聖女達
来ていただいてありがとうございます。
焦りの聖女
「はあっ、はあっ」
昼間でも薄暗い邪気の森の中でコアの魔物を浄化した。すごく時間がかかって大変だったわ……。
「聖女マリカ様お疲れ様です」
設営されたテントの中で飲み物を飲んで休んでいると大聖神官クレールが入って来た。残った邪霊たちは今ここにいない聖神官達が倒して回ってる。
「ちょっと!どうなってるの?ここのところ毎日、邪気の森の浄化をしてるわ!」
「ええ、クオーツ王国各地で邪気の森から邪霊や魔物が溢れだし、被害が続出しております故。聖女様におかれましては国民の安全安心のためにお出ましいただいております。連日の御行となりますことは誠に申し訳なく、我ら一同も心苦しく思っております」
クレールとずらりと勢ぞろいした聖神官達が一斉に頭を下げる。彼らもまた、邪気の森を浄化するために日夜走り回っている。そんなことは分かっているのよ!でも、でも、全然追いついてないじゃない!どうしたらいいの?これはいつまで続くの?この先どうなるの?
「ねえ!前にも頼んでおいた件はどうなってるの?」
「それが、以前に一度捕らえかけましたが、逃げられてしまい……。それ以来消息がつかめません」
「待って!捕らえるって何?話を聞きたいから連れて来てって言っただけでしょう?」
あの娘が天音だったら、何か情報を知ってるかもしれないのに!それにあの結晶化!あれって何か特別な感じするし。天音じゃ無かったとしても、何か知ってそうよね?ああ、こんなことなら、あの結晶の行く末を人任せにしないで自分で保管するなりしておけば良かった……。
「もうっ!一体どうなってるのよ!?ゲームってまだ続いてるの?」
「マリカ様どうぞ落ち着いて下さい。王太子殿下も貴女にとても期待を寄せておいでなのですから」
クレールが優しい笑顔でそう言ってきた。
「分かってるわよ!私だって聖女、そして王太子妃、次期王妃として頑張るわよ!でも……!!」
前よりも力が落ちてる気がするのよ。それとも敵が強くなってる?私は爪を噛んだ。ああ、もう!この癖どうにかしたくてやめてたのに、二十七歳にもなってまた出てきちゃった。もうイヤ!
「大丈夫です。結晶の少女の行方の手掛かりは掴んでおります故、どうぞご安心下さい」
「本当なの?でも、今度は手荒なことは決してしないでよ?!」
「心得ております。今、各地で浄化をして回っていると噂の光と星の聖女を騙る者達……必ず御前にお連れします」
クレールは深々と頭を下げた。
光の聖女 星の聖女
「「は、はくしょんっ!」」
薄暗い邪気の森の中、私とフローラは同時にくしゃみが出た。
「ベタですけれど誰かに噂をされているようですわね」
フローラが鼻と口を押える。
「フローラ様、おいたわしい……」
トールさんが悲しそうな顔をする。
「まあ、ご心配下さるのですね、トール様!お優しいのね!」
「いえ、そんな……」
顔を赤らめるトールさん。二人は順調に仲良くなってるみたい。良かったねフローラ。
「あまね、大丈夫?やっぱり里へ帰ろうよ。魔物なら俺達だけで倒すから」
上着を脱いで私に着せ掛けようとするクリスを止めた。
「私は大丈夫だから。それにみんなで力を合わせて、一か所を集中的に早く浄化するって決めたでしょ?」
クリスは私が熱を出して寝込んでから、すっかり心配性になってしまった。
「おいおい、お前ら、こんなところでいちゃついてんじゃねえぞ!」
アルスター座長はそう言いながら、邪霊を切り払った。
私達は冒険者ギルドでアルスター座長が受けてきた依頼を片っ端からみんなでこなしている。お金も稼げて、世界も守れる。一石二鳥だ。依頼はクオーツ王国から出されたものが多くて、邪気の森の邪霊や魔物を倒して欲しいというもの。中には森で迷子になった子供を探して欲しいなんて依頼もあったけど、ついでに森のコアの邪霊や魔物を倒して浄化する。そして転移の魔法で里へ急いで戻る。
転移の魔法は都合のいいことにフローラが覚えていた。ただし、一度に転移できる人数も制限がある。それに結構魔力を消費するらしくて、一度飛ぶとチャージに時間がかかるんだって。
「とにかく急いでこの森のコアを浄化しよう」
私達は森の入り口からその最奥に進んだ。私とフローラはなるべく力を温存して、アルスター座長とクリスとトールさんが露払いをしながら森の奥へ進む。森の最深部に着いたらコアになってる邪霊や魔物を私とフローラが歌で浄化する。精霊の癒し歌は人に使えば怪我を治し、邪霊や魔物に使えば浄化をしてくれる強力な呪歌だった。
「やっぱり、天音はすごいですわ!一緒に歌うと力が後押しされるというか、威力がものすごく強大になります!こんな感覚は初めてですわ!」
フローラと一緒なら歌うのも怖くない。声を合わせるのは好きだ。私も一人の時よりも強くなってる気がする。
「ずいぶん歌えるようになったなぁ。いい調子じゃねえか!」
アルスター座長に褒められた!嬉しい!
「ありがとうございます!」
「あまねが歌うのは俺の前だけでいいのに……」
あ、なんかクリスが拗ねてる。今邪霊に触れられたら、そう思うと気が気じゃ無かった。
「ク、クリスッ!」
私は慌ててクリスの腕の服を掴んだ。一応、この森のコアの邪霊は浄化済だけど、まだ全ての邪霊が消えた訳じゃない。邪霊に触れられてもすぐにクリスを浄化できれば魔物化を防げるって、フローラから聞いた。だから、私はなるべくクリスから離れないようにしてるのだ。
「…………なんだ、やっぱり怖いの?」
あ、クリスの表情が和らいだ気がする。良かった。ちょっとした変化も見逃さないようにクリスを見上げてると、ちょっと戸惑ったような顔になった。
「クリス?どうかした?」
「……別に……」
あれ?クリスの顔が何だか赤い?どうしたんだろう?
「さあ、さっさと帰るよ!」
そう言ってクリスは私の肩を抱いた。
「だから、こんな所でいちゃつくなよお前ら……」
アルスター座長が呆れたように言った。
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