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転生したら最強ジョブだが最凶だった件 ~伝説の【神銃士】になったのに、一発も撃てない~  作者: 蝶野摩矢
王国編

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神槍士

王都へ来て。


何日かが。


過ぎた。


前の神銃士。


神器による選定。


第二接続。


そして。


リーナだけが感じる。


神器の奥。


分かったことは。


増えた。


でも。


それ以上に。


分からないことも。


増えていた。


その中でも。


ずっと。


頭に残っている言葉がある。


『所有者単独にて完全接続』


普通の神器は。


持ち主一人で。


扱える。


前の神銃士も。


神器に選ばれた。


その日のうちに。


大型魔獣を。


三体倒している。


でも。


俺は。


違う。


「……実際に」


「見てみたいな」


「何をですか?」


隣を歩く。


リーナが。


俺を見る。


「他の神器」


「他の……」


「うん」


記録には。


書かれていた。


でも。


俺は。


他の神器持ちが。


実際に神器を使うところを。


間近で見たことがない。


「本当に」


「持ち主一人で」


「普通に使えるのか」


リーナが。


少し考えて。


頷いた。


「私も」


「見てみたいです」


幸い。


ここは。


王都だ。


神器持ちなんて。


そう簡単に。


会えるものじゃない。


でも。


今。


王都には。


一人。


有名な神器持ちが。


滞在しているらしい。


南方の。


神槍士。


レオン。


◇


王都の。


修練場。


兵士や。


騎士。


冒険者たちが。


訓練に使う。


大きな施設。


その一角だけ。


今日は。


妙に人が多かった。


「見えますか?」


「……ギリギリ」


人の隙間から。


奥を見る。


広い。


修練場の中央。


そこに。


一人の男が。


立っていた。


背が高い。


黒い髪。


軽い鎧。


年は。


二十代半ばくらい。


「あの人が……」


「神槍士」


周囲から。


名前が聞こえる。


レオン。


南方で。


名を知られた。


神器持ち。


俺と。


同じ。


伝説級ジョブを持つ人間。


でも。


その姿は。


俺とは。


まるで違った。


腰に。


普通の武器はない。


剣も。


槍も。


何も。


持っていない。


レオンが。


ゆっくりと。


右手を前へ出した。


ざわついていた。


周囲が。


静かになる。


「――来い」


金色の光が。


集まる。


その中を。


赤い光が走る。


そして。


レオンが。


その名を呼んだ。


「――《天穿槍(レグナス)》」


光が。


弾ける。


現れたのは。


一本の槍。


白銀の穂先。


長い柄。


その表面を。


金と赤の光が。


流れている。


「……神器」


リーナが。


呟く。


俺も。


目を離せなかった。


あれが。


他の神器。


伝説級ジョブを持つ者だけが。


扱える武器。


でも。


俺が見たかったのは。


その強さだけじゃない。


レオンが。


槍を構える。


それだけだった。


誰かが。


触れることもない。


何かを。


調整することもない。


ただ。


レオンが。


魔力を流す。


天穿槍を覆う光が。


強くなる。


「第一術式――」


金と赤の光が。


穂先へ。


集まっていく。


「――《閃牙(センガ)》」


次の瞬間。


レオンが。


踏み込んだ。


槍を。


突き出す。


――ドンッ!


