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転生したら最強ジョブだが最凶だった件 ~伝説の【神銃士】になったのに、一発も撃てない~  作者: 蝶野摩矢
王国編

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19/68

幼馴染

「……セリア?」


俺の声に。


少女の目が。


大きく見開かれた。


「……レン?」


一瞬。


信じられないものを見るような顔をして。


次の瞬間。


「レン!」


セリアが。


俺の名前を呼びながら。


駆けてきた。


「本当に……レンなんだ」


「久しぶりだな」


「うん」


セリアが。


嬉しそうに笑う。


「久しぶり」


近くまで来たセリアを見て。


改めて思う。


少し。


変わった。


髪は。


前より少し伸びている。


顔立ちも。


どこか大人びて見えた。


腰には剣。


身につけた装備には。


旅を重ねてきた跡がある。


俺の知らない時間を。


セリアも。


過ごしてきたんだ。


「驚いた」


セリアが言う。


「まさか王都で会えるなんて」


「それは俺もだよ」


「……元気そうでよかった」


その言い方が。


昔より少しだけ。


大人びて聞こえた。


でも。


そう言って笑った顔は。


昔と。


変わっていなかった。


「レンも」


セリアが。


俺を上から下まで見る。


「少し変わったね」


「そうか?」


「うん」


その視線が。


俺の腰の剣へ向く。


「前より」


「ちゃんと冒険者に見える」


「ちゃんとってなんだよ」


「ふふ」


セリアが。


小さく笑う。


こういうところは。


やっぱり。


変わっていない。


その時。


セリアの視線が。


俺の横へ動いた。


「……その子は?」


「あ」


隣には。


リーナが立っていた。


突然始まった俺たちの会話を。


静かに見ている。


「リーナ」


俺は。


セリアを見る。


「今」


「一緒に旅してる」


「一緒に……?」


セリアの視線が。


一瞬だけ。


俺からリーナへ移る。


「そうなんだ」


何かを考えるような。


短い間。


それから。


セリアは。


リーナに笑いかけた。


「セリアです」


「レンとは」


「同じ街で育った幼馴染なの」


「リーナです」


リーナが。


小さく頭を下げる。


「よろしくね」


「……はい」


リーナも。


少しだけ笑った。


セリアが。


俺を見る。


「いい仲間ができたんだね」


「まだ」


「何も話してないだろ」


「見れば分かるよ」


「何が?」


「そういうところは」


「変わってないね」


「……なんだそれ」


リーナが。


俺たちを見ている。


「……仲がいいんですね」


「まあな」


「そうだね」


今度は。


俺とセリアの声が。


重なった。


「……」


セリアを見る。


セリアも。


俺を見ている。


そして。


どちらからともなく。


笑った。


「……ふふ」


リーナも。


小さく笑う。


「なんだよ」


「いえ」


リーナは。


首を振った。


「本当に」


「幼馴染なんだなって」


久しぶりに会ったはずなのに。


まるで。


昨日まで一緒にいたような。


そんな感覚だった。


俺たちは。


修練場を離れ。


近くの店へ入った。


久しぶりに会ったんだ。


話したいことは。


山ほどある。


席につくと。


セリアが。


俺を見る。


「神器」


その一言で。


何を聞きたいのか。


分かった。


「撃てるようになったんだって?」


「……知ってたのか」


「うん」


セリアが頷く。


「王都まで」


「噂が届いてる」


そこまで。


広がってるのか。


「本当だよ」


「一発だけだけどな」


「それでも」


セリアが。


少し嬉しそうに笑った。


「よかったね」


「レン」


「……ああ」


「ずっと」


「気にしてたでしょ」


その一言に。


胸が。


少しだけ詰まった。


あの頃。


俺は。


セリアに当たった。


神銃士になったのに。


神器が撃てなくて。


何もかも嫌になって。


それでも。


セリアは。


最後に俺を送り出してくれた。


「覚えてる?」


セリアが言った。


「何を?」


「街を出る前」


「いつか」


「神器を撃つところを見せるって」


一瞬。


あの日のことが。


頭に浮かぶ。


「……覚えてたのか」


「当たり前でしょ」


セリアが。


笑う。


「だから」


「いつか」


「私にも見せて」


「ああ」


俺は。


頷いた。


「必要な時が来たらな」


「うん」


セリアは。


それ以上。


何も言わなかった。


撃てるから。


撃つんじゃない。


必要な時に。


撃つ。


