職業【遊撃手】強者を眼前に思考を漏らす
第六階層の最深部へと向かうため三人は歩を進めていた。
「さっきの勝負、勝敗はついてないでほんとにいいんだな」
「もちろん。悪かった、あれを使うつもりはなかったんだが……」
「フラムさんが珍しく手も足もでていなかったですね」
ソロモンが使用した『明渡』は悪魔に体を預けるスキルだった。
『東之王』はソロモンと契約した悪魔。その能力は身体の透明化と強大な力である。
フラムは透明の悪魔との戦闘に苦戦して敗北したが、ソロモンも意識を『東之王』に預けていたため勝敗はなしということに決めた。
「せっかく新たな装備にしてからの戦いだったのに、悔しいぜ」
「買ったんですか?」
「いいや、イベントの景品だ。私は十位だからな、それ相応の防具をもらったってわけよ!」
フラムが装備していたのは赤を基調とした鎧である。
黒のラインが急所を覆うように飾られているが、体を動かしても邪魔にはならない。空をとんでも鎧は軽く違和感がなかった。
頑丈さは『濁流殻禍魚』の鱗を超える。ソロモンの打撃を無視して攻撃を出来るのはこの装備への信用でもあった。
「衝撃は吸収できないから、そこは私の技量だけどな」
「空を自由に飛び回れるだけ優秀だ。フラムはリアルでも羽が生えてるのか?」
「そんなわけねぇだろ、私は天使かよ……感覚だ、なんとなくこうすりゃ飛べるって分かるんだよ」
「天才肌ですよね。僕なんていまだに戦い方が定まってないんですから」
腰に据えたパチンコを撫でて彼は話す。
コロンの戦い方は固定化されていない。強いて言えば、パチンコで敵を状態異常にさせてから近距離で叩く戦い方をする。
しかしそれは『カリフラワー』戦で逆転されてからは、信用できなくなっている。
トトのアイテムを無駄にしないようにするための立ち回りだが、トトがいなければ有効的な戦い方が分からず悩むコロンであった。
「そんなこと言ったら私もだ。カリナが毎回新しい戦いをしやがるから、それについていくので精一杯だ」
「同感だ。うちのチームは全員血の気が多いからな、それでもなんとかなっている。だから戦い方なんてこれから模索すればいい」
「そ、そういうもんなのかな……」
フラムに頭を撫でられたコロンは、口をすぼめた。
コロンの髪をくしゃくしゃにする。少年と目が合うと、とっておきの笑顔を見せつけた。
「どちらかといえば、私はあんたの戦い方が面白いと思ってんだ」
「え……? どうしてですか?」
「あんたの職業【遊撃手】は、武器を変えれば変えるほど力が増すんだろ? 私は武器が固定だからな、応用力があって面白い」
「応用力で言えば、コロンは戦い方に安定度があるな。勝つための土俵を作ってから戦っている」
「……」
コロンからすれば自分は思うがままに戦っていた。
顎に手をおいて戦闘方法を考える二人からは強者の風格を感じる。
「確かにさっきの戦いでも状態異常の強さを実感した。さらに逃げられないようにしておけばあれでも勝てたな」
「俺は反省だ。相手の手段を潰してから戦うのはコロンの良いクセだと思った。学ばせてもらうぞ」
「助かるぜ、コロン!」
「え、あ……はい……」
自分はなにもしていないのに、二人は自信を付けた様子で鼻を鳴らす。
(どこまで強くなるつもりなんだ……)
コロンは近距離最強の戦いへの執念を学び、若干引いていた。
彼の戦い方は三種類。
遠距離への状態異常と、中距離の属性攻撃、近距離の重力型攻撃だった。
どれも『竜人化』を行うことによって効率よく戦うことが出来る。
具体的な方法はまだバレていないが、時間の問題であることを察していた。
「フラムさんは、魔人なんですよね」
「種族的には、な。それがどうした?」
「竜になるつもりは、ありますか?」
「……またいつかな」
目の前には第六階層の最深部。
森林の中でも開けた空間。奥にある大木のそばには魔法陣。
空には大きな一輪の花。ひまわり。
第六階層でのボス戦は、大乱闘が予想された。




