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転生したら最強ジョブだが最凶だった件 ~伝説の【神銃士】になったのに、一発も撃てない~  作者: 蝶野摩矢
王国編

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消された記録

「明日の正午」


王城から来た男は。


そう告げた。


「王城へ」


「お越しください」


「……分かりました」


俺が答えると。


男は。


一度だけ頭を下げた。


そして。


そのまま。


人混みの中へ消えていった。


残された俺たちは。


しばらく。


誰も口を開かなかった。


最初に声を出したのは。


セリアだった。


「……すごいね」


「国王陛下から」


「呼ばれるなんて」


「すごいっていうか……」


俺は。


男が消えていった方を見る。


「神器を」


「見たいだけみたいだけどな」


「それでも」


「普通はないよ」


まあ。


そうなんだろう。


神銃士。


伝説に残るジョブ。


そして。


一度は。


使えないと思われた神器。


それが。


ついに。


その力を示した。


国王の耳に入っても。


おかしくはない。


「レンさん」


隣から。


リーナが俺を見る。


「明日」


「撃つんですか?」


「……」


答えようとして。


言葉が止まった。


撃てる。


今の神器には。


すでに一発。


装填されている。


だけど。


それを。


王城で撃つ。


そう考えた瞬間。


胸の奥に。


小さな引っかかりが生まれた。


「分からない」


俺は答えた。


「まだ」


「何も聞いてないからな」


リーナが。


小さく頷く。


「そうですね」


「レン」


セリアが言う。


「私たちは?」


「え?」


「明日」


「一緒に行ってもいいの?」


「どうだろうな」


王城からの使者は。


俺を呼んだ。


リーナや。


セリアたちについては。


何も言っていない。


「確認してみるよ」


「うん」


セリアは。


それ以上。


無理に頼もうとはしなかった。


「じゃあ」


「今日はここで」


「ああ」


「またな」


「うん」


セリアが。


少し笑う。


「今度は」


「ちゃんと会えるからね」


その言葉に。


俺も笑った。


「そうだな」


もう。


故郷を出る前とは違う。


同じ王都にいる。


明日だって。


会おうと思えば会える。


「レン」


別れ際。


カイルが。


俺を呼んだ。


「なんだ?」


カイルは。


少しだけ迷ってから。


口を開いた。


「……いや」


「なんでもない」


「?」


「またな」


「ああ」


カイルは。


それだけ言って。


セリアと歩いていった。


その背中を。


少しだけ見送る。


「レンさん」


リーナが。


俺を見る。


「これから」


「どうしますか?」


「……」


王城。


神器。


前任者。


第二接続。


いくつもの言葉が。


頭の中で。


繋がっていく。


そして。


一つだけ。


どうしても。


引っかかっていることがあった。


「記録院に行こう」


「もう一度?」


「ああ」


俺は。


頷いた。


「明日」


「神器を見せる前に」


「もう少し」


「知っておきたい」


この神器が。


何なのか。


そして。


前の神銃士が。


何をしていたのか。


リーナは。


俺の顔を見て。


静かに頷いた。


「分かりました」


王立記録院。


昨日も。


ここで。


神銃士について調べた。


前任者は。


最初から神銃士だったわけじゃない。


【狩人】


【弓使い】


【天弓士 Lv.MAX】


そこまで。


自分の力で進み。


そして。


神器に選ばれた。


『神器――顕現』


『神器による選定を確認』


『ジョブ変化――神銃士』


さらに。


神銃士となったその日に。


大型魔獣を三体。


撃破している。


俺とは。


違う。


前任者は。


最初から。


神器を使えた。


そして。


その先にあった。


もう一つの記録。


『神銃士神器・接続調査記録』


通常の神器とは。


違う構造。


そして。


第二接続。


昨日は。


そこまでしか。


分からなかった。


「また来たのか」


受付にいた職員が。


俺たちを見て言った。


「はい」


