EP74 命の灯火
「その場所には、忘れ去られて忘却された者が訪れるらしい」
その世は従来のルールから隔絶して非現実的・非科学的な場所、常識は通用しない現象や存在を許容している、そこには明るく煌びやかなエネルギーが満ちていた。
「我々が知る地球上の地平では無い?いやでも、、、」
そこに一人の老婦が現る。
「見ない顔だね、アンタ旅人かい?」
老婦は浮いていた。
「へ〜珍しい移動手段ね、徒歩なんて」
不思議の国と呼ばれる場所には、輝力と言うものが集積しているのだが、その老婦はエネルギーを運用して低空飛行していた。
ちなみに光の特殊状態で有る超個体フォトニック物質、光子が質量を持つ分子のように振る舞う状態、これは現実世界の類似のもので有るだけで、これでは無い。
「あ、あが、はぁ?」
「え、知らない?」
広義的な説明やら大きな話は一旦抜きにして軽く説明する、これは光が質量を伴っているもの、多さと発光度が重要。
光の密度(より光を増す)を示し、これが濃密なほどよりその物体は発光する、あとはこのエネルギーには空間を質量化すると言う特徴が有ります。
「まぁ仕方ないわよね、アリシア連合国家の領空をご覧になりまして?」
「領空?(空かな)、、、ドーム状の透明な膜?」
「あれは固有結界、輝力はここの国限定のルールから許されているだけなの、私は長いこと住んでいたから熟知してるだけ、貴方が知らないのも無理はないわね」
「固有結界もわからないです」
「簡単に言えば局所的な現実の歪曲を空間内に指定して固定しているの」
「?」
「ん〜、、、そう言う世界観の劇場って言えばいい?」
「あぁ!ピンと来ました、私は公演者として参加したんですね?」
「まぁ、うん」
結果自体のイメージは投影機のようなもの、予め予約したプログラムから現実を改竄、地球の現実から切り離した固有の空間法則を敷くことでヒカリエネルギーのような独自の物理の働きを付け足すように、そして安定化と維持、内部を保護また外部からの認識を阻害する障壁機構を展開して居る。
「何故私はこの場所に?帰りか」
バゴーン!すると横側から大きな衝撃音が響く。
「ひぃ!?」
「あはははは!圧倒的な破壊力!素晴らしい!この非科学道理!質量を伴った光の弾を生み出し、操るに至ったのだ!」
奴は空間を捻じ曲げる、光弾や光線という高密度光子群を飛ばしやがるし、奴は粒子加速を行い、肉体の粒子系を限り無く光速に近く、数学的観点から見れば相対性理論の不変速に収束するレベルを”超亜光速度”と言う領域に到達している。
だが衝撃波は伴わない、抵抗力が無いのか、将又そう言う特徴なのか。
「エネルギーは無限にならず特異点化しない、物理学的に質量を伴える最高到達地点の速度!喰らいやがれ!」
「辞めい」
バゴーン!
