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高校生からはじめる地球侵略  作者: 佐馴 論
第4章 青い光の誘い
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来る


 4人の特殊部隊戦闘員は倒れて身動き一つ無い。

 足元でうつ伏せになったゼニスはわずかにもがいているが、彼の腕から注入された麻酔が意識を奪うまで間も無い。


「星降さん、ご協力感謝します。それにしても、演技がお上手ですね」

「ち、違うよ!レオルくんの演技が凄かったから、本当に自分が差し出されるかもって……」

「事前に打ち合わせていたでしょうに」


 私は右目のコンタクト端末の録画機能を一度切る。

 その瞬間、カナコが能力を解いて姿を現した。自分の身体、及び触れている物体を一時的に“透明化”する能力――サーモグラフィーや電磁レーダーでも存在を追えなくなるほどのステルス性能は、非常に便利な能力だ。


「カナコちゃん、本当に透明人間みたいだね」

「星降舞依。さっきも言いましたが、私のこの力は『インビジブル=マン』といいます。レオルさまに名づけて頂いた、格好良い名前があります」

「カナコ……余計な情報です」

「小さい頃のレオルさまが自信満々につけてくれたのです。きちんと言わせて下さい」


 顔面が火照るような妙な感覚を覚えるが、それはさておき。


「あぐ……があ」


 麻酔は全身に回っているはずだ。だがゼニスは腕を震わせて、今にも上体を起こそうとしていた。その強靭さ、いや諦めの悪さは一体どこから湧き上がってくるのだろうか。


「出て……い、け」

「我々は何も、地球人を皆殺しにするつもりはありません」

「だ、まれ……ケダモノ、害虫……!!」


 眼を剥いたゼニスの顔面は、途方もない恐怖に震えていた。彼はまるで、未知の怪物を前にしたように、私の存在を全身で拒絶していた。だが幾ばくもしない内に、私に手を伸ばしたまま意識を失った。


「レオルさま、彼はどのように利用するのですか?」

「……全ての記憶を書き換えます」


 私は膝をつき、ゼニスの頭に触れる。


「生まれてこのかたの記憶を全て消し、『自分はゲルマ星人だ』と思い込むような記憶に書き換えます。彼は同胞のため、全力で地球侵略に加担することに――」

『レオル!急いで離脱しろ!!』


 インカムから、グラハムの大声が耳を突いた。

 私は動きを止め、立ち上がる。


「自衛隊の援軍ですか?」

『こちらも、それに自衛隊も、壊滅してる!……あれは、何だ?!』


 グラハムが普段の冷静さを失っている。

 何が起きている?


『ぐあぁぁ!!!』


 耳を刺すような高音、グラハムの叫び、爆発音。

 爆発音はインカムどころか、倉庫の外からも聞こえてくる。


「グラハム」


 応答は無い。


「レオルさま、脱出を――」


 カナコの言葉が途切れる。彼女と、そして星降の視線が、倉庫の小さな窓に奪われていた。


「青い……光……」


 銃を向けられても取り乱さなかった星降が、歯をがちがちと鳴らしながら座り込む。


「いやぁっ!!」


 星降の豹変に構っている時間はなかった。空気を揺るがせるような低い機械音が唸り、徐々に近づいて来ているのだ。


「来ないでっ!!!」


 星降の悲鳴と共に異変が起きる。倉庫の天井の一部分がオレンジ色に発光し始めたのだ。その円型の光は間もなく、とてつもない熱気を放った。


「二人とも、こっちです!」


 だらしなく動かないゼニスを引っ張りながら、カナコたちを呼ぶ。

 カナコが星降を立たせようと腕を引いたが、遅かった。

 天井がどろりと溶かされ、高温の泥のような残骸が地面に向かって落ちてくる。冷たい地面が熱で焼かれて煙が上がる。カナコたちの姿はあっという間に煙の向こうに消えた。


「いやぁぁぁっ!!!!」


 星降の悲鳴。しかし熱気で近づくことが出来ない。


「レオルさま!」


 かろうじて一人飛び出してきたカナコが、私を押し倒した。

 その瞬間に煙の向こうから火の手が上がる。

 そして、青い光が炎に降り注いでいた。


「“あれ”は……どこにいる?」


 光の柱をゆっくりと降下してくる異形の影。

 その声には聞き覚えがあった――ゼニスの密偵が、死に際に録音した何者かの声だ。

 そして天井が融解した穴の向こうには、青い光を放つ円形の飛行体が浮かんでいる。

 地球人はあれを“UFO”と呼ぶ。





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