「もう少し」


「調べたいことがあって」


職員は。


俺を見る。


それから。


隣のリーナを見る。


「神銃士関連か?」


「はい」


「第二接続について」


その言葉に。


職員が。


僅かに眉を寄せた。


「昨日見せたもの以上は」


「こちらでも」


「ほとんど残っていないぞ」


「ほとんど?」


俺は。


その言葉に引っかかった。


「全くないわけじゃ」


「ないんですか?」


「……いや」


職員が。


少し考える。


「正確には」


「記録そのものが」


「少ないんだ」


「前にも言ったが」


「古い資料だからな」


「戦争や火災で」


「失われたものも多い」


それ自体は。


不思議じゃない。


何十年。


何百年。


残っている記録の方が。


珍しいのかもしれない。


「ただ」


職員が続ける。


「目録なら」


「もう少し古いものが残っている」


「目録?」


「何を保管していたか」


「それを記したものだ」


職員は。


奥へ目を向ける。


「現物が失われていても」


「目録だけ残っていることはある」


俺と。


リーナは。


顔を見合わせた。


「見せてもらえますか?」


職員は。


少し迷ってから。


頷いた。


「紹介状もある」


「構わないだろう」


案内されたのは。


昨日よりも。


さらに奥だった。


古い棚。


古い紙。


そして。


古い革表紙の本。


職員が。


その一冊を。


机の上に置く。


「これは」


「当時の保管目録だ」


ゆっくり。


ページをめくる。


聞いたこともない。


地名。


人名。


戦争。


魔物。


神器。


いくつもの記録名が。


並んでいる。


その中で。


俺の目が。


止まった。


「……あった」


指で。


文字を追う。


『北方戦役記録 第六巻』


その下。


『北方戦役記録 第七巻』


さらに。


『北方戦役記録 第八巻』


「北方……」


リーナが。


呟く。


俺も。


同じ言葉を。


見ていた。


北方。


どこかで。


見た。


「ベルグさんの……」


「はい」


あの村で。


ベルグが見せてくれた。


古い紙。


ほとんど。


読めなくなっていた。


その中に。


確かに。


残っていた。


『――北方――』


『――戦線――』


そして。


『神銃士――』


「これ」


俺は。


職員を見る。


「第七巻を」


「見せてもらえますか?」


「待ってくれ」


職員が。


保管番号を確認する。


そして。


棚へ向かった。


六巻。


八巻。


順番に。


古い本が並んでいる。


職員の手が。


止まった。


「……ないな」


「え?」


「第七巻がない」


俺も。


棚を見る。


第六巻。


その隣。


僅かな隙間。


そして。


第八巻。


「貸し出されてるとか?」


「いや」


職員が。


首を振る。


「この区画の資料は」


「外へは出せない」


「では……」


リーナが。


棚を見る。


「なくなったんですか?」


「古い資料だからな」


「そういうことも」


「ないとは言えない」


職員は。


そう言った。


でも。


何か。


引っかかった。


「他には?」


俺は。


目録へ戻る。


神銃士。


神器。


接続。


その文字を。


探す。


そして。


見つけた。


『神銃士神器・接続研究記録 第一』


その下。


『神銃士神器・接続研究記録 第二』


さらに。


『神銃士神器・接続研究記録 第三』


「……第二」


リーナが言う。


俺も。


そこを見ていた。


「これも」


「お願いします」


職員が。


別の棚へ向かう。


しばらくして。


一冊の資料を取り出した。


「第一だ」


もう一冊。


「第三」


そして。


手が止まる。


「……第二は?」


俺が聞く。


職員は。


答えなかった。


棚を。


もう一度。


確認する。


隣の棚も。


確認する。


それでも。


見つからない。


「……ない」


静かな声だった。


第一はある。


第三もある。


なのに。


第二だけ。


ない。


偶然。


そう考えることも。


できる。


一冊なら。


失われることも。


あるかもしれない。


でも。


北方戦役記録。


第七巻。


神銃士神器・接続研究記録。


第二。


「他にも」


俺は。


