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転生したら最強ジョブだが最凶だった件 ~伝説の【神銃士】になったのに、一発も撃てない~  作者: 蝶野摩矢
王国編

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もう一発

「撃てるようにします」


 リーナの手が。


 俺の神器に。


 触れている。


「……本当に」


「できるのか?」


「……分かりません」


 リーナは。


 神器から。


 目を逸らさなかった。


「でも」


「やります」


 巨大な魔物を見る。


 レオンの。


 第二術式。


 《穿界(センカイ)》。


 それによって。


 大きく抉られた身体。


 その傷が。


 戦場中から集まる。


 淡い光によって。


 少しずつ。


 塞がっている。


 時間がない。


「レンさん」


「魔力を」


「流してください」


「分かった」


 神器へ。


 魔力を流す。


 ゆっくり。


 少しずつ。


 リーナが。


 目を閉じた。


 そして。


 俺の魔力へ。


 自分の魔力を。


 重ねる。


「……っ」


「リーナ?」


「もう少し」


「待ってください」


「ああ」


 リーナの。


 眉が寄る。


 いつもなら。


 少しずつ。


 魔力を流して。


 リーナが。


 途切れた場所を探す。


 そこへ。


 自分の魔力を重ね。


 一つずつ。


 道を。


 繋いでいく。


 何度も。


 何度も。


 確かめながら。


 少しずつ。


 それだけで。


 何日も。


 かかる。


 それを。


 今。


 この戦場で。


 やろうとしている。


「……そこ」


「レンさん」


「少し」


「弱くしてください」


「分かった」


 魔力を。


 弱める。


「そのまま……」


 リーナが。


 自分の魔力を。


 重ねる。


 ――キィン。


「……一つ」


「繋がりました」


「よし」


 でも。


 リーナの表情は。


 変わらなかった。


「次……」


 もう一度。


 探す。


 俺も。


 魔力を流す。


「……違う」


「リーナ?」


「もう一度」


「少し強くしてください」


「ああ」


 強くする。


「……っ」


「違う……」


 リーナが。


 小さく。


 首を振る。


 焦っている。


 俺にも。


 それが分かった。


 一つ。


 繋ぐ。


 次を。


 探す。


 また。


 一つ。


 繋ぐ。


 次を。


 探す。


 いつもなら。


 それでいい。


 でも。


 今は。


 そんな時間。


 どこにもない。


 ――ドォンッ!!


