↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生したら最強ジョブだが最凶だった件 ~伝説の【神銃士】になったのに、一発も撃てない~  作者: 蝶野摩矢
王国編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
14/68

神銃士の噂

追加報酬を。


受け取ってから。


数日が。


経った。


俺は。


財布の中を。


確認する。


「……ある」


「どうしました?」


隣を歩く。


リーナが。


俺を見る。


「いや」


「ちゃんと」


「金があるなって」


「……?」


リーナが。


首を傾げる。


俺は。


もう一度。


財布を見る。


冒険者になってから。


宿代。


食事代。


依頼に必要な。


細かい物。


金は。


いつも。


減っていくものだった。


できるだけ。


安い宿。


できるだけ。


安い飯。


そんなことばかり。


考えていた。


でも。


今は。


違う。


あの。


巨大な魔物。


ダリオたちと。


一緒に。


倒したことで。


追加報酬が。


入った。


六人で。


分けても。


十分な。


金額だった。


しばらく。


宿代に。


困ることはない。


「……よし」


「?」


「リーナ」


「はい」


「今日は」


「いいもの食べよう」


「……いいもの?」


「うん」


「いつもより」


「ちょっとだけ」


「高いやつ」


リーナが。


俺を見る。


「でも」


「お金……」


「ある」


財布を。


軽く。


持ち上げる。


「俺たちが」


「稼いだ金だろ?」


「……」


リーナが。


少しだけ。


黙る。


「使って」


「いいんでしょうか」


「使うための」


「金だろ」


「……そうですけど」


なんで。


そんなに。


不安そうなんだ。


俺は。


少し考えて。


言った。


「全部」


「使うわけじゃないよ」


「……」


「ちょっとだけ」


「贅沢する」


「それくらいなら」


「いいだろ?」


リーナが。


しばらく。


考える。


それから。


小さく。


頷いた。


「……はい」


◇


入ったのは。


大通りにある。


食堂だった。


今まで。


何度か。


前を通ったことはある。


でも。


入ったことは。


なかった。


理由は。


簡単。


少し。


高い。


「……レンさん」


「ん?」


「これ」


リーナが。


メニューを見る。


「高くないですか?」


「……」


俺も。


見る。


確かに。


いつもの店より。


高い。


「昨日までなら」


「高かった」


「今日は?」


「……ちょっと高い」


「高いんじゃないですか」


思わず。


笑った。


リーナも。


少し遅れて。


笑う。


「まあ」


「大丈夫だよ」


「せっかくだし」


「好きなの」


「頼もう」


「好きなの……」


リーナが。


メニューを。


じっと見る。


その顔は。


魔物を。


相手にしている時より。


真剣だった。


「そんなに」


「悩む?」


「だって」


「どれも」


「高いです」


「値段じゃなくて」


「食べたいもの」


「選べばいいんだよ」


「……」


また。


リーナが。


黙る。


しばらくして。


一つの料理を。


指差した。


「……これ」


「肉?」


「はい」


「じゃあ」


「それにしよう」


俺も。


同じものを。


頼んだ。


運ばれてきたのは。


厚く切られた。


肉。


焼きたての。


パン。


温かい。


スープ。


それを見た。


リーナの目が。


ほんの少し。


輝いた。


「……」


「食べないの?」


「食べます」


一口。


食べる。


リーナの。


目が。


少し。


大きくなった。


「……おいしい」


「だな」


もう一口。


食べる。


「……おいしいです」


「二回言った」


「だって」


「おいしいので」


今度は。


俺が。


笑った。


こんな。


普通の時間。


久しぶりな。


気がした。


神器。


調律。


魔物。


弾。


ずっと。


そればかり。


考えていた。


でも。


こういうのも。


悪くない。


その時。


少し離れた。


席から。


声が。


聞こえた。


「そういや」


「聞いたか?」


「何を?」


「神銃士だよ」


手が。


止まった。


リーナも。


俺を見る。


「……」


俺は。


黙って。


肉を。


口へ運ぶ。


聞こえてない。


ふりをする。


「撃てなかった奴だろ?」


「それが」


「撃ったらしいぞ」


