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転生したら最強ジョブだが最凶だった件 ~伝説の【神銃士】になったのに、一発も撃てない~  作者: 蝶野摩矢
最凶の神器編

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11/68

最初の一発

「俺の魔力?」


「はい」


リーナが。


神器の中にある。


円筒状の空洞を。


見つめていた。


「昨日」


「話した通り」


「ここまで」


「レンさんの魔力を」


「通してみます」


「……分かった」


俺は。


空っぽの場所を見る。


金属の弾を。


入れるんじゃない。


俺の魔力から。


弾を作る。


「やってみよう」


「はい」


俺は。


神器を握り直した。


そして。


魔力を流す。


「……どう?」


リーナが。


神器へ触れる。


目を閉じた。


「そのまま」


「分かった」


俺にできるのは。


神器へ。


魔力を流すこと。


そして。


その強さを。


変えること。


その魔力が。


神器の中で。


どこを通るのか。


どう流れるのか。


俺には。


分からない。


だけど。


リーナが。


神器へ触れると。


少しずつ。


俺の魔力の流れが。


変わっていく。


「……こっち」


小さな声。


俺の魔力が。


神器の奥へ。


導かれていく。


そして。


「……止まりました」


「え?」


リーナが。


目を開ける。


「ここから」


「先に行きません」


「魔力が?」


「はい」


リーナの指が。


神器の表面を。


ゆっくりとなぞる。


「道が」


「途中で」


「切れてます」


「……切れてる?」


「はい」


リーナが。


少しだけ。


考える。


「おそらく」


「この道が」


「神器の中で」


「魔力を流すための」


「回路に」


「なってるんじゃないでしょうか」


「魔力の回路……」


「はい」


「その回路が」


「途中で切れてる?」


「……たぶん」


リーナも。


自信があるわけじゃない。


見えている。


わけでもない。


ただ。


触れると。


そう感じるらしい。


「じゃあ」


「その回路を繋げれば……」


言いかけて。


止まる。


繋げれば。


撃てる。


そんな保証は。


どこにもない。


それでも。


他に。


手掛かりはない。


「……繋げられそう?」


「分かりません」


リーナは。


神器に触れたまま。


答えた。


「でも」


「やってみます」


「……うん」


「俺は」


「何をすればいい?」


「魔力を」


「流してください」


「それだけ?」


「あと」


少し。


考える。


「強くしたり」


「弱くしたり」


「それならできる」


「はい」


細かく。


魔力を操ることは。


俺にはできない。


俺が。


魔力を流す。


その魔力を。


リーナが。


神器の中で。


導いていく。


「じゃあ」


「やってみよう」


「……はい」


◇


それから。


何日も。


俺たちは。


同じことを。


繰り返した。


俺が。


魔力を流す。


リーナが。


神器へ触れる。


「もう少し」


「強くできますか?」


「これくらい?」


「……強すぎます」


「ごめん」


少し。


弱める。


「これなら?」


「はい」


「そのままで」


俺は。


魔力の強さを。


調整する。


その魔力を。


神器の中で。


どこへ導くのか。


それは。


リーナが。


感覚だけを頼りに。


探していく。


「……こっち」


「違う……」


「ここは」


「たぶん……」


リーナ自身も。


どうやっているのか。


説明できない。


何度も。


失敗した。


何も。


変わらないまま。


日が暮れたこともあった。


次の日。


また。


試した。


それでも。


少しずつ。


変化はあった。


途中で。


止まっていた。


俺の魔力が。


ほんの少し。


先へ進む。


次の日には。


さらに。


少し。


一つ。


また一つ。


途切れていた回路が。


繋がっていく。


「……来ました」


「本当?」


「はい」


リーナが。


ほんの少し。


笑う。


「昨日より」


「奥まで来てます」


それだけで。


嬉しかった。


正しいかなんて。


まだ。


分からない。


撃てる保証も。


ない。


でも。


俺たちは。


前へ進んでいる。


そして。


数日後。


「……あと」


リーナの指が。


止まった。


「一つ」


「あと一つ?」


「たぶん」


