EP6 大阪府の踏破者と挑戦者
「ふんふんふ〜ん♪久々だぜ〜!まさか大阪府にこのワシ、鷲谷慶一郎を刈りに来るお馬鹿がおるとはのぉ」
ガギーン!巨腕で大鉄を振るう、その風圧軽々と竜巻を引き起こす、その大鉄の名は。
嵩張益荒之大豪荷金大杭槌打、現代まで機械と拮抗し続けて来た、由緒正しき鍛冶職人、名門の鍛冶屋の終極、フォーマット化の最果てに打たれた至高の超一品、その原型は古代の石器時代まで遡る。
その用途は多岐に渡るのだが、この洗練された形状は正しく血に濡れて来た怨念、怨嗟を押し込めしもの、その正式な名称ではなく、より普遍的、汎用的に知られた名で言うなれば、俗に言うスレッジハンマーを、戦闘専用に打たれ・鍛えられて来たるものである。
嵩張益荒之大豪荷金大杭槌打、省略してBGL(嵩張=Bulky、大豪=Great hero、大杭=Large stake)スレッジハンマー、このBGLを継承したのが、この漢であった。
幾多の修羅の道、激戦苦闘を共に歩んで来た相棒、その原型は今や変形し、共に成長を重ね、そのハンマーは、余りにも禍々しく、分厚く、大きく、重くそして洗練されていた、数々の猛者を原型も留めぬ程の威力で玉砕して来た影響で、BGLの頭はゴツゴツと言うより棘々しい荒々しい風貌へと変貌を遂げていた、形容するに血を啜る特異大鉄塊と言うべきだろうか。
なんと現代に続く名誉有りし武士の末裔達が1000人掛かりで持ち上げようと全身全霊を尽くし、やっとの思いで少し動いたくらいなんだとか、現代基準にしてその質量はなんと約100t強にも及びのだとか、そんな武具を片手用と言い軽々とその漢は持ち上げたんだとか、それも頭ましてやその付近の柄ではない、真下、全長3.6m強のBGLを一番下からまるで木の枝の様に軽々持ち上げたのだ。
まるで鉞担いだ熊だ、身長3m90cm、体重10000kg、そんな身長体重でありながら、体脂肪率は4から3%に収まっていると言う、筋肉密度は、常識外れの約10倍の筋肉密度である、そして密度も分厚さも数十倍、筋肉が全力弛緩しても押し潰れない屈強な獣のような骨を持つ。
言うなればミオスタチン欠乏症と巨人症が上手く併発し、見た目は和風で一重で堀が深く、極道的であり、一般的には筋骨隆々の野生的・それながら凛とした臼顔のイケメンの分類、脱ぐと人外の肉質、骨格から出来が違うと分かる。
「我は阿須羅尾、崩壊せし崖に修羅の末尾を指せし名を冠せし者、奈落の底に向かう者、さぁこい鷲谷!」
阿須羅尾は小柄でありながら、強い気迫を放っていた。
「お前、良いぞ!久しく現れし強者よ!血湧肉躍ぞ!」
真価本領を発揮する、眠る甚大なる暴力性、抑圧に抑圧を重ねられし本能、兇獣を解禁する。
「(衝動に忠実に在れ、野性を、本質のままに自然の中に生きる在り方をしろ、俺の生き方、戦い方は、どんな格闘の原則に縛られない!)」
鷲谷の右の片掌は小指、人差し指、中指、薬指、親指に至る第一関節の完全屈曲する、その手先、爪が一連の関節の操作により変形、硬質化した、まるで獅子の剛腕にテリジノサウルスの鉤爪を短くした様な鋭い鋭利な爪になっていた。
「久しぶりだぞ、この腕、この掌、この指、関節を組み換えたぞ、武器ってのはよぉ、壊れにくさと重量だよなぁ!」
関節と柔軟性、筋肉と剛性、その肉体操作は、人外のものだ、瞬間、左手にBGLを握り締める、バゴーン!途轍もない衝撃波動が吹き飛ぶ。
「ウゴァ!?(日本各都道府県を渡り歩く計画を立てて香川から出て1つ目の場所、大阪府、なんとも強気かな)」
「軽いぞ!大重鉄槌!」
デカデカとクレーターが形成される、衝撃により地が揺らぐ、地震だ。
「(うぐ!?動けん)」
「気迫だけだったか、激烈破散!」
縦横無尽に旋回させるBGLの連続攻撃、竜巻地震を同時に起こす災害の安売だ、だがしかし。
「ニヤァ」
「む!?(コイツ、風圧と振動を避けてやがる!)」
竜巻の範囲攻撃を地震による拘束力を突破して回避してやがるのだ。
「どんな危機管理能力してんだ、阿須羅尾とやら、人間いや、獣とも言えぬ、恐竜、そうか恐竜だ!」
ギーンギラギラギラ、ビシビシと飛び交うオーラ、狩人ラプトルと、暴君ティラノサウルスがその背後に像を写した。
阿須羅尾には、脳髄に刻まれ尽くした生存本能、完全逃走に特化した本能、そして危機を感知する五感がある、タイムラグ無しの反射神経、味覚は空気に潜み漂う要素の味覚を露にす。
