表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ラヴァーズ  作者: 水瀬 ハル
PR
12/20

接触


明け方、桂は六尾村山中を歩いていた。

自分が動くと共に動くかすかな気配。

こういう時この力は役に立つな、と桂は苦笑した。


さて、どう捲くか。はたまた、泳がせるか。

だが捲くのは面倒だ。しかしタイムリミットは残り3日。あまり時間がない。

桂は舌打ちをすると、自然な動作でふらり、とゆらゆら歩き始めた。


そして、丁度監視の死角に入った瞬間。

人間離れした跳躍力で木の上へと跳ねた。

どうやらうまくいったらしく、監視の人間は数百メートル後ろから桂が跳んだ場所へと、忍び足で移動している最中だった。

長居は無用。そう判断した桂は、素早く音を立て無いように移動した。


茜は今頃、どうしているだろうか。

恐らく、学校の時間まで待ちきれずに来るハズだ。和美は今日も今日とて、男の家だ。

実行するなら今日。茜が来る前までに、なんとしても終わらせなければ。


桂の脳内の少女は、悲しそうに笑っている。


仕方ないだろ、ごめん。


桂は目当ての場所へ辿り着くと、土を掘り返す。漂う死臭に、思わず顔を歪めた。

だが時間がない。必死に持参のスコップで土を掘る。やがてがつん、とした手応えに、桂はスコップを放り、手で木の蓋を開けた。


そこに、少女は存、在、し、た、


今でも眠るような彼女。背が少し伸び、髪も腰まで伸びて居た。

相変わらずなのは肌が青白く、目を開ける気配のない事くらいだ。


まるで、あの日から昏睡状態のようなーー。


桂は神にでも触れるかのような気持ちで少女に触れる。たが、気分は穏やかだ。


「・・・・久しぶり。ごめん、申し訳ないんだけどーーーーーーー





目を、貰うね。」



無表情でそう呟くと桂は、彼女の瞼に指を載せ、一気に力を入れる。

生々しい感触と、血の臭い。

躊躇わず、桂は彼女から片眼を引き千切った。


血が勢いよく飛び散る。

あーあ。着替え持ってきて良かったな。

ぼんやりと、桂はそんな事を考えながら眼を薬瓶へと仕舞う。

それから少女の身体から血を拭き、木の蓋をして元通りに土を被せた。


服を着替えると元着ていた服は地面へと埋めた。血を拭いたタオルもだ。


そして、元来た道を辿る。


「・・・随分、早起きなんだな。ガキ。」


その言葉に桂は後ろを振り向く。

其処には、全身黒服を身に纏った白髪の男が、煙草を吹かしながら立っていた。


(・・・見られて居た?)


いや、そんな事よりも。気配の察知に長けている自分が、この男の気配がわからなかったというのか。


そんな事を思いながら、桂は男に背を向ける。

「・・・・お前の想い人は、随分中途半端なんだな。」


男は不敵に笑う。


桂はその言葉に足を止め、男を振りかえった。


「見えるのさ。俺には。全部な。お前の計画を助けてやる。キツくなったらそこに連絡しろ。待ってる。あぁ、それからーーー

俺も、お前と同じ種類の人間だ。俺は、眼。」


男はそれだけ桂の耳元で囁くと、またな、と笑い、消えた。



桂の手元には、連絡先の書かれた紙が風に吹かれ、ぱたぱたと音を立てていた。




桂は、無表情で手元の紙を見つめた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