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職業【遊び人】鯨討伐を開始する

「鯨は空を飛んでるけど、皆は飛べるの?」

「なに言ってるんですか、飛べないに決まってるでしょう?」

「知ってるかいクレート、『アンノウン』は全員空を飛べるんだよ」

「ほんとですか!? そ、その情報。詳しく聞かせてください……!」


 颯爽と剣を抜いたイトマは笑顔を浮かべて鯨を見据えるが、拳の震えるクレートは歯ぎしりをしていた。

 カリナは【挑発】を使う。すると鯨は進路を変えて遊泳しだした。スピードは遅いが、空が揺れて風が立つのが分かる。

 唐突に宙に現れる魔法陣は、高威力のレーザーを放つ。地上にいるプレイヤーが一斉に消えていくのが見えた。

 攻撃を避けながら鯨のそばまで行かなければならない。


「飛ぶのなら任せて!! 【城兵指定(ルーク・エントリー)】【僧兵(ビショップ)指定(・エントリー)】」

「おぉ、さすがメイトだね」

「な、なにしたんですかっ!!」

「いくよっ!! 【城兵行使(ルーク・ムーブ)】【僧兵行使(ビショップ・ムーブ)】」


 メイトが目を輝かせてスキルを使うと、二人の体が宙に投げ出された。

 イトマは笑って剣を構えるが、クレートは涙を浮かべて叫んでいた。


「お、鬼……悪魔……」


 トトがカリナの腕を掴んでプルプル震えている。

 そんな少女の頭を撫でながら二人のスキルを観察する。


「ここで使いたくなかったんだけどな、【閑暇:即応】」


 早くも空中での姿勢制御に慣れたイトマは、鯨の付近に近づくと、巨大な体に剣を打ち込む。

 彼の片手剣は速度を増して連撃を与える。とにかく素早さが高く、攻撃をしていない暇がなかった。


「不思議な動きだね! もしかして、攻撃と攻撃の間の時間を短縮してるのかな!?」

「時間を加速……『暇人』ってすごい」

「『暇人』がすごいと言うより、イトマがすごいんだと思うよ」


 連撃を打ち込んだイトマが後ろへと下がると、魔法が降り注いできた。

 そこに立つのはクレート。彼は腕を掲げると避雷針のように魔力を腕に集める。


「【核・抽出】!!」


 魔力を回収しきれずクレートの服装に傷が付くが、彼は宙で中指を内側に曲げた。


「イトマ、暇を借ります!!」

「君、暇が見えるの?」

「えぇ。僕、これでも『キティー』の一員なので」


 左手を振ると、中指のリングが輝いた。

 クレートはこちらに戻りながら鯨の方を向きスキルを放つ。


「【核・融合】」


 クレートは中指を弾く、いわゆるデコピンをした。

 瞬間、何処からともなく現れた紺碧色のレーザーは、音速で、鯨の胴を抉る。

 彼は拳を握り、当たったことを確認すると、体の動くままに任せた。

 二人はメイトの元に戻ると、鯨を見て唖然とする。


「まぁ、これでやられるわけはないよね」

「いい一撃だと思いましたが……」

「まずいよ」


 カリナは『鑑定』を使って鯨の体力を確認していたからこそ分かる。その違和感。

 灼熱スライムと、轟雷スライムを召喚すると、スライムはそれぞれ魔法を放つ。

 そして他のメンバーも察したのだろう、息を呑んでそれを見守っていた。


「体力が、回復してる……」

「このスピード。ラトラス様には及びませんが、それでも決定打に欠けますね」

「ど、どういうこと……?」

「あの鯨、回復速度が早いんだよ!! それに回復量も多いから攻撃しても意味無くなっちゃうの!!」

「う、うそ」


 カリナは疑問符を浮かべる。

 アントやニーナは『光属性』の魔法を使って回復している。しかし鯨からは魔法の気配がしない。

 自分の思い違いだろうか、そう思い宙を走り始める。


「クレート、着いてきて!」

「な、なんで僕なんですかっ!!」


 クレートの体を【念動】で掴む。

 彼があたふたとしているのを感じて、強く握る。


「クレート、核って魔法も取れたりする!?」

「当然です。しかし同時に二つまでしか持てません!!」

「十分だよ!」