「くっ!」


 振り返る。


 レオンが。


 巨大な魔物の腕を。


 《天穿槍(レグナス)》で。


 受け止めていた。


「レオン!」


「こっちはいい!」


 レオンが。


 叫ぶ。


「そいつを!」


「何とかしろ!」


 その横を。


 小型の魔物が。


 抜ける。


「行かせるか!」


 カイルの。


 大剣が。


 振り抜かれる。


 魔物が。


 吹き飛んだ。


「レン!」


 セリアも。


 俺たちの前へ。


 立つ。


「そっちは」


「任せたから!」


 剣を。


 構える。


 俺たちを。


 守るように。


 みんなが。


 戦っている。


 俺たちの。


 時間を。


 作るために。


「……リーナ」


「どうだ?」


「……まだです」


 リーナが。


 神器へ。


 触れたまま。


 答える。


「もう一度」


「お願いします」


「ああ」


 魔力を。


 流す。


 リーナが。


 その流れを。


 追う。


 でも。


「……駄目」


 小さな。


 声。


「これじゃ……」


「間に合わない」


 リーナが。


 唇を噛む。


 何日も。


 かけてきたことを。


 今。


 ほんの。


 短い時間で。


 やらなければならない。


 そのうえ。


 もう一つ。


 問題がある。


 リーナが。


 巨大な魔物を見る。


 胸。


 俺が。


 撃ち抜いた。


 大きな穴。


 もう。


 ほとんど。


 塞がっている。


「……レンさん」


「どうした?」


「いつもと同じように」


「繋げても」


 リーナが。


 神器を見る。


「今までと」


「同じところで」


「魔力が止まります」


「同じところで?」


「はい」


「もう一発」


「撃てるようには」


「なると思います」


「でも」


 巨大な魔物へ。


 視線を戻す。


「さっきと」


「同じだけしか」


「魔力を流せない」


 俺も。


 巨大な魔物を見る。


 あの一発は。


 外していない。


 完璧に。


 当てた。


 巨体を。


 撃ち抜いた。


 倒した。


 それでも。


 戻ってきた。


「……同じじゃ」


「駄目ってことか」


「はい」


 再装填できるようにするだけじゃ。


 足りない。


 必要なのは。


 もう一度。


 同じ一発を。


 撃つことじゃない。


 あの再生を。


 上回る。


 もっと。


 強い一発。


「でも」


「どうする?」


「……」


 リーナは。


 答えなかった。


 神器へ。


 もう一度。


 意識を集中させる。


 今まで。


 繋いできた。


 道。


 その先。


 もっと。


 奥。


 前に。


 一度だけ。


 感じた。


 何か。


「……もっと」


「奥……」


「リーナ?」


「前に」


「感じたんです」


「今まで」


「繋げてきたところより」


「もっと」


「奥に」


「何かがあるって」


 俺も。


 覚えている。


 王都で。


 リーナが。


 神器へ触れた時。


 今までとは。


 違う場所を。


 感じた。


 でも。


 届かなかった。


「そこまで」


「繋げたら」


「何か変わるかもしれません」


「できるのか?」


「……」


 リーナは。


 答えない。


 しばらく。


 神器を。


 見つめる。


 そして。


 小さく。


 呟いた。


「今のままじゃ」


「できません」


「リーナ……」


「今までと」


「同じやり方じゃ」


「間に合わない」


「それに」


「もっと奥まで」


「行かないと」


「さっきと」


「同じです」


 リーナの。


 手に。


 力が入る。


「だったら……」


 顔を上げる。


「今の」


「私の限界を」


「超えないと」


「できない」


「おい」


「それって――」


「レンさん」


 俺の言葉を。


 遮る。


「もう少し」


「魔力をください」


「でも」


「お願いします」


 リーナの目は。


 俺を見ていた。


 俺は。


 少しだけ。


 迷って。


「……分かった」


 神器へ。


 流す魔力を。


 強くする。


「……っ!」


 リーナの。


 身体が。


 小さく震えた。


 それでも。


 手を。


 離さない。


 俺の魔力へ。


 さらに。


 自分の魔力を。


 重ねる。


 もっと。


 深く。


 もっと。


 奥へ。


 今まで。


 感じられなかった。


 ところまで。


 ――キィン。


「……え?」


 リーナが。


 小さく。


 声を漏らした。


「どうした?」


 返事がない。


「リーナ?」


 リーナは。


 神器を。


 見ている。


 いや。


 違う。


 俺には。


 見えない。


 何かを。


 見ている。


「……光」


「光?」


「はい……」


「一本」


「光が……」


 リーナの目に。


 見えていた。


 神器の中。


 一本の。


 細い光。


 今まで。


 感じてきた。


 魔力の道。


 それとは。


 違う。


「これ……」


「違う……」


「リーナ?」


「前に」


「繋げたところじゃ」


「ないです」


 細い。


 一本の光が。


 神器の奥へ。


 伸びている。


 今まで。


 リーナが。


 触れたことのない。


 もっと。


 深い場所へ。


 その時。


 リーナが。


 巨大な魔物を見た。


 塞がっていく。


 傷。


 俺が。


 全力で。


 撃ち抜いた。


 胸。


「……そうだ」


「リーナ?」


「さっきと」


「同じじゃ」


「駄目なんだ」


 リーナが。


 もう一度。


 光を見る。


 知らない。


 道。


 どこへ。


 続いているのかも。


 分からない。


 でも。


 今までとは。


 違う。


「……行きます」


「え?」


「この光を」


「追います」


 リーナが。


 目を閉じる。


 俺の魔力。


 リーナの魔力。


 二つが。


 重なる。


 そして。


 リーナは。


 光を。


 追い始めた。


 必死に。


 ただ。


 その光だけを。


 追った。


「レンさん」


「少し弱く」


「ああ」


 弱める。


「今」


「強くしてください」


 強くする。


「そのまま……」


 リーナが。


 自分の魔力を。


 重ねる。


 ――キィン。


「……繋がった」


 光が。


 さらに。


 奥へ。


 伸びる。


「次……」


 また。


 追う。


 俺の魔力を。


 感じる。


 そこへ。


 自分の魔力を。


 重ねる。


 繋ぐ。


 光が。


 伸びる。


 追う。


 また。


 繋ぐ。


 いつから。


 戦場の音が。


 聞こえなくなったのか。


 リーナには。


 分からなかった。


 レオンが。


 戦っている。


 セリアが。


 戦っている。


 カイルが。


 戦っている。


 兵士も。


 冒険者も。


 戦っている。


 でも。


 今のリーナには。


 遠い。


 ただ。


 一本の。


 光だけが。


 見えている。


 だから。


 追った。


 無我夢中で。


 追い続けた。


 ――ガキィン!!


