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第五十三話「二者面談→三者面談」


「さて、何を話してくれるのかしら?」


 二人そろって向かい合うようにして椅子に腰かけた後、話を切り出したのはルイの方であった。その問いに対して、腕を組みながらツェッペリンが返した。


「単刀直入に聞こう。お前は魔族をどう思っている?」

「は?」

「魔族をどう思っているのか、と聞いているのだ」

「え、ええと」


 予想外の質問に思わずどもる。どう、と言われても、魔族に対してなにがしか特別な感情を抱いた事は無い。


「……これと言って、特に無いかな」


 咄嗟の嘘もつけない自分が恨めしかった。だがツェッペリンは顔色を変えることなくルイに言った。


「そうか。ではなぜお前は、魔族と戦っているのだ?」

「え?ああ、それはもちろん」


 それに対する答えは用意できた。怯むことなくルイが答えた。


「降りかかる火の粉は払うだけよ」

「なに?」

「私が何もしなくても、向こうから勝手に私の所にやってくるのよ。夜中に町中を回ってるだけでね」

「……」

「で、前に聞いた話なんだけど、何でも私が強いから魔族連中は私に挑戦したいんだって。まったく、人の都合も考えてほしいわね」


 ガットと協力関係を結んだから、とは答えなかった。あれはあくまでも利害一致の上での共闘。別にガットの傘下に入って積極的に魔族と戦うつもりはないのだ。

 襲われるのが嫌なら変身しなければいいじゃないか、と考えた日もあった。だがガナリを使った魔族との会話――本当は町を攻撃するつもりだったという言葉を聞き、自分がいなくなれば再び町が攻撃目標にされるのではないかと危惧したのだった。

 正義のヒーローを気取る気は無かったが、自分が動かないせいで関係ない人たちが襲われると言うのは寝覚めが悪い物だった。結局、そのために変身を続けて魔族の眼を引き続けた結果、複数の魔族に一斉に襲われると言う事態になってしまったのだが。


「特に目的とか使命とかはないわね。強いて言うなら、邪魔してくるのが鬱陶しかったから」

「そんな理由で戦っていたのか?」

「だって、やらなきゃやられるんだもん」


 ガナリの件と言い、リンチまがいの集団戦法と言い、最近の魔族の攻撃は過剰に過ぎるきらいがあった。


「黙ってあいつらに殴られ続けるのとか、私は御免よ」

「そうか……あいつらの方から襲ってきていたのか……」

「さて、今度はこっちの番よ」


 顎に手を当てて考え込むツェッペリンに対してルイが言った。


「あなた、いったい何が目的なの?どうして私を攫うような真似をしたの?」

「言わなければフェアではない、か」

「当然よ」


 歌は既に止まっていた。ラジカセはその機能を停止していた。


「教えてちょうだい」

「……わかった。私の目的を教えよう」


 そうしてまっすぐにルイの方を見つめながら、ツェッペリンが言った。


「解放だよ」

「は?」

「魔族たちの解放だ」

「解放って……」

「文字通りの意味だ。そして私は、そのための戦力を集めている」


 解放。

 戦力を集める。

 またしても予想外の展開だ。この場合は、果たしてこの返答を予想できなかった自身の想像力の貧弱さとこの状況に自分を引き込んだ運命の意地悪さのどちらを恨めばいいのだろうか。ルイの頭の中が真っ白になるが、すぐに我を取り戻して半信半疑の体で言った。


「それ、本気で言ってるの?」

「もちろん本気だ。しかし私だって、最初からこんな考えを持ったのではない。レビーノにいた時には、このような考えなど欠片も浮かんでこなかった」

「レビーノ?じゃあやっぱりあなたは」

「言っておくが、私は純粋な魔族ではないぞ。まあこの辺りの話はややこしくなるから今はしない。今重要なのは、私が魔族の解放を目的としている事だ。違うか?」

「自分で言うか……まあ、いいか」


 呆れたように呟いてから、アイがツェッペリンに言った。


「とりあえず、本気なのね?」

「ああ。本気だ」

「それで、そのために私の力を借りたいと」

「察しが良いな。その通りだ」

「ちょっと待ってよ。まだ手伝うって言ったわけじゃないんだから」


 嬉しそうに身を乗り出したツェッペリンに開いた両手を突き出してルイが制止する。それを受けて落ち着きを取り戻したツェッペリンが元いた椅子に座り直すのを見てから、ルイが彼女に言った。


「それで?参考までに聞くけど、具体的に私は何すればいいのよ」

「ああ。それはな」

「面白そうな話だな。その話、是非とも聞かせてもらいたいな」


 だがそこで突如聞こえてきた男の声に、ルイとツェッペリンが会話を切って同時に声のする方へと首を動かす。そしてその声のした方――倉庫の入口の内側の前に、そこを背にして鷹丸が腕を組んで立っていた。


「鷹丸さん!」

「ルイ、どうやら無事なようだな。何よりだ」


 嬉しそうに顔を綻ばせるルイに、笑みを浮かべながら鷹丸が返す。それに対して、ツェッペリンは眉根を

寄せて鷹丸を不満げに睨んでいた。


「部外者を呼んだ覚えはないんだけど」

「もう来てしまったのだ、諦めろ。それに第一、お前がこのような拉致まがいの事をしなければ、俺もこうして出張る事も無かったのだ。自業自得だ」

「……」

「それとも、今ここで俺を追い出してみるか?力づくで」

「……やれやれ」


 やがて諦めた様にツェッペリンが呟く。そして二人を交互に見やり、額に手を当てながら言った。


「まあ、人手が多い方が捗るのも事実か」

「では、教えてもらっても大丈夫かな?」

「わかってるよ」


 鷹丸の言葉にツェッペリンが気怠そうに返す。


「話すよ、話す。何をすればいいのか、全部ね」


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