EP81 真紅の光
「ふしゅ〜」
都内一等地に建てた自身の家にて、先輩や師匠を招いて藤井は修行していた。
0.005秒と言う蝿の神経伝達速度、脳から来た指令が筋肉に伝達、行動に移すまでの時間つまり反射速度を大幅に上回り、その反射速度は零刻とまで称される反応速度であり人外の中の人外が辿り着く反射する神経の極致、そして脊髄反射の極致でもある、人間が可能な極限の反射神経になるまで鍛え上げられた領域、そう人間が、である、細胞が変質したり組成が変わるほどの肉体改造など無しで純粋に人間がと言う意味だ。
「ふん」
観察眼により、相手が無意識に出しやすい行動のパターンやリズムを対戦中に見抜き、直感で次に何が起こるかを察知する直感力が大事であり、この領域だとしても、行動を見切る技術や洞察力、視覚能力を使う、相手の筋肉の僅かな動きや形を瞬時に読み取り相手が攻撃等を出し切る直前のコンマ数秒の動きを視覚で捉え、それに対して勝てる手段を出力する後出しが出来る、そして。
ここで五感を一つ一つ洗練する鍛錬を行い尚且つ統計学やより強いイメージのためにカオス理論を学んで未来予測能力を強化、心理学を学んで感情を推測出来るまで反復学習、そうして意中を読解、気取って次の行動を観るなど、更に速度を速められる。
可能な限り今の人間のままの限界を突き詰めたら次は、思考回路を拡張したり知覚速度を強化する訓練に移る訳だ。
「体が作れたから、まずは初歩だな」
こうして彼は、すべての正負の感情を力に変えて、それぞれが肉体にもたらす影響を予め知識に持ち、癖化して、ホルモンを調整したり、血管など緻密に制御が行き届くようにする。
「肉体もだ」
剛柔自在の肉骨それをパワーアップさせる形而下の下地たる血脈を感情や心と言った形而上たる側面で本来ならば扱えない部分を身体化し、自律神経を意識してコントロールし、心臓を停止したり内臓を動かす技術などを得る。
「技術もだね」
闘技《意喪失掌》これは本来は暗殺術だが、気絶技にまで危険性を下げられている、顳顬に寸勁を打ち込む様にして(実際に寸勁とは違う)鋭い打撃を打ち込む、それはまるで木霊が跳ね返した山彦、その衝撃は頭蓋骨内を激しく跳弾、またはブーメランの様に周り戻るなど軌道は二つ来る。
それにより脳味噌はどうなるだろうか?当然ながら数万〜数十万回とあり得ないほどに振動します、常人なら脳やら耳やらが逝かれて死にますが調整して数千回〜数万回のレベルに下げて放ちます、そうして相手は意識を失い自由に動けなくなります。
この技の何が強みかと言えば簡単な話、どれだけ相手の頚椎が太く脳味噌に干渉ができなくても、相手を気絶させられる点にあります。
これは皮膚側から伝達される側面の振動と顳顬側から跳弾する衝撃とで役割の異なる波が二つ押し寄せるからです、大きな虎ですら気絶を免れません。
「1日でこんなにパワーアップ出来るとは思えませんでした!」
「みんな非効率的なんだよ一般社会では、下地を作り終わったらパンを焼いて膨らませる、はい完成、それだけ、チョコチップだの苺だの、長く重く太く硬く厚くデカく兎に角強くってなぁ、減らして減らして本質すらまだ見れてないような奴らが」
「は、はぁなるほど」
すると先輩は一つ見せてくれた。
「お前にはまだ速いがこんなのもあるっぞ!」
ドガァーン!それは《憤怒之王》怒りをバネに変換、自身の身体能力、運動能力、能力値を爆発的に上昇させる、それ以外にもセットと成り内包されるものがある
「堪忍袋の緒がガタガタに成るから初めは慣らしておかなくちゃならない!」
《逆鱗激昂》毛が逆立つ、徐々に白く成る、膨大な負荷でストレスが掛かり、マリー・アントワネット症候群が出ている。
「はぁぁぁ」
