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待ち伏せ

来ていただいてありがとうございます。



今日も邪気の森を浄化するためにクオーツ王国から遠く離れた邪気の森へやって来た。クリスが

「いっそのこと俺が森ごと燃やし尽くそうか?」

って聞いてきたけど、私とフローラは現代日本の出身なので、森林破壊は良くないことを知ってる。それに森には動物たちもいる。動物たちが邪霊化して襲ってくることは無いので、それは止めて欲しいとお願いした。


「おかしいな……。確かに依頼はこの森のはずだが……。静かすぎる……」

アルスター座長が訝しむ。

「ええ、確かに……。先程から邪霊の数が少ないような気がします」

トールさんも不思議がってる。ちなみにトールさんの利き手には剣が握られてて、そうじゃない方の手はフローラの手を握ってる。更に仲良くなってる。こら、ピースなんかしないの!フローラ。


そしてクリスは、あの夜から表情がとても穏やかになってる気がする。前から私のそばを離れることは無かったし、今もそれは変わらないけれど、時折見せていた何かに焦ったような苛立ったような表情は無くなっていた。なんだろう……濁流だった川が、大きな海原になったみたいな……。うーん上手く表現できないけど。悪い変化じゃないみたいに思う。隣のクリスを見上げると、とても優しく微笑んでくれる。元々綺麗な人だけど、今はもっと柔らかい綺麗さっていうか優しい光みたいな……。見てると安心できる感じ。




ザザッッと風が吹いたように森がざわめいた。この森のコアの邪霊か魔物が出てきたのかと思った。

「待ち伏せか……」

アルスター座長が舌打ちをした。


私達は白い神官服の人間に囲まれていた。クオーツ王国の聖神官達だった。




「なんで、そんなに若いのよ!!天音!!っていうかやっぱり天音だったのね!!」

茉莉花の第一声はこれだった。やっぱりクオーツ王国の聖女は茉莉花だったんだ。

「若いっていうか、全然昔と変わってないじゃないの!どーいう事よ?ズルイわよ!」

えーと、どこからつっこめばいい?それにしても茉莉花ちょっと化粧が濃すぎじゃない?あとそのドレスで浄化をしてるの?動きづらそう。

「聖女マリカ様、どうぞ落ち着いて下さい」

豪華な椅子に座った茉莉花の傍らには、他の人達より装飾の多い白い服を着た聖神官の男の人がいた。


一応ここはまだ邪気の森の中。私達が連れてこられたのはテントがいくつか設営されている場所。その中の一番大きなテント。その中にはわざわざこんなところまで運んだの?って言いたくなるほどの豪華な敷物や椅子があった。茉莉花が座ってるやつね。他の人達は外にいて見張りをしてるみたい。


逃げることも出来たんだけど、クオーツ王国の聖女の話を聞いてみたいってフローラが言ってたし、私も話してみたかったから敢えて抵抗をせずについて行った。彼らも聖女様が私とフローラに会いたがってるって言ったから。



