EP24 岡中
白目をくるりとひん剥いたまま立ち上がるそれは正しく人間の形相はしていなかった、まるで鬼の様な豹をした表情筋だった。
「そのど根性、気に入ったぜ、だったらこんどはもう死なない程度には収めねぇ、殺してやる」
すると大津華は、飛び出そうな右眼をキュポット親指突っ立てて中に押し戻しまいやがった。
「ひひゃは!きっしょいなぁ!」
バゴーン!極微塵の砂が風圧に沿って渦に舞う、竜巻が発生するほどの攻撃を慎也がはなったのだ、だがしかし。
「(む、風圧振動諸共躱した?あの傷でか)」
「、、、」
瀕死を超えた瀕死状態、なぜ彼は死なない?
山有谷有荊道、一線どころじゃない、何本も死線を潜り抜けた、それを想起して精神的耐久力(忍耐力)が飛躍的に上昇することでHP1の瀕死状態で攻撃を耐える、HP1以下を刻みながら虫の息でも耐える、兎に角耐え続ける。
「(耐えられる忍耐力はそうだが、なぜ躱せたか、だ)」
死なない為に、生きる為にっと脳は抑制から解き放たれて五感覚が躍起になって駆動され、目が最重に動き、予め相手の行う攻防一体(套路)を予見するだけ、単純にそれだけか?否だ、今の今までの戦闘経験が彼を補助する。
それだけじゃ無い、相手からの意思、相手自体の気配、剣道的技術の領域で、それも重要な攻撃を予測する情報だ、さらに現在では。
「(妙だ、こいつ位置が、目線が、さっきとは違う、意図してその様に動作し、意思を発してるのか)」
心理的な誘導と奴の巧みな戦闘技術はまるで予測していたように攻撃を躱しているのだ。
「(予め放たれる攻撃が分かって居なければ、ここまであからさまな余裕ある回避行動は困難を極める筈、、、矢張りそうか)」
死に際に、極端に拡張された神経の反応速度・反射速度は実に0.001秒と異常値を叩き出す、そして視覚で対象の筋肉の脈動を隆起などから次にどの様な行動するか、技術を使うかなど先に加速した思考速度で考えるのだ。
「ふしゅ〜ふん」
大津華は禁忌の技を使ってしまう、金的に手を掛ける。
「ぬぉ!?」
グリュン!そう、これこそ。
「不意表突き、虚を突く一撃を応用した玉の回転だ、これぞ精巣捻転」
「うぐっぬぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
「血相が悪いぞ、死ぬかぁ!」
バゴーン!精巣を思いっきりぶん殴る、が。
「ふ、舐めるな」
「む、、、琉球空手仕込みの骨掛、しかもお前!」
なんと慎也は、自慰したんだ、球を体に入れる瞬間、玉玉に触れて精巣の捻転を自ら治しやがった、冷静沈着な慎也を前に大津華は肝を冷やした、後ろに引く、だが。
「ウボァ!?」
「少し、腹は、硬いんだなぁ、てめぇ」
耐久に特化した耐えの武術、鍛錬は熾烈そのもので、腹筋しながら木刀や鎖で殴打を繰り返し1万回、繰り返したり、トレーラーによる腹部通過や至近距離でショットガンの発砲、果ては30mの土壌や7mのコンクリートを貫通する能力が有る80cm列車砲を腹に受け止めると言う。
不乱句利茶津を起点とする、打たれ強さに銘打った武術、その名も鉄人剛拳、その鉄人剛拳を極めているのだ。
「我は歩く要塞と呼ばれるほどに鉄壁の腹を持つ!俺の腹は金剛を越えるぞ!比喩に無く、マジに!」
不乱句直伝、皆伝まで鍛え上げ、師匠の腹筋をも超える不壊金剛の大津華の腹筋を。
「親指、だとぉっ(随意的な関節外しで親指を瞬間的に伸ばし、相手を攻撃しただと?む、こちらに軌道を変更した!?避けれん!?)」
なんと、この年月で指レベルの関節制御を出来る慎也、眼力強く睨む眼の端、たった0.01秒すら捉えられはしない視認は困難を極めるほどの速度で親指を外し放ち、その親指が鳩尾にめり込むと、パキパキパキと音が轟いた。
