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転生したら最強ジョブだが最凶だった件 ~伝説の【神銃士】になったのに、一発も撃てない~  作者: 蝶野摩矢
最凶の神器編

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12/68

神銃士として

森が。


静かだった。


さっきまで。


あれほど。


激しい戦いが。


あったというのに。


今は。


風が。


木々を揺らす音だけが。


聞こえていた。


俺の前には。


巨大な魔物が。


倒れている。


黒灰色の毛。


赤かった目からは。


もう。


光が消えていた。


そして。


その胸には。


大きな。


穴が。


開いている。


向こう側が。


見えるほどの。


大穴。


さらに。


その先。


森の中には。


一本の。


道のようなものが。


できていた。


いや。


道じゃない。


木々が。


吹き飛んでいる。


折れた木。


抉れた地面。


散らばった枝。


その中心を。


真っ直ぐに。


何かが。


通り抜けた跡。


俺は。


それを。


呆然と見つめていた。


「……これ」


声が。


勝手に漏れた。


「俺が」


「撃ったのか……?」


右手には。


神器。


さっきまで。


何度やっても。


音しか鳴らなかった。


俺の。


使えない神器。


それが。


たった一発で。


あの魔物を。


倒した。


しかも。


その一発は。


魔物を貫いて。


森まで。


吹き飛ばした。


【残弾数:0/1】


文字だけが。


静かに。


浮かんでいる。


「……すごい」


隣から。


小さな声。


リーナだった。


「……」


「すごいですね」


「……うん」


それしか。


言えなかった。


俺自身が。


一番。


信じられていなかった。


その時。


「……おい」


声がした。


振り返る。


盾を持った男が。


身体を起こそうとしていた。


「大丈夫ですか!?」


俺は。


慌てて。


神器を消す。


青白い光になって。


神器が消えていく。


男のところへ。


駆け寄った。


「大丈夫だ」


「……と言いたいところだが」


男が。


顔をしかめる。


「身体中が痛え」


「すみません」


「なんでお前が謝る」


そう言って。


男は笑った。


その後ろから。


剣を持った男も。


歩いてくる。


槍の男。


魔法使いの女性も。


全員。


傷だらけだった。


それでも。


四人とも。


生きている。


「……倒したんだな」


剣の男が。


巨大な魔物を見る。


「みたいです」


「みたいって……」


男が。


呆れた顔で。


俺を見る。


そして。


森を見る。


もう一度。


魔物を見る。


「お前」


「自分で撃っといて」


「威力知らなかったのか?」


「初めてだったので……」


「……」


四人が。


黙った。


「初めて?」


「はい」


「さっき言っただろ」


盾の男が。


剣の男を見る。


「まだ撃てるか分からないって」


「……本当だったのかよ」


「はい」


剣の男が。


頭を抱えた。


「俺たち」


「撃てるかどうかも分からない武器のために」


「死にかけてたのか……」


「……すみません」


「だから」


盾の男が。


笑う。


「なんでお前が謝るんだよ」


そして。


巨大な魔物を見る。


「結果」


「全員生きてる」


「それで十分だ」


「……はい」


少しだけ。


胸が。


軽くなった。


「それにしても」


魔法使いの女性が。


森の奥を見る。


「伝説級の神器って」


「全部こんな威力なの?」


「……俺に聞かれても」


「分からないです」


「だろうね」


女性が。


苦笑する。


「本人が一番驚いてるもの」


その通りだった。


「そういや」


盾の男が。


こちらを見る。


「名乗ってなかったな」


盾を。


地面に置く。


「俺はダリオ」


「一応」


「こいつらのまとめ役だ」


すると。


剣の男が。


片手を上げる。


「エリク」


そして。


俺を見る。


「さっきは」


「最悪の時間稼ぎをさせられた」


「……すみません」


「褒めてんだよ」


「え?」


「結果的にな」


そう言って。


エリクは笑った。


「ノルドだ」


槍の男が。


短く名乗る。


最後に。


魔法使いの女性。


「私はミア」


「よろしく」


四人の視線が。


今度は。


俺たちへ。


向いた。


「俺は」


一瞬。


言葉が。


止まった。


今まで。


このジョブを。


名乗るのが。


嫌だった。


期待される。


笑われる。


役立たずだと。


言われる。


だから。


できるだけ。


言いたくなかった。


でも。


今は。


違う。


「レンです」


そして。


俺は。


続けた。


「神銃士の」


「レンです」


不思議だった。