《怒髪天外》やつの表情はまるで鬼神であった、その表情筋の一つ一つの筋繊維までも怒れ狂ったが如く激しく脈動する、不動明王や大黒天の木彫り蔵が可愛く見えるほどの憤怒相をしていた、実力差を細胞単位に届けるもの。
「ッッッ(安全と分かっているのに、まるで虎が目の前にいるハムスターの気分だ、袋の鼠は猫を噛む事すらできない、一挙手一投足が死に繋がり手も足も出させて貰えない)」
理性のリードを外した猛獣、野性が更に強くなる、野生の感の精度が高まる。
「後はこれ」
《部位強化》鋼部など含めた肉体を強化する身体操法の総称。
やつは両腕、両脚を硬化する。
「どうだ、誰か手合わせを軽くな、誰も何も壊さない、壊れない範囲」
「なら久々に俺とやろうぜ」
すると藤井の先輩の1人が出る。
「やるかぁ!ふん!」
真っ赤な側が速攻を仕掛ける!《暁月六秒》殺意や怒りなど意図して溜めて怒りのピークである六秒間の間、その最も怒り・狂気が高くなる時間の間、思考を完全に停止して、思いっ切り暴れ狂うと言うもの。
無意識下で殺戮衝動フルアクセルで脳のリミッターを外して、技術もひったくれもない野生的な噛みつきや引っ掻きと言った喧嘩殺法を超えた自然の殺戮戦闘技術をフル活用して殺すことのみに全集中したただ叩き潰すことだけを目的とした瞬間最大火力を出力する技、怒りやすい体質の人ほど強い技術でここからヒートアップしてさらに火力アップも見込める、怒れば怒るほど強くなると言うまさに怒髪天や修羅、激昂や憤怒を落とし込んだような技術。
「シャラァァァァァ!!!」
「理性がねぇマジモンバーサク野郎がぁ!」
二つ名に”灼熱の刻”人間はそれをそう呼んだ、バゴーン!
「グハ!」
「次は理性有りの殺り方だぜぇ」
「な、嘘!?」
バゴーン!無呼吸連打が繰り広げられる、最大化した運動能力状態、有酸素運動が持続能力を高める中強度の長時間としたならば、これは超高強度の超短期決戦型のファイトスタイル、力士だって取らない頭のいかれたパワースタイルだ。
「(あっちが暴走ならこっちわ覚醒とでも呼ぶべきか?)」
学び培った技術、模倣から体得したコピー、それ二つが集合した理性の集合体そのもの、考えられるならば、すべて一つに考えるのだ。
「太極のうちに陰が陽を孕み、陽が陰を孕むが如くすべては完全では無いままに合わさって居る、自身に足りないもの、二元性を見よ、自身が例えば荒々しい暴走気質なら、内に秘めたる冷静な覚醒の気質を知れ、逆も然りである」
異様に大きく見えたのはあまりに凄まじい威圧感によるものだった、折れない意志、威圧感が凄まじい。
圧倒的存在感は更に更に更に巨大化する!2mだったオーラは10mに、10mは100mに!威圧感が増して増して増し続ける。
「凝気って呼ばれるやつですか?」
「あぁ、因みに凝気は分かるか?」
「凝気とは戦闘者が体内の気(精神エネルギー)を凝縮し、物質化したもの、精神力・生命力の具現化とも言えて、それは精神の固定観念やイメージ、の性格、過去、欲望、信念、今現在の感情などから様々な形や性質を帯びると言うのは」
「その通りだ、怒れば熱くなり、熱い心の持ち主なら火のようなゆらめき空間がボヤけるものが出るし、ピリピリしたなら電気、毒舌なら毒、みたいな、そんでイメージ、その抽象的な”パワー“これに対してルールを設ける、でなきゃただ高密度なエネルギーだからな、そうしてより具象的なものになっていく、過去に強くあった出来事などで基本的に皆既にこんな数式を記述するが如し作業はしなくていいけど、兎に角その数式化?化学式化?形式化?術式化?何でも良いがその式の解釈を自分で色々変えることでより強いパワーを発揮可能になっていくのだ」
「はぁ、なるほど」
凝気が夜空を真紅に染め上げる、バゴ!