「ガハァ!」
なんと大津華、血を吹きながら地面に倒れ伏す、胴体を軽々と穿ちやがった、それは肋骨数十本を折り、全てに幾多のヒビが入ったほどだ、それだけじゃない、吐血だ、なんと奴は今の一撃はとても技巧なもので経穴まで突いていたのだ。
「ざげんじゃねぇ!負けるかぁ!」
「次は拳だ」
慎也はたかが親指すら人体を軽々と破壊する、ならば拳はなんだ?異次元に決まってる、喰らってはならない。
「本能が騒ぐ!血湧肉躍!」
ビュン!大津華は、加速する、確かに速い、陸上競技選手が100mを9秒58、9秒57と、身体的・物理的な限界、科学的な見解を言わせて貰えば非科学的と言わざるを得ないほど突破を繰り返した。
他の追随も次から次へとそれに沿って、なぜか到達者が現れると他者にも到達者が現れ始める、尾崎と慎也、この二人の亜音速の脚力を見て、着いて行こうと身体がそれに適応を始めたのだ、そんな現実から逃避したが如し非現実的な速度。
「ウォーキングかぁ!」
慎也からしたらそうだ、だが、着実に進歩発展してる、100m、8秒99到達する、攻撃速度と移動速度は余りにも違いすぎる、脚部の負荷は自重の数倍。
「うぐ!?」
「ふん」
シュ、シュシュ、加速+複予測で攻撃をなんとか避ける、避けて見せる。
「はははは!当たらねぇ〜なんてな」
ベコん!デコピンが大津華に当たる、そう本気でヤルと言った慎也は戦いながら進化する大津華で遊んでやがるのだ。
101%突破、大津華の肉体は限界を突破する、さらに突破する、筋肉は瞬時に運動神経が絡み付く、粉々な骨でなく筋肉で固め動く、壊れてもどんだけ筋肉が分解しても暴走しながら精神力で無理矢理、されど理性が身体を支配するのだ。
「うぉあああぁ!」
バゴン!折れた腕を肩を剥がし足の親指から加速して全身を使ってぶん回し、遠心力で指先でぶっぱたく!
「ふん(こいつ、ボロッボロなのにどうしてより強力に、、、魂や精神力で動いてるのか、、、肉体はそれに負けない様にそれに引っ付き越えようと肉体も引っ張りやがる、、、人がやって良い荒技じゃないな)」
シュン、すると慎也が消える。
「どこに行きやがった?」
ギギィー!とんでもねぇ音がさっきの廃車場から聞こえ振り向くと。
「は?ちょ待てよ、、、よくアニメとか漫画にある車のドアを引きちぎって盾にするやつ、あれ車丸ごと盾にするとか無いねん!」
なんと車を片手に持って盾にしてやがるのだ。
「今の今まで殆ど無傷のくせに、盾?」
「ははは!良いだろ?盾だけなんて先入観は捨てろよ、ペシャンコにしてやるから」
ビュン、途轍もない速度で車を片手で掴み走る!死を覚悟した瞬間、激震する、がじゃん!、、、。
「もう辞めたって〜な慎也ちん」
「な!?お前は」
「はぁっはぁっはぁっ?(なんだ、この糸目の男は?それより、嘘だろ?車が)」
そう、振り下ろされた車はなんとペシャンコになって居たのだ、糸目の男は小指を頭の上に上げ笑って二人の真ん中に立って居た。
「たかが小指の先で振り下ろした車をぐしゃぐしゃにしたのか」
「ピンポーン!慎也ちゃんは喧嘩好きだから分かっちゃう〜?ははは!」
「阿久津冬夜、なぜ入った」
「阿久津、、、!?」
他の観客も、驚いて居た、阿久津冬夜、古き日、あれは真冬の深夜だった。
「うぐぁ!?」
「ははは、弱い弱い、どうしてこんな弱いんにいきってんのぉ?慎也っち」
あの慎也や他校の中学の慎也クラスの番長を皆集めてボロ雑巾の様に扱い、雪を真っ赤に染め上げた、だが奴自身の白銀の特攻服はただただ綺麗に輝いて居たと言う、その光景から名付けられたのは。
