EP56 怪物
その拷問の技術は、地獄流派とも言えるほどに絶望的な苦痛、否、絶望をも凌駕する死痛を与える。
「表社会じゃあ薬剤師、裏社会じゃあ無念を晴らすヤクザ慰思ってな」
神経伝達物質の分泌量を過剰に活性化させる薬品を使い感度を三千倍にしてから、ブチ、ブチ。
「ウギャァァァ!」
「どうだ?ペンチで爪を剥がされる感覚は」
死なないように強引に心臓部に電気信号を送り強烈な激痛による心肺停止のたびに復活させる、心臓に負担がかかり過ぎて逆に死ぬことを気を付けて時間をおく、その際はやつに排泄物循環を実施する。
排泄物循環とは?自ら排泄したものを自らの口で摂取し続けさせるというもので有る、だがしかし菌による病死は許さない、薬剤によりそれを制御しつつなるべく高熱など症状で苦しませながら死なせないで徹底して苦しませる、すべての爪を剥いだら次は、バン!バン!
「イギャア!もう殺してくれぇ!」
「簡単に死なせる訳ないだろクソカス、指先は神経が密集しているから痛いだろう?」
ハンマーを使い指先を一本一本叩き潰していく、爪を剥ぐよりも更なる想像を絶する痛みが襲い心肺停止、電気信号を送り復活させるのを繰り返す、時間が立ち既に排泄は出来なくなる、栄養にし尽くすからだ、つまりその間は飢餓になるまで飯を一切与えないが、ゴツゴツの床に重たい石を乗せ続ける、飢餓の苦痛と石苦に苦しむ。
「、、、」
「何黙ってんだ?あぁ?生きてる価値無いカスが人生見直してんのか?あぁ?」
こっから沢山の虫に身体を食い破らせたり、足裏から大腿四頭筋まで薄く透き通るくらい肉を切ったり〜とこのように、何人も何人も、世界中に有るありとあらゆる拷問を違う周回方法で行い、肉体的に摩耗仕切ろうが繰り返す、何年もかけてじっくりと、ヤル、沢山の悪人を裁きそして、がちゃり。
「?」
「出ろ」
心も体も壊し切ったボロ雑巾を外に出す、だがしかし拷問が終わった訳でもなんでも無い、彼の最もえげつない拷問、それは演劇術に有る。
「貴方名前は?」
「、、、」
ヤクザ慰思が手配した役で有る、そのものに幸せ、順調を与える。
「第二の人生を頑張るぞ!」
奴がそうなった時、熟した。
「イギャア!やめて!腹の中には子供が居るの!」
実際にはヤクザ慰思がピルを事前に渡しており、妊娠検査薬は産婦人科医の医師から提供して貰う、腹の膨らみは実際には特殊な変装で有る。
「妻だけは!子供が出来るんだぁ!やめてくれぇ!」
バゴーン!
「イヤァァァ!」
奴の目の前で腹をバッドでぶん殴り、血糊を大量に噴射、女の絶命の演技を魅せる、そして。
「これでわかったか?」
紙袋を、外す。
「お、お前は」
「てめぇが過去にやったことがこれを産んだんだよクソ野郎」
その顔を見れば恐怖で復讐の意思も生まれない、そして。
「あ、あが、あ」
生きたまま心臓を引き摺り出して口にぶちこみ、脳天にハンマーを振り下ろしぐしゃぐしゃにしてから殺すのだ。
「ありがとう、一億円を振り込むぞ」
この地獄拷問に催眠術は使ってはいけない、完全に精神を回復して、それを繰り返すと最大値が下がってしまうからだ。
幸せにしてからすべてを奪い去る、絶死の拷問、これは収穫と良い魂を刈り取るに等しい拷問だから収穫者のようなものからそう言われる。
因みに一応、催眠術バージョンは有る、永遠に苦しむ催眠術を掛けてから、脳と表情筋を生かし身体を潰す、そうして依頼者に苦痛の顔を見せて報酬を貰う。
永遠の絶望と刹那の絶望、最大値は刹那だが、永遠は心が生きていても死んでいてもずっときつい、彼の拷問術は主にこの二つを扱うが、最近とある技術を開発している。
どれだけ痛みに耐性を持ってようが無痛症だろうが絶対的な痛みにより絶叫してショック死しまう、絶痛、脳を解剖して露出、本来ならば柔らかな脳はうどん玉の如く崩れてしまうが、特殊な環境下で行うため問題は無い。
これは脳を媒介として全神経に直接痛みの信号を流し込むと言う拷問のすべてとも言えるようなもの、不快感だの恐怖だの伴ってくる痛み、痛みがなければ気持ち悪いとか恐怖は無い。
ナメクジが這ってようがゴキブリがカサカサしようが害がなければ、虫を下に見るだけしか無い、ただただ物理的にも、無痛症として持っていた痛みを無効化するアドバンテージを失ったものにとっては絶対的な不快感、恐怖に他ならない。
歴史上、また世界各国に未だ裏に顰み反英雄として存在する拷問師、拷問官のような役職の者達、それらの中でもこの二つの技術は体系を網羅した一つでり、手間も準備も技術もどこまでも必要で有るが至宝の技とも呼ばれて居る。
そんな彼は、スパイ、政府、シャラカル、新甲竜組、、、様々な人脈が有りよく頼られる。
「そういえば薬ってどうやって?」