その名スーパーテイスター、だがその更に先に延長線上にある、ソレはもはや数百倍の域に達している、通常のスーパーテイスターは、と言うと。
普通の人より味覚が鋭い人をスーパーテイスターと言い、味覚のセンサーである舌先のキノコ状乳頭突起がほかの人より特殊で、味覚の刺激に強い反応を示す、甘み、塩辛さ、苦味、すっぱさ、うまみの5種類の味覚の中で特に苦味に敏感で、芽キャベツやコーヒー、グレープフルーツジュースなど苦味のある食品はあまり好きではないことが多い。
これは、フェニルチオカルバミド(PTC)が関連している、フェニルチオカルバミドは、味覚に対して特異な性質を持つ有機化合物で、TAS2R38という苦味受容体に反応する苦味物質であるが、この受容体は遺伝的に持っている人と持っていない人がいる。
だがしかし阿須羅尾はと言うと、常人の味蕾の約3倍の敏感さ・味覚の感度をもつ、だがしかし阿須羅尾の味蕾は、スーパーテイスターのその約3倍、常人の3の2乗たるハイパーテイスターの更に卓越した領域。
その味覚受容器官は、人間の域を越える、舌を構成する味蕾の質も量も常人のものに一線を画す、感覚細胞(受容体細胞)はなんと2億5000万、その感知可能な濃度は、人間の1000倍以上にも成る感度を有している、天性の味蕾の持ち主である。
その摂取物のセンサーは従来口腔内の数十mm範囲内の化学物質の味の是非を理解する位しかない、だがしかし阿須羅尾のセンサーは、口を開けば、体外の味を感じることが出来る、舌に近付くほどに強く感知、拾え、また絶対的な正しさで理解出来る。
その特異な体質の名は、蛸舌と言う。
「(鉄分、汗のナトリウム、距離にして約12m弱、南東側より急接近、味が濃く成る、7、6、5、4、3、ここだ)」
グリュ、ビシャ、、、先手、当てしは、阿須羅尾の刃であった。
「ぐおっ!?背中!?それに何故刺さる、我の皮膚を裂ける、本来肉すら届かぬどころか、皮膚すら穿てず鉄はひしゃげる!何故!」
「肉体の穴ぁ狙わせて貰ったぜぇ、人体の穴よ、筋肉の覆えぬ、皮膚皮の穴を、微小内臓の血の香り、貴様の身体の毛穴、汗腺、汗孔、細胞膜のチャネル・ポア、アポクリン汗腺、細胞間隙つまり角質層の細胞間隙に至る部分に集中した味覚搾取」
「は、はぁ?」
「それちより意識すら出来ない小さな生理機能の小さな構造に特殊加工を施した超高耐久のタングステンナノ構造の刃だ」
「だが何故背後に、、、な!?隠刃が柄のけつから!?ま、まさか双頭じゃと!?」
本来ポンメル(柄頭)がある場所に同じブレード(刀身)があると言う、俗に言う”双頭剣”と言われるやつである。
「俺の武器やぁよぉ、確かに重くはない、だが、鋭い、とことん鋭い、そして近代兵器となんら差異はなく、仕込みの縦部分じゃなくグリップから横に出るガス噴出式加速装置で必要最低限のパワーに必要な質量×速度の速度を補ってんのさ」
「は、ははは!それでか、なんでここまで刺さったか、ようやっと分かった、ならば圧し折るまでよ」
パキン!なんと筋肉を収縮、弛緩させ、肉を貫く刃を圧し折りやがったんだ。
「(な!?熊の毛皮や筋肉もサクサク裂けるのに、筋肉が緩んだ部分に最大限弛むタイミングに人間の意識出来ぬ人体の筋肉の穴を挿す一突で、しかも背後に誘導しての隠し双頭剣での最大ガス噴出刺突、、、それでこんだけ浅くしか刺さらぬか?、、、無理だこれ、もうだって恐竜じゃん!ティラノサウルスだよこいつ、逃げしか敵わないじゃん)」
「大阪府を統べし大頭ゾ、負けは得ぬ、我強故我在ル、さぁ来い地方の!初めて皮刺す者よ!北部の山間部から来しツキノワグマより楽キ者よ!さぁ!さぁ!さぁぁぁ!絡手を使うべし!速ヨ!速ヨ!速ヨォォォ!!!」
鷲谷、大興奮により小躍りし軽い地震が起きる、冷や汗ダラダラ掻きの阿須羅尾、即座に策を講じる。
「(周りは、環境利用しよう!洞察しろ、観察しろ、見抜け!速く!情報処理しろ!竜巻と地震でぐちゃぐちゃで原型の無い場所、、、はぁ?んなもんで何すんだよ!あぁぁぁ少し遠くに倒れた木、コイツの武器より軽そうな声だで防壁にもならねぇ、まずコイツが攻撃の余波で根っこから破壊してんねん!巫山戯てんのか!うん無理ぃ!頭悪いんか!コイツが既に環境破壊可能なのに、利用して武器になると思ってんのかクソ垂れがあぁぁぁ!!!)」
