EP80 八指の男
「アギャァァァ!」
「握り合わせ、俺の勝ちだ」
綺麗にかつしっかり機能する生え揃った多指症、八指の両手両足合わせて32本の指、どれも油の塊ではなくしっかりとしたものだった、最初は操作が少し難しかったが先輩の多指の方々に習いながら完璧に普通の操作を得た、その握力は異常を極め、握る開くのグーパー体操ができるくらいになった6歳頃既に従来の人間の生物学的限界を突破していた。
桁外れの超握力は万力すら比較にはならないほど、軽々と木々を引き抜き投げ、旅行で入ったアフリカ大陸のサハラ以南のサバンナで襲ってきたチーターの自慢の脚を挟み潰し、過去に人間に襲われたことのある逆恨みしたゾウの群れの胴体を鋏潰し、握力だけで対抗してきた。
プロの柔道家、指芸で軽く力を込めるだけで全指の超合金製の指輪をパキンとあっさり、そして手首まで隆起して同じ材質ながらより分厚いリストバンドを破壊、更には、制御してただ千切るでなく、様々な金属プレートを一個に纏めた千切るという概念が通用するかわからないほどムズイブロックを、ムギュっと握り締め、正確に真っ直ぐ綺麗に、まるでレーザーカットのような精密に千切って魅せた。
シンプルな握力勝負において非常に優れた柔道家で、それ故に強い、シンプル故に余りにも汎用性が高い、その握力で何人もの柔道家を下してきた、評価として掴まれれば終わり、一度握られたが最後、脱出不可能な上に指先の皮膚一枚でも接触できれば掴まず摩擦だけで投げられるほどの技量と合わさり、捕まえたら最後如何なるクッションが置かれて居ても全力で投げられればそのクッション諸共対戦相手をぐしゃぐしゃにする。
肩から上へ、まるで曲芸、そこから繋がり、振り下ろされる足裏は正しく命を刈り取る鉄槌、へとと行くのだが、肝心の急速回転して無理やり掴み技を無効化しようとしても。
「逃さない」
そう発して軽く投げた、握力と洗練された投げ技による隕石並みの振り落としで、引退するまで無敗、引退後はさらに握力を鍛え続けた、やつのホールドは人を相手にしてると思わない方がいい、勿論ゴリラと比較するのもだ、万力(産業用大型万力(10t))だってやつの握力を言い表すには相応しくない、そう、あれは親指という下顎と第一人差し指、第二人差し指、第一中指、第二中指、薬指、第一小指、第二小指という七本の上顎から発せられるメガロドン(100,000N〜180,000N)の咬合力級!
それは摘力、指先〜指腹程度の部分でほとんどのものを切り裂き軽く鉄を割き、鋼を貫き、掴力は決して対象を離さず寝たままあるいは死んでも持続可能、潰力は対象物をとてつもなく圧迫して、人間に使い挟み、血管を圧迫し、皮膚がゴム風船のように断裂、爆裂させられる。
日常的に目にする大概のものを潰せるほどだが彼の限界はそこではない!マリアナ海溝を軽く超えて、5万〜10万気圧(約5〜10ギガパスカル)以上の圧力と、数千度の高温が必要で、常温での圧縮には、常温かつ一瞬で行い、熱による補助がない状態で結晶構造を強引に変えるには、さらに桁外れの圧力、推定で数十万気圧の力が指先に集中する、石炭を握り潰そて人工も金剛を産む、それは、物質の密度を変えるほどの圧力がいるが、可能!
桁外れの握力を使えば人間を掌サイズに凝縮したり、ほぼあらゆるものを小さく纏めるくらい訳ないくらいには数百〜数千万tの握力が理論上必要である、だが逆に行って仕舞えばいいのだろうと言う話で辿り着けば大抵のもんはぶっ潰せます、この握力で彼は150mのバゲット(フランスパン)を米粒サイズに急激に圧縮して数万°にさせて、サラッとナノ多結晶ダイヤモンド、超硬質窒化炭素、ロンズデーライト、ウルツァイト(窒化ホウ素)などの硬度より遥かに硬い粒パンを作ったりした、尚本人は、適当な力加減をしなけりゃ粒子サイズすら残さず消えるなど。
そんな握力の才に恵まれた彼だが。
「楽しいなぁ!初めてだ!名前を名乗ることを許可する!」
ニギュイーン!握る、ただ握るだけで周囲の物体、人間がそこに収束する、空間に存在する物質を握り潰し、時空を捻り潰し切る黒洞級の握力まで達する、その握力は容易く空間を握り潰しちまった、だがしかし。
「俺か?俺の名前は宇木壮一だ」
バゴーン!固有結界を経由して敵の拳周辺の時間を握る前に戻しブラックホール生成原因を処理、ガシ!両者握り合う。
「楽しいのはここからだぜ?ん?」
グギィ!宇木に握り潰される手、瞬間、奴は宇木から無理やり自身の手を引き剥がした。
「(不味い、握力で負ける!ならば)喰らえ!」
そのものの拳は、当たれば即死、否、皮膚に掠る程度、否、髪に触れる程度ですら“即死”の域にあった、即死級ではなく、人間では即死する、そう言うものだ。
その打撃技には地力に加えられた柔道×合気道の術理が書き加えられていた、その攻撃の名は旋廻打突、巻き込むと言う文字通り攻撃に当たった、あるいは触れた程度でもその対象を物理的に巻いて中に入れるのだ。