円筒状の空洞。


その。


すぐ手前。


「ここが繋がれば」


「レンさんの魔力が」


「あの場所まで」


「届くと思います」


「……よし」


俺は。


神器を。


握り直した。


「やろう」


「はい」


その日。


何度も。


試した。


でも。


「……だめ」


もう一度。


「……違う」


さらに。


もう一度。


「……繋がらない」


最後の。


一つだけ。


どうしても。


繋がらなかった。


日が。


傾き始める。


「もう一回」


「レンさん」


「まだいける」


「でも」


「あと一回だけ」


俺は。


魔力を流した。


リーナが。


その流れを。


導く。


だけど。


やっぱり。


「……だめです」


「……そっか」


力を抜く。


神器を消す。


リーナが。


俯いた。


「すみません」


「なんで」


「リーナが謝るんだよ」


「でも」


「私が」


「繋げるって……」


「ここまで来ただろ」


「……」


「数日前まで」


「何も分からなかった」


「今は」


「あと一つなんだろ?」


「……はい」


「だったら」


「明日またやろう」


リーナは。


少しだけ。


黙って。


それから。


「……はい」


小さく。


頷いた。


◇


翌日。


俺たちは。


冒険者ギルドで。


依頼を受けていた。


神器のことだけを。


考えて。


生きていくわけにも。


いかない。


宿代。


食事代。


金は。


必要だ。


選んだのは。


街の近くの森にいる。


魔物の討伐。


それほど。


危険な依頼じゃない。


はずだった。


「この魔物」


「戦ったことある?」


森を歩きながら。


リーナに聞く。


「はい」


「一体なら」


「大丈夫です」


リーナが。


腰の短剣へ。


手を添える。


古びた。


短剣。


何度も。


リーナを。


守ってきた。


相棒。


「じゃあ」


「頼りにしてる」


「レンさんも」


「分かってるよ」


俺も。


ガルドから借りた。


剣の柄へ。


手を置く。


神器は。


まだ。


撃てない。


今は。


この剣で。


戦うしかない。


その時。


――ドォン!!


「……!」


森の奥から。


大きな音。


「今の……」


「戦ってる?」


リーナが。


耳を澄ませる。


――ガァン!!


今度は。


金属音。


続いて。


「下がれ!」


叫び声。


俺とリーナが。


顔を見合わせる。


「行こう」


「はい!」


走った。


木々の間を。


抜けていく。


近づくほど。


音が。


大きくなる。


剣。


魔法。


獣の。


唸り声。


そして。


開けた場所へ。


飛び出した。


「……なんだ」


そこに。


いた。


巨大な。


狼。


俺の背丈を。


軽く超える。


黒に近い。


灰色の毛。


巨大な牙。


太い四肢。


そして。


赤く光る。


二つの目。


「赤い……」


リーナが。


呟く。


明らかに。


普通じゃない。


その狼を。


四人の冒険者が。


取り囲んでいた。


大きな盾を持った男。


剣士。


槍を持った男。


そして。


後方に。


魔法使い。


「来るぞ!」


盾の男が。


構える。


狼が。


飛び込む。


――ガァン!!


「ぐっ……!」


盾ごと。


男の体が。


後ろへ滑った。


「今だ!」


剣士と。


槍使いが。


左右から。


飛び込む。


――ザシュッ!


――ガキンッ!


攻撃は。


当たっている。


なのに。


浅い。


「くそ!」


「硬すぎる!」


魔法使いが。


杖を向ける。


炎が。


狼へ。


直撃する。


――ドォン!


煙が。


広がる。


その中から。


赤い目が。


現れた。


「効いてねえぞ!」


俺は。


息を呑んだ。


あの人たち。


俺より。


明らかに。


戦い慣れている。


それでも。


倒せない。


「レンさん」


「うん」


見過ごせない。


俺は。


剣を抜いた。


「加勢します!」


「誰だ!?」


「話は後で!」


狼が。


こちらを見る。


赤い目が。


俺を捉えた。


次の瞬間。


地面を。


蹴った。


「レンさん!」


横へ。


飛ぶ。


――ドォン!!


地面が。


抉れる。


「速っ……!」


立ち上がる。


狼が。


もう。


こちらを向いている。


リーナが。


短剣を抜く。


低く。


構える。


狼の注意が。


俺へ向いた。


その隙に。


リーナが。


横へ回る。


後ろ脚へ。


短剣を。


振った。


――キンッ!