「あ!?」
「おまえら、もうお終いな、やり過ぎ、組み手だぞ」
フシュー、元に戻る。
「(憤怒之王!すっげぇー!単一のスキルの中に何個技術が詰め込まれていた!?まじパネェ!それに凝気!生の凝気だよまじ感激ッッッ!)」
「ん?どうした下唇なんか噛んで目をぎらつかせて、興奮してんのか?」
「いやもう凄すぎます!」
「お、おう、まぁお前もいずれ使えるように成るから」
「頑張れよ後輩!」
「そうだ、先輩達の背中についてこい!」
「おいおいお前ら、いきなり先輩ズラか」
「は、はい!」
こうして藤井は先輩達に新たな技術を詰め込まれていくのだった、経験を積み上げるのではなく技術を掘り込む作業が続く。
「先輩達は、細胞内で核融合してんじゃないかってくらいのエネルギーを運用する、肉体を人外化、並みの人間より遥かに優れた人間に!」
藤井は着実に成長していた、後生遺伝子学、筋肉に使われるタンパク質と言うのはハチドリなんかが良い例だが差異があるのだ、そのようなものは遺伝子や習慣化されて適応したものかで変わる、食生活、修行で肉体を変質して本来は成し得ない力を手に入れることが出来る。
物質組成がより根本的に特殊な粒子系だって修行したら可能だろうし実際に存在するだろう。
より強固に変質させる遺伝子異常!体内細胞を急活性化させて、常人の数十倍、数百倍のエネルギーを生み出し、強い闘争心・殺意で人間性を侵食する。
「はぁぁぁ〜(俺の弱さに自己嫌悪するぜ)」
血が満ち、血眼に成る、飽き果てるまで泣き、涙を失い、気づけば血涙が溢れ出す、体温が上昇し、血の蒸気が現れる、火事場の馬鹿力で身体能力が向上中。
「はぁ〜、、、ふん!」
コッカーン!
「あが!?(俺が悪いとは言え容赦ねぇ!?)」
《会心撃》対象の急所を的確に突く精度とその衝撃を効率よく内部へ伝える破壊技術の組み合わせで本来のダメージより倍率1.5倍にも3倍にも6倍と上昇させ続けられる技術。
当てる精度、当たる場所の選別など、観察力と予測による精密射撃・打撃、構造上の欠陥を突く知識と戦術を磨くことで《会心撃》は更に強く成る、基礎技術。
「しゅ!」
《黒炭灰炎》マグマに浸かろうが余裕、マッハ5を出しても温度に耐えられる、筋肉は真っ黒く、硬い、強い紫外線も喰らわない?
「うぐ!?(肝臓、腎臓!?)」
《背水の陣》それは誰に似たのか、防御などしない押せ押せスタイル、防御や安全性を完全に放棄し、そのリソースを速さに、結果的にすべて破壊力に変換する。
だが敵もただで終わる気はさらさらなさそうだ。
「喰らえ!んなぁ!?」
自身の勢いを主軸にし攻撃の勢いを利用して衝撃を逃がし、敵のエネルギーを自分に浸透させない受け流し技術。
「凝気、爆裂気!」
意図的に身にまとった揮発性・可燃性の高エネルギーを、攻撃の反動や接触で爆発させる反応型技術。
ドガァーン!
「ウガァ!?(意識外から爆撃ッッッ!?)」
それは地に当たっていれば最後、とんでもないクレーターを刻んだろう。
「はぁぁぁ!」
呼吸を操り、血を高速循環、爆熱化させた血流、更に身体能力、機能が向上する、そして何より全身の血管単位での肉体操作と言う、彼にとっての極限の集中状態が生む。
「アガウガァイガァ!?」
一切の無駄を排除した最適化行動、コンボが速すぎる、打ち込ませては貰えない、PVPゲームは熟練者が圧倒的である様に、その実力差は明白にかけ離れていた。
それに今まで使ってきた技術とはまた別に、長時間負荷に耐え続けた身体が放つ、生存本能によるリミッターの強制解除に入る。
「(死ぬ、俺が欠落した現実の存在だからまだ耐えられるが、もし仮に俺がそうじゃなければ、この絨毯爆撃すら生ぬるく感じるほどの化け物を相手に一瞬で蒸発させられていた!)」
肉体の生存システムを完全にシャットダウンし、生命維持に使うはずの全エネルギーを戦闘持続だけに注ぎ込む、狂気的な生体オーバークロックに。
マイナスの感情が狂気に変換されて強くなり続ける、恐怖に、狂気に、肉体が支配されていく、浸透する、染み込んでいく、徐々に徐々に。
「お前、今まで会って来た中で一番硬いな、良いぞ、お前、次のフェーズだ、先輩達に教えてもらって廉価版の贋作しか使いてない雑魚の俺が、お前に爆裂気力を解放してやる」
「嘘だろ(まだ本気じゃなかった?否!確実に嘘だろ!)」
精度がより高まる、複雑で緻密な部分を正 感度を上昇して極度の興奮状態による神経伝達のブースト、そうして。
対象の視覚外(死角)から攻撃することで、防御反応や構造的耐性を無効化するバイパス攻撃技術を使う。
「ウギャア!?(速過ぎて見えない×視野角で見えないっ反応できるわけない!さっきから反撃も回避も防御も!)」
「まだまだ上げてくぞ、ついて来れるか、糧!」
自身肉体の限界値までパワーアップ、限界以上を出す、その異常事態に直面した脳が、生存本能を極限まで呼び覚まし、肉体のリミッターを一時的にバイパスする緊急時オーバーライド。
併用して異常事態を乗り越えた際に生じる超回復と、脳の覚醒状態を維持する報酬系フィードバック。
「さっきから異常に硬いな」
これが普通である、過剰現実である対脅威特選隊と、一般通過後輩戦闘者でしかない彼なのだから。
「はぁ!」
すると藤井の手が一瞬止まった隙に敵が動き出す、外部から取り込んだ新鮮な生体エネルギーを、リアルタイムで肉体の強化、身体機能の出力に転換、肉体損傷を治す。
「お前をぶっ殺」
ジャギンジャギンジャギンジャギン!