目録をめくった。


「神銃士に関係するものを」


「探せませんか?」


職員も。


今度は。


何も言わなかった。


一緒に。


目録を追う。


そして。


いくつかの記録を。


見つけた。


だが。


結果は。


同じだった。


あるものもある。


けれど。


神銃士が。


北方で戦っていた時期。


その周辺だけ。


妙に。


抜け落ちている。


「……おかしい」


職員が。


初めて。


そう呟いた。


俺は。


顔を上げる。


「やっぱり」


「おかしいんですか?」


「古い資料が」


「失われること自体は」


「珍しくない」


職員は。


目録を見る。


「だが……」


「これは」


「少し」


「偏りすぎている」


背中に。


冷たいものが走った。


記録が。


残っていないんじゃない。


記録は。


確かに存在していた。


その証拠が。


目の前にある。


なのに。


現物だけが。


ない。


「誰かが……」


リーナが。


小さく呟く。


「消したんでしょうか」


誰も。


答えられなかった。


さらに。


目録を調べていると。


一枚の。


古い地図が見つかった。


北方地域。


今とは。


地名も。


国境も違う。


「この辺りが」


職員が。


地図の一点を指す。


「北方戦役が」


「行われた地域らしい」


俺は。


そこを見る。


山。


森。


川。


いくつもの地形が。


細い線で描かれている。


その時。


一つの場所に。


目が止まった。


「……ここ」


地図には。


街の名前が。


書かれていた。


聞き覚えのない。


古い地名。


でも。


その周囲。


山の位置。


川の流れ。


そして。


街のすぐ近くにある。


広い平地。


どこかで。


見たことがある。


「レンさん?」


リーナが。


俺を見る。


「どうしました?」


「……似てる」


「え?」


俺は。


地図から。


目を離せなかった。


「俺の」


「故郷に」


故郷。


俺が。


十五年間。


育った街。


そして。


街のそばにある。


大きな湖。


昔。


あの場所では。


大きな戦いがあったという。


湖は。


その戦いの跡だと。


伝えられていた。


でも。


誰が戦ったのか。


何が起きたのか。


俺は。


知らない。


そして。


この古い地図には。


まだ。


湖がない。


代わりに。


そこには。


街と。


広い平地がある。


「この地図」


俺は。


職員を見る。


「今の地図と」


「比べられますか?」


「ああ」


職員が。


新しい地図を持ってくる。


二枚を。


並べる。


古い地図。


新しい地図。


川。


山。


地形を。


一つずつ。


見比べる。


そして。


俺の指が。


止まった。


「……ここだ」


新しい地図。


そこにあるのは。


俺の故郷。


そして。


その隣に広がる。


巨大な湖。


古い地図には。


その湖がない。


リーナも。


二枚の地図を。


見比べている。


「ここが……」


「レンさんの」


「故郷?」


「ああ」


声が。


少し震えた。


偶然かもしれない。


まだ。


何も分からない。


この湖が。


神銃士と関係している証拠なんて。


どこにもない。


だけど。


ベルグが持っていた記録。


『――北方――』


『――戦線――』


『神銃士――』


そして。


王立記録院から。


不自然に失われている。


北方戦役の記録。


俺は。


古い地図を見る。


湖ができる前の。


故郷。


その場所で。


かつて。


何があった?


前の神銃士は。


そこで。


何をした?


そして。


なぜ。


その時代の記録だけが。


こんなにも。


抜け落ちている?


明日。


俺は。


この神器を。


国王の前で。


見せることになっている。


その前に。


知ってしまった。


かつて。


この記録院には。


神銃士について書かれた記録が。


確かに。


存在していた。


それが。


今はない。


誰が。


消した?


何のために?


そして。


その答えは。


俺の故郷にある。


あの巨大な湖と。


繋がっているのかもしれない。

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