「……っ!」


弾かれた。


リーナの体が。


よろめく。


「リーナ!」


「大丈夫です!」


すぐに。


距離を取る。


だけど。


顔が。


強張っている。


「硬い……」


この魔物は。


今まで。


リーナが戦ってきた。


弱い魔物とは。


違う。


「無理するな!」


「……はい!」


盾の男が。


前へ出る。


「お前ら!」


「前に出すぎるな!」


「こいつは普通じゃねえ!」


「分かりました!」


そこからは。


四人の冒険者が。


戦いの中心になった。


盾が。


攻撃を受ける。


剣と槍が。


隙を狙う。


魔法が。


援護する。


俺も。


できる範囲で。


剣を振った。


リーナも。


無理には。


攻めない。


攻撃を避け。


隙があれば。


短剣を振る。


それでも。


ほとんど。


傷を与えられない。


「くそっ!」


俺の剣も。


浅く。


毛皮を裂くだけ。


全員で。


戦っているのに。


押されている。


――グオオオオオ!!


狼が。


吠える。


巨大な前脚が。


盾へ。


叩きつけられた。


――ガァン!!


「ぐあっ!」


盾の男が。


吹き飛ぶ。


「おい!」


剣士が。


前へ出る。


狼の牙を。


ぎりぎりで。


避ける。


「長く持たねえぞ!」


まずい。


このままじゃ。


誰かが。


死ぬ。


「レンさん!」


リーナが。


俺のところへ。


下がってきた。


息が。


上がっている。


「神器を」


「使いましょう」


「……!」


「無理だ!」


俺は。


すぐに答えた。


「まだ」


「最後の回路が」


「繋がってない!」


「……はい」


「それに!」


狼へ。


槍が。


突き出される。


避けられる。


巨大な尾が。


槍使いを。


吹き飛ばす。


「ぐっ!」


「それで」


「本当に撃てるかも」


「まだ分からないんだぞ!」


回路を。


繋いだところで。


何が起きるか。


分からない。


本当に。


俺の魔力が。


弾になるのか。


本当に。


神器が。


撃てるのか。


何一つ。


確かめられていない。


「……分かってます」


「だったら――」


「でも」


リーナが。


俺を見る。


「他に」


「倒せる方法がありますか?」


「……」


ない。


俺の剣じゃ。


倒せない。


リーナの短剣でも。


無理だ。


あの四人でさえ。


押されている。


「撃てるかは」


「分かりません」


リーナの声も。


少し。


震えている。


「でも」


俺の。


右手を見る。


「回路は」


「私が繋いでみます」


絶対に。


なんて。


言わなかった。


リーナにも。


できる保証なんて。


ないから。


「……分かった」


俺は。


右手を。


前へ出した。


「やろう」


「……はい!」


意識を。


集中する。


青白い光が。


空間へ集まる。


「な……」


冒険者の一人が。


こちらを見る。


空間が。


歪む。


――ズンッ。


巨大な神器が。


俺の手に。


現れた。


「神器……!?」


「お前……」


驚く声。


だけど。


今は。


説明している。


暇はない。


「すみません!」


俺は。


冒険者たちへ。


叫んだ。


「少しだけ!」


「時間を稼いでください!」


「何をする気だ!」


「分かりません!」


「はあ!?」


自分で言って。


無茶苦茶だと思う。


「まだ」


「撃てるか分からないんです!」


「でも!」


神器を。


強く握る。


「これしかありません!」


剣士が。


俺を見る。


巨大な神器を見る。


そして。


狼を見る。


「……何秒だ!」


「え?」


「どれくらい稼げばいい!」


分からない。


最後の一つは。


何日やっても。


繋がらなかった。


「できるだけ!」


「最悪の答えだな!」


剣士が。


剣を構える。


「聞いたな!」


「こいつらに時間を作るぞ!」


「おう!」


盾の男が。


立ち上がる。


槍使いも。


口元の血を。


拭った。


魔法使いが。


杖を構える。


四人が。


再び。


狼へ向かう。


「リーナ!」


「はい!」


俺が。


神器を支える。


リーナが。


その側面へ。


両手を添えた。


――キィン。


青白い光が。


走る。


「流すぞ」


「……お願いします」


俺は。


魔力を。


神器へ流す。


「強さは?」


「そのまま……」


リーナが。


目を閉じる。


俺には。


ただ。


魔力を流すことしか。


できない。


その魔力を。


リーナが。


感覚を頼りに。


少しずつ。


導いていく。


何日も。


二人で。


繋いできた回路。


その。


最後。


一ヶ所。


「……」


リーナの。


眉間に。


皺が寄る。


「どう?」


「待って……」


俺の魔力が。


神器の中を。


進む。


でも。


最後の場所で。


止まる。


「……違う」


リーナが。


小さく呟く。


もう一度。


流れを変える。


「これも……」


駄目。


――ガァン!!