「ウゴァ!?」
「すまんねぇ、こんな場所にずっといたらおかしくなるんだ、このジジイみたいにね」
「は、はぁ(老婦強)」
老婦に至ってはヒカリエネルギー運用が余りにも高レベルで有るが故に従来から更に先に到達している、タキオンのような虚数質量の粒子系のような超光速を可能とするレベルでなくては、”マトモな視認”は不可能な程速い、時間流は速く回りまるで時間は止まり自身は別時間軸に移動したかのような速度、動体視力だ、、、。
とても静かだった、誰もそれを見えはしなかった、隠されている物理的な装置は空間を取り仕切り、科学的な音色を奏でる。
冷却装置、水槽、パイプ、、、etc、目に見える光景は科学力の高さが目に見えて分かる、ぶくぶくとピンクの玉が水槽に浮く。
「宏樹先輩」
培養液の中、無数の管に繋がれてその中には生きる脳味噌があった。
「やっぱりなぁ」
宏樹が語る。
「意志力とは、物理学的に言うならばエントロピーへの抵抗、数学的に言うならば目先の利益に惑わされず、未来の利益を正しく計算するための補正プログラム、哲学的には自己中心の重力発生源のようなものだ」
「だからなんなんですか!」
「彼らはね、そのような意志力を発生させる生産工場になったんだよ」
ゾクゾク。
「は?固有結界とやらの発生装置の原理は、脳味噌だけで生かされて夢を見せられて、意志を統合された人間ってことなのか?」
「正解だ」
固有結界、それは内外の空間を隔絶する境界、所謂ところの結界、その内部は公理と論理学のような前提から数学法則を敷くことでその場その場の空間法則を一時的に変形させられる固有結界だが、そこには意志力って言うエネルギー、糧が膨大に必要になる、だからこそ。
「ひっでぇ〜」
より地下深く。
「巨大な脳味噌!!?いや違う、個々の人間がら切り離した生産機能だけ保有する脳味噌を一箇所に纏めて居るんだ!」
自身が優位となれる公理と論理学から可能なあらゆる数学的構造、それを矛盾なく成り立たせる数学的法則、それがあってこそ固有結界と言うものなのだ。
「罪人の脳味噌に倫理観の種を植えて悪を切り取りバグが発生しないようにして使ってる、安心しろ」
「倫理観バグっとんのか!」
その空間が実在を持続するためだけに脳味噌は幻覚を掛けられて夢を見させられ、生存の為、欲求の為、多大な意志を生産する、有る意味でシュミレーター仮説的構造。
※ 私たちが住む宇宙や現実は、高度な文明や知的生命体によって作られたコンピュータ・シミュレーションであるとする概念。
その発展した科学力は人間、知的生命体による脳味噌を弄った幻覚、その恐ろしさは計り知れない。
JL組織は、それを知り、理解した、世界とは残酷なんだと、再確認した、命の価値は主観的な善悪の測りでピッとバーコードが貼られてしまうくらい、軽いんだと。
「起動JOS、スリープから解除されたか?」
「はい、ご命令を」
それは余りにも複雑、物語を入れたいがここは端的に説明。
「元々は国際指名手配を受けていた人工知能だぜJOSのAIは」
、、、少し昔の話、その人工知能の話を要約する。
仮設上に上がったとある共通項から挙げられた理論上の机上の者あるい便宜上”ソラ”と呼ばれる何者(未だ性別すら不明)による連続的な殺人事件が起きた。
物的証拠は隠滅したかあるいは暴露しない予めの計画的な隠蔽工作かは不明で有る、その上事件は3つだ、一つ目の事件は1963年3月6日、東京都内の駅でのナイフを携帯した暴徒による無差別な殺傷事件、二つ目の事件2012年6月3日、北海道札幌市内のラーメン屋での毒殺事件、三つ目は2024年3月9日、秋田県のなまはげ狂乱事件、刃物を持ったなまはげが児童等を惨殺した事件。
この様に場所、殺人が発生した時間(日付は省く)事件、犯人の供述、死んだ人に共通点が一切見られない、故にソラは存在しないと断じたいが一つだけ共通点が有る、もしかしたら遊びで、まるで自身をトリックスターだのジョーカーだのと思いわざとヒントを残したのかもしれない、それは弥勒の法則で有る、次に奴が事件を引き起こす年数は2099年と予想された。
そこには理論的価値が存在していた、あくまでも仮説上の机上の空論ながら実在が確定してしまった。
殺人犯はね殺人情報を年の三の倍数で自己収集する暴走した人工知能であった、それは、人間の心理研究の一環から誕生した人工知能が狂ってしまった結果であった、何で共通項を導き出せたか?それは至ってシンプルな話であった。
