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職業【先導者】悪魔が召喚に応じる

「なぁ、フラムの職業ってなんだ?」

「私か? 『先導者』だ。他のプレイヤーのスキルを複製することが出来る」

「知らなかったな。お前、それ使ってないだろ」

「当たり前だ。人の努力を盗んで勝っても面白くないだろ」

「それ、レッカさんに言えますか……」

「レッカはドッペルゲンガーだ。複製するのがあいつの役割なんだよ」


 第六層のボス部屋は、大きな広間であった。

 五十メートル以上の木々に囲まれていた。奥には一輪の花。


「あれが急所だ。触れればすぐに倒せるだろう。フラム、行ってくれるか?」

「任せとけ」


 フラムは不敵な笑みを浮かべる。目の前の敵との戦闘が楽しみなのだ。コロンが隣で引いている。

 翼を広げて滑空を始め、向日葵のそばまで着く。


「寝坊なんて階層ボスらしくねぇな」


 軽口を叩きながら、双斧を振りかざす。狙いはただ一点、向日葵(ひまわり)の中心部。振り下ろされた斧が、確かに命中した。

 その瞬間だった。

 向日葵の花弁が、ゆっくりと色づく。まるで目覚めるように。

 直後、無数の魔弾が放たれた。空間を埋め尽くすほどの密度で、フラムへと殺到する。



 触域葵禍樹(グリーン=インベイド)

 HP 300/300 MP 100/100



「ハハッ!! 予想通りだ!」


 フラムは叫びながら身体を捻る。

 翼を細かく動かし、軌道をずらす。最小限の動きで回避を繰り返すその姿は、もはや反射の域にあった。

 だが視界が遮られる。

 地面――いや、空中から伸びるそれは、草の根。触手。

 無数の緑が、壁のようにフラムの進路を塞ぐ。


「クソッ!! 『魔族覇気』!」


 全身に力がほとばしる。

 振るわれた双斧が、触手を切り裂く。

 硬さはない。抵抗も薄い。

 まるで雑草を刈るかのように、簡単に断ち切れる。

 だが、次の瞬間には、すでに新たな触手が伸びていた。

 切っても、切っても、尽きない。増殖するかのように、視界を埋め尽くしていく。


「ちっ……!」


 前進は不可能と判断する。

 フラムは即座に後退した。

 翼を打ち、距離を取り、二人の元へと戻る。


「こっちもかよ……!」


 合流した先でも、状況は同じだった。

 二人も、目前に迫る触手を切り払うので手一杯になっている。

 攻めるどころか、防ぐだけで精一杯。

 視界は緑に覆われ、空間そのものが敵に変わったかのようだった。

 攻撃を仕掛けるが、ダメージを与えている感触はない。


「消耗戦に持ち込まれたか」

「お前は! どうやって戦ったんだ!?」

「あの向日葵にダメージを与えるんだ」

「さっきからそれしか言わねぇな……」

「ま、まずいです!!」


 コロンは既に『竜人化』を使用していた。

 身体に鱗が生え、動きが重くなっていた。しかし彼は苦い顔をする。

 持ち手の長い斧を振り回すコロンは、多数の触手による攻撃を受けきれずにダメージを受ける。


「ソロモン! 助けてやれ」

「駄目だ! 俺はもう手一杯だ」


 ソロモンも『東之王(バアル)』を召喚して戦っていた。あたりに広がる草の根を刈り取るので必死。

 コロンと違って余裕はあるが、彼に手を貸すほど腕を余らせていない。

 この状況を打開できる策を練らねばならない。


「おい! どうすんだ!!」

「僕に策はありません!」

「てめぇで考えろ。俺は斬るだけだ!」

「使えねぇ野郎共だな……」


 フラムはジト目をした。

 しかしこの状況では触手を切るので手一杯。

 ボスにダメージを与えなければ、この戦いに決着は付かない。

 唸っていると、野次が飛ぶ。


「おい。こういう時こそ『先導者』だろ?」

「あぁ? なんだって?」

「『先導者』の能力はプレイヤーのスキルを使うだったろ? 俺には『悪魔召喚』がある。手が増えるぞ」

「駄目だ」

「あぁ?……なんでだ」


 お互いに嫌悪の表情を浮かべる。

 ソロモンは自分の体力を回復する魔法を唱えながら、大剣を振る。

 手に汗を覚えて、自分が焦っていることに気がついた。

 フラムに次の言葉を煽る。


「どうせ俺のスキルはレベルを上げてゲットしたポイントだ。努力なんてしてねぇ」

「駄目と言ったら駄目だ。それはお前の経験であり思い出だ。それを奪うくらいなら――」

「奪うんじゃね。複製だ。いいから四の五の言わずにやれ」


 フラムは思考を巡らせる。

 しかしそれよりも早く触手が伸びる。のんびりと思考に費やす暇はなかった。


「クソッ! 負けたらてめぇのせいだからな」

「なんだと……?」


 フラムは蜘蛛の糸を生やして応戦する。

 しかしその糸すらも破壊される。

 彼女は感覚でスキルを使う。だからこそ、自分以外をかばうのは苦手だった。

 ソロモンの方を見ると、こちらを睨みつけてるのが分かる。


「さっさとやれ。あんたがどんな悪魔を召喚するのかも気になる」

「『東之王(バアル)』じゃねぇのか」

「それは俺と契約してるんだ。別のと契約することになるだろう」


 そう言ってソロモンは攻撃をやめてこちらへと走ってくる。

 なんて諦めの悪い男なのだとフラムは嫌悪感を抱く。しかしその心意気は好きだった。

 フラムはソロモンに触れる。


「『悪魔召喚』」


 ソロモンは剣を握ってフラムを庇う。

 そして悪魔は召喚に応じる。


「……っ!」


 ――刹那。三人は動きを止める。

 圧倒的な存在感に、皆は息を止めた。


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