 巨大な魔物の。


 爪を。


 セリアが。


 剣で受け流す。


 ――ピシッ。


「……っ」


 刀身に。


 亀裂が走る。


「セリア!」


「大丈夫!」


 セリアが。


 剣を。


 握り直す。


 リーナが。


 前に。


 言っていた。


『このまま』


『セリアさんが強くなったら』


『いつか』


『この剣では』


『力を受け止めきれなくなると思います』


 今。


 それが。


 起きている。


 それでも。


 セリアは。


 退かない。


「レン!」


「リーナを!」


「お願い!」


 俺は。


 神器へ。


 意識を戻す。


 リーナは。


 まだ。


 光を追っている。


 でも。


 さっきより。


 呼吸が。


 荒い。


「……リーナ」


「無理するなよ」


 返事が。


 少し。


 遅れた。


「……はい」


 短い。


 返事。


 でも。


 リーナは。


 光から。


 目を逸らさない。


「次……」


「レンさん」


「そのまま……」


「分かった」


 俺は。


 言われた通りに。


 魔力を流す。


 リーナが。


 その先へ。


 自分の魔力を。


 重ねる。


 ――キィン。


 また。


 一つ。


 繋がった。


 ぽたっ。


「……え?」


 赤い。


 雫。


 神器の上へ。


 落ちた。


「リーナ!」


 鼻から。


 血が。


 流れている。


「おい!」


「血が――」


 リーナが。


 ゆっくり。


 指で。


 鼻元に触れる。


 赤い。


 血。


 それを見て。


 ほんの一瞬。


 目を見開いた。


 でも。


 すぐに。


 神器へ。


 視線を戻した。


「リーナ!」


「もういい!」


 リーナは。


 首を。


 振った。


「……まだ」


「見えてます」


「でも!」


「レンさん」


 リーナが。


 俺を見る。


「魔力を」


「止めないでください」


「リーナ……」


「お願いします」


 そして。


 また。


 光へ。


 意識を戻す。


 頭が。


 痛い。


 手も。


 震えている。


 息も。


 苦しい。


 顔から。


 血が。


 流れている。


 でも。


 そんなことは。


 関係なかった。


 私に。


 できること。


 レンさんの。


 神器に触れて。


 その中を感じて。


 途切れた道を。


 繋ぐこと。


 レンさんが。


 神器を。


 使えるようにすること。


 それが。


 私に。


 できること。


 私にしか。


 できないこと。


 だから。


 追う。


 光を。


 もっと。


 奥へ。


 ――ドォンッ!!


「ぐっ!」


 レオンが。


 地面を。


 滑る。


「レオン!」


「こっちは!」


「気にするな!」


 レオンが。


 すぐに。


 立ち上がる。


「時間が!」


「必要なんだな!」


 リーナが。


 神器へ。


 触れたまま。


「……はい!」


「どれくらいだ!」


「分かりません!」


 レオンが。


 一瞬だけ。


 笑った。


《天穿槍(レグナス)》を。


 構え直す。


「なら!」


「繋がるまでだ!」


 レオンが。


 巨大な魔物へ。


 駆ける。


 カイルも。


 続く。


 セリアも。


 ひびの入った剣を。


 握り直す。


 兵士たちが。


 冒険者たちが。


 迫る魔物を。


 押し返す。


 前は。


 俺が。


 一発を。


 外さないために。


 みんなが。


 射線を。


 作ってくれた。


 今は。


 リーナが。


 もう一発を。


 繋ぐために。


 みんなが。


 時間を。


 作っている。


「リーナ」


「……はい」


「合わせる」


「お願いします」


 魔力を。


 流す。


 リーナが。


 光を追う。


 一つ。


 繋ぐ。


 また。


 一つ。


 さらに。


 奥へ。


 でも。


 深くなるほど。


 光は。


 細くなっていく。


「……っ」


 リーナの。


 指先が。


 震える。


 呼吸が。


 浅い。


 それでも。


 止まらない。


「あと……」


「少し……」


 もう。


 何分。


 経ったのかも。


 分からない。


 ただ。


 光だけを。


 追う。


 その時。


 ――ガキィン!!


