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11/27

再び

来ていただいてありがとうございます。


目が覚めたらすぐそこにクリスの顔があった。

「……っ!」

「おはよう」

がばっと起き上がって壁まで後退った。

「あ、え?えーと?ど、どうして……?」

クリスがベッドの上に手をついて近づいて来る。

「覚えてない?昨夜の事」

「えーと、邪霊を浄化した……かな?」

「うん。それから?」

もうほぼベッドの上にクリスが乗っかっちゃってる!これはちょっとまずいのでは?


「えっと、あ、アニスさんとジェスさんを見送って……」

思い出して、少し落ち込む……。

「あの本屋の女の人は、亡くなっていたんだね」

クリスの動きが止まった。私はクリスにアニスさんとジェスさんに起こったことを説明した。


「そう、そんなことがあったんだ。それであまねは約束を破って外へ出たんだね」

うわ、クリス怒ってる?笑顔なのに怖いんですけど……。

「ご、ごめんなさい……」

「まあ、あまねのおかげで助かったけどね」

あれ?あんまり怒ってない……の?そう思って安心した次の瞬間、クリスが壁に手をついて私を閉じこめた。


「あの時の言葉は?覚えてる?」

「え?」

「『私のクリスに触らないで』って言ってくれたよね?」

「ええっ?私、そんなこと……?」

言ったかな?えーとえーと?思い出せ、私っ!

「嬉しかったよ。俺達両想いだったんだね」

クリスの顔が近づいて来る。私は両手でクリスの胸を押し返した。


「ちょっと待って!え?両想いって……」

「あれ?言ってなかったっけ?俺はあまねが好きだから、王宮を出て旅に出たんだよ」

「そ、そんな……」

「そんな顔しないでよ。大丈夫。元々あんな所にずっといるつもりは無かったんだ。目的があまねを探すことになっただけなんだよ。あまねが気にする必要なんてないから」

「でも……」


「……あまねは俺が嫌い?」

私は首を振った。そんな悲しそうな顔しないで欲しい。小さな王子様の顔が浮かんで何だか私も悲しくなる。クリスの手が私の頬に触れた。え?顔が近いよ?ちょっと待って……。私まだ、良く分からないよ……!


「あー、ゴホンッ!!」

「トールさんっ?!」

「ちっ」

部屋の隅にトールさんが立ってる。いたの?いつから?!いたんなら、止めてよ!あと今クリス舌打ちしなかったっ?王子様なのに。

「一応、女性の寝室に二人きりにする訳にはいきませんので……」

トールさん、顔真っ赤だ。

「トール、邪魔するなよ」

クリスがトールさんを睨む。


「それから、訂正させていただきます。あまね様は『私の』とはおっしゃっていません。『クリスに触らないで』とおっしゃっただけです」

「トール……覚えてろよ」

クリスはため息をついてベッドから下りようとした。私はホッとしてちょっと油断した。


「助けてくれてありがとう」

瞬間、頬に温かい感触。クリスに口づけられた。

「!っクリスっ!」

「覚えておいて。俺はあまねの気持ちがどうあれ、遠慮する気はないから」

そう言って笑ったクリスはちょっとだけ小悪魔っぽかった。









街を歩いていると、何だか前と違う感じがした。視線を感じる。アルスター座長に頼まれて買い物に出たんだけど、なんだろう?うーん気のせい?リストを見ながら買い物を済ませると、街の噴水広場で小さな女の子に声をかけられた。


「お姉ちゃん!これどうぞ」

女の子は手に持った小さな花束を渡してくれようとしてた。

「私に?」

しゃがんで女の子から花束を受け取った。

「お姉ちゃん、ありがとう」


そう言うと女の子は走っていってしまった。向こうの方でお母さんらしき女の人と手を繋いでる。頭を下げる女の人と手を振る女の子。私も手を振り返した。

「なんだったんだろう?」

このお花、もらっちゃっていいの?

「綺麗……」

お花を貰うなんて初めてかも。良い香りがしてる。お花を貰うのってこんなに嬉しいんだね。でも何で?


お屋敷に帰って、アルスター座長に話したら、

「あまねは、英雄だからなぁ」

って笑ってた。何の事?そして次の日から、お花がたくさんお屋敷に届けられるようになった。綺麗なのは良いんだけど、これはちょっと多すぎ……。屋敷のみんなと手分けして花瓶に活けてお屋敷中に飾って回った。


「ああ、花の女神みたいだ。あまねは花も似合うね。そんなに嬉しかったんなら、俺がいくらでも花を贈るよ」

クリスが何かとんちんかんな事言ってるのは取り敢えず無視した。だってすっごく大変だったんだ。







お花騒ぎが収まってきた頃、アルスター座長のお屋敷に意外な人が訪ねて来た。

「お久しぶりです。アルスターさん、トールさん、クリス様っ!」

パーティーを抜けた金髪美人のミルドレッドさんだ。


ミルドレッドさんは、クリスに近づくと親しげに話しかけ始めた。以前の事が無かったみたいに……。

「私、やっと分かったんです!クリス様は私のこと試してたんでしょう?やっぱりクリス様のこと一番理解出来るのは私しかいないと思います。だから戻ってきたんです!」

ミルドレッドさんは一方的に話してるけど、クリスの顔はどんどん無表情になっていく。


「おまえ、パーティーに戻るつもりなのか?」

アルスター座長が顔をしかめてる。

「ええ!私がいないとサポートできる人がいないでしょう?それとも、もう誰か役に立ちそうな人が入りました?」

ちらりとこちらを見るミルドレッドさん。どうせ私は何の役にも立ってないですよー。


「必要ない」

クリスの冷たい声がミルドレッドさんの言葉を遮った。

「前にも言った通り、これからはそんなに危険な場所へ行くことはない。それに俺にはあまねがいれば十分だ」

クリスは言いながら私の肩を抱いて私を見つめる。顔が熱い……。思わず顔を伏せてしまった。


「そうだなぁ。俺もそろそろ、一座に戻ろうかと思ってたんだよなぁ」

とアルスター座長。

「私はクリス様に従います」

と、そっけないトールさん。あれ?何だかみんな冷たすぎない?ずっと一緒だった仲間なのに。


ミルドレッドさんは焦り出した。

「ちょっと待って下さいっ!ご存知無いんですか?クオーツ王国の聖女様が改めて世界の危機を予言されてるんですよ!力あるもの達は立ち上がって欲しいって!」


「俺達には関係ない」

クリスは冷たく言い捨てて、私を連れて応接室を出た。

「ク、クリスっ、いいの?せっかく戻ってきてくれたのに」

「いいんだ」



応接室を出る時に見えたミルドレッドさんは、こちらをっていうか私を睨んでるみたいだった。






ここまでお読みいただいてありがとうございます。

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