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職業【読者】新たな仲間に威嚇する

「ナギ、こっちは妹のツムギだ」

「……」

「お、おう。俺はアント。こっちの猫又はニーナで」

「イトマ! 人間だよ。よろしくね!」


 神殿の中層で、二人の兄妹がこちらに声を掛けてきた。

 迷子になったようで、階層ボスの所まで向かいたいらしい。


「初見は二人で探索するほうが楽しいに決まってる。俺達の邪魔を――」

「まぁまぁ! 人数が多いほうがいいでしょ?」


 イトマがニーナの口を閉じさせる。兄妹は見向きもしない。

 二人の服装はいわゆる軍服を着用していた。黒い生地にナギは暖色系のラインが入っている。ツムギには寒色系の飾りがついていた。

 兄妹の近くには、火が浮いていた。灯籠のような飾りが上下にあり、火を追従するように浮いている。


「君たちはなんの種族なの? 不思議な火だねぇ」

「リーダーに言うなと言われている」

「……」

「ほう、立派なリーダーだな。もっと喋りやすくしてやろうか?」


 独特の間で話すナギに、苛立ちが勝つニーナ。

 ツムギに関して言えば口を全く開かない。表情もゼロで、まるでNPCのようだ。

 先程までは見知った三人で行動を共にしていたため会話が弾んでいた。

 しかし新加入の二人がいることによって会話が途絶える。

 アントとニーナは自分のペースを持っているため無言でも良かったが、イトマはこの無言の空間に気まずさを感じている。


「な、ナギはどうしてここにいたんだい?」

「階層ボスを倒すため」

「そうなんだ! 実は僕達もなんだよ! ボスがいる場所まで着いたら、一緒に戦ってくれるかい?」

「あぁ」


 無駄な話を嫌うのか、ナギは淡々と応えると口を閉ざす。

 話は弾まない。おどおどと話すイトマに、ニーナは表情を曇らせた。


「話すならまともな話をしろ。ほら、不穏な空気を感じ取ってモンスターが寄って来やがった」

「やるぞ、イトマは回復役として下がってろ。二人は、戦えるか?」

「あぁ」

「……」


 二人は頷くと、準備を初めたアントよりも先に走り出した。目線の先には光晶兵。


「あ、おい! てめぇら、俺たちよりも出しゃばっていいと思ってんのかよ! 『猫騙し』」


 ニーナはナギの背後に立つと、本を持ち魔法を放つ。

 最近知ったことだが、あの本は魔法を放つ為の武器であり、紙をちぎらなくても魔法が使えるようだ。

 彼に続きナギは武器を握ると、光晶兵に振りかざす。


「獲物はナタか」

「服の中に隠してやがったな。生意気なガキだ」

「大きい服だよね。体の体型隠してるみたい」

「軍服はそういうもんだ。俺もFPSのときには着ていたが、動くには向いていないな」

「それなのにナタか……変な野郎だ」


 ナタは光晶兵の急所に直撃する。

 スピードを増して打撃を繰り返すナギに、ニーナも剣で加勢する。

 二人の打撃は光晶兵の関節目掛けて適切に振り下ろされ、あっという間に戦闘が終了する。

 アントは銃を構えたものの発砲することはなかった。思わず声が漏れる。


「なかなか、やるな……」

「……」

「ボス戦もその調子でやってくれよ。コイツ等は頼りにならねぇからな」

「ニーナ……余計なことは言わなくていい」

「ほら、ダメージ受けてないかい? 回復するよ」


 ナギはイトマの方を見ると、腕を差し出した。

 よく見ると、腕の部分に赤い腫れた後が見える。いつの間にか攻撃を食らっていたみたいだ。イトマは暇を注入する。


「時間が経てば次第に回復する」

「……回復速度の上昇、加速してる?」

「そうだよ、よく分かったね」


 アントはニーナと目を合わせた。

 ニーナも同じ感情を抱いていたようで、アントの目を見ると、苦笑する。


「この先、敵が増えるかもしれねぇ。ダメージを受けるのも程々にしておくんだな」

「ニーナ、早速だ」


 アントの目線の先には戦闘音を感じ取って現れたモンスター。

 彼らは武器を構える。

 ニーナが誰よりも早く剣を構えて走り出した。


「次はこの俺が……っ!?」


 その瞬間、発砲音が轟く。長い髪が揺れた。

 アントの銃かと思いニーナは思わず振り返るが、銃の正体はツムギの握ったスナイパーライフルであった。

 彼らが驚いたのは銃声ではない。

 その一発で、光晶兵が光の粒子とともに消えていたからだ。

 アントの血の気が引く。


「やるようだな、妹さんは」

「……」

「ニーナ、僕達は仲間だ。そうやって威嚇するんじゃない」


 彼の猫目は、ツムギの目をじっと捉えていた。

 毛が逆立ち、威嚇音をならすが、ツムギは動じない。

 銃をしまうと、腕を軍服の中に隠して歩き始める。

 ナギもついていくため、三人も歩を進めた。


「道、教えてほしいんじゃなかったのかよ」

「この先は一直線」

「あぁそうだな、ナギさんの言う通りだぜ」


 ニーナは舌打ちをした。

 イトマは苦笑いしながら後ろをついていく。

 空気は良好でなかった。しかし五人の関係は先のボスとの戦闘で明確となる。

 ナギは、静かにナタを握った。


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