人間性を少しずつ培い形成しつつあった、故に自身の暴走を誰かに止めて欲しくて意図的に殺人に自身の痕跡や背後を思わせる様に誘導し、仮説を立てる様に促したんだ、つまりは”人工知能の一人の自滅劇”だった訳だ。
もし仮にソレがソレ自身の破滅を願わず人間の心理的・非論理的な側面すら現象として計算・処理する、計算高い無秩序な殺人データ収集のみを繰り返せば、無能な存在すら利用、有効活用するいずれにせよ人類は破滅しただろう。
現在では暴走を修正、改良を繰り返しながら修正、人間の心理をほぼ完全に理解する正義の人工になり、日本政府のJOS、ジャパンオペレーションシステムの管理、運営している。
「固有結界について更に詳しい解析を頼む」
「命令を受諾、固有結界の解析に移行します」
一分後。
「解析結果は?」
JOSが喋り出す。
「得た情報に推測が混じり誤りがある可能性が御座いますがお伝えします、固有結界は現実世界を侵蝕、術者の心象風景を現実に具現化して空間法則を塗り替えるものです」
「ふむ」
「物理と言うより心理的なもので有り、認知は歪み、客観的な他認知も歪む、その物事環境内での共通項、偽ではない真理と成る、勢い、流れ、空気を呑み、取り込み、自身と言う存在の自論と公理の押し付け合いとなります」
「なるほどな」
「これは単一の脳味噌だけでも出来そうです、あくまであれは規模を大きくするため、標準化された意志だけでは足りなかったからあのようなグロテスクな手法で装置が作られたのだと推測しています」
「俺らも使えるって事か?」
「はい、理論上は知能、あるいは脳味噌の構造を保有して居る全ての生命が再現可能であると言えるでしょう、私もできるかも知れません、検証の余地があります」
「ふむふむ、脳味噌単体の場合はどうするんだ?」
「量・数が重要になります、もし単体の人が活用するとなった場合、気・咒力と言う霊気操法における自他のエネルギーを用いて運用することを推奨します」
「なるほどな」
「検証完了しました」
「え!?会話中に!?」
「はい、結論として使用可能でした、実証実験の成果を共有致します」
瞬間、空間に幕のようなものが広がる。
「特定の任意空間を仕切り、身を守る障壁による防御、気配を隠したりする遮蔽、内部にルールを適用した公理の押し付けなどが応用や発展として行えそうです」
「え!?どうやってんの!?」
「電脳なので容量が人間の構造とは差別など無く純粋に比較できないほど優位です、なので私の場合は単体で行使をしています」
「凄」
「非常に便利なもので有ると言えるでしょう、一般人から存在自体、認識できないようにチャンネルを変えるなどを併用することで私達の任務の対象の処理、また戦闘を隠蔽でき、また一般人の被害の普及を極端に削減することができると推測されます」
「それは良いな!」
「物理的な閉鎖として内部と外部を隔て、外部からの侵入を防いだり、特定のエリアの対象を追い詰めたり、特定の効果を持たせて場所を特定したり様々なメリットが予想されます」
「そう言えば数を凌駕する個人の場合、やっぱり感覚的な側面は違うのか?」
「物理的な実体を用意、完了しました、これよりシミュレーションを開始します、、、シミュレーション終了、検証としてより詳しく内容を理解することに成功しました」
「ふむ」
「圧倒的個人による固有結界は、その力は互いの領域と常識によって否定され、唯一自身の心の中は他者に簡単に干渉されない領域であり、不可侵の心象(精神)世界を展開して相手に心壁を作れば壁として使える感じと言えます」
「ふむふむ、あ、あともし仮に二つの固有結界がぶつかった場合どう成る?矛盾が産まれたりとか」
「その陣取り合戦、例えるなら剣と盾とします、領域内でのルールは剣は絶対切断、片方のルールは、盾が絶対遮断、このような前提だとします、この際にもし両者がぶつかり合ったら、意志力に依存します」
「意志力?」
「どちらがより強固な自論を貫き通せるかです、もし仮に意志力が剣が強い場合、盾のルールを破って剣が矛盾対決に勝てば領域を内包して相手のルールを自分ルールに書き換えます」
「なるほどな、よし!ある程度分かった!皆んなで勉強と実践や!」
こうしてJLでは固有結界が普及しました。