「茉莉花のせいじゃない。茉莉花に殺されかけて、何故か結晶化して、目が覚めたら十年経ってたんだよ?」

「え?十年?どういうこと?だって、すぐに城から出て行ったって……え?」

「まー、何かしらの齟齬があったんじゃないですか?または聖女様には何も知らされてないとか?」

と、フローラ。


「あまねは結晶に閉じ込められてからしばらくは城の中にいたんだ。クオーツ王国の連中に研究材料にされたんだけど、傷一つつけられなかった。その後邪気の森に放置された。

「研究……」

結晶の中にいたとはいえ、知らない人達にジロジロ見られてたんだと思うと鳥肌がたった。思わす自分を抱きしめてた。

「ごめん、あまね、すぐに助けられなくて……」

クリスが後ろから私を抱きすくめた。

「え?ううん、クリスのせいじゃないから……」


「はいそこー!イチャイチャしないで下さーい」

フローラがつまらなそうに言った。

「別に、そんなことは……」

「ちょっと、何?その人オッドアイじゃない!しかも片方紫の目!!しかもアンタは両目紫じゃない!二人とも魔物なの?」

茉莉花がギャーギャー騒ぐ。


「あ、あーさてはやっぱりあなた続編のこと知らないんですね?聖女サマ?」

フローラが不機嫌そうに言う。

「え?何よ、やっぱりあのゲーム続編が出てたのね?ねえ、あなたも転移者?転生者?この先どうなるの?教えてよ!」


「その前に、クリスとフローラに謝って!茉莉花!!二人とも魔物なんかじゃない!わかるでしょう?偏見だってことは私達には!」

なんなの?すっかりこっちの世界に毒されちゃって!

「う、」

「謝って!!」

「ご、ごめんなさい……」

茉莉花は小声で謝った。


「別にいいですよ?だってこの目はチートの証ですからね」

フローラはふふんと胸を反らした。確かにフローラの能力はたぶん今の茉莉花より上だと思う。茉莉花達はこの森のコアを浄化するのに三日もかかったって言ってたから。

「うぐぐ……」

茉莉花は悔しそう。


「俺は別にこんなのに今更なんて言われようと、どうでもいい。あまねは優しすぎるよ」

そう言って微笑むクリス。

「こ、こんなのって……、私は王太子妃なのに……」

更に悔しそうになる茉莉花。なんだかちっとも聖女っぽくないけどいいの?こんな感じで……?私はちらっと茉莉花の隣の神官さんを見た。


「こほん。聖女様に口を挟まぬよう申し付けられておりましたが……。少々お口がお悪くなられましたね、殿下?」

神官さんはクリスを「殿下」と呼んで見つめている。


「あまね、聖女とやらに話があるんだろう?さっさと済ませて帰ろう」

クリスは神官さんを無視して私にそう言った。二人の間に不穏な空気が流れてる。大丈夫なんだろうか?


「私も聞きたいことがあるのよ!ねえ、この先はどうなってるの?まさかこの国滅びたりしないわよね?」

茉莉花が最後の方は小声で訪ねてきた。

「それは……」

「それはわたくしが説明いたしますわ」

フローラが精霊の隠れ里のお姫様に戻って説明を始めた。予言を受けた聖女のように。でもあの子今までちょっと本当の性格出てたけどいいのかな?今度はトールさんをちらっと見たけど、トールさんは少し頬を染めてフローラを見つめてる。あ、特に気になってないみたい。恋は盲目ってやつかな?


「つまり、これからクオーツ王国に強い魔物が攻めてくるってことなのね?そして戦いに負けると、クオーツ王国は死者の国になってしまう……」

茉莉花が青ざめてる。フローラはクリスがゲームでのラスボスだってことは避けて話してくれた。クリスが今の状態で闇落ちすることはないって確信してるみたい。私は心配してるけど、私がずっとそばにいてクリスのことを守ろうって決めてる。


「はい。それを防ぐにはわたくしたち三人の協力が必要なのですわ。三人の聖女が歌う『精霊の歌』が」

「そう、そういうストーリーなのね……」

茉莉花が爪を噛んでる。あの癖まだなおってないんだ……。

「そうですわ。ややシナリオが変わってるところもありますけど大体そんな感じですわ」

フローラが言ってるのは三人目の聖女のことだよね。

「なにそれ?本当に大丈夫なの?」

「そんなのわたくしにはわかりませんわ」


「なんか、フローラも聖女も時々わからない言葉を使うよね?あまねはわかる?」

クリスが不思議そうにしてる。アルスター座長もトールさんも同じことを思ったみたいで私の方を見て

る。

「わかる、けど、ちょっとどう説明していいかはわからなくて……ごめんなさい」

私にはそう答えるしかなかった。


だって乙女ゲームってどう説明したらいいの?わかんないよ。








ここまでお読みいただいてありがとうございます。

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