今の俺が。


神器と向き合う中で。


決めたことだった。


「それで」


セリアの視線が。


リーナへ向いた。


「リーナも」


「一緒に?」


「はい」


リーナが。


少し迷ってから。


頷く。


「私が」


「神器の中の」


「魔力の流れを見て……」


「リーナが」


「繋いでくれたんだ」


俺が続ける。


「俺が神器に魔力を流す」


「リーナが」


「その流れを感じて」


「途切れているところを探す」


「それから」


「自分の魔力を重ねながら」


「途切れた道を繋いでいく」


「道が繋がったら」


「そこからは俺が魔力を流して」


「弾を作って」


「撃つ」


「……そうなんだ」


セリアが。


リーナを見る。


そして。


穏やかに笑った。


「ありがとう」


「え?」


リーナが。


目を瞬かせる。


「レンのこと」


「助けてくれたんでしょ?」


「いや……」


リーナは。


慌てて首を振った。


「私なんか」


「大したことは――」


「ある」


俺が言う。


リーナが。


俺を見る。


「リーナがいなかったら」


「俺は今でも」


「神器を撃ててない」


「……レンさん」


「俺一人じゃ」


「最初の一発を」


「撃つことすらできなかった」


「だから」


「大したことないなんて」


「言うなよ」


リーナは。


何も言わなかった。


ただ。


少しだけ俯いて。


「……はい」


小さく。


そう答えた。


「……そっか」


セリアが。


俺たちを見る。


その表情は。


どこか安心したようにも。


見えた。


「レン」


「いい仲間に」


「会えたんだね」


「……ああ」


それは。


迷わず。


答えられた。


「そういうセリアは?」


今度は。


俺が聞く番だ。


「なんで」


「王都にいるんだ?」


「私も」


セリアの手が。


腰の剣へ触れる。


「街を出たの」


「セリアも?」


「うん」


少しだけ。


懐かしむような顔をして。


セリアが続ける。


「レンが」


「街を出てから」


「私も考えたんだ」


「このままで」


「いいのかなって」


「私」


「剣士になった時」


「すごく嬉しかった」


「これで」


「強くなれるって」


「誰かを」


「守れるって」


そこで。


セリアは。


自分の手を見る。


「でも」


「ジョブを知っただけじゃ」


「何も変わらなかった」


その言葉に。


胸が動いた。


俺にも。


分かる。


どれだけ。


立派なジョブの名前があっても。


それだけで。


強くなれるわけじゃない。


俺なんて。


伝説級ジョブを手に入れて。


一発も。


撃てなかった。


「だから」


セリアが続ける。


「私も」


「外に出てみようって思ったの」


「依頼を受けて」


「魔物と戦って」


「いろんな人と出会って」


「いろんな場所を見て」


「気づいたら」


「王都まで来てた」


「……そうだったのか」


知らなかった。


俺が。


自分の神器の答えを。


探している間。


セリアも。


自分の道を。


歩いていた。


「それに」


セリアが。


少し笑う。


「街にいた頃より」


「少しは強くなったよ」


「少し?」


「今は」


セリアが。


少しだけ得意そうに笑った。


「剣士のレベル二十七」


「……二十七?」


思わず。


セリアを見る。


「ずいぶん上がったな」


「頑張ったからね」


短い言葉だった。


でも。


そこに至るまで。


何度も。


戦ってきたんだろう。


それは。


腰の剣と。


使い込まれた装備を見れば。


分かる。


俺が知っていた。


あの頃のセリアじゃない。


「そういえば」


セリアが言った。


「カイルも」


「来てるよ」


「カイルも?」


「うん」


「一緒に」


「王都まで来たの」


カイル。


あいつも。


街を出たのか。


「今は?」


「別の用事」


「あとで」


「合流することになってる」


「そうか」


カイルまで。


この王都にいる。


少し。


不思議な気分だった。


故郷を出た俺たちが。


こんな場所で。


また集まろうとしている。


その時。


リーナが。


セリアの腰を見ていた。


正確には。


そこにある剣を。


「……どうした?」


俺が聞くと。


リーナは。


少し迷ってから。


口を開いた。


「その剣」


「これ?」


セリアが。


腰の剣を見る。


「はい」


リーナは。


剣から目を離さない。


「少し」


「見てもいいですか?」


「もちろん」


セリアが。


剣を外して。


リーナへ差し出す。


リーナは。


受け取った剣に。


そっと触れた。


目を閉じる。


しばらくして。


その眉が。


僅かに動いた。


「何か」


「気になる?」


