EP48 読みの領域
「何言ってやがる、テメェが行くのは地獄だけだ」
《深読》別称《先の先の先》を行う、剣道の先読みの極致足る”先の先”の更に先の手を読み動く技術、剣道の未来に非ず、もはやそれは別枠、異なるものであった。
幾千、幾万通りのシュミレートからパターンを読み、計算、予測を行い、数千手と相手を読む、それは盤上の未来を見る将棋打ちですら到達の出来ない未来を見る演算、まるで読者家が本をペラペラ捲るが如し領域に有る、もはやそれは名前が本質を表せてはいない、先の先、先の先の先、どこまでだって繰り返す計画的思考の輪廻を網羅するものであった、故に《深読》が一番正しい呼び名だ。
だがしかし。
「甘い、余りにも、甘い」
相対するは元・遊戯管理者涼宮漣、あの臥蛇島に居た男だ、将棋界隈を知った涼宮漣は、元々は小銭稼ぎに真剣師(将棋や囲碁、麻雀などの賭け事(真剣)を専門にし、その賞金や賭け金で生計を立てるアマチュア棋士)になり、将棋を初めて生計を立てていた。
妙手のおじさん、山崎将会の最強の山崎彌生を始めてから僅か1時間で打ち負かした。
後押しがあり将棋界に進出、棋士になってから数日で鬼手クラスの棋士、攻め師白山健と攻防を対等に繰り広げ、42年間と言う棋士経歴を持ち棋力は九段、消えた十段の異名を持ち過去には十段とも呼ばれた何百、何千手を読む棋士である白山を相手に、正確に3日の経歴で勝った。
今まで戦って来た相手はAIのレーティング基準で、今まで進化して来たレベルの人工知能に当て嵌めたらR1500が山崎彌生、R4800が白山健、次はR5000級棋士のトップクラス。
名人、王位、叡王、王座、棋王、王将、棋聖、そして竜王の称号保持者は皆揃ってR5000からそれ以上の次元の棋士だ。
過去に八人の王冠を奪い去り八冠となった男、金皐莉妃堵と言う唯一神手級、生後一カ月時点で言語をマスターすると同時に幼少期からあらゆる棋譜の暗号を記憶、そして全ての最適な手を常に脳内シュミレーションを行い導き出すと言う脳内盤面が形成されていき。
気づけば10代前半時点で常時進化型将棋専門人工知能で試合中に推定R10000まで膨れ上がり、推定宇宙原子数10の80乗を遥かに超える推定局面数10の220〜10の226乗も有る全局面を演算範囲とした絶対将棋最適手と化した将棋専門人工知能、ゲームで例えたら正真正銘、最高度のチートツールレベルに達した人工知能。
今まで懸念されていたすべて引き分けか先手必勝で固定され、数値が動かなくなる(飽和する)可能性を神手により突破した人越棋士と化したR10000の人工知能を相手に将棋を指して、最終的には金皐莉妃堵が勝利を収めた。
試合中に成長すると言うのは誰しもあり得る話だが金皐莉妃堵の成長はもはやAIですら比較土俵には上がれない、推定測定不能の次元に居る。
八冠の遥か先の人越棋士をも超えた唯一神手、ただ一人にしかなることを許されない誰もが目指す将棋士の絶頂である金皐莉妃堵を相手に互角以上に戦い、将棋界入りして僅か1週間でありながら全力の莉妃堵を打ち負かす。
非公式戦だった為に駒落ちと言うハンデ戦をして漣が不利な将棋ルールでも、漣がそれでも相手の玉をあと一歩で詰む形に追い込みながら、最後に打てる駒が歩しかない状態にコントロールし、速攻を掛けることで滅茶苦茶追い込み思考を鈍らせ、判断を誤らせて莉妃堵ですら反則負けに追い込まれた。
、、、。
「へぇ〜涼宮は将棋でその未来の確定予測能力を培ったんだ、ちなみにどうやって勝ったの?」