頭の中で情報がぐるぐる回る。
「どうした若き新星!掛かってくるがよい、大人の余裕だ!」
「(ここから生存するには、一番現実的な手段は、完全逃走一択だ、だがしかし、俺の目的は二番目の都道府県の支配圏争いに勝利して俺の主君、香川の王座の清殿の支配領域の拡大、だがしかし我が勝たねば、生きねば意味は無い、価値は無い!武芸に卓越した清様ならきっとこの怪物にも勝てていただろうなぁ)」
否、47の都道府県で下から二番目の強さが大阪だ、47の支配者は支配区域の大きさに比例してその実利が浮き彫りに成る、支配を狙う人数や実力は大きいほどに増えるからだ、故に鷲谷は清より相対的に強い部類に居る。
瞬間、阿須羅尾が崩壊している環境の床、もっこりしている土塊を蹴り上げた。
「うぐ!?」
鷲谷の目玉に土や砂利が迫る、だがしかし。
「閉じれば死角、弱点と思ったか小僧」
なんと目を瞑らない。
「(うん、やっぱコイツ人間じゃねぇは、秘策だった背後誘導+隠し刃加速双頭剣も通じなかった、折られてただの剣になっちゃったし、ガス噴出の向きはこっちだ、そのせいで加速も、、、いや待てよ、切り方次第で引に利用出来るんじゃ!)」
「来ぬか?では我が先に!」
瞬間、鷲谷がこちらに向かう!地を蹴り上げると、地面が爆ぜる、爆発的に加速した鷲谷が、BGLを振りかぶった。
「ニシィ!」
薄く唇を開く、友好射程距離、BGLが振りかぶられる軌道、風圧と振動の影響力、パワーを計算して攻撃を完全距離感覚により無傷回避、それに合わせてガス噴射を引の横切りに合わせて使い。
石鹸を爪で引っ掻いたくらいちょこっと薄皮を開く、それも初めて黒板にチョークで先生がやるダダダダダって点々を打つのを学生が真似して、全然点々付けられなかったくらいしか負傷?いや一枚の皮を荒れさせるを負わせられなかった。
「(あ、まじ無理だわこれ、ガスも無くなった、唯一出来そうな土の蹴り上げによる視覚を物理的に封じることも叶わなかった、あぁ、、、真面目に何もない、逃げよう)」
逃走経路を即座に編み、阿須羅尾、戦場から逃亡する。
「ほへ〜、、、?逃げたのか?いやこれも作戦の1つか!良いぞ!不動じゃ!、、、作戦だよな?え?、、、滅茶離れてない?武器取りに行った?あの軽装だし戦場外に武装武具あるんか?え?は?お?え?、、、これ〜嵌められてるってより、やっぱり逃げか?、、、確かにあの冷や汗や表情筋、曇りはやはり策なしの逃走か?いや演技の可能性もあるな、だってこの俺に挑みにき」
、、、。
「助かった〜なんで追いかけて来ずに、一直線に山道に逃げて、撹乱で沢山の方角に足跡残したり、効かないかもだな撒菱撒いたり、複雑軌道で上手いこと木の枝を飛んで一番遠くの新大阪駅までなんとか逃げたが、、、生兵法って奴か?複雑に考え過ぎて逃げた事に気付いてなかったのか?、、、まぁ良いか」
こうして阿須羅尾の逃走が成功し、戦いは考え方にもよるが、まぁ引き分けに成るのだった、そんでもって神戸淡路鳴門自動車道と高松自動車道を経由して香川に帰って行く、はずだった。
「ふ〜なんとか乗れたぜ」
「発進、ゴクゴク、カフェオレ美味しいなぁ、ん〜ったはぁ〜はぁ〜」
車掌は身体を伸ばし、欠伸をする。
「さぁ、今日も乗客を運ぶぞ〜って、なんかデカい奴居ないか!?く、急停止が間に合わない!」
何と、鷲谷が新大阪駅の香川に向かうまでの一つの線路に居たのだ、電車は急停止するのだが、バゴーン!大轟音が鳴る、まるで大岩にぶつかるが如し。
電車の後尾が浮く、ドンっと落ち幾つか脱線していた、車掌室は、と言うと。
「が、あ、くか」
べっしゃり、ペシャンコである、一方鷲谷は、と言うと。
「なんだぁ?、、、あれ電車!あちゃ〜横から乗るつもりだったのに、身体デカ過ぎるから難しいんだよ」
ぶつかった事にすら気づかない、微動だにしない、不意打ちにぶつかった電車に完全無傷である。
「(鷲谷、、、よ〜し)」
シュン、シュン、シュン、上手く停車してる電子内を駆ける、車外に出て鷲谷を目視する。
「こっちに来てるのは分かってるんだ!匂いでわかるぞ!」
「(スメルか、なら血だ、負傷してる人の血を一瞬で、、、よし、8人から、ヌリヌリっと、別車両にっと)」
こうして今度こそ鷲谷から逃げ切るのだった。