血すら寄り付かぬ冷徹の白銀色の悪魔、そして殺戮貴公子の二つ名だ。
「僕はね、彼に惹かれたんだ、整列」
ビュン!その場にいた全員がその一言に号令に従い整列する、慎也を除いて。
「嫌だ、と言ったら?」
瞬間、空気が凍てつく、まるで絶対零度に閉じられ、原子が運動を完全停止して時間が物理的に停止したが如し静寂っぷり、あの慎也が冷や汗をダラダラかく。
「そやね〜、、、そしたらこうや」
襟首を掴み走り阿久津が慎也を宙に浮かす。
「死ぬ」
ゴクリ、慎也が生唾を飲み込み鼻水をダラダラと垂らし涙を流し、ガクガクと震え白目をひん剥き始めた、迫力の凄さに恐怖が止まらんのだ。
「あの時の様に、たった小指一本無傷で俺や番長格を一方的に虐殺するのか?」
「ちゃんとしたらええだけや、分かったか?返事は、”はい”か”ワン”だけや、負け犬はなんて鳴くんやったかいな?」
「ワン!」
「宜しい」
なんとトラウマをフラッシュバックさせて、登場しただけで勝利してしまう阿久津。
「なぁ君、名前は?」
「ゴクリッ大津華です」
「大津華、良い名前やね、良かったら僕の直属舎弟にならへん?最近設立したねん、阿久津のトランジショナル・ピリオッドボート、略して阿久津TP」
「TP?」
「そう、過渡期言う意味や、ピッタリや思わへんか?君はその象徴、シンボルになるんや」
「は、はぁ」
「そんで岡中の番は君が張る」
「え!?それじゃあ俺の座うぼぁ!?」
バゴォォォォン!ドンガラガッシャーン!!!余りにも不条理、無常、理不尽、無慈悲、デコピン一発で身体をぐしゃぐしゃにされて身体は地中深くに埋まり数練のビル諸共下敷きになって居た。
「クビで、ってあちゃちゃ死なない程度に手加減したつもりやったが、大丈夫かいな?まぁええかあないな雑魚、ホットったらええ」
慎也はポストを下ろされた、新たなる番長に大津華が君臨するのであった、、、。
「阿久津、彼は一つの地区を制覇している高校生だよ、やつは化け物級に強いが珍しくもないんだ」
「あんな奴が珍しくない?」
「あぁ、慎也なんかの下っ端中学生なんかはビル一練分位の実力で街区制覇あるか無いか程度だし、トラックを投げ飛ばすやつを見たことがある、さらに高校の番長なんかじゃ地区クラスはザラだし、そっからさらに2〜3年生だとさらに圧倒的に強いだろう、地域制覇がザラになるだろうし、カンパニーだの上位にはそこら中にあんな化け物が居る、なんか雑魚クラスですら超弩級戦艦の艦隊を壊滅したり出来るんだとか、区域クラスも出てくる」
「ひぇ〜」
表社会、学生及び社会人圏の生活範囲ではこの程度が一般的であり、素性とは日々雑種強勢で強くなり続けて、最低値のラインは高くなり続けて居た。
「ニュースにも上がってるがカンパニーにもなるとパンチの風圧で軽くビル群や大型のモールに巨大な風穴を開けて一撃で倒壊とかだからな、俺らなんざ雑魚中の雑魚さ」
「やっぱり、世界ってひれぇなぁ!」
「あぁ」
第一世代と第二世代に経験的また年齢に応じた肉体的成長の優位性が存在するように、世代ごとには大きな優位性が存在する、、、現在、暗殺者の世界は、と言うと。
「ふん!尊い生命と消えるべき生命が有る、貴様は死ぬべきだ」
ドガーン!たった一拳を振り下ろした、その拳圧は正しく災害、大きな島が木っ端微塵に吹き飛び、海陸が揺れ動き、雲が裂けてゆく。
「ははは!その程度かぁ!まだまだだなぁ!実験台にしてやるよ!」
「不快不愉快極まりない」
暗殺対象は核兵器を直撃してもびくともしないようなやつだ、ダメージは全然通らない、、、っとこの様に、さらに桁違いなことをしているのだった。