その言葉を。


口にしても。


胸が。


痛くない。


恥ずかしくも。


なかった。


初めて。


自分から。


名乗れた。


そんな。


気がした。


「私は」


リーナが。


少し遅れて。


口を開く。


「リーナです」


「ジョブは?」


エリクが。


何気なく聞いた。


リーナの表情が。


少しだけ。


曇る。


「……分かりません」


「分からない?」


「はい」


「登録の時も」


「名前が」


「出なかったので」


「……」


エリクが。


何か言おうとする。


その前に。


ダリオが。


口を開いた。


「まあ」


「ジョブの名前なんざ」


「今はどうでもいい」


「え?」


ダリオが。


倒れた魔物を見る。


そして。


俺と。


リーナを見る。


「神銃士だろうが」


「名前の分からねえジョブだろうが」


「俺たちを」


「助けてくれた」


「それで」


「十分だろ」


「……」


リーナが。


目を。


少しだけ。


大きくした。


「助けられた……」


「そうだ」


ダリオが。


笑う。


「少なくとも」


「俺たち四人は」


「お前らに助けられた」


リーナは。


しばらく。


何も言わなかった。


それから。


小さく。


「……はい」


と。


答えた。


◇


魔物の討伐を。


確認した後。


俺たちは。


街へ戻った。


あの巨大な魔物は。


やはり。


普通ではなかったらしい。


依頼に。


記載されていた魔物とは。


まるで違う。


ギルドでも。


詳しく調べることになった。


ダリオたちは。


報告のため。


受付へ向かった。


俺と。


リーナも。


その後ろを歩く。


そこで。


ふと。


思い出した。


「……そうだ」


「どうしました?」


「レベル」


戦闘が。


終わってから。


確認していなかった。


あれだけの。


魔物を倒した。


もしかすると。


俺も。


成長しているかもしれない。


確認する。


そして。


「……え?」


思わず。


声が出た。


【神銃士 Lv.10】


「……十?」


見間違いかと。


思った。


もう一度。


見る。


【神銃士 Lv.10】


変わらない。


「レンさん?」


「レベルが……」


「上がったんですか?」


「上がった」


「どのくらいですか?」


「……八」


「え?」


「八つ」


リーナが。


固まった。


俺も。


固まっていた。


一年。


一年かけて。


俺は。


Lv.1から。


Lv.2になった。


それが。


一度の。


戦いで。


Lv.10。


あの魔物が。


それほど。


強かったからなのか。


神器を。


初めて使ったからなのか。


第一術式を。


解放したからなのか。


初めて。


神銃士として。


魔物を倒したからなのか。


それとも。


全部なのか。


俺には。


分からない。


でも。


一つだけ。


分かる。


俺は。


確かに。


前へ進んだ。


「リーナは?」


「私?」


「何か」


「変わってない?」


「……」


リーナが。


自分の状態を。


確認する。


しばらく。


黙っていた。


「どう?」


「……分かりません」


「え?」


リーナが。


俺を見る。


「前と」


「同じです」


【――――】


【Lv.?】


名前も。


分からない。


レベルも。


分からない。


何も。


変わっていないように。


見える。


「……そっか」


「はい」


リーナが。


少しだけ。


俯く。


でも。


すぐに。


「……ただ」


「ん?」


リーナが。


自分の手を見る。


「昨日より」


「分かる気がします」


「何が?」


「神器の中が」


俺は。


リーナを見る。


「前より?」


「はい」


「ほんの」


「少しだけですけど」


リーナは。


自分の手を。


じっと見つめる。


「昨日まで」


「ぼんやりしてたものが」


「少しだけ」


「分かるようになった気がします」


「……」


表示は。


何も変わらない。


ジョブも。


分からない。


レベルも。


分からない。


それでも。


リーナの中では。


何かが。


確かに。


変わっている。


「じゃあ」


「成長してるってことだろ」


「……そうなんでしょうか」


「そうだよ」


「だって」


「昨日より分かるんだろ?」


「……はい」


「だったら」


「前に進んでる」


リーナが。


俺を見る。


それから。


ほんの少し。


笑った。


「……そうですね」


◇


翌日。


俺たちは。


再び。


街の外へ来ていた。


理由は。


一つ。


もう一度。


撃てるのか。


確かめるため。


昨日。


俺たちは。


初めて。


神器を撃った。


そして。


俺は。


Lv.10になった。


リーナにも。


表示には現れない。


何かの変化が。


起きている。


だったら。


