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ギルド【エレメント】世界を裂く紫電の残光

 トトが羽根を休めるように着地すると、そこにいたのはコロンとエレンの二人であった。

 二人は目を輝かせてトトを崇める。


「トト! すごいじゃん!! URが引けたんだね、僕はもう号泣しちゃったよ……」

「やはり天は我々の味方だったのよ!! 闇を創り、世界を断つ閃光を放つなんて、トトは救世主よ!!」


 二人の歓喜の声にトトは耳を赤くさせた。

 ボブの髪はちょうど耳を隠し、二人は称賛を止めない。

 やがて剣を握ったプレイヤーがエレメントを狙っているのが分かると、トトは詠唱する。


「【大火魔球(ヘルフレア)】」


 魔法体型はアントが撃つ魔法と同じである。しかし中身はまるで違っていた。

 URを引いたトトには上限を超えたバフがかけられている。今の少女であれば、最下位魔法の『火球』だけで大スライムを貫くことが出来た。

 コロンが目を見張って驚く中、エレンが興奮覚めやらぬ様子で話す。


「今のトトって魔法が二つ使えるのよね!? だったら私の【魔道士】の力で掛け合わせたら……」

「いいね、やってみよう」

「い、いいの!!?」


 エレンが鼻息を荒くさせる。

 魔法をこよなく愛する彼女の職業は【魔道士】であり、魔法と魔法を掛け合わせて新たな魔法を生み出すことが可能であった。

 彼女を筆頭に魔法の常識は一段階上がったと言っても過言ではない。その力は有数で、新種の属性を生み出せるものはこの世に数えるほどしかいないのである。

 トトが翼をはためかせ、地面から三メートル程の位置で止まると、エレンは杖を掲げる。


「いつでもいいわよ!! 私たちの力をこの世に知らしめて上げるわ!!」

「属性は火と、土だよね……上手くいくかな……」

「二人とも、失敗しないでよ!!」


 トトが手をかざすと、宙を漂う二本のスタッフが前へと躍り出る。

 鮮やかな焔をかたどった火のスタッフと、星の煌めきをかたどった土のスタッフである。

 双方が魔力をエレンに送り出すと、彼女は渋い顔をした。


「魔力が多すぎる……トト、どれほどの魔法を撃つつもり……!?」

「超位、辺り一帯のプレイヤー全員だよ」

「ほ、ほんとに!? だ、大丈夫! 闇の力を生み出す我が力があればこのくらい朝飯前よ……」

「待ってよ! 魔力が安定するアイテムもあるから」


 コロンが隣でエレンのサポートをする。エレンが掛け合わせた魔法を再度トトに送ると、二つのスタッフの合間に魔力の塊が現れる。

 紫紺の光を放つその魔力が鼓動を打ち始めると、トトは笑みを浮かべた。


「もうすぐだ、もう少しで……」

「やれる! 私は出来る子なんだから……」


 そうして脈打つ魔力の魂は、トトの眼下に納まると、光を放ち始める。

 エレンから重荷が外れると、コロンは口を開けて固まり、少女達は笑みを浮かべた。


「トト! かっこいいの期待してるわよ!!」

「いくよ」


 その魔力の球はトトが魔力を込めた途端に縮み始めて、そしてその場には一つの点。

 それを前方に送り出すと、雷雲立ち込め、世界は雨に覆われた。

 地面が電荷を持ち、空中から放電を開始するのは魔法の極意。


「【轟雷極大魔電界断ギガボルト・カタストロフ・ディバイド】」


 次の瞬間、世界が割れた。そして轟くのは、雷鳴。

 空を覆った雷雲が一斉に裂け、紫紺の閃光が網目状に地上へと落ちる。

 音は、遅れてやってきた。鼓膜を潰すような轟音。大地が跳ね上がり、立っていたプレイヤー達が次々と飲み込まれていく。

 鎧は砕け、盾は蒸発し、悲鳴は途中で途切れた。電界は円形に広がり、範囲内のプレイヤーを等しく裁断する。

 逃げようと背を向けた者も、跳躍した者も、回復魔法を唱えた者も例外はない。

 光が収まった時、そこに立っている者はほとんどいなかった。

 地面には黒焦げの痕だけが残る。

 エレンは震える指で杖を握りしめたまま、頬を紅潮させる。


「ふ、ふふ……見た? 見た!? 今の、完全に終末級よね!? 闇と雷の交差点! ああ、最高……! これが私の魔道……!」


 片目を隠しながら、わざとらしく空を仰ぐ。


「我が名は災厄を紡ぐ者! 世界は今、私たちを恐れたわ……!」


 鼻息は荒く、満足げに笑っている。

 一方、コロンは。

 ぽかん、と口を開けたまま固まっていた。


「……え?」


 視界の先に広がる焦土。

 さっきまでいたプレイヤー達の姿が消えている。

 喉がひくりと動く。


「え、え、え……? い、今の……全部、やったの……?」


 足が一歩も動かない。

 ただ、焼け焦げた戦場と、空に残る紫電の残光を見つめ続けるのだった。


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