「本当に?」


「ああ」


「でかい魔物を」


「一発で貫いたって」


「一発?」


「しかも」


「そのまま」


「森の木まで」


「何本も倒したらしい」


「なんだそれ」


「本当に神器かよ」


「神器だからだろ」


「……」


俺は。


少しだけ。


身体を。


小さくした。


「レンさん」


「聞こえてます?」


「聞こえてない」


「聞こえてますよね」


「……聞こえてる」


リーナが。


小さく。


笑った。


「なんで」


「嬉しそうなんだよ」


「だって」


「前と」


「違いますから」


「前?」


「レンさんの」


「噂です」


俺は。


黙る。


確かに。


そうだった。


前まで。


聞こえてきたのは。


撃てない。


使えない。


そんな。


言葉ばかり。


だった。


今は。


違う。


本当に。


撃った。


巨大な魔物を。


倒した。


そんな。


噂に。


変わっている。


「……なんか」


「変な感じだな」


「嫌ですか?」


「いや」


少し。


考える。


「……まだ」


「慣れない」


「そうですか」


リーナは。


また。


肉を。


一口食べた。


その顔が。


少しだけ。


嬉しそうだった。


なんで。


俺の噂なのに。


リーナの方が。


嬉しそうなんだ。


でも。


それを見ていると。


俺も。


少しだけ。


嬉しくなった。


◇


食事を。


終えた後。


俺たちは。


大通りを。


歩いていた。


「次」


「どこ行きます?」


「装備」


「装備?」


俺は。


自分の。


格好を見る。


腰には。


ガルドから。


借りた剣。


防具も。


最低限。


冒険者になった時に。


揃えたもの。


あの報酬が。


入った。


今なら。


少しくらい。


まともな装備を。


買える。


「そろそろ」


「ちゃんとした」


「防具くらい」


「買ってもいいかなって」


「剣は?」


「これは」


俺は。


腰の剣を見る。


「もう少し」


「借りる」


ガルドが。


貸してくれた。


剣。


神器が。


撃てなかった頃から。


ずっと。


俺を。


守ってくれた。


簡単に。


手放す気には。


なれなかった。


「それに」


「今度」


「ちゃんとした剣を」


「買うなら」


「ガルドさんにも」


「相談したいし」


「……そうですね」


「だから」


「今日は」


「防具とか」


「旅に必要なもの」


「見よう」


「はい」


俺たちは。


装備を扱う店へ。


入った。


革の防具。


籠手。


靴。


外套。


壁には。


いろいろな。


装備が。


並んでいる。


俺は。


動きやすそうな。


革の防具を。


手に取る。


今までの。


ものより。


少し。


丈夫そうだ。


「これ」


「どう?」


「いいと思います」


「じゃあ」


「試してみる」


いくつか。


試して。


身体に合うものを。


選ぶ。


今までより。


少し。


冒険者らしく。


なった。


気がする。


「よし」


「次」


「リーナ」


「……え?」


「リーナも」


「何か買おう」


「私は」


「大丈夫です」


即答だった。


「いや」


「大丈夫じゃないだろ」


リーナを見る。


着ている服は。


かなり。


使い込まれている。


防具も。


最低限。


何度も。


修繕した跡が。


残っている。


短剣だけは。


いつも。


丁寧に。


手入れされている。


でも。


それ以外は。


自分のことなんて。


どうでもいい。


そんなふうに。


見えた。


「まだ」


「使えますから」


「使えるかどうかじゃなくて」


「……?」


「せっかく」


「金も入ったんだし」


「少しくらい」


「自分に使っても」


「いいだろ」


「……」


リーナが。


自分の服を見る。


「でも」


「もったいないです」


「もったいなくない」


「まだ着れます」


「それ」


「何年着てるの?」


「……」


「リーナ?」


「……分かりません」


「それは」


「買い替えよう」


「でも」


「買い替えよう」


少し。


強めに言うと。


リーナが。


困ったように。


俺を見る。


店員が。


そんな俺たちを見て。


笑った。


「それなら」


「こっちはどうだい?」


いくつか。


動きやすそうな。


服と。


軽い防具を。


持ってくる。


派手ではない。


冒険者が。


着るような。


丈夫な服。


それに。


動きを。


邪魔しない。


軽い革の胸当て。


それでも。


今のリーナが。


身につけているものより。