セリアが聞く。


「悪い剣じゃないです」


リーナは言った。


「ちゃんと」


「手入れもされています」


「でも……」


言葉が。


止まる。


「でも?」


リーナは。


セリアを見る。


「この剣」


「セリアさんに」


「追いついてないです」


「……私に?」


俺も。


剣を見る。


傷はある。


使い込まれてもいる。


でも。


酷く痛んでいるようには。


見えない。


「壊れてるのか?」


「違います」


リーナが。


首を振る。


「剣は」


「ちゃんとしています」


「ただ」


「セリアさんの方が」


「成長してるんです」


セリアが。


自分の手を見る。


「私が……」


「はい」


リーナは。


もう一度。


剣へ触れた。


「今は」


「まだ大丈夫です」


「でも」


「このまま」


「セリアさんが強くなったら」


「いつか」


「この剣では」


「力を受け止めきれなくなると思います」


セリアは。


しばらく。


自分の剣を見つめていた。


「……そう」


驚いてはいる。


でも。


嫌そうではなかった。


むしろ。


どこか。


嬉しそうにも見える。


「ありがとう」


セリアが。


リーナから剣を受け取る。


「教えてくれて」


「いえ……」


リーナが。


小さく首を振る。


俺は。


二人を見ながら。


少しだけ。


おかしくなった。


俺の神器とは。


逆だ。


俺は。


神器の力に。


まだ届いていない。


でも。


セリアは。


自分の武器を。


追い越そうとしている。


「……すごいな」


「何が?」


セリアが。


俺を見る。


「ちゃんと」


「強くなったんだなって」


「……今さら?」


セリアは。


少し呆れたように。


それでも。


嬉しそうに笑った。


それから。


しばらくして。


俺たちは。


店を出た。


「そろそろ」


セリアが。


周囲を見る。


「カイルも」


「来ると思うんだけど――」


「セリア!」


遠くから。


男の声がした。


セリアが。


振り返る。


「あ」


その名前を。


口にする。


「カイル」


俺も。


そちらを見た。


一人の男が。


こちらへ歩いてくる。


昔より。


体つきが。


一回り大きくなっていた。


身につけている装備も。


俺が知っているものとは。


違う。


そして。


向こうも。


俺に気づいた。


足が。


止まる。


「……レン?」


「久しぶりだな」


「カイル」


「……ああ」


カイルの視線が。


俺の顔から。


腰の剣へ落ちる。


そして。


隣にいるリーナ。


最後に。


もう一度。


俺へ戻った。


「お前……」


少し。


間があった。


「神器」


「撃てたって」


「本当なのか?」


「ああ」


俺は答える。


「一発だけだけどな」


「……そうか」


それだけだった。


でも。


カイルの手が。


僅かに。


握られたのが見えた。


「カイルも」


俺は。


その姿を見る。


「強くなったみたいだな」


「……当然だ」


カイルは。


短く答える。


「今は」


「上級戦士だ」


「上級戦士……」


こいつも。


俺が知らない間に。


次の段階へ。


進んでいた。


俺たちが。


離れていた時間。


それぞれが。


それぞれの場所で。


前へ進んでいたんだ。


その時だった。


「レン殿!」


聞き慣れない声が。


俺の名前を呼んだ。


「……俺?」


振り返る。


王都の制服を身につけた男が。


こちらへ。


まっすぐ歩いてきていた。


俺たちの前まで来ると。


男は。


姿勢を正した。


「神銃士の」


「レン殿ですね?」


「……はい」


男は。


一度。


頭を下げた。


「王城より」


「使いとして参りました」


「王城?」


思わず。


聞き返す。


セリアも。


カイルも。


リーナも。


男を見ていた。


「神銃士の神器が」


「ついにその力を示したと」


「陛下のお耳にも」


「届いております」


……もう。


そこまで。


話が広がっているのか。


「それで」


「俺に何を?」


男は。


静かに答えた。


「国王陛下が」


「神銃士の神器を」


「その目でご覧になりたいと」


「仰せです」


一瞬。


言葉が。


出なかった。


王都。


この場所で。


俺は一度。


神器を披露した。


大勢の人間の前で。


引き金を引いて。


――カチッ。


何も。


起こらなかった。


あの日とは。


違う。


今の俺は。


撃てる。


それでも。


なぜか。


素直に。


頷くことは。


できなかった。

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