「ぐっ!」


盾の男が。


狼を受け止める。


「まだか!」


「すみません!」


リーナの声が。


震える。


「焦るな」


「でも……」


「俺は」


「魔力を流し続ける」


「だから」


「リーナは」


「そっちに集中して」


「……はい」


リーナが。


もう一度。


目を閉じる。


俺の魔力が。


神器の中で。


少しずつ。


導かれていく。


でも。


繋がらない。


「……だめ」


汗が。


リーナの頬を。


流れる。


「どうして……」


リーナ自身も。


分からない。


理屈で。


やっているわけじゃない。


ただ。


武器に触れて。


感じたものを。


頼りにしているだけ。


「……あと」


「少しなのに」


その時。


リーナが。


自分の手を見る。


「……」


「リーナ?」


「もしかしたら……」


「何か分かった?」


「分かりません」


即答だった。


「でも」


「一つだけ」


「試してもいいですか?」


「何を?」


「私の」


一瞬。


迷う。


「魔力を」


「流してみます」


「リーナの?」


「はい」


「神器に?」


「……はい」


そんなこと。


できるのか?


神器は。


俺を。


使い手として選んだ。


普通なら。


他人の魔力なんて。


受け入れるのか?


「分かりません」


また。


それだ。


でも。


俺たちは。


最初から。


分からないことばかりだった。


「無理だと思ったら」


「すぐ止めろ」


「……はい」


俺は。


魔力を。


流し続ける。


リーナが。


神器へ触れる。


恐る恐る。


自分の魔力を。


流した。


その瞬間。


――キィン。


「……!」


リーナの目が。


開く。


「どうした!?」


「……入った」


「え?」


「私の魔力」


リーナ自身が。


一番。


驚いていた。


「神器の中に……」


青白い光が。


リーナの指先を。


淡く包んでいる。


「大丈夫?」


「……はい」


「たぶん」


リーナは。


手を離さない。


「さっきより」


「分かります」


「何が?」


「最後のところ」


「……繋げられる?」


リーナは。


すぐには。


答えなかった。


「やってみます」


それだけ。


答えた。


自分の魔力を。


ほんの少し。


神器へ流す。


その魔力を。


頼りに。


俺の魔力を。


最後の回路へ。


導いていく。


すぐには。


繋がらない。


「……もう少し」


狼が。


暴れる。


――ガァン!


盾が。


大きく。


弾かれた。


「限界だぞ!」


「リーナ!」


「待って……!」


リーナの。


指が震える。


「あと……」


狼が。


盾役を。


押し切る。


剣士が。


横から飛び込む。


「こっちだ!」


狼が。


剣士へ。


向きを変える。


槍が。


横腹を突く。


魔法が。


顔の前で弾ける。


四人が。


必死に。


時間を。


作っている。


「……あと少し」


リーナの声。


「もう少し……」


狼が。


剣士を。


振り払う。


「ぐあっ!」


一人。


倒れる。


赤い目が。


こちらを向いた。


「まずい!」


狼が。


地面を蹴る。


「リーナ!」


「待って!」


巨大な体が。


迫る。


「まだか!」


「あと……!」


俺は。


神器を。


握ったまま。


動けない。


狼が。


迫る。


その時。


「うおおおっ!」


盾の男が。


横から。


狼へ。


体当たりした。


――ガァン!!