「は?」
バラバラバラバラ、シュン。
「(チャクラム?はぁ!?今まで無かった筈、気か?いや、気をここまで持続させるにしては集中力や体力的に難しい筈、と成るとどこから、、、ナノマシンか!)ぬぁ!?」
「これはナノマシン、先輩が護身のために一応渡してくれたものだ、俺はまだまだ弱い、ある程度通用し始めた程度の存在」
ナノマシンを用いて、生命エネルギーの強制転換・過給システムを行う、本来ならば使用後に肉体が炭化・崩壊するだろうが。
「肉体を極めればそんなものは克服出来るんだよ」
「馬鹿げてんだ」
これだけじゃなかった。
「(俺が奴に埋め込んだナノマシンは、個々の細胞を対象として、凍結、細胞を撹乱、そして無数の小さな切り傷や切り傷が全身に現れ最終的に殺す、副次的な効果に過ぎんが遺伝子もナノマシーンは破壊し尽くして設計図も機能しなくなる)」
筈だったがやつは違う。
「馬鹿が、筋肉を1秒間に数万回という超高周波で振動させ、細胞分裂の活性化し、細胞同士の摩擦熱で温度を上げればいいだけのことよ!」
ナノマシーンをすり潰しつつ冷却を阻止する。
「うごぁ!?」
藤井に大ダメージ!ナノマシンによる自動修復システムを使い回復、殺し方を模索しながら再度殴り合う、だがしかし細胞にダメージは十分、だがしかし。
細胞分裂の活性化による治癒能力向上や再生速度加速は、本来寿命を減らす、だがしかし本来とは常識、現実的なものだ、奴の場合は。
「非現実はここからだ」
「どうしよ(何か弱点はと思った、自分ができそうなことは大体した、2度目など無いと全力で、、、えぇぇ、どうしよう、勝てない)」
捻曲値が平均値である以上、どちらかであるものに勝つのは非常に難しい。
「先輩?」
そこに現れたのは先輩だった。
「俺様の後輩だぞ?弄って良いのは俺らだけだ」
あの日は休んでいて三人とはまた別の先輩である。
《五合陣秩序固有結界じゃなくテクノロジー、一つは流体力学を応用した、自機の周辺気流の完全制御システム。
二つ目は超伝導状態を用いたエネルギー蓄積と、接触時の爆発的な熱交換システム。
三つ目は全身の装甲が受け流した物理エネルギーを回収し、自機の動力源へと一括変換する、エネルギー回生型の出力増幅システム。
四つ目は外部干渉を完璧に遮断する慣性制御と、神経系の超高密度安定化システム。
五つ目は地磁気や地脈の熱エネルギーを、装甲の脚部を介して直接吸い上げるアース型・外部電源供給システム、この五つが同時に展開される。
「ふん!、、、は?」
「(システムワンによる大気制御による防護技術だ!)」
「オラよ!」
システムワンによる《風刃》言ってしまえば風による切断、物理的な破壊(斬る・叩く)とは別系統のエネルギーをその攻撃に上乗せして効率的に流し込む付加技術がやり易い、音速の手刀みたいなイメージ。
「さぁ、楽しませてくれよ、僕の後輩に渡したナノマシンを破壊してくれた君の非現実性を」
「ギャアァァァァ!」
こうして敵は実験台になり、耐えきれずストレスで自殺したのだった。