金色の閃光が。


修練場を。


一直線に走った。


離れた場所にある。


巨大な標的。


その中心が。


一撃で。


貫かれる。


歓声が。


上がった。


でも。


俺は。


別のところを。


見ていた。


神器。


まだ。


レオンの手にある。


光も。


消えていない。


そして。


レオンは。


そのまま。


もう一度。


槍を構えた。


「……もう」


俺は。


思わず。


声を漏らす。


「使えるんだ」


「レンさん……」


「うん」


分かっていた。


記録にも。


書かれていた。


それでも。


実際に見ると。


全然違う。


一撃を放った後。


何も。


起きない。


魔力の道が。


途切れたりしない。


誰かに。


繋いでもらう必要もない。


次の一撃を。


当たり前のように。


使える。


これが。


本来の。


神器。


「……ずるいな」


「え?」


「いや」


「なんでもない」


その時だった。


レオンが。


次の一撃を放とうとして。


止まった。


「……?」


天穿槍の穂先が。


僅かに。


揺れる。


レオンが。


神器を見る。


さっきまでとは。


表情が違った。


そして。


ゆっくりと。


顔を上げる。


何かを。


探すように。


修練場を。


見渡していく。


やがて。


その視線が。


止まった。


こっちだ。


「……レンさん?」


「うん」


俺にも。


分かった。


胸の奥。


召喚していないはずの。


神器。


そこから。


微かな。


感覚がする。


――キィン。


教会で。


リーナの判定をした時。


神器が反応した。


あの時と。


少し似ている。


でも。


今度は。


目の前に。


別の神器がある。


レオンが。


こちらへ。


歩き出した。


周囲の人間が。


道を開ける。


真っ直ぐ。


こっちへ。


来る。


そして。


俺たちの前で。


止まった。


レオンの視線は。


最初。


俺の顔へ。


向いていた。


「今」


レオンが。


天穿槍を見る。


「何か」


「感じなかったか?」


俺は。


一瞬。


迷ってから。


頷いた。


「……感じました」


レオンの目が。


細くなる。


「やっぱりか」


そして。


俺を見る。


「神器持ちだな?」


「……はい」


「ジョブは?」


「神銃士です」


レオンの表情が。


変わった。


「神銃士……」


俺を見る。


そして。


レオンの視線が。


ゆっくりと。


下がる。


俺の腰。


そこにある。


剣。


「……待て」


「はい?」


レオンが。


俺の剣を見る。


そして。


また。


俺を見る。


「お前」


「神銃士なんだよな?」


「はい」


「じゃあ」


レオンが。


本気で。


分からないという顔をした。


「なんで」


「剣なんか持ってる?」


やっぱり。


そこか。


「必要だからです」


「必要?」


レオンの眉が。


少し動く。


「神器持ちなんだろ?」


「はい」


「なら」


「普通の剣なんて」


「必要ないだろ」


普通なら。


そうなんだろう。


俺は。


腰の剣に。


手を置く。


「俺の神器だけじゃ」


「戦えないんです」


「……どういう意味だ?」


「一発しか」


「撃てないんです」


レオンが。


黙った。


「……一発?」


「はい」


「一日に?」


「いえ」


「じゃあ」


「一回の戦闘で?」


「それも」


「少し違います」


レオンの眉間に。


皺が寄った。


「どういう神器だ、それ」


……俺も。


そう思う。


「一発撃つと」


「神器の中の」


「魔力の通り道が」


「切れてしまうんです」


「待て」


レオンが。


俺の言葉を止めた。


さっきまでとは。


表情が違う。


「神器の中の」


「魔力の通り道が?」


「はい」


レオンが。


少し考える。


「じゃあ」


「一発撃った後は」


「どうするんだ?」


「切れたところを」


「もう一度」


「繋ぎます」


「繋ぐ?」


「はい」


レオンの眉間に。


皺が寄る。


「どうやって?」


俺は。


隣を見る。


リーナも。


少し緊張した顔で。


レオンを見ていた。


「彼女が」


「繋いでくれるんです」


「……彼女が?」


レオンの視線が。


リーナへ移る。


「お前が」


「神器の中の」


「魔力の通り道を?」


リーナが。


少し。


身体を固くする。


「……はい」


「分かるのか?」


「見えるというか……」


リーナが。


言葉を探す。


「感じるんです」


「魔力が」


「通っているところと」


「通らないところが」


「なんとなく」


