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ラヴァーズ  作者: 水瀬 ハル
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13/20

残り1日


茜は思考していた。

どうしたら、桂を助けられるだろうか。

そう、考えていた。

気怠い体を引きずり、窓の外を見る。


(目障り)


ただ、そう思う。

もう、終わらせてしまおうか。

全てから、桂が解放されるなら。なんだってする。

だから、もう、こんなくだらない世界も、


自分自身も、終わらせてしまおうか。

「なーんて、ね。」


そう呟いて、茜はベッドから立ち上がる。

そんなことをしたら、きっと、桂はもう自分を見てくれないだろう。


茜は、空を見上げた。

時刻は早朝。憎らしい程小鳥が鳴いている。

残り、1日の事だった。


* * * *


「ねえ、三蔵。あれから、桂君と接触した?」


仁の言葉に、漬物を切っていた三蔵の手が止まる。

キョウは墓参りだとかで、早朝から出かけていた。


「・・いや。だが、まあ予想通りだ。あの手のタイプは、自分以外全員敵だと思ってる。めんどくせえな。一瞬でも背を向けたら寝首かかれるとでも思ってんだろ。」

三蔵は漬物を切るのを再開し、仁は窯の中の火に風を送った。


「そっかあ・・・でも、どうするの?あれからなんにも分かってないじゃないか。」

「いや・・・・分かった。大体な。あの餓鬼が掘り起こしてたモンが中途半端な理由も、この土地の紙もーーー。この村は、直に俺たちが居なくても滅びる。長いもんには巻かれろというが、長いもんに長く巻かれすぎだ。

時代は変わるんだ。この村は5村の中で一番戒律が厳しく、長く神に統治され続けられている。」


三蔵の言葉に、仁はそっか、とだけ呟いた。


「三蔵、気を付けてね。三蔵が居なければ、僕もーー」

「ああ。分かってるよ。俺は九条を呼んでくる。仁、今日はお前は茜の方を頼む。」

「うん。分かった。」




* * * *


桂は部屋に籠り、机の上の眼球を眺めていた。

こうしてみるととても自分の中に入っている物だとは思えない。

桂はふっと笑った。


もう、疲れた。

高校卒業まで、とは思っていたが、どうやらそれは叶わないらしい。

桂と茜、それから旭はどういう訳か、人並みに人間に好かれる事はなかった。

特に同級生は必要以上に桂たちに近寄ろうとしなかった。


(むかつく)


自分達の知らないところで、自分達はなにかに巻き込まれているーーー

幼心にそう感じていた桂は、旭が御子となった日から全てを信じるのをやめた。

笑顔ですり寄る大人も、老人も。

早く、この村から出て、一人前の幸せを掴みたかった。

だが、残念だが明日、自分は殺される。

おそらく次は茜が。


和美は眼だけと言っていた。

だがそれだけにしちゃ多すぎるのだ。

監視の、数が。


現在自分の監視をしている人数、三名。

気配はすこしずつ違うから、交代制で、五名。


茜の家に近付いたときの感じた監視は、二名。


桂が調べた限りでは、この村で一般人が気付かない程に監視出来る人間は、十名に満たない。

だから、残りの部分に裂ける人数が居ない。


ふと、黒服の男に渡された紙を見る。

あの男は、いったいどういう目的なのだろうか。

まあいい。観客になってもらおう。


今更あの男があの行為を見ていたとして、村人は外の人間の言う事など聞きはしないのだから。

やがて桂は作業箱を取り出し、ゆっくりと薬瓶から眼をだした。


眼は、生きている人間そのもののように生々しく、そして綺麗だった。




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