今なら。


もう一度。


撃てるかもしれない。


「……やってみるか」


「はい」


右手を。


前へ。


伸ばす。


青白い光が。


集まる。


空間が。


歪む。


――ズンッ。


神器が。


現れる。


昨日と。


同じ。


巨大な銃。


でも。


俺には。


もう。


ただの。


使えない武器には。


見えなかった。


表示が。


浮かぶ。


【神器情報】


【使用者:レン】


【接続状態:極低】


【使用可能弾種:魔力弾】


【装填数:1】


【残弾数:0/1】


「……魔力弾」


昨日。


初めて撃った。


俺の。


弾。


そして。


装填数1


「やってみますか?」


「うん」


神器を。


構える。


魔力を。


流す。


昨日。


リーナが。


回路を繋いだ後。


俺一人で。


弾を作った時と。


同じように。


身体の中から。


神器へ。


魔力を送る。


「……」


何も。


起きない。


「……あれ?」


もう一度。


魔力を流す。


神器の中へ。


入っていく。


でも。


途中で。


止まる。


俺には。


どこで止まったのか。


どうして止まったのか。


分からない。


ただ。


昨日のように。


弾が作られないことだけは。


分かった。


「……なんで」


昨日は。


リーナが。


繋いでくれた回路を通って。


あの。


円筒状の空間まで。


魔力が届いた。


だから。


弾ができた。


なのに。


今は。


届かない。


嫌な。


感覚。


何度も。


味わった。


あの感覚。


「リーナ」


「……はい」


「見てもらっていい?」


リーナが。


神器へ。


手を伸ばす。


俺が。


神器を支えたまま。


リーナの手が。


側面へ。


触れる。


青白い。


光が。


わずかに。


走った。


リーナが。


目を閉じる。


「……」


長い。


沈黙。


「どう?」


「……待ってください」


リーナの指が。


少しずつ。


神器の表面を。


動いていく。


昨日。


二人で。


何度も。


試した。


魔力の回路。


その状態を。


リーナだけが。


感覚を頼りに。


確かめていく。


そして。


リーナの指が。


止まった。


「……レンさん」


「うん」


「切れてます」


「……え?」


「昨日」


「繋いだところが」


「また」


「切れてます」


頭が。


一瞬。


真っ白になった。


「……全部?」


「全部では」


「ないと思います」


「でも」


「弾を作るところまで」


「魔力が届く回路が」


「また」


「途切れてます」


「……」


神器を見る。


【残弾数:0/1】


撃った。


だから。


弾がなくなった。


それは。


分かる。


でも。


回路まで。


切れている。


「じゃあ」


俺は。


リーナを見る。


「また」


「繋げればいいんだよな?」


「……はい」


「たぶん」


「昨日と」


「同じ回路を探せば」


「前よりは」


「早くできると」


「思います」


「じゃあ」


「やってみよう」


リーナが。


頷く。


俺は。


神器へ。


魔力を流す。


俺にできるのは。


それだけだ。


流す。


止める。


そして。


リーナに言われた通りに。


強くしたり。


弱くしたりする。


神器の中で。


どこへ流すのか。


どの回路を通すのか。


それを探すのは。


リーナだった。


リーナが。


神器へ触れたまま。


俺の魔力を。


少しずつ。


導いていく。


「……もう少し」


「弱くしてください」


「これくらい?」


「……はい」


俺は。


言われた通りに。


魔力を弱める。


「そのままで」


「分かった」


リーナの指が。


ゆっくり。


神器の表面を進む。


「……違う」


小さく。


呟く。


俺には。


何が違うのか。


分からない。


ただ。


魔力を。


送り続ける。


リーナが。


その流れを。


探す。


導く。


途切れた場所を。


繋ごうとする。


少し。


進む。


また。


止まる。


時間だけが。


過ぎていく。


それでも。


昨日までとは。


少し違った。


「……こっちです」


「分かる?」


「はい」


「昨日」


「通したところ」


「前より」


「少しだけ」


「分かります」


リーナの指が。


迷いながらも。


進んでいく。


一度。


繋いだ。


回路。


その感覚が。


ほんの少し。


残っている。


でも。


すぐには。


元に戻らない。


やがて。


リーナが。


神器から。


手を離した。


「……すみません」


「だから」


「なんで謝るんだよ」


「でも」


「すぐには」


「できません」


リーナが。


悔しそうに。


神器を見る。


「昨日よりは」


「分かります」


「どこを通したのか」


「少し」


「覚えてます」