 カリナは鯨のそばまで近寄る。クレートが危険だと指摘するが、ボスは近距離への攻撃手段を持っていないようなので無視する。

 鯨の肌に触れると、【魔属性変化】を使ってみる。エレメントとの戦いの時に取得したスキルであり、魔法の属性を容易に変えられるスキルだ。

 カリナが魔力を探ると同時にクレートに声を掛ける。


「もしこの回復が魔法だったらそれを奪えれば勝機があるかも! それがないならまずいね」

「なるほど、カリナ様はこの行動力で有名になられたのですね。【核・抽出】」


 白く輝く魔法陣がクレートの指に映ったかと思うと、それは粉々に砕ける。

 カリナも魔法を変化させようと粘るが、感じる魔力反応は光属性ではない。

 二人は地上へと戻る。


「どうだった!?」

「この回復、魔法じゃない。多分システムなんだと思う」

「し、システム……?」

「回復を止めることはできないということだね。俺の連撃でも火力が足りないんだ、どうしたもんかな」

「私たちが倒したときは、とにかく連打だったよ!! でも今はいないね」


 皆の表情が少しずつ曇る。そんな中、一人浮かれて話し出す人がいた。


「とりあえずさ、チーム名決めない!?」

「チーム、名……? 『エレメント』みたいな?」

「そうそう! もっと仲間だー! って思えばきっと倒せるよー!!」


 メイトは見渡すと、ゆっくりと頷く。


「とりあえず皆自己紹介してよ! まだ私皆のこと詳しくないから!!」

「今やるのそれ? まぁいいか、僕はイトマ、職業【暇人】だよ」

「乗るんですか!? ぼ、僕はクレートです……職業と種族はラトラス様の命で名乗れません」

「俺が知ってるよ、職業【核操者】の人工生命体(ホムンクルス)ね!」

「い、イトマ様!!」


 クレートは鼻息を荒くして怒るが、イトマはヘラヘラと笑っていた。


「あっ、私のことも言わないとね! 私はメイト! 職業は【西将者(せいしょうしゃ)】で、馬人だよ」

「わ、私は……トト。職業は【選ばれし者】で、ハーピー……です」

「えー! トトちゃんハーピーなの!! 通りで可愛いと思った!!」


 メイトがトトの体を抱きかかえる。少女は目をバツにさせてアワアワとしていた。

 言われてみれば少女の背中からは鳥の羽根が生えているが、小さくて目立っていなかった。正面から見れば普通の人間のようだ。


「僕はカリナ、職業【遊び人】で、時々半天使(ハーフエンジェル)になれるよ」

半天使(ハーフエンジェル)ね。マゼランが似たようなことをするよ」

「ラトラス様もです。主君のが強いに決まってます」

「そんな事どうでもいいからチーム名でしょ!! 決めるよ!!」


 メイトは皆の名前や職業を口ずさむと、小さく唸って考える。

 この時間にも鯨が魔法を放っているが、その攻撃は全て大スライムの二体に受けさせていた。

 五回ほど攻撃を受けた後からダメージを感じなくなっている。スキル様々であった。


「カリナはなにか案ある!?」

「うーん……」

「そっか、意外に難しいねー!」


 カリナでさえも悩んでしまう。

 ちなみに男の二人はなにも考えていない。とにかくあれに勝つビジョンを想像しては首を振っているだけだった。

 そんな時、トトが小さく呟いた。


「皆の頭文字を取るとか……」

「頭文字!? うーん、『カ・イ・ク・ト・メ』の五つか!」


 カリナの頭の中でアナグラムが始まる。

 複数の言葉ができ、カリナは目を見開いた。


「『革命』が出来るね!」

「『メイト』もできるじゃん!!! キタキタ!! 『カクメイト』なんてどう!!」


 トトが暗い顔をする。自分の名前がなければ『革命』で済んだのにと思ったのだ。

 そんな少女にメイトがすかさずフォローを入れる。


「革命とメイトで『カクメイト』!! 皆私の『仲間』だよ!!!」

「メイト……」

「戦おう、そして勝つ!」

「……っ、うん!」


 メイトが鼓舞すると、トトは深く頷いた。

 戦いは始まったばかりなのだ。『カクメイト』の進撃は今始まる。


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