レオンの表情が。


変わった。


「それで」


「切れている場所まで」


「分かるのか?」


「……はい」


レオンは。


何も言わなかった。


ただ。


リーナを見る。


「俺が」


俺は。


説明を続ける。


「神器に魔力を流します」


「リーナが」


「その流れを感じて」


「途切れているところを探す」


「俺は」


「言われた通りに」


「魔力を強くしたり」


「弱くしたりして」


「リーナが」


「道を繋いでいく」


「それでも繋がらないところは」

「リーナ自身の魔力も使って、道を繋いでいく」


レオンは。


黙って。


聞いている。


「繋がったら」


「リーナは」


「神器から手を離します」


「そこからは」


「俺が魔力を流して」


「弾を作って」


「俺が撃ちます」


「……なるほど」


レオンが。


小さく呟く。


そして。


少し考えて。


「いや」


俺を見る。


「なるほどじゃないな」


「そんな神器」


「聞いたことがない」


「……ですよね」


「当たり前だ」


レオンが。


天穿槍を見る。


「俺の神器は」


「呼べば現れる」


「魔力を流せば応える」


「術式を使っても」


「そのまま次を使える」


「中の道を繋ぐなんて」


「考えたことすらない」


やっぱり。


そうなんだ。


前任者だけじゃない。


今。


目の前にいる。


神器持ちも。


一人で。


神器を使っている。


レオンの視線が。


再び。


リーナへ移った。


「それより」


「俺は」


「そっちの方が気になる」


「……私、ですか?」


「ああ」


レオンが。


真っ直ぐ。


リーナを見る。


「なんでお前は」


「神銃士本人にも分からない」


「神器の中が分かる?」


リーナは。


答えられなかった。


俯き。


自分の手を見る。


「……分かりません」


「ジョブは?」


リーナの肩が。


僅かに動く。


「それも……」


俺が。


代わりに口を開く。


「分からないんです」


「分からない?」


「王都の教会で」


「正式に」


「調べてもらいました」


「結果は?」


「判定不能でした」


レオンの目が。


僅かに細くなる。


「判定不能?」


「はい」


「ジョブ名も」


「レベルも」


「分かりませんでした」


レオンは。


少しの間。


リーナを見ていた。


「神器の中を感じる」


「所有者でもないのに」


「途切れた魔力の流れを繋げられる」


「そのうえ」


「判定不能か」


「……はい」


リーナが。


小さく答える。


「私にも」


「よく」


「分からなくて……」


「私なんかが」


「たまたま――」


「いや」


レオンが。


遮った。


リーナが。


顔を上げる。


「“たまたま”で」


「そんなことはできない」


「……え?」


「俺は」


レオンが。


天穿槍を見る。


「こいつを」


「ずっと使ってる」


「それでも」


「神器の中にある道なんて」


「意識したことすらない」


レオンが。


リーナを見る。


「それを」


「お前は感じられるんだろ?」


「……はい」


「なら」


レオンが。


言う。


「少なくとも」


「何もない人間じゃない」


リーナは。


何も言わなかった。


ただ。


自分の手を。


見つめていた。


その横顔を見て。


俺は。


少しだけ。


嬉しくなった。


俺が。


何度言っても。


リーナは。


自分には。


価値がないと。


どこかで。


思っている。


でも。


今。


俺じゃない。


神器を持つ。


別の人間が。


同じことを。


言っている。


「……ありがとうございます」


小さな声で。


リーナが言った。


レオンは。


少しだけ。


笑った。


「礼を言われるようなことじゃない」


「見たままを」


「言っただけだ」


そして。


レオンの視線が。


再び。


俺へ戻る。


「それで?」


「はい?」


「お前の神器」


「見せてみろ」


「ここでですか?」


周囲を見る。


まだ。


かなりの人がいる。


「……場所を変えましょう」


「そうだな」


◇


修練場の。


人が少ない区画。


周囲に。


誰もいないことを。


確認する。


レオンが。


俺を見る。


「いいぞ」


「はい」


俺は。


右手を。


前へ出す。


「――来い」


青白い光が。


集まる。


空間が。


歪む。


そして。


――ズンッ。


重い感触。


巨大な神器が。


俺の手に。


収まった。


レオンの目が。


僅かに。


見開かれる。


「……これが」


「神銃士の神器か」


「はい」


レオンが。


神器を見る。


大きく開いた先端。


黒い本体。


金色の装飾。