「でも」


「もう一度」


「ちゃんと繋ぐには」


「時間が」


「必要です」


「……そっか」


俺は。


神器を見る。


【装填数:1】


【残弾数:0/1】


一発。


昨日。


あれだけの。


威力を見せた。


神器。


だけど。


一度撃てば。


回路が切れる。


もう一度撃つには。


また。


リーナに。


回路を。


繋ぎ直してもらわないと。


いけない。


その時。


リーナが。


小さく。


呟いた。


「……もしかしたら」


「ん?」


もう一度。


神器へ。


触れる。


「この数字」


リーナが。


表示を見る。


【装填数:1】


「これ」


「弾が一つしか」


「入らないって意味じゃ」


「ないのかもしれません」


「どういうこと?」


「……分かりません」


「まだ」


「分からないんですけど」


リーナが。


神器の中へ。


意識を向ける。


「昨日」


「弾を撃った時」


「回路の流れが」


「一気に」


「変わりました」


「流れが?」


「はい」


リーナが。


ゆっくり。


頷く。


「たぶん」


「今の私が繋げられる回路だと」


「一度」


「弾を撃つところまでしか」


「繋がった状態を」


「保てないんだと思います」


「一発分?」


「はい」


「撃った後に」


「回路が」


「また途切れてしまう」


リーナが。


神器へ触れたまま。


少し。


眉を寄せる。


「どうしてかまでは」


「まだ」


「分かりません」


リーナ自身も。


確信は。


ない。


それでも。


俺は。


もう一度。


表示を見る。


【装填数:1】


そして。


その下。


【残弾数:0/1】


「……だから」


「一発なのか」


「たぶん」


「今は」


「そうなんだと思います」


今は。


その言葉が。


妙に。


頭に残った。


今の。


リーナが。


繋げられる回路。


だったら。


いつか。


もっと。


強く。


安定して。


繋げられるようになれば。


この数字も。


変わるのだろうか。


分からない。


まだ。


何も。


分からない。


でも。


少なくとも。


今は。


一発。


それが。


俺たちの。


限界だった。


「……一発」


「え?」


「今の俺たちは」


「一度の調律で」


「一発だけなんだ」


リーナが。


黙る。


「……はい」


「今は」


「一発しか」


「撃てません」


その言葉を。


聞いて。


俺は。


神器を見る。


一発しか。


撃てない。


普通なら。


使いにくい。


武器だ。


いや。


もう一度。


撃てる状態にするまで。


何日も。


準備が必要になるなら。


とんでもなく。


使いにくい。


でも。


昨日までとは。


違う。


昨日までの俺は。


一発も。


撃てなかった。


何度。


引き金を引いても。


――カチッ。


それだけ。


だった。


でも。


今は。


違う。


「……リーナ」


「はい」


「一発しか」


「撃てないんじゃない」


「え?」


「一発なら」


「撃てる」


リーナが。


俺を見る。


「俺」


「ずっと」


「一発も撃てなかったんだ」


「……」


「それが」


「今は」


「一発」


「撃てる」


神器を。


握る。


「だったら」


「その一発を」


「無駄にしなければいい」


一発しか。


ないなら。


むやみに。


撃たない。


敵を見る。


周りを見る。


その先も。


見る。


本当に。


必要な時まで。


取っておく。


そして。


ここだという。


その瞬間に。


撃つ。


昨日。


あの魔物を。


倒したように。


あの時。


もし。


射線を。


空けていなかったら。


倒れていたのは。


魔物だけじゃ。


なかったかもしれない。


撃てるから。


撃つんじゃない。


どこで。


誰に。


どう撃つのか。


それを。


俺が。


決めないといけない。


「……できるかな」


俺が。


そう言うと。


リーナが。


少しだけ。


笑った。


「できます」


「即答?」


「だって」


リーナが。


神器を見る。


「一度」


「撃てたじゃないですか」


「……」


「だったら」


「もう」


「使えない神器じゃ」


「ありません」


その言葉に。


俺も。


笑った。


そうだ。


使えない。


神銃士じゃない。


一発しか。


撃てない。


それでも。


その一発には。


あれだけの。


力がある。


だったら。


その一発を。


どう使うか。


それを。


考えればいい。


一発だけ。


それが。


今の。


俺の力。


俺は。


神器を。


見つめる。


使えない。


神銃士じゃない。


今の俺は。


一発だけの。


神銃士だ。

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