「ん〜?あぁあの時ね、不利な状況から逆転しなくちゃならないからね、なんで何手目にどうなるからこうした方がいい、こうしたらダメって揺さぶって駆け引きだよ、勿論相手も盤面を理解してるから本来なら覆りませんよ、本来ならね」
「え〜気になる」
「私は人として人と戦ったのですよ」
揺さ振りとは人同士で有るが故のもの、彼の棋力、Rが1万レベルです、それ故に本来なら勝てるはずは有りません、ですが。
「私は人間同士、棋力だけではなく人間性で戦ったのですよ、彼が私を無視していれば手でも打てば屈摩羅(華厳経より10の206乗)とちょっとばかし打てば私は負けていたでしょう多分、実際そこまで膨大な時間を費やさないために高速で完璧に打ち合ってたら分かりませんが、ともかく私は人間として闘い抜いたのです、理屈では説明の付かない部分でね」
「は、はへ〜、、、てかは?屈摩羅?」
「はい、屈摩羅がどうしましたか?不可説不可説転(10の37218383881977644441306597687849648128乗)の先まで読み合うつもりでしたが彼が強すぎてたかが屈摩羅に収まって私の棋力が弱いって言いたいんですか?」
「あ、、、はぁ?もうええわ」
、、、。
深読み男を。
「完敗だ、がは」
その男、涼宮は、カリスマ性に満ち溢れていた、なぜ彼にここまで読み能力があるか?それは血統にあった。
「お前らが背負った業も呪いもなんもかんも俺が持っていくからさ、だから、勝てよ、これを継げ」
「分かりました、兄者ッ」
これはだれもがただ一人の名も知られぬ小国の敗北者に死後、戦況を操作されたとは思わない、単なる偶然の積み重なりであり、奇跡でしかなく。
一人の知略家による戦況操作で終結したなどの言い伝えなどは一切ない、だからこそ大戦の終結の事実を知るものは弟者ぐらい。
敵国は軍事的な安全保障環境の厳しさを背景に、防衛力の抜本的強化と、それを支える経済的ファンダメンタルズ(基礎的条件)の向上、科学技術・産業基盤の強化が不可欠であると気づき。
国力増強を繰り返し、敵の持つ防衛力、経済力、技術力、外交力、情報力を統合的に強化し続けていた、だがら平和にゆっくり進歩していたこの国は、初戦は国単位での駆け引きに負けて敗北する、蟻と象ほどに国力に格差があったから必然だった。
その後、支配下に下り長期期間にて国は徐々に揺らぐ、差別され、無慈悲にハントされながらもなんとか生き延び、10人しか生存者がいない一軒家程度まで敗戦国家人が擦り減った状態から立て直す。
見つかれば忌み成る血筋として即殺、住む場所はゴミや廃棄物が投下されて、隠れ家にいる時でさえ環境原因に命尽きる可能性に怯え、触れれば致死毒のそれに向き合い。
飯が食えて武器を持つ奴らとそうで無い敗戦国の人間として絶望的格差が有り、彼らには多種多様な武器、武装、馬戦車、、、鍛え上げられた怪力人間、ジャンプが飛行にも等しい馬、聞けば危険な呪詛、高い生命力の闘志を宿す人間。
奴ら我々の発展や反逆意思を感知すればすぐに終わらせられ、だが我々は情報が入らずそれは分からない、希望に縋るしか無い、見えない攻撃で一瞬で消される恐怖の中で戦略すら立てられない隠密生活で見つかったら終わりだ。
彼らの戦争のついでや余波で国単位の規模が滅び、精神的摩耗、仲間を切り捨てなければ敗戦国内を維持できない、誰かが心を壊して非道な決断をし続けなければならない。
