職業【魔道士】魔法を学び始める
第五階層の空を駆ける四人の姿は、地上で立ちすくむ泳げないプレイヤーを驚愕させていた。
その正体はメイトの力で浮かぶソートに、『空中歩行』で宙を走るカリナと、『念動』で掴まれた白目を浮かべるエレンであった。
「討伐対象発見。カリナ」
「う、うん!」
薄い羽根を広げて空を飛ぶ魚型のモンスターが五体。
胴は長く青白い。目は赤く、切り裂くような斬撃の魔法が、翼から放たれる。
滑空アカトビ
HP 100/100 MP 100/100
体力が多いのに群れて行動しているので、ダメージ覚悟で攻撃をしなければならない。
カリナはスタッフを構えると、魔力を込め始める。魔法の安定度を高めるため魔法のイメージをする。
だが彼女は魔法のイメージが苦手なため、詠唱で補う。咄嗟には詠唱が思いつかずに、適当な語句を並べることになった。
「え、えーと、大地よ。怒れる力を貸し与え給え……? 『大岩魔打』!」
「エレン、あなたも」
「分かってるわよ! 稲妻よ、飛来する惨めなプランクトンを葬れ! 『大雷魔線』」
「私もやる!! いくよー!!」
カリナとエレンはそれぞれ一体ずつ、メイトが二対の魚を討伐する。
百ある体力を颯爽と討伐する姿に驚いていると、残った一体のモンスターが眼前まで迫っているのが分かった。
思わず剣を抜くと、『間合』の効果が発動し、魚は一刀両断になる。
「か、カリナもすごいわね……翠月刀に闇の力が……!?」
「ないよ……これは僕の力」
「そうです。そして、先程の中級魔法もあなた達の力。あの魚を一度で倒したのは称賛に値します」
「じゃ、じゃあ」
「しかし、魔力効率が悪すぎです。あなた達、必要以上の魔力を消費していますよ」
ソートの的確な指摘に二人は心にダメージを負う。
それも褒めてからの指摘なので言い返せない。二人は不満そうな表情を浮かべた。
「もしこれ以上難しいのであればもう少し優しくしますよ。どうしますか」
そう言われて二人は顔を上げた。
カリナはスタッフを強く握ると、魔力の調整を始める。
「僕は続けるよ。スキルに頼ったら駄目だって気づいたからね!」
イベント戦前、マゼランがカリナに会いに来た理由を彼女は考えていた。
そしてマゼランの戦い方をみて驚いた。
少女には隙がないのだ。少女は鬼であるため近距離攻撃が強い。
遠距離へは魔法を使って攻撃する。少女の魔法は数も威力も舐められない。
逃げていても必中のスキルを当ててくる。攻撃を与えようとも、体が透けて攻撃が当たらない。
そんな少女をみてカリナは理解した。それはスキルに頼らない戦い方だ。
(『魔法作成』だってスキルなんだけどね)
都合の悪いことには目を瞑るが、決して諦める理由にはならない。
それに続いてエレンも大杖を握る。
「私もやるわ! 最強の魔法使いになってやるんだから!!」
エレンの夢は世界を覆すほどの魔法を放つことであった。
単純明快、シンプルな夢だったが、それを本気で目指している少女の目を疑う大人はいない。
ソートはステッキを握ると、コツを伝える。
「魔法はイメージです。しかし毎回新たなイメージを浮かべては、掴んだ魔力の本質を取り逃すでしょう。大切なのは魔法出力とイメージを直結させることです」
「む、難しいこと言わないでよ!」
「エレンちゃんは魔法の構成要素、全部覚えてる!?」
メイトのサポートに、エレンは指を折って話す。
「ええっと……属性と、出力方法と、MPの量と、安定度よ!!」
「エレンは属性を毎回作成していますね。雷の魔法を作成してから、魔力を流している」
「もちろん! 私の稲妻の魔法は、闇を切り裂く奇跡の魔法だもの!」
「それが駄目です。それだと魔力が安定しません」
「わ、私からアイデンティティを奪おうっていうの!?」
エレンがベソを掻くがソートは無視して話す。
「そんなに雷や氷の魔法が使いたいのであれば、属性を杖に刻印してからにしましょう」
「こ、刻印……?」
「貴方は火属性と土属性をかけ合わせる際に、魔力のロスと乱れが起きています。それが無駄なんです。大事なのは常に一定の魔力を流し、思い通りの規模の魔法を放つことだと思いませんか」
「お、思います……」
「ということで貴方の始めの課題は属性の刻印です」
ソートはカリナに目線を合わせると、複雑な表情を浮かべる。
「あなたは……安定度が圧倒的に足りていない」
「へ?」
「属性は今は土で固定しましょう。出力方法もそのままです。MPも大まかな調整はできています。しかしそれに見合った規模の魔法を放つことができていません」
「魔法のイメージができてないってこと?」
「えぇ、それなんですよ。普通ここで躓く人はいないのですが……如何せんカリナは頭が硬いので」
「うぐっ……おっしゃるとおりでございます」
メイトが励まそうと背中をさする。
しかし的を得たダメ出しに、カリナの精神はボロボロになる。
やる気以上のダメージを折ってカリナは顔を伏せる。涙が枯れたのは、一時間後のことであった。