「表沙汰には、なあなあ語れる話ちゃうが現実的に考えて麻薬カルテルの薬物の流通経路の利用は俺もしなくてはならない」
「まぁ闇医者の部類ですしそうっすよね」
、、、彼によりシャラカルやスパイの精神的過負荷から堪忍袋を拡張する訓練を行う。
「触発感化してまずキャップ、ネジを外す」
強者と邂逅し合い見えることで触発感化されて上限の蓋、自認していた限界は自身の今まで見えていた壁など階段の一段に見えてしまい軽々と飛び越える、まるで人間には無理とされていた500kgが上がりそれから後続の者たちが少しずつ刻み始めてように、ある有名な走者が100m9秒代に突入してからより多くのものが加速したように、触発感化とは精神の良性の伝染病だ。
「本で特殊幻覚剤と併用して催眠」
死すらも生温い休息時間と化すほど恐ろしい地獄の訓練、物理的に死ぬことが許されず、精神的磨耗、発狂、狂気に身を委ねること、絶望する時間も余裕も無い死んだ方がマシなほどの修行、常に死の恐怖に怯えて気が気ではない、常人の精神は持たないが持たせられる、自分次第。
幻覚催眠で主観的な時間を1日を5億年にして、五感をすべて遮断、肉体の痛みすら感じられないほど感覚を剥奪された状態で、何万年、何十万年、何百万年、何千万年って時間経過の中で刻々と瞑想やシャドーボクシング及び様々な生死状態でも行える修行を1日1日回数も質も高めながら、意識だけを保ち続ける瞑想鍛錬修行、人間性も捨てて現実に帰った頃にはムキムキの化け物の完成である、永遠にも思える修行を1日にして終わらせる、本来なら一気に老けて死ぬし脳が壊れる、記憶のキャパを超える、だが記憶を保管ではなく肉体に定着・固定させるよう記憶処理を行う、そうすることで自我や人格の崩壊を防ぎ、尚且つ超短期間でパワーアップさせられるというものである、臨死体験を何度も何度も繰り返し、強くなるまで過去に戻りリセットされる、世界中の全生物の死と苦痛を自分の感覚として同期させ、それに耐えながら技を振るイメトレなどもはや修行の質・スケールは途轍もない、耐えられなければ死ぬという選別的なものとは違い耐えようと根性・努力することで生き残れる良心設計の地獄以上の領域である。
精神的耐性はもはや人の領域ではない、5億年間分の様々な情報(視覚情報・聴覚情報・味覚情報・触覚情報・嗅覚情報)それらが自分だけが世界の中心として感覚は常に拡張して制空圏が広がり、毎秒無限に等しい膨大な情報量を叩き込むのはもはや自我は耐えきれない、だがしかし処理過程中、その自我や精神も成長する、廃人が廃人ですらも入れず裏返る、無が消え去り有と化すが如く、軽々とセルフの普遍無意識にまで人は到達し、精神構造が人間じゃなくなる。
生物としての組成を変える一般生物学よりかけ離れた強さを手にするには特殊生物学的な身体を手に入れるしかない、それには長年の修行により組成を変えられる、人間により期間が違い学術的な一貫性が無いが基本的に5億年なら誰でも変えられる。
「はぁ〜、、、」
だからシャラカルだと大体皆んな、最近は秘技を使えるクラスの心を持ち合わせてる、全員が薬剤師の拷問フルコースを耐えられる程、精神的な耐久力を保有する、、、。
だが怪物は居た。
「マジかよ」
それは更に濃縮、投与量を増やして薬効を強めた精神修行だった、宇木壮一は約50億年もの時間を一回の鍛錬で過ごしても一切ブレ無かった。
「秘技のレベルで戦い合う貴様らはお笑いものだよ」
「ひぃ!?」
裏の支配者、王は肉体的な武力、技術的な武力、知力的な武力と様々な種類の武力を使う。
強いから必ず全てが揃ってるって話では無い、じゃんけんでイメージして見て欲しい。
一人の王は、チョキとパーを持ちながらずっとグーのみで戦ってきた、奴はそれでも一度として負けはしなかった、奴はパーを破り捨てるグーだったんだ、無敵や果ては後出しジャンケン、それすら奴を負かすには至らなかった、そんなやつがチョキとパーを持っちまったんだ。
こんな完璧な奴らが自分が好きなことで食っているって感じ、やろうと思えば出来るが信念や意志に反するからやらない、ただそれだけ。
「辞め!?」
バゴーン!宇木は東京の王を不殺を貫きながら蹂躙する、それだけじゃない。
「喰らえ!拳腕之極!」
バゴーン!、、、。
「音だけ、演出だけ、それだけは派手だな」
大地は揺るがない、全てのインパクトを宇木の肉体が吸収した。
「俺の腕ギャァァァァ!」
「お前の対戦相手の方が楽しそうだ、こうか?」
それはコピーや模倣じゃない、ように感じる、使い込まれたものだ、年季がものを言う技術の世界を、時間すら内包して奪い去る、そんなの存在して良い筈がない、逆境を巻き返すための覚醒を、喰らい潰して良い筈がない!