そこでただ一人、瀕死の弟者が立ち上がり、ただ一人で誰一人として、自分たちの手で殺さず、仲間はもちろん、敵対勢力すらも戦略的に利用し、存在を認識された瞬間に詰むため、常にいないものとして動き、勝つためなら、誇りも名誉も人間性すら捨てて、彼らの国のルールを無視して。
繰り返し世代が弟者の書いた手帳を子孫に、子々孫々受け継がれた兄者の計画、彼は先祖にすら誰だが認識できないくらいの遠縁と成り、記憶にも残らない 違和感はなく初めからそうだったように歴史が傾き始めた。
知略型の武将の知略と軍略、各陣営の計画すら自身の計画に書き換えて支配、彼ら理詰めの軍略・戦略で戦場を支配し、綿密な計算、地形利用、心理戦、勝利の方程式を導く軍略を自身の戦略に飲み込み、弟者孫孫に利用させ、陸軍、海軍、空軍などまだその時代には無い画期的なものすら想定して。
長きに渡り全てを計算し尽くした死んだ兄者の非命なる軌跡は千年越しに自国の勝利を計画、全ての行動を予測して死後に勝利したのだ、日記の最後にはこう書かれていた。
「こうなることが必然だった」
起きうる可能性は常に有限数で有り決まった事象が予想される、それを対象を策を練るなど造作もなく、情と言うノイズを世代交代の計算すは容易く、その演算はあらゆる変数をまるで定数の如く、それは全ての分からぬことを水平思考で新たな要項すら並列演算しながら完璧な千年計画を編んだんだ。
兄の日記とはまた別、その計画を包括する遺書、万年帝国計画としてまだまだその千年は序章、日記に的確に短く記された中には人間の頭に入り切るレベルに彼がまとめた内容に沿って今まで世代が動き、現代においてもその連綿と紡がれ続けた国があった。
ただ一人が考え続けた末の未来、英霊となったあと、形無くとも国を率いた大将軍、兄者は余りにも凄過ぎた、死後弟者すら含めてみんな傀儡にして、予想で計画を立ててそれが運でもなんでもなく誘導した末の全部ピタリ賞、分岐した未来を読み尽くし、今も脈々と継がれた血、その性、涼宮と呼ぶ家系だった、ちなみに兄者は涼宮柚って名前で有る、弟者は兄者の先見性に敬意を払い名も無き英霊の彼に《沈黙》の異名を墓地に刻んだ、、、。
涼宮に刻まれた未来を見通して、見透かして、動かしてしまう、可能性を選択して選び抜く、それは。
「初めから定むる運命の線をお前らは歩んでいたんだよ、あらゆる道筋に進もうが遅かった、俺に狙われた時点で全てが遅過ぎる」
「ひぃ!?」
余りに強過ぎて居た、遥か未来に起こる出来事を、カーペットに落ちている糸屑のようにすべて見通し、見た(想像・情報から推測した)未来の中で起こる事象を、自身に都合の良いように書き換える(かの様に制御、自身の行動を予め選択)し、(予測されて居た)相手の攻撃を無効化したり、敵の技を知り尽くして対策したりだ。
彼の血筋である涼宮柚が、一万年分の歴史を知っているかの様に動き、自分の行動で生じるバタフライ効果をすべて計算、微細な変化が起きても、即座にプランA、B、C、、、Z、、、っと切り替える適応力がまさに非現実的であり。
また数百年前に仕込んだ一見無意味な行動やアイテムが、最終的に超えるべき障壁を絶望させる決定打になったりと、その計画の長さと緻密さは、人間の記憶力と忍耐を超えている様に、彼涼宮漣も非現実的なまでの読み能力であった。
そんな涼宮漣は今。
「灰嶋さん、あんたの仲間になりたい、だからとりま学院に入りたい」
「、、、へ?灰嶋学院?いいよ」
「それは仲間になると言うのも了承したって解釈で良いんだな?」
「うん、態々聞く必要は無いよ、ついて来てくれるなら誰でも良い」
こうして涼宮漣は正式な灰嶋の仲間と成る。