「くっ……!」


 セリアが。


 もう一度。


 巨大な魔物の。


 攻撃を受け流す。


 そして。


 ――パキンッ。


「あ……」


 剣が。


 折れた。


「セリア!」


 折れた。


 刀身。


 セリアが。


 一瞬。


 それを見る。


 でも。


 すぐに。


 折れた剣を。


 握り直した。


「まだ!」


「終わってない!」


 カイルが。


 その隣へ。


 飛び込む。


「無茶するな!」


「そっちこそ!」


 二人が。


 俺たちの前を。


 守る。


 その後ろで。


 リーナが。


 また。


 一つ。


 道を。


 繋ぐ。


 ――キィン。


「……あと」


 リーナが。


 呟く。


「あと一つ……」


「リーナ?」


「これを」


「繋げれば……」


 最後の。


 道。


 そこまで。


 来た。


 今までの。


 自分なら。


 絶対に。


 届かなかった場所。


 そこまで。


 自分の力で。


 辿り着いた。


 でも。


「……え?」


 光が。


 消えた。


「リーナ?」


「……分からない」


 ここまで。


 ずっと。


 続いていた。


 光。


 その先だけが。


 見えない。


「どこ……?」


 リーナが。


 魔力を。


 重ねる。


 でも。


 分からない。


 もう一度。


 探す。


 ない。


「……そんな」


 あと。


 一つ。


 なのに。


 ここまで。


 来たのに。


 指先に。


 力を込める。


「……っ!」


 ぽたっ。


 また。


 赤い雫が。


 神器へ。


 落ちた。


「リーナ!」


 膝が。


 落ちる。


「もういい!」


「ここまででいい!」


「……駄目」


「リーナ!」


「あと……」


「少しなんです」


 神器から。


 手を。


 離さない。


 でも。


 もう。


 見えない。


 最後の。


 道だけが。


「……お願い」


 リーナが。


 小さく。


 呟いた。


「あと」


「少しなの……」


 神器へ。


 触れる。


「お願い……」


 今まで。


 ずっと。


 触れてきた。


 神器。


 何度も。


 分からなくて。


 何度も。


 失敗して。


 それでも。


 少しずつ。


 繋いできた。


「教えて……」


 その時だった。


 ――キィン。


「……え?」


 澄んだ。


 小さな。


 音。


 そして。


 光が。


 見えた。


 一本。


 細い。


 光。


 さっきまで。


 途切れていた。


 その先へ。


 ゆっくりと。


 伸びていく。


 まるで。


 道を。


 教えるように。


「……そこ?」


 光が。


 最後の。


 接続先へ。


 伸びている。


 ほんの。


 一瞬。


 でも。


 リーナには。


 分かった。


「……ありがとう」


 小さく。


 呟く。


 神器が。


 勝手に。


 繋いだわけじゃない。


 ただ。


 最後の道を。


 示してくれた。


 だったら。


 あとは。


 私が。


 繋ぐ。


 残っている。


 自分の魔力を。


 光の示した場所へ。


 重ねる。


 震える。


 指先。


 掠れた。


 声。


 それでも。


 最後まで。


 手を。


 離さない。


「お願い……」


 あと。


 少し。


「繋がって……!」


 ――キィィィィン!!


 リーナが。


 追っていた。


 細い光が。


 最後の道へ。


 繋がった。


 一本の。


 光の道になって。


 神器の奥を。


 一気に。


 駆け抜ける。


 次の瞬間。


 ――カッ!


「……っ!」


 俺の腕の中で。


 神器が。


 光った。


「なっ……」


 神器の。


 奥から。


 溢れ出すような。


 強い光。


 それが。


 内部を走り。


 巨大な神器の。


 全体へ。


 広がっていく。


 今までとは。


 違う。


 眩しいほどの。


 光が。


 神器を。


 包んでいる。


「……なんだ?」


 レオンが。


 巨大な魔物と。


 向き合ったまま。


 一瞬だけ。


 こちらを見る。


 神器持ちの。


 レオンでさえ。


 目を。


 見開いていた。


 俺にも。


 分かった。


 何かが。


 違う。


 今までより。


 もっと。


 深いところまで。


 道が。


 繋がっている。


【外部経路からの接続を確認】


【接続深度――上昇】


【第一術式・魔力弾】


【再装填可能】


「……繋がった」


 分かる。


 今までとは。


 違う。


 神器の奥。


 今まで。


 届かなかった場所まで。


 道が。


 続いている。


「リーナ!」


 リーナの手が。


 神器から。


 離れた。


 身体が。


 ゆっくりと。


 傾く。


「リーナ!」


 俺は。


 その身体を。


 抱き止めた。


「リーナ!」


「しっかりしろ!」


 リーナが。


 ゆっくりと。


 目を開く。


 もう。


 ほとんど。


 力は。


 残っていない。


 それでも。


 俺を見て。


 ほんの少し。


 笑った。


「レンさん……」


 掠れた。


 声。


「信じてます」


「リーナ……」


 その言葉を。


 最後に。


 リーナは。


 目を閉じた。


「リーナ!」


 腕の中から。


 力が抜ける。


 でも。


 俺の手には。


 リーナが。


 繋いだ。


 神器がある。


 まだ。


 弾はない。


 でも。


 道は。


 繋がった。


 もう一発。


 それを。


 撃つための道を。


 リーナは。


 俺に。


 託した。

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