。
消えた場所を。
見ている。
俺も。
神器を。
下ろした。
力が。
入らない。
膝が。
震える。
それでも。
倒れる前に。
リーナを。
探した。
少し離れた場所。
兵士に。
支えられて。
眠っている。
リーナ。
俺は。
ゆっくりと。
そこへ。
歩いていく。
一歩。
また。
一歩。
そして。
リーナの前で。
止まった。
「……リーナ」
返事は。
ない。
眠っている。
俺は。
神器を見る。
もう。
光は。
消えていた。
ただの。
巨大な。
使いづらい。
神器。
一発しか。
撃てない。
撃ったら。
また。
繋がなければならない。
最強のはずなのに。
どうしようもなく。
面倒な。
神器。
最初は。
最悪だと。
思った。
それでも。
こいつが。
あったから。
リーナと。
出会った。
みんなと。
ここまで。
来た。
俺一人じゃ。
撃てなかった。
リーナが。
道を。
繋いだ。
セリアが。
カイルが。
レオンが。
みんなが。
時間を。
作った。
だから。
撃てた。
「……リーナ」
俺は。
小さく。
笑った。
「撃ったぞ」
返事は。
ない。
でも。
それでいい。
俺は。
巨大な魔物が。
いた場所を見る。
もう。
何も。
戻ってこない。
あれは。
俺一人の。
一発じゃない。
みんなが。
繋いでくれた。
一発。
そして。
俺が。
今まで。
撃った中で。
間違いなく。
最高の一発だった。