一見すると強烈な捻りの回転が掛かった拳が竜巻のように引き込むだけに思えるかもしれないが、その腕に回転を掛けて相手を捻り殺すだとか、そう言うレベルではない、まず初めに柔道の投げで有る、この投げを極めて効率的なものにする事で最終的には摩擦係数の存在に辿り着く。
そして摩擦で投げる技術に達すれば皮膚に触れるだけで相手を投げれるようになる、それをより発展していき、ついには髪一本にまで技を掛けるまでに至る、人間の髪とは想像以上に高い強度を誇るので有る、それ故に、髪を引かれれば必然、体も引かれてしまう、って言う、その摩擦制御を極めて、それを打撃に応用したんだ、叩きつける打撃に。
だがしかし髪一本では確実に抜けてしまう、そうで有る、これは単なる力任せの牽引ではないのだ、次に出てくるのは合気道で有る、この合気道のような重心移動の制御技術、梃子の原理理解と応用と発展、気を感じ取れるようになるまでに成り、力を入れようとする瞬間や体勢を立て直そうとする反射を先取る用に、中心力の集中、自分の中心(軸)を一点に集中させ、触れた瞬間に相手の全身の自由を奪う技術、地面からの反作用で有る地力、抗力の制御、螺旋状の動きで相手の関節をロックしつつ、力を深部(体幹や神経)へと喰い込ませバランスを内部から崩す術、、、神経系統を誤認させる術、結び、連結など今回の合気道は今回は使わないとして、その合気道を極めもはや重力を制御しているかの如し合気を手に入れて、柔道×合気×打撃技=で完成するのが旋廻打突ある。
「髪一本の挙動すら予測してる非人間的なまでの身体操作、服すら掠らせてくれねぇ、全てが計算ずくって顔してる、恐れ入るねぇ」
「雑魚相手に風圧や振動すら含めて避ける、そんな当たり前の芸当だが?住まう次元が違いすぎるってだけじゃねぇか?」
「な!?俺を雑魚だとッ調子に乗」
カス。
「は?、、、」
バタン、宇木の究極的劣化版の手加減術、フルコンプしたデバフで指だけで行う気絶させるだけの技、本来は掠っただけで気絶させる顎を対象とした打撃技《脳揺らし》、脳震盪・失神を起こすためのもの。
「ふ〜、、、お前、気絶耐性無いやん、修行しろよちゃんと」
「あ、あぁぁぁ」
「脳に障害が残らないようにサポートして貰いながら普通すんだろそれくらい」
すると空気、その雰囲気と感覚に呑まれていく、自然が、無自覚の内側に秘められているバイアスが捩れていく。
「固有、、、結界!(この、まま、では、、、死ぬ!)」
奴の固有結界、意識が飛び飛びで有り公理が無い基礎中の基礎的な心理空間とでも呼ぼうか集合的無意識?のような空間を具象化したとでも言うべきその精神世界を。
「ふん!」
パリーン!なんと宇木は、物理的なパンチで穴を開けて侵入してしまった。
「おか、しい、それだけは絶対にあり得ない、これを破壊って、物理的に絶対に不可能って断撃ゲホッゲホ!はぁはぁはぁ、できる、訳が」
「出来るんだなこれが、本質的にすべての生物には生物の理を超えた精神生命体の側面が潜在されており、見かけ上の肉体は結果から派生した肉付けの原因として作られた表面的な皮であるってのは理解可能か?」
「?」
「真性の人面人型の肉袋じゃないか、ならばお前の冥土の土産として脳味噌の経験値に蓄積しとけ、何故そんなことが言えるのか?それは根本的な話、人々そして生物、知能ありしすべての存在には進化を促そうとする意志、生命の進化を促すその指針、それらすべてが、普遍無意識を拠点とした形而上学的な精神集合体、我々の投影者達を原因としているからだ」
「(、、、!確かにその様に考えた時、意志力が高ければその様な本来は矛盾することすら常識、法則を貫いて成立させられるのでは無いか?形而下的なものが形而上的に干渉したのではなく、まずそもそも意志と言う形而上的なものを利用、形而上的なもの同士の侵し合いでパンチが勝っただけじゃ無いか?)」
彼はそう結論付けた、宇木壮一はハッとした彼の顔を見て拳を振り上げる。
「最後に言っておいてやる、自身の本質の所在地が肉体に置くか、また別のところに置くか、ただそれだけ、精神生命体とはそれだけのことだ、高ければ高いほど下の肉体の攻撃は損失に成り得ず、無意味に成る」
その時、握力野郎は理解してしまった、自身と彼、存在としての根底の根の深さを、自覚し、認知し、本能的にその輪郭から内殻まで理解してしまった。
「(俺と奴にはどれだけ増築して、屋外屋して、階段を登っても決して辿り着けない、有形で有る天空と陸地すら超えた壁、造築を公理としたシステム、客は俺自身の力、満室なのに、新しい客をいくらでも泊められる不思議なマンション、このマンションが上下左右どの高さや角度からどれだけ積み上げたって叶わない、規格外や度外視以上にこのものの規格を表す概念や言葉が見当たらない)」
奴の理解力や表現力、言語体系や論理では宇木を捉えきれなかった。
「さぁ」
ガシ、宇木は両腕を握る。
「その御自慢の多指の握力、見たくな〜い?」
グシャア!、、、こうして握力自慢は宇木の握力に負け、死んだ。




