第四十三話「リベンジマッチ」
「確認したよ」
「確かか?」
「ああ。例の強化型だ。お前の言った通りの」
「そうか」
「それと、もう一人。お前が言っていた例の奴も一緒だ」
「戦っているのか」
「ああ」
「――行くぞ」
「割り込むのかい?」
「俺の目的のためだ」
「……そうかい」
四方八方、人目のつかない所で二つの影が躍り狂う。
ルイと魔族は横一線に並びながら、ビルの屋上を方々飛び回っては激突を繰り返していた。当然ビル毎に高低差は存在していたが、山の井ビルのように一部の極端な物を除けば、そこにあるのはどれも似たり寄ったりな高さのビルが殆どであった。
《いいか?勝つためには、まずは武器の特性を知るんだ》
屋上から屋上へと跳び回りながらルイの構えた銃口が火を噴き、弾丸の雨が魔族に向けて降りかかる。だがそれは狙いの定められていない、魔族を中心に広範囲にばら撒かれた薄い物だった。
《アサルトライフルの最大の武器は連射性だ。その連射力を利用して弾幕を張り、敵を牽制するのが一番の目的だ。まずは牽制だ、点ではなく面で攻めろ。わかったな?》
隼の声がルイの耳に響く。その通りにわざと狙いを定めずにして弾をばら撒き、魔族を『面』で追いつめる。
そして魔族は石つぶてを相手にするかのようにそれを片腕で振り払い、弾が打ち止めになった瞬間を狙って一気に肉迫する。
反撃のピンチ。だがルイは――隼はそれを狙っていた。
そもそも、自分から撃つのを止めたのだ。
《ショットガンが一番活きる距離は、言うまでもないことだが零距離だ。ギリギリまで引きつけて、鉛玉でミンチにしてやれ》
一直線に突っ込んでくる相手ほど御しやすい相手は居ない。タイミングを合わせて回避してもいいし、その勢いを殺しきるだけの火力を炸裂させて返り討ちにしてもいい。
彼らは反撃を選択した。
《怖がるな。お前はやれる。どれだけ奴の身体が、顔が目の前に迫ってきても、決して逃げるな。お前ならやれるんだ》
そう隼が静かに告げる言葉がルイの心に深く沁み込んでいき、その魂に勇気を与える。『仲間』の言葉を受け、ルイは怯むことなくその魔族の突進を待ち受けていた。
そして魔族の突進に合わせて、ルイがAKを溶かしてレミントンに持ち替える。そして魔族がすぐ目の前に迫った瞬間を狙い、銃口を鳩尾よりやや遠目の距離に置いて引き金を引く。
轟音が鳴り響き、その直後に魔族が背中側に弓なりになって後方へと吹き飛ばされていく。その隙を逃すことなく、ルイがレミントンを溶かしてパイファー・ツェリスカへと姿を変貌させる。
「吹き飛んだ!」
《準備は!?》
「もちろん!」
隼の言葉にルイが叫ぶ。その照準はぴったりとその魔族に向けられていた。
《やれ!》
隼の怒号に銃声が重なる。さらにルイは一発目を発射した直後に間髪を入れず、続けざまに引き金を引いた。
パイファー・ツェリスカはその規格外の威力と引き換えに、例え銃の扱いに慣れた人間でさえ匍匐姿勢のような格好で撃たねばならない程の反動を射手に与えるふざけた銃であった。少なくとも、後ろに吹っ飛ぶことなく仁王立ちでこれを撃てる人間はまず存在しない。
だが、ルイはそれを立ったまま、しかも連射する事さえできた。反動や腕にかかる負担も全くない。これは彼女の持つ銃が全て魔力によって錬成された物だからである。故にルイはその規格外に巨大な拳銃を仁王立ちで扱い、更にそれを立て続けに五連射することも可能であったのだ。
像さえも撃ち殺す弾丸が、容赦なく魔族の身体に撃ちこまれていく。しかもあの時のように一発ではない。五発もの弾が楔のように魔族の身体に直撃していく。
無事のはずがない。一発食らうごとに魔族の顔が苦痛に歪んでいく。だがそれら全てを体で受けてなお、その魔族は意識を保っていた。
魔族が顔を上げ、ルイと目が合い、魔族が目を光らせる。
ルイの視界から消える。
「その程度か!?」
ルイの背後から声が響く。
背筋が凍る。やっぱり怖い。
「速い!」
『またこのパターンか!』
だが言いようのない恐怖を感じながら、ルイは予め変異させていたAKの銃口を脇の下から背後に向けていた。
「見えてんのよ全部!」
恐れを払拭するように叫びながら引き金を引く。がら空きとなっていた魔族の胴に弾丸の嵐がぶち当たった。