青白く光る。


古い文字。


「変わった形だな」


「俺も」


「そう思います」


レオンが。


俺の持つ神器と。


腰の剣を。


見比べる。


「なるほどな」


「何がですか?」


「いや」


レオンが。


少し笑う。


「本当に」


「剣が必要なんだと思ってな」


「……そこですか」


否定できない。


その時。


俺は。


さっき。


レオンが神器を。


呼び出した時のことを。


思い出した。


「そういえば」


「ん?」


「さっき」


「神器を出した時」


「名前を」


「呼びましたよね?」


「ああ」


「天穿槍」


レオンが。


当たり前のように。


答える。


「レグナスだ」


「それって」


「神器の名前ですか?」


「そうだけど」


「神器って」


「名前があるんですか?」


今度こそ。


レオンが。


完全に止まった。


「……お前」


「はい」


「自分の神器の名前」


「知らないのか?」


「……はい」


レオンが。


俺を見る。


神器を見る。


腰の剣を見る。


そして。


リーナを見る。


「神器の名前は知らない」


「一発しか撃てない」


「撃ったら魔力の道が切れる」


「その子に繋いでもらう」


「普段は剣で戦う」


一つずつ。


数えるように。


言われる。


「……はい」


「お前」


レオンが。


真顔で言った。


「本当に神銃士か?」


「俺も」


「たまに」


「そう思います」


一瞬。


沈黙。


そして。


レオンが。


吹き出した。


「ははっ」


「いや」


「悪い」


「笑い事じゃないんですけど」


「そうだな」


そう言いながら。


まだ。


少し笑っている。


……なんだ。


この差は。


同じ。


神器持ち。


レオンは。


神器を。


名前で呼ぶ。


一人で。


使える。


一度。


術式を使っても。


そのまま。


次を使える。


普通の武器なんて。


持っていない。


俺は。


一発しか。


撃てない。


撃ったら。


また。


リーナと。


繋がなきゃいけない。


普段は。


剣で戦う。


そのうえ。


自分の神器の。


名前すら。


知らない。


……ずるくないか?


レオンが。


俺の神器を。


もう一度見る。


「でも」


「その一発は」


「ちゃんと撃てるんだよな?」


「はい」


「威力は?」


「大型の魔物を」


「一撃で倒しました」


レオンの眉が。


僅かに上がる。


「……なるほど」


そして。


俺の神器へ。


もう一度。


視線を向ける。


「じゃあ」


「今も撃てるのか?」


「撃てます」


「なら」


「撃ってみないのか?」


俺は。


神器を見る。


今。


この中には。


一発。


入っている。


撃とうと思えば。


撃てる。


でも。


俺は。


首を横に振った。


「撃ちません」


「どうして?」


「この一発を」


「使う必要が」


「今はないからです」


レオンが。


俺を見る。


俺は。


神器を。


少し持ち直す。


「撃ったら」


「次を作るまで」


「時間がかかります」


「だから」


「必要な時に」


「使いたいんです」


少しの。


沈黙。


レオンが。


ふっと。


笑った。


「そうか」


レオンは。


天穿槍を。


軽く握り直す。


そして。


俺を見る。


「使えるから」


「偉いんじゃない」


俺は。


レオンを見る。


「どこで使うか」


「決められる奴が」


「強い」


その言葉が。


胸に残った。


俺は。


ずっと。


撃てないことばかり。


考えていた。


どうすれば。


撃てるのか。


どうすれば。


もう一発。


撃てるのか。


でも。


撃てるようになった今。


大事なのは。


それだけじゃない。


撃てる。


だから。


撃つ。


それじゃ。


駄目なんだ。


一発しかないなら。


なおさら。


「……ありがとうございます」


俺が言うと。


レオンは。


肩をすくめた。


「別に」


「思ったことを」


「言っただけだ」


……リーナに。


言った時と。


同じだ。


俺は。


少し笑った。


その時だった。


「――レン?」


聞き覚えのある。


声。


心臓が。


一瞬。


止まったような。


気がした。


まさか。


俺は。


ゆっくり。


振り返る。


そこに。


一人の少女が。


立っていた。


腰には。


剣。


前より。


少し伸びた髪。


でも。


その顔を。


見間違えるはずがない。


「……セリア?」


俺の。


幼馴染が。


そこにいた。

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