狼の体が。


僅かに。


逸れる。


「早くしろ!!」


「……!」


リーナが。


神器へ。


必死に。


触れ続ける。


「あと……」


「あと……」


そして。


――キィン。


小さな。


澄んだ音がした。


リーナの。


表情が変わる。


「……繋がった」


「え?」


「繋がりました!」


リーナが。


神器から。


ゆっくり。


手を離す。


俺は。


思わず。


神器を見る。


「大丈夫なのか?」


「……はい」


リーナも。


神器を見ている。


青白い光は。


消えていない。


「切れてません」


「……」


「今なら」


リーナが。


円筒状の空洞がある。


場所を見る。


「レンさんの魔力が」


「奥まで」


「届くと思います」


繋がった。


何日も。


二人で。


少しずつ。


繋いできた。


魔力の回路。


それが。


今。


初めて。


一つになった。


ここからは。


リーナじゃない。


俺だ。


「どれくらい」


「魔力を入れればいい?」


「……分かりません」


「だよな」


撃てるかどうかさえ。


まだ。


分からない。


必要な魔力なんて。


分かるはずがない。


俺は。


神器へ。


ゆっくり。


魔力を流した。


繋がった。


回路を。


俺の魔力が。


進んでいく。


今まで。


何度やっても。


届かなかった。


その先へ。


奥へ。


さらに。


奥へ。


そして。


円筒状の。


空洞へ。


届いた。


――キィン。


「……!」


空洞の中へ。


青白い光が。


集まり始める。


少しずつ。


凝縮していく。


一つの。


形を。


作っていく。


「……弾」


本当に。


俺の魔力が。


弾に。


変わっていく。


俺は。


魔力を。


流し続ける。


どれだけ。


必要なのかは。


分からない。


それでも。


神器は。


魔力を。


受け入れている。


そして。


――キィン。


「……え?」


突然。


魔力が。


入らなくなった。


俺は。


神器を見る。


「止まった……?」


もう一度。


魔力を流そうとする。


でも。


神器が。


それ以上。


受け取らない。


円筒状の空間には。


青白く輝く。


一つの。


弾。


「……できた?」


リーナが。


呟く。


その瞬間。


俺の目の前に。


文字が。


浮かんだ。


【神器接続を確認】


【使用者:レン】


「……!」


初めて見る。


表示。


続けて。


新しい文字。


【第一術式・解放】


【使用可能弾種:魔力弾】


【装填数:1】


そして。


【残弾数:1/1】


「……一発」


入った。


俺の神器に。


初めて。


弾が。


入った。


「レンさん!」


リーナの声。


顔を上げる。


――ガァン!!


「ぐあっ!」


盾の男が。


吹き飛ばされた。


「ダリオ!」


剣士が。


叫ぶ。


ついに。


狼を。


止めるものが。


いなくなる。


赤い目が。


俺たちを。


捉えた。


「撃てるか!?」


剣士が。


叫ぶ。


「……分からない!」


「まだ分からねえのかよ!」


分からない。


弾は。


入った。


でも。


まだ。


一度も。


撃っていない。


それでも。


やるしかない。


俺は。


神器を。


構えた。


その時。


魔物の。


向こう側に。


槍の男が。


見えた。


「……待って!」


このままじゃ。


撃てない。


本当に。


弾が出たとして。


どんな威力なのか。


何が起こるのか。


俺にも。


分からない。


「全員!」


声を。


張り上げる。


「魔物から離れてください!」


「何!?」


「射線を!」


「空けてください!」


剣士が。


一瞬。


俺を見る。


そして。


すぐに。


叫んだ。


「全員離れろ!!」


槍の男が。


横へ飛ぶ。


魔法使いが。


倒れた盾の男へ。


駆け寄る。


腕を掴み。


引きずるように。


その場から離れる。


剣士も。


狼から。


大きく。


距離を取った。


「リーナ!」


「はい!」


リーナも。


神器から離れ。


俺の。


後ろへ下がる。


開いた。


俺と。


狼の間に。


誰も。


いない。


そして。


狼の。


その先にも。


誰も。


いない。


「……これなら」


俺は。


神器を。


構え直した。


巨大な。


銃口を。


狼へ向ける。


リーナは。


もう。


神器に触れていない。


ここからは。


俺が。


撃つ。


狼が。


こちらへ。


向きを変える。


赤い目が。


俺を捉える。


――グルルルル……。


地面を。


蹴った。


一気に。


距離が。


縮まる。


心臓が。


うるさい。


手が。


震える。


弾は。


入った。


でも。


本当に。


撃てる?


何度。


引いただろう。


この。


引き金を。


王都で。


故郷で。


一人で。


何度も。


何度も。


返ってきたのは。


いつも。


同じ音。


――カチッ。


使えない。


神器。


役立たずの。


神銃士。


「レンさん!」


狼が。


迫る。


俺は。


照準を。


巨大な胸へ。


合わせる。


指を。


引き金へ。


かけた。


「……いけ」


引き金を。


引いた。


――カチッ。


「……」


一瞬。


何も。


起きない。


また。


駄目なのか。


そう。


思った。


その瞬間。


「――っ!?」


神器の。


奥から。


引かれるような。


感覚。


身体の中の。


魔力が。


神器へ。


流れ始める。


「なっ……」


今までとは。


違う。


弾を。


作った時とも。


違う。


発射するために。


魔力を。


流せと。


伝わってくる。


「これが……」


どれくらい。


流せばいい?