ずっと。


綺麗だった。


「……」


リーナが。


値札を見る。


「レンさん」


「駄目です」


「まだ何も言ってない」


「高いです」


「払える」


「でも」


「自分で」


「稼いだんだろ?」


「……」


リーナが。


黙った。


「俺の金じゃない」


「リーナの」


「報酬だ」


「だから」


「自分のために」


「使っていいんだよ」


リーナが。


服を見る。


それから。


自分の手を見る。


少しだけ。


迷って。


「……じゃあ」


小さな声で。


言った。


「これ」


「着てみても」


「いいですか?」


「もちろん」


◇


しばらくして。


店の奥から。


リーナが。


出てきた。


「……どうですか?」


「……」


思わず。


黙った。


いつもの。


使い古した服じゃない。


身体を。


動かしやすそうな。


新しい服。


その上には。


身体の動きを。


邪魔しない。


軽い。


革の胸当て。


腰には。


いつもの。


古びた短剣。


短剣だけは。


変わらない。


でも。


それ以外は。


今までとは。


まるで。


違って見えた。


汚れていた。


髪も。


店員に。


少し。


整えてもらったらしい。


顔に。


かかっていた髪が。


なくなっている。


それだけ。


だった。


それだけ。


なのに。


「……レンさん?」


「あ」


「いや」


「変ですか?」


「違う」


慌てて。


首を振る。


「似合ってる」


「……本当ですか?」


「うん」


リーナが。


少しだけ。


頬を。


緩める。


俺は。


もう一度。


見る。


今まで。


あまり。


考えたことが。


なかった。


ずっと。


一緒に。


神器を。


調べて。


一緒に。


魔物と。


戦って。


そればかり。


だったから。


気づかなかった。


リーナって。


……結構。


可愛いんだな。


「……?」


リーナが。


首を傾げる。


「なんですか?」


「なんでもない」


「……?」


なんとなく。


目を。


逸らした。


自分でも。


理由は。


よく分からなかった。


リーナが。


店に置かれた。


鏡を見る。


そして。


少しだけ。


動きを止めた。


「……」


「どうした?」


「いえ」


鏡の中の。


自分を。


じっと。


見ている。


「……変じゃ」


「ないですか?」


「全然」


「でも」


リーナが。


新しい服の。


袖を。


そっと。


触る。


「こういうの」


「あまり……」


「着たことがなくて」


その声は。


少しだけ。


不安そうだった。


「じゃあ」


「これから」


「着ればいいだろ」


「……え?」


「自分で」


「稼いだ金なんだから」


「自分のために」


「使っていいんだよ」


「……」


リーナが。


鏡を見る。


もう一度。


自分を見る。


そして。


本当に。


少しだけ。


笑った。


「……はい」


その笑顔を。


見た時。


また。


少しだけ。


胸が。


変な感じがした。


でも。


その理由を。


俺は。


まだ。


考えなかった。


◇


同じ頃。


街から。


少し離れた。


小さな村。


その外れに。


一軒の。


古い家があった。


壁には。


古びた棚。


その棚には。


何冊もの。


本。


紙の束。


巻物。


何代にも。


渡って。


残されてきた。


古い記録。


その中で。


一人の老人が。


一冊の。


古文書を。


読んでいた。


名は。


ベルグ。


老人は。


今日も。


何代も前から。


この家に残る。


古い記録を。


読んでいた。


窓の外から。


声が。


聞こえる。


村を訪れた。


旅人たちの。


話し声。


「そういや」


「街で」


「妙な噂を聞いたぞ」


「噂?」


「ああ」


紙をめくる。


ベルグの手。


「神銃士が」


「現れたらしい」


――ピタッ。


老人の。


手が止まった。


「しかも」


「そいつの神器」


「本当に撃ったって話だ」


老人の。


目が。


ゆっくりと。


見開かれる。


「……神銃士?」


掠れた。


声。


その視線が。


手元の。


古文書へ。


落ちる。


黄ばんだ。


古い紙。


その一部に。


残された。


一つの。


言葉。


――神銃士。


老人の指が。


僅かに。


震えた。


そして。


顔を上げる。


「今……」


「なんと言った?」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。