《境地・夜道之御陰様》極零流に達する者が行える隠密中の極み、忍者の技術たる影朧のような隠形術、宏樹の編み出した夜霧、自分自身が編み出した浮雲、ありとあらゆる隠蔽工作・隠遁術・隠形術・隠れる事、消える事の技術が総結集した結晶、誰にも見ることは出来ない、見ることなど可能性すら微塵も無い。
「消えた?(前に戦った奴とも違う、存在の消滅!?)あが!?」
バゴーン!一瞬にして賞金首をまんま首だけ残して胴体全身は土どころか分子に還った。
「(宇木壮一とはそう言う怪物、秘技のレベルが一万だから十万だから、百万だから、勝てる存在?否、否!断じて否だ、奴に勝つなんてのは日本列島とその全歴史、人類史上すべてを天秤に乗せても傾かない!)」
宇木とはそう言う存在、才能ありし者達が、歩んで、極めて、やっと辿り着いた秘境で、更に鍛錬を積んで、北海道を収めるものが居た、そこは死と闇が満ちていた。
そんな苛烈極まる修羅の国、人越秘境の北海道を仕切るウィズナークと対するは宇木壮一。
「百十世紀も待った甲斐があったぞ♪この世に生を受けて産まれて初めて皮脂が削がれた!産まれて初めて小指先の薄皮が削がれた!産まれて初めて髪先数mmを掠め斬られたぞ!素晴らしい、素晴らしい!素晴らし過ぎるぞ!!!今まで痛くも痒くも無く欠伸すら止めてくれねぇ雑魚ばかりだったからなぁ!誇れぇ!威張れぇい!!!貴様は我に1負傷を与えられたのだから!」
バゴーン!だがしかし、秘技のレベルが高いから、どれだけ高いから、果てしなく高いから、、、だからなんだ?結局は境地の真似事、ごっこ遊びの猿真似だ。
「なんなんだぁ今のは」
「ッッッ!?」
ゾク!本州を取り仕切る次に強い北海道の裏の支配者、総取締役の次の権力を持ったウィズナーク、それだけ強い、それだけ賢い、それだけ技術の要秘訣を極め続けて来た、物理的に長く生きた、精神的な成長を果てしなくした、、、。
「だからなんだ?」
空間が凍てつく、北海道の温度が、近くの島か、否、絶対零度すら生温く感じる冷徹な絶望、ヤバ過ぎる言う絶望、半神と言う特異点、自分など下等生物扱いすらしては貰えない、発酵に利用される微生物の扱いすら無い。
「邪魔だ、我が通る道に積もった砂利など」
「ウボァ!?」
それは砂山、と言うよりは石山のパラドックスとでも呼ぶべきだろうか、砂利が塵積した石山、その石山と言う定義の範疇の中から脱しては居なかった、だがしかし。
「(お前から見たら砂利なだけだ!、、、だったら)躓かせてやる、掌にプツプツが出来るくらい勢いよく跪かせてやるッ、テメェが油断している砂利屑風情ですらお前を滑らし転がすくらいの強さが有るって、理解らせてやる!」
強者は格上だからこそ泥を啜る蚯蚓風情に足を引っ張られる可能性を考えない、思考の余地すらないからだ。
「ッ!?クソ砂利!」
傲慢さが故、文字通り格下に足元をすくわれる。
「訂正しよう、貴様は我に気付きを教授した、今から認識のランクは一段上げてやる、飼料だ、喰われ栄養と化されるだけの栄養素、肥やしにもしてやる、名誉の巻き糞として地に還してやるって俺様が言ってんだ、誇れ、冥府でも黄泉の国の土と成れる、冥土の土産に一旦死ね!」
北海道の王は膝にプツプツを作り皮膚を押す程度だ、どれほどまでに覚醒した?この場で追いつくために。
脳裡を去来する過去の経験や記憶、ネガティブな感情を何度も繰り返し思い返し、思い悩んでいた。
反芻反復し、まるで動画をループ再生するようにして、自分が今まで居た情景を、物事の深くを理解しようと、真意を感じ取ろうと、深く、深く、深くにまで潜る。
映画を繰り返し視聴すると1回目には無かった気付きを得るように2回目には無かった、3回目には無かった、そんな発見を繰り返しをした、、、遂には、趨勢を見極め続けた。
元々強い筈のものが覚醒し続けて、そんな北海道の王とはそこまで脆弱く、救い難い程に手加減しても壊せてしまう程に脆いものなのか、、、こうして北海道の王は、長き人生に幕が降ろされた、、、。
宇木壮一とは、そう言う存在、怪物なのだ。




