四章 孫
「……今日、お泊まりする?」
僕と孫は、声のした方へ視線を向ける。
そこには君が立っていて、
まだ気づかない僕たちを優しい眼差しで見つめていた。
月明かりが美しい夜。
孫とベッドに入った君は、まるでおとぎ話を読み聞かせるように、僕との出会いを静かな声で語り始める。
カーテンの隙間から差し込む月明かりに照らされた僕は、
いつも以上に輝いているような気がした。
うとうとし始めた孫は、
「……いつか、“コウブツサイシュ”
一緒に連れて行ってくれる?」
嬉しそうに微笑む君。
「あぁ、いいよ。
もう少し大きくなったら一緒に行こう。」
孫はもううっすらとしか開いていない瞳のまま小指をそっと差し出し、二人は約束をした。
安心したのか、あっという間に深い眠りについた孫の顔は、幸せそうに笑みを浮かべている。
それを隣で眺めている君もまた、よく似た表情だった。
君は孫の額を撫でながら、静かに輝く僕へ視線を移すと、呟くように話しかけてきた。
「次はこの子かな……
どう思う?ペリドット。」
僕は答えられず、ただ沈黙する。
「ははっ、分からないか。
……じゃあ、おやすみ。」
そう言って眠りについた君の隣で、
僕はさっきの言葉の意味を深く考え始めた。
降り注ぐ月の光は、僕を透かしながら黄緑の影を右から左へ、ゆっくりと伸ばしていく。
“君に見つけてもらって、
願ってくれたことを知ったあの日から、
僕は君とずっと居られると思っていた。
……どうして。
そういえば、君が一人暮らしを始めた頃。
観ていたテレビの中で、動物が病や老いで亡くなってしまうのを見たことがある。”
『そうか。……君もいつか。』
理解しかけた僕は、
思考を止めるように強く目を閉じた。
五年ほどが過ぎ、
孫はすっかり大きくなって、週末になれば君と鉱物採取に行くようになった。
その日は決まってお泊まりをして、僕と君と孫、
そして新しく迎えた鉱物たちは夜を共に過ごした。
二十年後のある日、
君に会えなくなった――。
※次回更新は2月27日(金) 17時頃を予定しています。