分からない。


どこまでなら。


大丈夫なのか。


分からない。


どうやって。


加減する?


それすら。


分からない。


でも。


狼は。


もう。


目の前まで。


迫っている。


中途半端にして。


撃てなかったら。


今度こそ。


誰かが。


死ぬ。


「……なら」


俺は。


魔力を。


流した。


もっと。


さらに。


身体の中から。


魔力が。


抜けていく。


どこまでが。


正解なのか。


分からない。


それでも。


止めなかった。


気づけば。


今の俺が。


出せるだけの。


魔力を。


神器へ。


流し込んでいた。


――キィィィィン!!


「……っ!」


青白い光が。


神器全体を。


駆け巡る。


そして。


一気に。


銃口へ。


集まった。


次の瞬間。


――ズドォォォォォォォォン!!!!


「――っ!?」


轟音。


空気が。


爆ぜた。


肩へ。


凄まじい衝撃。


「ぐっ……!」


身体が。


後ろへ。


持っていかれる。


青白い閃光が。


銃口から。


放たれた。


一瞬だった。


迫っていた。


巨大な狼。


その胸へ。


光が。


突き刺さる。


――ドンッ!!


「……え?」


狼の。


胸に。


穴が。


開いた。


小さな。


穴じゃない。


向こう側が。


見えるほどの。


巨大な。


穴。


そして。


魔力弾は。


そこで。


止まらなかった。


狼の巨体を。


真っ直ぐ。


撃ち抜く。


そのまま。


後ろの。


森へ。


――バキッ!!


一本。


木が。


へし折れた。


次の瞬間。


――バキバキバキバキッ!!


二本。


三本。


その奥まで。


木々が。


次々と。


吹き飛んでいく。


土が。


抉れる。


枝が。


舞う。


葉が。


空を覆う。


青白い光が。


森の奥へ。


一直線に。


駆け抜けていった。


やがて。


光が。


消える。


「……」


何も。


聞こえない。


いや。


耳が。


轟音に。


やられているだけかもしれない。


目の前。


巨大な狼が。


立っている。


その胸には。


向こう側が。


見えるほどの。


大穴。


赤い目から。


光が。


消えた。


巨大な体が。


ゆっくり。


傾く。


そして。


――ズン。


地面へ。


倒れた。


「……」


誰も。


動かなかった。


俺も。


動けない。


倒れた。


魔物。


その。


向こう。


「……は?」


森が。


変わっていた。


狼の。


後ろ。


今まで。


木々が。


生い茂っていた場所。


そこだけが。


一直線に。


抉られている。


何本もの。


木が倒れ。


さらに奥の木々まで。


吹き飛んでいた。


「……」


俺が。


一番。


驚いていた。


これが。


俺の。


神器?


もし。


さっき。


射線を。


空けてもらって。


いなかったら。


背中に。


冷たいものが。


走った。


目の前に。


文字が浮かぶ。


【魔力弾・発射完了】


【残弾数:0/1】


俺は。


その文字を。


ぼんやり。


見つめた。


ゼロ。


そんなこと。


今は。


どうでもよかった。


一年以上。


聞き続けた。


――カチッ。


その先を。


初めて。


聞いた。


俺は。


神器を見る。


そして。


倒れた魔物を見る。


「……撃てた」


声が。


震えた。


王都で何度引いても。


鳴ったのは。


乾いた音だけだった。


あれほど憎かった引き金が。


今は指から離せなかった。


隣を見る。


リーナが。


立っている。


俺を見ると。


ほんの少しだけ。


涙を滲ませながら。


笑った。


「……はい」


「撃てました」


後ろから。


声がした。


「……神銃士」


振り返る。


四人の冒険者が。


俺を。


見ていた。


巨大な神器。


胸に。


大穴を開けて。


倒れた魔物。


そして。


その後ろ。


一直線に。


吹き飛んだ森。


誰も。


すぐには。


言葉を続けなかった。


俺は。


もう一度。


神器を見る。


使えない。


そう。


言われ続けた。


俺の神器。


違った。


使えなかったんじゃない。


俺が。


使い方を。


知らなかった。


そして。


一人では。


ここまで。


辿り着けなかった。


俺は。


隣にいる。


リーナを見る。


リーナも。


俺を見る。


初めての。


一発。


それは。


俺一人では。


撃てなかった。


一発だった。

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